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彼女(治癒師)の場合

「また別れたの?っていうか、フラレたの?」


 昼下がりの王都のカフェ。美味しい紅茶とケーキを食べながらの、親友アリアの一言がグサグサ来る。正確にはフラレたわけじゃないけど、まあ似たようなものだ。


「また……うん。もうね、当分オトコはいいかな。しばらくは仕事に生きるわ」


 ため息をつきながら……でも、ここのケーキは味わって食べないと勿体ない。そう思う位には、私は落ち込んでいないのだと思う。


 別に珍しい話じゃない。

 恋人に浮気されたり、捨てられたりなんて、良くある話だ。

 でも、それももう三度目ともなれば、これはもう恋愛に向いていないってことなんだと、開き直ってしまう心境でもあった。


 私は、クラウディア・ノーズレイン20歳。職業は、王国軍に所属する治癒師。一応貴族の男爵家の生まれだけど、今は家を出て職場の寮で暮らしている。

 向かいに座っているのは、同郷出身の幼馴染で親友のアリア。彼女は王都の図書館で司書として働いていたのだけれど、初夏の頃、騎士様と結婚して寿退職した若奥様だ。


「ふうん。アンタはさ、タイミングが悪いっていうか、もうちょっとちゃんと吟味してから男と付き合えば、と思うのよ」


「吟味って何? タイミングって選べるものなの?」


 そう言いながら、今までの恋を振り返ってみる。


 一度目の恋人は歳上のスマートな騎士だった。17歳で出来た初めての恋人に浮かれて夢中になったけど、軍の遠征中に浮気をされた。ショックで信じられなくて、その後も疑心暗鬼になって、何度も彼に問い詰めてしまった。当然鬱陶しがられて、最後には別れを告げられた。


 二度目の恋は、18歳のとき。軍属の治癒師の同期で、とある伯爵家の長男だった。誠実で真面目な人だったと思う。一緒にいると楽しくて、気を許して付き合える人だった。だけど、急に家の為に政略結婚をしなければならなくなった、と言われた。恋人として好きだけど、家のために結婚することになったから、別れて欲しいと。どうしようもなかった。


 三度目の恋は、半年くらい前。近衛騎士で業務中に負った怪我を治療したら、何度も好きだと告げられて、押し切られるように付き合った歳下の男の子だった。私も好きだったと思うけど、熱量が違う、同じ気持ちを返してもらえないのが辛い、と、結局破綻した。

 そして、現在に至るというわけ。


 アリアは、口調の割には上品な所作で紅茶を飲みながら答える。


「こればっかりは、相手のタイミングも悪いのよねえ。まあでも、もうオトコはいいって言うなら、それもいいんじゃないかな」


「? 相手のタイミング? それって関係ある?」


 アリアの含むような言い方に、思わず首を傾げる。これまでの恋は、失恋したあとに、割とすぐ告白されて付き合っている。別にタイミング悪くなかったと思うけど。


「アンタは黙っていれば美人だし、治癒師の女はモテるからといって、前の恋を忘れようとしてサッサと次にいかないの」


「え〜、そんな次から次にみたいに言われても」


 黙っていれば美人って、ありがたいけど一言余計だわ。ただまあ、この国ではちょっと珍しい金髪と蒼い瞳が目を引くのだと思う。母様が北国の出身で精霊魔法師だから、その色と力を継いだのだ。

