蒼空のシリウス 十七話
最終話まで平日の夜9時に毎日更新します。
(注)カクヨムでも掲載されています。
「あ、東条さん。来たんですね」
何か図面のようなものが記された紙を丸めていくつも抱えているトールが天野の来訪に気付き声を掛けてくる。
「そっか、もうそんな時間か。ここにいるとつい時間が経つのを忘れてしまう。いやはや、若い頃に戻ったみたいですよ」
「そうですか。それは良かったと言えばいいのですかね」
「今の仕事も悪くないのですが、こうして研究に集中していると自分の本分を思い出したように感じる時もあります」
感慨深そうに話をしているトールは近くの机に抱えている荷物を置くと天野に向かって「バドソンさんを呼んできましょうか?」と問い掛けていた。
「そうですね。私達はクラエスさんから完成の目処が立ったと連絡を受けて来たのですから、当人から話を聞いた方が良いでしょう。お願い出来ますか?」
「はい、すぐに。それにしても二十年という時間は馬鹿にできませんね。当時はできなかった作業も今の技術を使えば問題無くすることができるのですから」
などと言いながらトールは手元のタブレット端末を使いクラエスに連絡を取ったようだ。
程なくして研究所の奥の方からクラエスが顔を覗かせて神住たちの姿を確認すると早足で三人の元へとやってきた。
「東条さん。それにお二人も。よく起こしくださいました」
挨拶代わりに握手を交わして他愛もない会話をする天野とクラエス。
神住は興味深そうに研究所の中を見回して、ラナはどこか落ち着かないらしく腕を組んだまま真っ直ぐ視線を固定していた。
「まずは、この度は私達の我が儘を受け入れてくださりありがとうございました」
クラエスのいう我が儘。それは完成の目処が立つまで自分たち以外はこの研究所に立ち入らせないことだった。それがこれまで神住とラナに場所を知らせなかった理由であり、天野でさえここに来たのは彼等を研究所に案内した時以来となる。
しかしそれでは不用心が過ぎるとクラエスたちに了承を得た上でギルドは自分たちが個有する人員を投じてこの建物に二十四時間態勢の見張りは付けていたのだが。
「いえ、それは別に。それよりも完成したというのは本当ですか」
「ええ。思ったよりも時間が掛かってしまって申し訳ない」
「大丈夫です。幸いにも今のところ新たなフェイカーは出現していないので」
「そうですか。世間話は程々にして完成した装置を見てみますか?」
「お願いします」
「ではこちらへ」
クラエスに促され神住たちは研究所の中を進む。
地上にあった廃工場を思えば地下にあるこの研究所はそれよりも何倍も大きい。新造したのではなく元々地下に別の施設があった建物を流用しただけとするのならば、それがどういった施設だったのかなどは神住とラナには知る由もなかった。
「これが例の光学迷彩の装置を無効化するための装置ですか」
天野が目の前の“それ”を見上げながら言う。
研究所の奥。謂わば実験場となるその場所に鎮座しているのは先の戦闘で神住が用いたのとは大きく異なる、小型の電波塔のようなものだった。
「ええ。御影さんが使った装置とは異なり、これは光学迷彩の装置に強制的にエラーを引き起こさせる特殊電波を放射するための装置になります」
「電波ですか」
「御影さんが用いた特殊な金属片や塗料では複製や増産の過程でどうしても物理的なコストが生じます。それに実物を保存して使用するには時間の経過による劣化の怖れもあります。だからこそ私達はこのシステムを作成することにしたのです。とはいえ構想自体は当時からあったのですけどね」
「そうなのですか?」
「ええ。実はそうなんです。尤も実際に作ったわけではなく、開発の合間に自分達の間でこの技術を相手にするときにはどういう手段が有効かと話し合っていただけで、どこかにデータとして残していたわけではないのですが」
「つまり、ジュラ・ベリーが破壊したデータにもそれは載っていなかったと」
「休憩中の私達の会話に出ただけでしたから」
昔を懐かしむように塔を見上げて答えるクラエス。そんな彼の後ろから神住やラナには見慣れない四十歳ほどの男が現われた。油汚れが目立つ作業着を着た穏やかそうな男性だ。
