表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

43/43

43.エピローグ

 ……それから、まもなく、国王陛下は崩御された。


 次に王位を継ぐのは、第二王子のジュードだ。


 ◆


「父は死んだ。第一王子クラークスは罪人となった。リーンは幼すぎる。……今、王座に就けるのは俺しかいない。わざわざアンタと結婚しなくてもな」

「……私とあなたが結婚する必要はなくなったってこと?」

「そうだよ」


 陛下の葬儀が終わり、私はジュードに城内の一室に呼び出されていた。


(なんの話をするのかと思ったら……)


 二人きりで話をしたいと言われ、カメリアはリーンの乳母に預けて来たのだが。


 これからしばし喪に伏したのち、ジュードは正式に戴冠式を行う。だからその前に……とでも考えたのだろうか。


 ジュードは目を細め、ふっと私から目を逸らし、窓の向こうを見つめた。


「……悪かったな。お前はもう脅される謂れもなければ俺の婚約者でもない。自由に生きろ」

「自由に……ね」


 私は高い位置にある金髪頭を見上げる。


 思い返せば、最悪の出会いからよくここまで付き合ったものだなと自分でも思う。最低だ、最悪だとあんなに思っていたのに。


 今はもう、この男の顔を見ているのが、そんなに嫌なことではなくなってしまっていた。


 窓の外を眺める横顔は私が思う彼の顔よりもなんだか大人びていた。陽の光を浴びて、菫色の瞳は煌めき、潤んでいるようにも見えた。


「ジュード」


 名前を呼ぶ。だけど、彼は振り向かない。


 じゃあ、しょうがない。私は自ら彼のそばまで近づいていった。


 そして、胸ぐらを掴んで無理やり引き寄せる。

 この男にしては珍しいくらいまん丸になった目と目が合った――と思いながら、勢いに任せて顔を押し付けると、ガチンと歯と歯がぶつかった。


「いった……」


 あんまりにも痛くてうずくまる。

 ジュードは鳩が豆鉄砲を食ったような顔で呆然と大きな手のひらで口を覆いながら、私を見下ろしていた。


「……あ、あなたが言ったんでしょ、お前がキスする相手はこれから先、俺だけだからなって」


 睨むように上目遣いで言ってやれば、「ハハ」と乾いた笑い声をさせながら奴は薄く笑った。


「私の自由にしていいのなら、いいでしょ。このままでも」


 痛い口元を押さえながら、私はふんぞり返って強がる。


「……ひっでーキスだな」

「う、うるさいわね」

「《《こんなキスがしたかった》》のかよ」


 記憶力のやたらいい男にもう一度「うるさい」と繰り返す。


 ――たしかにそういうやりとりをした。先に引き合いに出したのは自分の方だ。


 初めて唇を奪われて、あんな風にされたくはなかったとか文句を言った。


 それで、コイツは「じゃあ、せめて次するときはお前の理想通りにしてやるよ」とか、そんなことを言っていたのだ。俺と結婚するんなら俺以外の相手とはもうできないんだからと。


「……仕方ねえな」


 口ではそう言いつつも、ジュードは見たことがないくらい、とろけるような優しい表情を浮かべていた。


 大きな手のひらが、私の髪を撫でて、顔の横の毛を耳にかける。

 

「半歩下がって、目つぶって、上向いて、じっとしてて」


 低い少し掠れた声が囁くままに、私はジュードの言う通りにした。


 それから、そう間をおかずに、唇に柔らかい感触が重なった。私の記憶の中にある最悪のキスとも、私がさっきやらかしたひどいキスとは全然違う。


「……ほら、こういうのがちゃんとしたやつだよ。覚えとけ」


「……最低っ」


 ニヤリと笑う男の余裕の表情が悔しくて、私は彼の胸に勢いよく顔を埋め、ぎゅっと服の裾を掴んだ。



最後までお付き合いありがとうございました!

とても楽しく書き上げたお話です。よろしければ読了の証にページ下部の⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎から評価やブクマなどつけていただけるととても嬉しいです!

______

【お知らせ】

こちらの作品ですが、12月25日に書籍の発売が決定しております!

恋愛要素マシマシに加筆改稿しておりますのでよろしければ書籍も読んでいただけましたら大変嬉しいです!

ページ下部に書影貼っておりますのでよろしければ見てください!


ps.別作品ですが、12月12日に『不貞の子は父に売られた嫁ぎ先の成り上がり男爵に真価を見出される』のコミックス1巻が発売されます。こちらもよろしければぜひ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆12/25発売! どうも。ニセモノ聖女です! 猫被り王子に「婚約しないと正体をバラすよ」 と脅されてます。
ニセモノ聖女
イラスト/潤宮るか様
書籍では恋愛要素マシで改稿しております!さらにはとっても素敵なイラストまで見れてしまうのでぜひぜひ書籍もお手に取っていただけましたら嬉しいです…!

◆12/12発売!不貞の子は父に売られた嫁ぎ先の成り上がり男爵に真価を見いだされる〜ロレッタと天才魔道具士の結婚〜◆
不貞の子、コミックス
清瀬のどか先生作画の『不貞の子』のコミックス1巻が発売です!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