 そして、治癒師がモテるというのもまあ、結婚相手にすれば病気や怪我の治療が出来るし、収入もあるしで、便利だからなのだろうけど。

 でも、なんていうか、次から次へと恋人を変えているように言われるのは、不本意だ。だって、不可抗力だと思う。


「実際そうだったでしょうが。もうちょっとさ、相手をよく見て考えなさいよ。アンタ押しに弱いんだから、ちゃんと自覚して自衛しなさいな」


「はあい。でも、もうホントしばらくオトコはいいわ」


 押しに弱い自覚はあるけど、さすがに懲りた。しばらくは誰かに告白されても、きっぱり断るつもりだ。

 だけどアリアは、疑わしそうにジトリと私を見て、大きなため息をついた。


「しょうがないわねえ。私もそうそう付き合ってはあげられないから、男避けを一人紹介するわ」


「男避け?」


「そう。恋心関係なく、こうやって時々アンタに付き合ってくれる、男友達兼、告白を断る口実にもなるような男」


「はあ?」


 何を言い出した? 私はアリアを訝しげに見る。


「いざという時に盾になってくれる男がいれば、告白も落ち着くでしょ。友人なら、その辺事情を話して、頼めるし。それに、恋人じゃなきゃ、冷静に人となりも見られるでしょ。アンタに足りないのは、人っていうか、オトコを見る目!」


 ピシッと人差し指を私に向けて言い切ったアリアに、私はムクれて反論する。


「え〜、確かにそうかも知れないけど、女友達を見る目はあると思うし」


「だから、よ。恋愛感情抜きで友人を選ぶ目は悪くないんだから、オトコもそうやって見極めてみなさい」


「は〜い」


 アリアのご尤もな台詞に、私は両手を挙げて降参した。



 そして、それから数日後に届いたアリアからの書簡は、やけに恩着せがましい手紙だった。


『クラウディアへ

 アンタに、とびっきり優秀な男避け兼男友達を紹介するわ。人間性は、ケビンと私の保証付き。真面目だし、誠実な男よ。

 アンタの事情もざっと話してあるから、盾にもなるしエスコートも問題なし。

 明後日の午後2時、ローズガーデンの噴水前で待ってなさい。目印は、蒼色のポケットチーフよ。

 私達夫婦に感謝して、お礼は、アンタの焼いた特性堅焼きビスケットでいいわ。アリアより』


 優秀な男避けって何? 名前は……多分私が知らない人だからって、敢えて書かなかったのかな?

 ケビンはアリアの旦那様で、魔法騎士団に属する魔獣討伐騎士隊の副隊長だ。騎士爵を持っている彼は、一代限りの貴族でもある。彼の保証付きってことは、同じ魔獣討伐騎士隊の方だろうか?


 魔獣討伐騎士隊は、魔獣被害が深刻な地域で最前線に派遣されることが多い、王国の精鋭部隊だ。

 魔獣討伐を行う部署は、一般兵の部隊もあるのだけれど、魔法騎士団に所属する魔法騎士とは違って、そちらは魔獣討伐兵団と呼ばれている。ややこしいけど、軍では騎士か兵士かで呼び分けしているのだ。

 私も軍属の治癒師なので、彼らに帯同することも多いのだけれど、治癒が必要なのは圧倒的に兵士の方が多い。だから、騎士隊に直接の知り合いは、あまりいないのだ。


 そして、私の焼く堅焼きビスケット……正確には、母様と私が焼く堅焼きビスケットは、魔法騎士団の方に主に納入されている。


 母様は、もとは北の隣国生まれの精霊魔法師で、治癒魔法を付与した食事や菓子を作ることが出来るのだ。そして、魔法が使える者ならば、この付与魔法の効果で自身の魔力を変換し治癒力を増大させ、自己治癒が可能になる。


 幼い頃から隣国の心無い領主に虐待を受けていたという母様は、優秀な治癒師でもあり特殊な付与も行えるけど、虐待のせいで魔力回路に致命的な欠陥を負い、その力を充分に使えず、今は付与魔法が精一杯だ。

