(6)★
「もうっ。
この息子ったら、お父様とおんなじこと言っちゃって。うふふっ」
少女の下卑た汚物を見るような、冷たい双眸の奥にサントは絶望の色を見た。
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裸体の少女がテーブルの上で足を揺らしていた。
ステンドグラスから漏れた月の光が、彼女の体を淫靡的に浮かび上がらせている。
「……終わったの?」
少女が投げた弱々しい声は闇に吸い込まれて消えた。
どこから現れたのかコートマントの男が、大きなため息を返す。
少女は反射的に声を上げた。
「はいはい、あなたのお怒りはごもっとも。
だけど、もうおしまいにしましょう」
「まだ、なにも言ってない」
「いいのよ。あの子は逝ったのでしょう? なら、もうおしまい。この話はこれで終わりよ」
少女はひょいとテーブルから降りて、ポンと手を打ち鳴らした。
「それじゃあ、ハーシェ。
すぐに荷造りをしてちょうだい」
「……なんだ?」
「何をぼーっとしているの。朝にはここを立つわ。準備なさい」
「どこへ行くんだ?」
「知らないわ。それこそ、神様のご意志のまま、なのかもね」
もうじき朝を迎える礼拝堂で聖像を見上げている少女の姿に、男は答えた。
「違う。神は、お前だ、ノーラ」