「これは光学迷彩の装置だけに効くのではありません。ホログラム投影に対しても一定の効果が確認されています」
「あなたは?」
関係者ではあるのだろう。しかし知らない相手がいきなり参加しているという事実にラナが訝しむように問い掛けていた。
「僕は西郷康太。以前バドソンさんたちがいた技術開発部隊に在籍した西郷矢貴の息子です。今回は父に代わり僕がお手伝いをさせて頂くことになりました」
「失礼ですが、西郷矢貴さんご本人は来られなかったのですか?」
「流石にもう歳が歳でしたので、細かな作業は無理とのことで僕が代わりに。安心してください、こう見えて僕は父の技術を全て受け継いでいますから」
「そうでしたか」
納得したというようにラナはそれ以上追求することはしなかった。
「そういえば、お二人にはまだお伝えしていなかったですね。残念ながらこの研究と開発には当時の人員全てが参加しているわけじゃないのです。個人的な事情の他にも当時のことはもう思い出したくもない、という人もいましてね。流石に強制できることでもありませんから」
「事情は分かります。それで彼が代わりに参加したということですか」
「ええ。彼は現在とある電気メーカーに勤めていて、そこでジーンの装備開発を行っています。私達よりも余程現在の開発事情に詳しい人物ということですね」
「しかし、ここで作った物に関してはデータを持ち出すことも、技術を流用させることも禁止されているのでは?」
「ええ。そういうことは事前に誓約書にしっかりと書かれてましたね」
「宜しかったのですか? ここで関わらなければいつかご自身の手でかの技術と同様のものを開発できたのかもしれないのに」
神住が抱いた疑問は当然のこと。実際にそれを作るのかどうかと研究することは別のこと。技術者、研究者として既に出ている答えを与えられながら、それに繋がるようには開発も研究もしてはならないというのは殊の外強い制限であるように感じていたのだ。
本当ならば受けなくてもよい制限を自ら受けること受けることを選んだ康太に神住は何気なく訊ねる。
「父がやり残したことですから。それに、この話を受けるに至って父から当時のことは聞いています。ジュラ・ベリーという人がどういった思いでそれを破棄したのか。そして現在何が起こっているのかも」
「事件に関しては私が伝えました」とクラエスが捕捉する。
「襲撃事件のことはニュースで知ってはいましたけど、まさかこのようなことになっていたとは。正直想像もしていませんでした。ただ、事件の遠因に自分の父が関わっていて、それを知ったからには僕だって無関係だという顔をしているわけにはいきませんから」
決意が滲む瞳で電波塔を見上げながら康太が言った。
「康太くんと同じように今回の開発に手を貸してくれている子たちを連れてきたわ」
その後ろに二名の男女を引き連れてステファンがやってきた。
「こちらが当時の技術開発部隊にいたショルト・フレッドの息子さんの…」
「モグル・フレッドです。父は数年前の怪我で片腕が満足に動かせなくなった為に自分が参加することになりました」
白衣を纏い、度のキツそうな眼鏡を掛けた短髪の男性が神住とラナに訝しむような視線を向けながらも手を差し出してきた。
最初にラナが握手と共に名前を告げてから次に神住がそれを握り、自らの名前を告げるとモグルは小さく「あなたが…」と呟いていた。
一瞬モグルに鋭い視線を向ける神住の様子に勘づいたのかステファンがもう一人を紹介してきた。
「そしてこっちが、えっと……シルビア・ベンダリスタさんのお孫さんで」
「ティア・ベンダリスタと言います」
人懐っこそうな笑顔を浮かべて名乗った女性は他の二人に比べても若く見えた。それこそ神住と同年齢くらいだろうか。あるいはもう少し下なのかもしれない。綺麗に整えた黒髪は三つ編みに。着ているのはモグルと同じ白衣だが、その中には作業服のようなものが着込まれている。
身に付けている赤い縁の大きな丸眼鏡が殊更印象を幼くしているティアは神住たちに対して礼節のある態度で最初の挨拶を終えていた。