 だけど国の為にと、魔法騎士団に日持ちのする治癒魔法が付与された堅焼きビスケットを作っては、定期的に納入してくれている。

 ただでさえ珍しい精霊魔法師だけど、今この王国の軍属の精霊魔法師は私だけだから、随分と助かっている。さすがに私だけでは、治癒師の仕事と付与の両方は、キツイ。

 一般的な治癒魔法を使える魔法師よりも、効率よく多くの人を治癒できる精霊魔法使いの治癒師である私は、割と忙しいのだ。


 まあ、でも……紹介された彼と良い男友達になれたら、アリアの愛する旦那様の為に、たっぷりと治癒魔法を付与してビスケットを焼こう。



 そうして私は今日、初対面の方に街で出会うのに失礼では無い程度の格好をして、ローズガーデンの噴水前にやってきたのだけれど。


「こんにちは。クラウディア・ノーズレイン嬢、アリアーヌ・ザルデン夫人から紹介されてきたのだが……」


 目の前に立ち声を掛けてきた男性に、一瞬、意味が分からず呆けてしまった。


 襟にはつかない程度で切り揃えられた艷やかな黒髪、少しキツめの青い空色の瞳、端整な表情に、均整の取れた体つきの美丈夫。

 おそらくこの王都で評判の、王国軍で最も有名な、魔法騎士。ハワード伯爵家の三男にして、騎士爵持ちの、魔法騎士団魔獣討伐騎士隊の隊長。今日は当然制服ではなく、蒼色のポケットチーフがアクセントになったセンスの良いカジュアルなスーツ姿だけれども、見間違う筈もない。


「エリオット・ハワード様……でしたか」


 恐る恐るその名を口にする。

 すると彼は、そのキツめな眦を緩めて、本当に嬉しそうに微笑んだ。


「ご存知でしたか……光栄です」


 いや、そりゃあ、有名ですから。私だけでなく、皆知ってるでしょうよ。

 とびっきり優秀な男避け兼男友達ね、なるほど。

 でも、私にはかなり荷が重そうな相手だ。ちょっとご遠慮したい。


「……あの、今日は、ご迷惑ではありませんでした?」


 すると彼は、軽く目を瞠って、首を傾げた。


「迷惑?なぜ? 私はザルデン夫人から君が男性の友人を探しているから、と紹介されてきたのだが、迷惑だと思うなら、そもそもここには来ないな」


「いえ、その……ハワード様はとてもお忙しいと聞いているので、私事でお時間を取らせて申し訳ないなあ、と」


 遠回しな断り文句で、逃げを打つ。

 だけど、彼は少し考えるように顎に手をあてて答えた。


「そこまで忙しいというわけではないんだが、ここぞという時にタイミング悪く遠方の仕事が入ることは、ままあるな。

 だが、しばらくは王都にいることになって、ちょうどケビンと夫人から君の話を聞いたんだ。私もこちらにいるときは、女性の友人がいると楽しめる場所も広がると思っているから、君が付き合ってくれると助かる」


 確かに、少し前に東部地方で行われた大規模な魔獣討伐が終わり、これから冬を迎えるにあたって魔獣が休眠期に入り、討伐業務はしばらく落ち着くだろう。

 それに冬場の王都では、祝祭や社交シーズンの為、男女で出かける場も多くなる。


「でも、ハワード様なら付き合ってくれる女性には苦労しないんじゃ」


「欲しいのは、彼女や恋人じゃなくて、女性の友人なんだ。

 私の周囲に女性が居ないとは言わないが、いきなり好きだの、憧れていました、だの言われて恋人としての関係を求められても、私には応えられないからね」


 あ〜、それはよくわかるわ。ハワード様は国の英雄と言われるほど武功を立てていらっしゃるし、騎士爵持ちで伯爵家の出身でもあるから、立ち居振る舞いは洗練されていて貴公子然としているし、しかもこの素晴らしい容姿だ。王都の若い女性達の何割くらいが、彼に濃淡はあれど恋心を抱いているのか?調査してみたい気がするくらいだ。

 そんな彼にとって、女友達は……うん、いなそう。


 かくいう私も、この年齢になると結婚適齢期真っ最中なおかげで、声を掛けてくれる男性は皆、恋愛引いては結婚を視野に入れたオトコばかり。


 恋愛とか結婚を別に、気軽に友人関係を結べる男性と、例えば男女で行くイベントとかレストランにも行ってみたいし、しばらくはゴメンだけど、恋人が出来たら恋愛相談に乗ってくれる人がいれば助かる。


