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「そうね。先を急ぎましょうか」
二人に気が付いた少女たちが「こんにちは」と挨拶をする。ノーラは手を振って答えた。
「鍛錬、頑張ってね」
娘たちと束の間の交流をしていたら、町の中から年老いた女が慌てた様子で駆けてくるのが見えた。
「ノルン! ノルンなのかい!?」
「あら、どちら様でしょう」
ノーラはコテンと首を傾げた。相手の女は眉を下げて困り顔を返す。
「ああ、そうよね。ごめんなさい、旅のお方。私の学友に、あまりにも似ていたもので驚いてしまったの」
「ふふっ、ノルン叔母様のことね?」
「ああ、やっぱりそうかい!? あなた彼女と関係があるんだね」
「ええ、私はノーラ。ノルン叔母様にお話を聞いてきたの。ここにいるグラウスおじさんに会いに来たのよ」
ノーラが名乗ると、相手は何かを悟ったような顔をした。それから、視線を左右へ泳がせる。
「そう。グラウスさんに……」
「すぐにでも会いたいのだけれど、紹介してくださる?」
「ええ、もちろんさ。着いておいでなさい」
「はい、カリナおばあさま」
そう言うと、年老いた女、カリナはピタリと動きを止めた。
顔をぐしゃりと歪めたとたんに、大粒の涙を流したのだ。