「ティアさんが参加している経緯は康太くんと似たようなものだったわね」
「ええ」
「はい。お父さんもお母さんも機械関係は全く駄目なんで。アタシがおばあちゃんの代わりに来ました」
「すごく助かっているのよ」
まるで自分の子や孫を見ているかのように暖かな視線を向けているステファン。そんな彼女にモグルは素っ気ない態度を取りながらも邪険にすることはなく、ティアはストレートに好意を受け取って嬉しそうにしていた。
「実験のデータをお送りします」
三人の自己紹介の合間を縫ってクラエスは用意していたデータを天野が持つ端末に転送して、それと同じデータを研究所のモニターに映し出して説明を始めた。
映し出されている映像には電波塔を使った実験の様子も含まれている。
派手な色で塗られている一メートルほどの金属板に施された光学迷彩の装置。その電源を入れることで金属板は瞬く間にその姿を消していた。
ラナの驚く息が聞こえてくる。
神住がクラエスの方を見て変わらない態度で告げる。
「光学迷彩技術は再現することができたのですね」
「一メートルくらいの大きさならば、といったところでしょうか。流石にここの電源ではジーンほどの大きさのものに対して迷彩を施せる装置は作ることはできませんでしたし、そもそも作ること自体が憚れましたからね。ですが、これまで何度も実験に使っていても何も異常は検出されなかったので、装置の規模を大きくすれば実際にジーンにも使えるとは思います」
クラエスが説明していると映像が電波塔の試作機のようなものに切り替わった。
神住たちの目の前にあるものよりも簡素かつ内部が剥き出しの状態のそれに電源が入ることで消えていた金属板の一部に元の色が浮き上がってきたのだ。
続いて更に改良が施された塔が映し出される。外観は先程のそれとあまり変わらないが、よくよく見れば一部の配線や使われている基板等に違いが見受けられる。
塔に電源が入る度に、消えていた金属板はその一部の元の色彩を出現させたことも、反対に消えたままであることもあった。
成否問わず実験を重ねる度にその精度と効果範囲は確実に高まっていく。
何十、何百回に渡る実験を経て、ようやく映像に映し出されている塔の姿が神住たちの前にあるそれと同じになった。
姿を消す金属板に施される光学迷彩の装置は変わっていない。が、これは進歩がないのではなく、これで完成しているということなのだろう。
映像の中にある塔に電源が入る。
目には見えない電波が放出され、姿を消していた金属板が完璧にその姿を現わした。
「ホログラム投影に対しても同様の実験を繰り返しました。結果は成功。俺たちは過去の自分たちが作り出した光学迷彩の装置を破ることに成功したんです」
トールが喜色を織り交ぜながら高々に宣言した。
「これでもう、例の光学迷彩が用いられたとしても対処することは可能になりました。そもそも当時私達が作り出したあの技術は欠陥品もいいところ。決して世に出してはいけない失敗作だったんです」
自嘲混じりに言い放ったクラエスにこの場に居た全ての人の視線が集まる。
ある者は同意の意を込めて。
またある者は驚愕の意を、
そしてある者は――。
「この装置はどうするのですか?」
完成した電波塔を見上げながらラナが問う。
答えたのはクラエスだ。厳しい視線を塔に向けながら、さらに厳しい口調で告げる。
「フェイカーという存在が確認された以上、事件が解決したとはっきりするまでは残すつもりです」
「あなたは捕まったライダーが犯人ではないと思っているのですか?」
その質問はモグルからだった。
モグルがこの開発に参加するに当たって父から聞いていた話では自分たちが過去に作った技術を不正に利用され、襲撃事件が起きたということ。その話を聞いてからモグルが自ら調べた情報では既に犯人と見られるライダーは捕まっており、その切っ掛けになったのがモグルの目の前にいる御影神住という人物であるらしいことも知った。
言うなれば自分たちが行っている研究と開発は過去の後始末。それこそ父親の世代からすればまさに自分たちのやり残しをようやく果たせるようになったようなもの。