 お互いに友人関係と割り切っているなら、悪い話じゃないかも。


「そういうことでしたら、お友達としてよろしくお願いします、ハワード様」


「ああ。よろしく頼む。友人ならば、私のことはエリオットと。君のこともクラウディアと呼んでも?」


「もちろんです、エリオット」


「ああ、よろしくクラウディア」


 そうして、エリオットと私はお友達になったのだ。




「君のことは知っていたよ。ていうか、君、結構有名人だからね?」


「そうなんですか?」


「魔法騎士団に付与付きビスケットを納入しているだろ? あれ、いつも助けられてる。ありがとう。それに、激戦の魔獣討伐の救護所には、凄腕の治癒師がいるって評判だからね。軍で君のことを知らない者はいないと思う」


「そうだったんだ……ちょっと驚きました。でも付与付きビスケットは主に母が。伝えておきますね」


「そうなんだね。じゃあ、君が騎士や兵士達になんて呼ばれてるかは、知ってる?」


「いえ。でもエリオットの二つ名なら知っていますよ。氷龍の魔王様」


「あ〜それ、人から聞くとかなり痛いな。魔王ってなんだよって思う。でも、君の二つ名は素敵だよね。スノードロップの聖女クラウディア」


「スノードロップ?」


「スノードロップの花言葉は「希望」「慰め」だ。とても可愛らしくて可憐な花だよ。君にぴったりだね」


「可愛くて可憐……違和感しかない」


「そうかなあ」


「私、結構ガサツだし、口も悪いんですよ。救護所では大声で怒鳴りつけることもあるし。それに……アリアに聞いているかもしれませんが、男運もなくて、可愛げとかないんです」


「君の良さをわからない男のことなんて、気にしなくていいと思うよ? ザルデン夫人からは、君が身勝手な男たちに振り回されたと聞いた。有名で有能な君には、これからもいろんな男達から誘いがあるだろう。しばらくは恋人を作りたくない、とも聞いている。

 私の名で良ければ、偽恋人としてでも、断る口実にでも、好きに使えばいい」


「そんな訳には……」


「その代わり、私も女性達からの誘いを断る口実に、君の名を使ってもいいだろうか? 君に迷惑を掛けないと約束するから」


「つまり、恋人のフリをしたお友達ってことですか?」


「そう。悪くない話だと思うんだが」


「確かに。ふふっ……アリアから、とびっきり優秀な男避け兼男友達を紹介するって言われたんです」


「ああ、そして私にとっては、素晴らしく素敵な女避け兼女友達ってことだね」


「じゃあ、お互い好きな異性が現れるまでの期間限定ということで。エリオット、好きな方が出来たら教えてくださいね? その時はお別れしたことにしましょう」


「……わかった。でも、友達関係は続けていきたいな。君とこうして話をするのはとても楽しい」


「そうですか? 嬉しいです。もちろん、こちらこそ。よろしくお願いします」


 そんな風にたくさん話しながら、庭園を散歩して、少しだけ上品なレストランで夕食をご馳走になって、その日は寮まで送ってもらった。


 これまで遠くから見掛けたエリオットには、なんとなく近寄り難いイメージを持っていたけど、話してみるととても気さくで、同じ軍属ということで話題も尽きず、私の話にもちゃんと耳を傾けて興味深げに聞いてくれる、所謂いい人だった。

