ー序章ー
Let Finis
ー序章ー
「神よ、我らを救ってください」
周りにはヒトであった肉の塊が散乱している。
血飛沫と断末魔、この世の物とは思えない光景の中である少女が放った言葉。
彼女の声は誰にも響く事は無い。
いや、聴く者がいないの方が正しいだろう。
もう誰も彼女の言葉に対して反応しない。
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祖の神はこの世界に『 現象』を与えた。
ミディグリア王国があった。
彼ノ国は水を神として信仰していた。
また、炎を神として信仰するフランマ王国
世界樹を神として信仰するユーグリット王国
この世界にはあらゆる物体や現象を信仰している国が多数ある。
排他的な国が多いものの、大抵の場合は信仰するものが違うので争いなどは怒らない平和な世界であった。
だが蟠りは起こる。
ユーグリット大国が大火災を起こしてしまった。
不幸にもこの国は大自然に囲まれておりたちまち炎は国を襲った。
民を燃やし、家を燃やし、田畑を燃やした。
世界樹をも原型を保てぬ状態まで崩壊してしまったのだ。
ユーグリット王国は動く。
「この炎を放ったのは誰だ」
必然と言っていいほどその矛先はフランマ王国に向いた。
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ある男はユーグリット大国が嫌いだった。
彼の両親はユーグリット人とフランマ人のハーフであり、本来ならばユーグリット王国で幸せな生活を送るはずだった。
だが、炎の民を危険視するユーグリットの団体において、ある男は国から追放すべき対象でしかなかったのだ。
ユーグリットの民からの迫害により両親は心身ともに不安定になっていき、男を産んだ事を後悔するようになった。殴られる事も日常茶飯事だった。
男は迫害された。虐げられた。
街を歩けば石を投げられる対象になり。
家に帰れば両親から暴行を受けた。
「この国に自分の居場所は無い」
そう悟った男は、この国を滅ぼす事だけを考え、炎の現象を修行する事にした。
恨みと比例するように男は力をつけ、この国を燃やし尽くすほどの能力を身につけてしまった。
そして、明くる日、燃やした
全て燃やした。
燃やしている男の表情は不気味な程に笑顔だった。
そして男はいなくなった。誰も居場所は分からない。
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フランマ王国は炎を放っていないと言い張る。
だがユーグリット王国がその話を信じることは無かった。
なぜならフランマの炎とそれ以外の炎では色が違い、フランマの炎はドス黒い赫色の炎なのだ。
ユーグリットで炎を目撃した全ての民がフランマの炎と言っていた。
ユーグリット王国はフランマ王国の攻撃を受けたとして敵意を向けている。
が、今のユーグリット大国には攻撃を仕掛ける程の財力も経済力も無かった。
ではどうするか、
この世界では禁忌とされている魔法があった
転生魔法である。
それを使い他の世界から才のある者を呼び起こし、フランマ王国に報復すると誓った。
転生が禁忌とされているのは理由があり、
必ずこの世に不幸をもたらすとされているからである
転生者の名前をこの世界では「Let Finis」