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第1話/パワードスーツ

 ガギィッッッ

 炸裂音が洞窟内を木霊した。鈍い反響の出所には、モンスターの猛攻を必死に退ける班員の姿がある。

「おーーい!!ミダさん、ヘルプ頼むゥ!!」

「うす!!」

 ミダはニッコリ微笑んで、首筋のスイッチに触れた。

 獣が目覚める時の様に、ミダのパワードスーツがびりびりと身体を震わせた。



 ――ダンジョンを踏破する冒険者、彼らにはそれぞれ役割がある。中でもとりわけ コックは大変だ。

 ギルド『ラストボス』で料理人を務めるミダの役割は飯炊き(クック)だけじゃない。

「食材調達から移動中の見張り、班員の体調管理、それに加えて……」



 予備戦闘要員、である。



『ダンジョンVS俺』第1話/パワードスーツ



「いやー今日もホントにミダさんのお陰でガッポガポですよ!!」

「全くだ。ウチのコックは優秀だからな」

「ダハハハハハ、もっと褒めてくれてもいいんだぞお前たちィ!!」


 声とは裏腹にミダは真剣な顔で縄を引く力を強めた。

 彼らは現在、配達任務(クエスト)中である。

 現在地は渋谷区N丁目、昔は往来で賑わったこの街だが、今では一般人どころか浮浪者すら好んで寄り付かない。死んだ街だ。

 班員の一人が、足元の黒ビニールを蹴りやると、中からジャラジャラと注射針が零れた。


 しかし人々は渋谷を訪れるのではない。

 渋谷の奥にある新宿を目指すのだ。



『ダンジョン災害』

 それは街を、人を押しつぶし、迷宮が土地を飲み込む現代の災害だ。

 小さなモノだと犬小屋サイズから、大きいモノだと学校の1つや2つが被害にあう。

 しかし中でも、過去に新宿を襲ったものは世界でも最大級であった。

 なんせ新宿区を中心に近隣の区までもがまるまるダンジョンと化したのだから、壮大なものだ。


 東京の中心に大きい穴が空いたようなものだ。


 既に何度か国単位の討伐隊が組まれたが、どれも失敗に終わっている。

 今ではこの街を訪れる人間と言えば、個人単位で報酬目当てにダンジョンへ潜る命知らずだけだ。


 しかしならば一体、こんな"キケン"な場所に一体何を届けると言うのだろうか。


 そんな彼らの疑問に答えるように、

「ミダ君には既に言ってあると思うんだけど、今回の積み荷はパワードスーツだよ」


 彼らが振り返ると、荷台から一人の女性が小さく身を乗り出していた。

 彼女が青い瞳を細めると、白髪が肩辺りで風に揺れた。


 彼女こそ今回の依頼主の『パーン』である。


 ゴクリ。

 彼らは彼女の美しさに思わず唾をのみ、少し視線を下して納得顔になる。

「パワードスーツ……」

「あぁ、道理で……」


 パーンには右腕が無かった。


 そこで班員らは改めて思い出す。

 この街こそ新宿にある世界最大級のダンジョン、その"手前"にあることを、


 今回は直接モンスターと戦闘するわけでこそないが、気を抜いて良い訳が無いのだ。

 班員の表情がミダと同様に引き締まる。


 とは言え既に難所も乗り越えており、このタイミングで彼らはトラックに乗り換える事が出来た。

 序盤にペースを上げたお陰で、予定の半分の時間で目的地へと辿り着きつつあった。

「ふぅ、もうすぐだな」


 順調すぎて怖いくらいだった。

 そこで突然、助手席の班員がドライバーを制止した。

「変だな……」

「なにがです?」

 後部座席からミダとパーンが不思議そうに顔を覗かせる。

 フロントガラスにはいつもと同じ、渋谷の景色が佇んでいた。


 埃を被った安ビル、幅の広い道路に、捨てられた路駐車。

 外にはふらふらと歩くダンジョン帰りであろうハンターらの姿もある。

 右方ではキラキラと、壊れた居酒屋のネオンが輝いている。


「あれ、でもここって左折のみだったよな……」

 ミダの声に、他の班員らも顔色を変える。彼の言葉の通り、

 左折が右折に、居酒屋の位置も真逆、そして看板の文字までも逆さに。そう、街が全て反転していた。


  ダンジョンが生まれる前触れには、現実では考えられない異常現象が起こる。

 これらをハンター用語では「余震」ともいう。

 現在の状況はまさにそれだった。


外を歩く他のハンターらもミダ達と同様のリアクションで、既に各々でパワードスーツを起動させていた。

 それに新宿を訪れる上位ランカーは伊達じゃないらしく、ミダ達でも知ってる顔が何人か見られる。

「おい、あれギルド豊橋の副官じゃねぇか」

「マジだ。すっげ」

短髪と長髪の男の二人組を指差して、騒いでる班員も居た。



「おい、始まるぞ」

 前方では赤い結晶が輝きだす。ダンジョンのコアだ。

 通常なら迷宮を踏破しつつ、ボスのコアを破壊すると言う手順なのだが、今回は現在地にダンジョン最奥部が生成されたらしい。


 ジュワジュワと泡のように気泡が集まり、人間の上半身の様な肉塊を形成してゆく。

 瞳のない鼻と口だけの顔面からは二対の腕が伸び、本来目となる場所から更に頭部を持つ四腕の異形が誕生した。

 ぽろぽろと垂れる鱗の様な肌が道路を溶かす。


 化け物の産声と、ハンターらが武器を抜く音、どちらが先だったかは分からない。

 いきなりラスボス戦だった。

初投稿です(n回目)

初のダンジョンものなので、がんがんオリジナルの設定でやってきたいと思います。

是非ブクマを押して続きを読んでやってください

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