 エスコートもちゃんと友人としての距離を保った適切で自然な感じで、気疲れすることもなかったし。

 一緒にいて楽な人だ。

 今度会うときには、今日の夕食のお礼をしようかと思う。



 こうして始まった私達の友達付き合いは、周囲にかなりの驚きをもたらしたものの、それなりに受け入れられて、1年たった今でも順調に続いている。


 魔獣討伐のシーズン中は、一番の激戦地である最前線に派遣される魔獣討伐騎士隊や兵団に帯同して、私も大体エリオットと同じ地域の救護所に派遣されたので、意識すれば結構会う機会も多かったし、王都に戻る時期は多少ずれるものの、だいたいこちらにいる期間も被るから、一緒に時間を過ごすことも多くて。


 討伐中、彼が氷龍の魔王と呼ばれる所以も目の当たりにした。

 必死になると、一人称が私から俺に変わって、口調が砕けることも知った。

 魔獣討伐騎士隊の隊長として、過酷な戦場にいることも、凄惨で苦しい現場でも、騎士や兵士達を鼓舞し、先頭に立って戦う姿も、たくさん目にする機会があった。

 平時の王都にいる時のエリオットは、まさに貴公子然とした優しくて紳士的な男性なのだけれど、私には戦場で命懸けで王国のために戦っている彼が、すごく眩しくてカッコよく見えて……

 私も彼の近くで、治癒師として力を振るえることを誇りに思うようになった。


 そうやって、彼のいろいろな姿を見て、何度も会って言葉を交わし、エリオットのことを知るたびに、私はちょっとずつ彼に惹かれていって、だんだんと育っていった確かな恋心と共に、複雑な気持ちを抱くようになった。

 今、エリオットと私は互いに大切な友人だ。

 でも、本当の恋人には、多分、なれない。


 とうとうこの心地よくも曖昧な状況に、終わりが見えてきたから。



 年の瀬が近いある日、仕事帰りに現れたエリオットが言った。


「今度の新年の祝祭、また一緒に過ごさないか?」


 新年の祝祭は、家族や恋人達が共に過ごし、新しい年の幸福を願う祭りだ。ちょうど1年前、私達は仮の恋人として、王都でこの祭りを楽しんだのだ。

 でも、もうそれはやめたほうがいいんじゃないかな。


「嬉しいお誘いだけど……エリオットと約束しましたね。恋人のフリは、お互い好きな異性が現れるまでの期間限定って」


「え?」


 エリオットの表情が、強張ったように固まる。

 なんで貴方がそんな顔するかな? 思わず苦笑が溢れてしまう。


「エリオットのこと、聞きました。ご婚約の話があると」


「は? ちょっと待ってくれ、婚約? 俺の?」


 あれ? ちょっと様子が変。でも……


「デーメル侯爵家のアーデルハイト様とご婚約して、婿入りすると聞きましたけど」


「そんな話は聞いてないけど?」


 これ、本当に訳がわからないと思ってる顔だわ。でも、そんなことある?


「ええ? でも、アーデルハイト様の侍女をされている方が、先日わざわざ職場に訪ねてきて、そうおっしゃって。身を引くようにと」


「クラウディア。君はそれを信じたの?」


 エリオットに焦ったように両肩をつかまれた私は、半信半疑で彼に答える。


「ええ。だってあり得ない話じゃないでしょう」


「あり得ないよ。そんな不誠実なこと、私が君にするわけがない」


 信じられないというように目を瞠って、でもどこか傷ついたような声で、エリオットは否定した。


「不誠実……ですか」


「私は、今までの君の恋人達のことを知っている。だからこそ、君を僅かにも傷つけるようなこと、絶対にしない」


 彼からまっすぐに向けられる視線に、嘘はない。


「エリオット……私達、話をしましょう」


 そうね。貴方はいつだって、誠実だった。

 私のことをとても大切に思ってくれているのも、知っている。

 だけどきっと、私達は、一番大切な何かをお互いに心の奥底に隠したまま、ここまで来てしまった。

 もしかしたら、心地良いこの関係が変わってしまうかもしれない。

 エリオットが私に向ける感情と、私がエリオットに抱いている想いは、違うモノかも知れない。

 でも、私は知りたい。

 だから、話をしましょう。私達がちゃんと向き合う為に。

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