そう考えていたからこそ、モグルにはクラエスの言葉が理解出来なかった。
「答えてください!」
思わず声を荒らげてしまったとモグルが後悔する間もなく、クラエスは「そうだ」と答えていた。それからちらりとラナを一瞥して、再びクラエスは口を開く。
「掴まったライダーには光学迷彩の技術を作り出すことはできないでしょう。彼にはそんな知識も技術も無いことは明白です」
確信めいたその一言にラナは息を呑んで俯いてしまう。
微かに震える彼女を見ない振りをして神住はクラエスに問い掛けていた。
「どうしてそれを警察やアルカナ軍に言わなかったのですか?」
「私個人の意見など大して意味を持ちません。それに、軍にはどうも早々に事件を収めてしまいたいと考えているようでしたので。下手に通報しても握り潰されるのが関の山だったはず。違いますか?」
「いえ、確かにクラエスさんが言うとおりです。気付いていたんですね」
天野が肯定して聞き返している。
「事件の収拾を急すぎているように思えましたから、私も独自に調べたのです。その結果、掴まったライダー、ルーク・アービングにはジーンを作り出せるだけの技術がないことが分かりました。そうですよね? ラナ・アービングさん」
「はい」
クラエスが名前を呼ぶと事情を知らない人たちの視線がラナに集まった。彼らの視線に怯む事なく、顔を上げ真っ直ぐに彼等の方を見てラナはしっかりと頷いてみせた。
「では、誰が真犯人なのか。あいにく私はそれを知る術がありませんでした。しかし、こう言っては何ですが、その大まかな正体に心当たりはありました」
まるで告白のようなその一言に神住たちは驚き息を呑んだ。けれどトールとステファンだけは表情を曇らせるのみで、動揺した素振りは見せなかった。
おそるおそるといった様子でラナが問い掛ける。
「それは誰ですか?」
「犯人は間違いなく、我々、元技術開発部隊にいた人物の関係者です」
「お願いします! 貴方が浮かべている人の名前を教えてください! それが弟を助ける唯一の道なんです!」
断言するクラエスにラナが食いかかる。
しかしクラエスは目を伏せたまま決して口を割ろうとはしなかった。
張り詰めた思い空気が流れる研究所の奥の扉が開いた。唯一顔を出さなかったアドルがようやく奥から出て来たのだ。彼もまた他の人たちと同様に煤や油で汚れた作業着を纏い、一際険しい表情を浮かべていた。
「出来たぞ」
アドルが天野にデータが収められたメモリディスクを投げ渡してくる。
「要望通り、絶対に成功しない完成した設計図だ」
「ありがとうございます」
メモリディスクを受け取った天野が素直に礼を述べる。
「それをアルカナ軍に提出すれば再現実験は確実に失敗に終わるだろうよ」
「でも、それだけじゃ駄目なんです」
「クラエスから話は聞いている。おまえさんの弟が捕まっているんだったな」
「はい」
「こう言っては何だが、おまえさんの弟がジーンに乗って襲撃したのは紛れもない事実だろう」
「ですが、それは騙されて、本人もそんな自覚は――」
「自覚が有ろうと無かろうと、しでかしたことは事実だ。それに対してはちゃんとした裁きを受けるべき、違うか?」
「そう、ですね」
「だが、必ず正しく裁かれなければならない。そうだな」
返す言葉も無くラナはただ頷く。
「ですが、彼が実際に襲撃に関わっていたのは最後の一件だけで、他の三件は全て別の人物が犯人であることは間違いありません」
天野が淡々と事実を告げる。するとアドルもまた「だろうな」と肯定の意を表わした。
「おまえさんは言ってたな。コクピットの中にいるライダーにまでホログラムを投影する意味が分からないと」
「まあ、犯人の正体を隠すとかそれらしい理由は想像できますけど、わざわざホログラムを投影する必要は感じられません」
「だが、それが目的の一つだったとしたらどうだ」
「目的ですか?」
「フェイカーが倒された時、誰かがコクピットに乗り込んで来るだろう。その時にライダーがジュラの姿をしていれば、犯人はジュラの関係者なのだと知らしめることができる」
「それに何の意味が?」
