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(4)★


 彼女の手が伸びてきて、頬を撫でられた。


 ひんやりと冷い指先、少女の瞳は恍惚のように光り輝いている。


 体の一部分といわず、足の先までがじんわり熱を持つ。


 もう一回、いや、今日は眠らないでずっとしたい。


 可憐な少女に、こんなにも美しい娘に求められる。

 それは心の底からわき上がるような喜びだった。




「そういえばね」


 サントが二度目に果てた後、天井へ視線をやっていた少女がぼんやりと口を開いた。



「あの人、ここへ来ていたのよ。ねぇ、知っていた?」


「……はぁ?」


「嵐の後、そうねぇ、あれは、この間だったかしら。……ずいぶん前な気もするわ。

 よく覚えていないのだけれど、でもね。ふふっ、笑ってしまうの、喘ぎ方がそっくりで」


 少女がおかしそうに微笑む。

 サントは苦笑を返した。



 この娘は、ついに気が狂れたに違いない。


 まぁ、この状況では仕方のないことだろう。

 そう思っていたら、少女がすっと上半身を起こした。


 小振りな乳房、細い腰、薄い体毛。

 彼女の幼いげな体のどこにそれだけの力が残されていたのだろう。


 この子は、いままで抱いたどの娘子とも違う。


 サントは不思議な気分に陥ったが、その明確な答えは見つけられず……。


「あの子、なんていったかしら。ロ、ロ、ロード?」


「……ロ、イド?」


 そういえば、いつもは喧しいほど騒ぎ立てている相棒の姿がない。


「あいつ、いつからいないんだ?」


 サントは「まぁ、酒でも探しにいったんだろう」とたいして気にはしなかった。


「ねぇってば」


 甘ったるい少女が腰元へまとわりついてくる。


 まだ、足りないのか。本当に気分を高めてくれる娘だ。


「……君が、欲しい」


 とたんに欲しくなった。

 奴隷に、愛人に、いずれは伴侶として迎えるのも良いだろう。


 この娘が妻か。


 それはいい、そうしよう。サントの中に名案が生まれた瞬間だった。


「でもねぇ。ロイドはなんて言うかしら」


「そう、か」


 そうだ。相棒はなんて言うだろう。

 自分も欲しいと言い出さないだろうか。サントは不安になった。


「大丈夫よ、イーサン。


 安心して、あの人と同じで心配性なのね。彼もね。いつか息子が追いかけてきて、奪われやしないかずーっと心配していたわ」


 少女の胸元に埋めていた頭を優しく撫でられて、気分がいささか落ち着いた。


 そうしたら、不思議と心の内が、のどの奥からボロボロとこぼれ落ちた。


「俺は、君が、欲しい。結婚してくれないか?」



「そうね。みんなそういうの」


 困ったような少女の顔にサントは、すぐさま体を起こして真剣な目を向けた。


「俺と一緒に来てくれ、絶対に後悔させない。神に誓う」


「うーん、どうしましょう。困っちゃうわ」


 少女がわざとらしい仕草で首を傾ける。


 サントはその意味を理解して満足げに目を細めた。


 彼女を引き寄せようと腕を伸ばす。


 しかし、彼の片手は後一歩、少女の方へは届かなかった。



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