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カリナの自宅へ招待されたノーラとハイシェルは昼食をご馳走された後、町の外れへ連れて行かれた。
そこは不規則に墓が並んでいる。
その中でも比較的立派に見えるひとつの前へ、ノーラは手を引かれる。
「ほら、ノーラ。これが、グラウスさん……いや、彼の墓だ」
「まぁ……」
「グラウスさん、ノルンの姪っ子、ノーラがが会いに来てくれたよ。グラウスさん、あなたは間違ってなかったんだ。そうさ、ほら、ノルンにそっくりだろう?」
「……死んでいたの」
「ああ、少し前のことさ。発作で倒れてね。でも、悲しむことはない。もう年だった、仕方のないことさ」
「ねぇ、おばあさま。ハーシェと二人きりにしてくださらない。……お願いよ」
「あっ、ああ。そうだね。ごめんよ。後でまた家においで、今夜は泊めてあげるからねぇ」
「はい」
しずしずとしたカリナが去り、二人が残された。ハイシェルは墓を見下げながら小さな声をこぼした。
「悲しいのか、ノーラ?」
「……はっ」
「だっ、だれしも。その、大切な者が亡くなれば悲しいものだ。自然なことだろう。
お、おまえも、ほら、俺がそうなった時、泣いたろ? 自然なことだ。ふつうのことなんだぞ。だから泣いてもいいんだ……変なことじゃない」
ハイシェルが、硬い表情のままで、饒舌に口を動かしている。
そのおかしな姿に、ノーラはたまらず笑い声をあげた。
「ふふっ、やだぁ、ハーシェったら、何を焦っているの?」
「だって、おまえは悲しいんだろう?」
「ふふふ。あははっ」
ノーラはひとしきり笑って、墓の前に仁王立ちした。
「どう? グラウスおじさん、あなた、悔しいでしょう。
帰ってきてやったわよ。ノルンに会えなくて、さぞ、悔しかったでしょうね。ざまぁないわ」
ノーラは鼻を鳴らす。
ぎょっとした顔のハイシェルを後目に言葉を続ける。
「帰ってやったわ。掟に背いてやったわ。どう? 悔しいでしょう。ふふっ、悔しいのよね。うっ……ふっぐっ。ノルンは、帰ったのよ。だって、時間がかかったの。ごめんなさい、おじさん」
ノーラは天を仰ぎながら、声を殺して泣いていた。
ハイシェルがぎょっとしたのは、この有様を目の当たりにしたからだった。
「それなのに、死んでしまったの? ねぇ……どうして先に逝ってしまったの。本当の娘のところへ逝ってしまったの。娘をおいて? そんな、世界は、さぞ、幸福なのでしょうね」
次の瞬間、ノーラはいつものノーラだった。