「さあな。そればかりは当人じゃないと分からん」
アドルがどかっと近くの椅子に座った。
目を細めモニターに映し出されている実験の様子を見つめる。
「どんな信念でそれをすると決めたのかわしには分からん。だが、本人にはそうするだけの理由があったのだろう」
「……理由、ですか?」
物悲しそうに語るアドルにラナは思わず問い掛けていた。
「誰もが納得していたわけじゃなかったってことだな。こればっかりはわしらの失態だ。そうだろう、クラエスよ」
「ああ。かも知れないな」
「何をしてでもわしらは止めるべきだったんだ。少なくともそれを知った時には」
アドルの視線が神住たちに向けられる。だが、実際にはアドルのそれは神住たちを超えてその向こうにいる人物に向けられていたのだった。
「この開発を行うと決まってからわしらは真っ先におまえさんたちを呼びつけた。何故だかわかるか?」
わからないと首を傾げる康太、モグル、ティアの三名。しかし、彼等を見ているステファンとトールの表情は曇ったままだ。
「おまえさんたちがわしらの系譜で唯一ジーンを扱える技術を持つ者だったからだ」
アドルがそう告げるとすぐに康太が気付いた。
「まさか、アドルさんは僕たちの中に真犯人がいると疑っていたのですか!?」
「可能性の段階だったがな」
「あり得ない」
「――そんなっ」
顔を引き攣らせてそう断言するモグルと言葉を無くして目に涙を溜めているティア。
縋るようにティアがステファンを見るも、ステファンは申し訳なさそうに目を伏せるだけだった。
「ジーンを扱える技術っていっても一つじゃない。例えばジーンを作り出す技術もあれば、整備する技術もある。装備を作り出す技術やライダーとして戦う技術なんてのもな。その全てを一人で賄える奴はいない。言ってしまえば本来はそれぞれのスペシャリストが集まり、それぞれの役割を担うのが普通だ。だが、今回のフェイカーではたった一人の個人に全ての技術が必要になってしまった。とはいえ操縦技術は一朝一夕に身につくもんじゃない。別の誰かに任せた結果がこれだ。最初の一件はまさに光学迷彩に物を言わせて襲撃していただけのように見える」
神住たちの知らぬ間に集めた情報を分析していたようで、アドルは確信を持ってそう言い放った。
「二件目と三件目はその反省を生かしたのか、より腕の良いライダーを用意したみたいだが、おそらくおまえさんの弟のように何も知らされぬまま利用されただけだろうな」
「えっ」
「探せば他にも見つかるだろうよ。おまえさんの弟の供述通り、ただの戦闘シミュレーションをしていたと思い込まされいた可能性が高い。死人も出していないみたいだからな、ライダーにとってはただのバイトの感覚なんだろうよ」
「だとしても」
「そう。だとしてもだ。罪は正しく裁かれるべきだ。わしも長い年月生きていたが、そればっかりは間違いないと言えるよ。その方が罪を犯した当人に対しても救いになるのだからな」
「アドル。君はあの時のことを言っているのですか?」
「ジュラの奴に全てを任せた、任せてしまったのがわしらの罪だ。本来はそれをわしらが全員で背負うべきだったんだ」
「俺たちがこんなことになるまで目を背け続けてきてしまったせいなんだろうね」
アドルの言葉にトールが自戒するように呟いていた。
「だからというわけじゃないが、これはわしらの手でどうにか収めたかった。そしてそれからは法に委ねるつもりだった。だが、だめだな。そう心に誓いながらも、いざとなれば躊躇い、先延ばしにしてしまう。そうして割を食うのはいつだって知らぬ若者だと知っていたはずなのにな」
後悔と自責の念、そして謝罪の意など様々なものが込められた視線がアドルが若者と呼ぶ三人、その先へと向けられる。
「そうは思わんか? なあ、ステファンよ」
作者からのとても大切なお願いです。
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この10ポイントが本当に大きい。
大切です。
製作のモチベーションになります。
なにより作者が喜びます。
繰り返しになりますが、ポイント評価を宜しくお願いします。