続・ゆいこが転生したら◯◯だった件〜念願の王女に転生したけど....〜
「ねーねー、2人はさ、もし転生するとしたらどんな人物になりたい?」
3人で一緒にバレンタインのチョコを頬張りながらひろしとたくみに問いかけた。
「はぁ?転生?なーに突然」
たくみがモグモグと口を動かしながら怪訝な顔をする。
「異世界に転生して、絶大の美女とかになっちゃって、超イケメンの王子様と結婚するとか、ロマンだよね〜」
「....ガキか。つか、ベタだな〜」
「あ、ひどい!そーゆーたくみはどうなのよ?」
「おれぇ?異世界ね〜....そーだな、どーせなら、勇者とかになって魔王を倒して英雄になるとかいいんじゃね?」
「ほら〜、そっちだってベタベタじゃん!....ひろしは?」
「俺?俺は.....平凡な村人、かな」
「地味だな〜」
呆れたように言いながら、ひろしをからかおうと身を乗り出すたくみを遮って、ひろしに向き直る。
「なんで村人?」
「ん〜?いや....自給自足できて、雨風凌げる家があって自由に生きられたら、それに越したことはないかなって。.....そして...そこにお前が一緒にいてくれたら、他には何も望まない。」
ひろしの真っ直ぐな瞳に思わず顔が熱くなる。
「何言ってるの、突然...」
思わずひろしから目を逸らすと、ムスッとした顔でひろしを睨むたくみが目に入った。
「おれだって....国の英雄になるのは、ゆいこ姫と結婚するためだからな」
たくみが力強い眼差しでわたしの視線を捉える。
「な、なによ、2人とも...」
わたしは熱を持った頬を隠すように両手で顔を覆った。
そんな微笑ましい記憶が脳裏に浮かんで来て、わたしは小さくため息を吐いた。
これは、前世の記憶。
わたしが異世界の「日本」という国で幼馴染2人に淡い恋心を持ち続けていた幸せな記憶....。
今のわたしはあの頃とは違う。
ナロウ王国滅亡の危機がこの国の第一王女であるわたしの肩にのしかかっている。
わたしはこれからこの国の存続と引き換えに生贄として「魔王」と婚姻を結ぶ....。
ねぇ、たくみ。
ひろしは正しかった。
名声や富がなくても自由に暮らせる村人が1番幸せな立ち位置だったかもしれない。
愛おしい記憶の中の2人に呼びかけた。
「ユイコリーゼ姫、お時間です」
そんな言葉と共にわたしの目の前の扉が開かれた。
そこは魔界とこの国をつなぐ魔法の扉。
向こう側には魔王がわたしを待ち構えている....はずだった。
「ユイコリーゼ姫!」
「...ユイコリーゼ姫」
扉の向こう側から眩い光と共に懐かしい声が響いて来る。
「我が名はタクミータ。勇者である!魔王はおれとこいつで討伐した!世界は救われた!」
「俺はヒローシス。....ユイコリーゼ姫、ご安心ください、あなたを犠牲になど決してしはしない。昔も今も俺らが生涯かけてあなたを守ります。」
ナロウ王国とわたしを救った2人の英雄が懐かしい愛おしい笑顔でわたしに手を差し出した。