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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

俺は俺が一生許せない

作者:

『召喚された私は魔法の国で王弟殿下に蜂蜜のように甘く溺愛される』のもう1つの話~



残酷な描写があります。ご注意ください。

 

 俺は俺が一生許せない。



 これはある小さな国で起きたできごとの話。


 小さな国であるアルト王国は女神様がとある1組の夫婦に加護を与え魔力を与えたのが起源だとされている。




 俺はそのアルト王国で騎士団に入るため、小さいころから剣や魔法の鍛練を懸命にしてきた。


 子どものころから一緒に過ごしてきたのは幼なじみのリン。リンは少し大人びた話し方をしたり、勉強ばかりして俺とは180度違う生活をしていた。


 そんな俺たちだが仲は良く、始めは幼なじみとしてだったけれど、だんだん穏やかに惹かれあっていったと思う。


 リンはとてもかわいらしい顔でとにかくよくモテていた。俺は嫉妬をすることもあったが、16歳で結婚を申し込んだときに「遅いよ!待ってたよ!」とOKをもらってからは堂々と回りの言い寄っていた男たちを蹴散らした。リンからは俺の方がモテていたから心配だったと言われたが、リン以外の女性は興味がなかったからよく分からなかった。


 17歳で結婚をしたが、18歳までは学園に通わなくてはいけないので、お互いの就職のためにリンは勉強、俺は剣術や武道などに励んだ。


 卒業して念願の騎士団に入り、リンは書記官になった。


 学校を卒業して、一緒に暮らすようになってから4年。

 俺もやっと一通りの仕事ができるようになり、お互いに忙しくはしていたが、互いのことを思いやり、穏やかで幸せな毎日が過ぎていった。



 そんな俺たちに、ついにあの日がきてしまった。幸せが毎日続くと思っていた。



「リンどうしたの?」

「ん?いつの間にか寝てたみたい」

「疲れてたんだよ。今日は俺がご飯作るから休んでて」

「リューンありがとう」



 1週間ほど、リンが疲れたようによくうたた寝をしている。仕事が忙しいのか、体調がよくないのか、リンは大丈夫だというばかりで俺は心配をしていた。

 俺は頼りないのだろうか。リンのためにできることを探して俺なりに精一杯がんばることにした。



「リン仕事の時間だよー」

「待ってー!もう支度終わるからー!」

「手伝おうか?」

「大丈夫!あとバッグ持つだけ!リューン、お待たせ」

「じゃ、行こっか」


 朝のいつもの情景で、家から城まではいつも散歩しながら、手を繋いで出勤していた。外を歩いていると、あの花が咲いたねとか、あのお店がオープンしたねとか、変化を毎日楽しんだ。

 城に着くとお互いに励まし合ってからわかれる。


「今日も書記官がんばるんだよ」

「リューンも騎士様がんばってね」


 顔を見合わせてお互いにふふっと笑う。

 このときのふわっとした笑顔は俺にしか見せない笑顔だと知っている。


「帰りは迎えに行くから待ってて」

「あら、今日は早いの?」

「その予定だよ」

「それなら帰りにこの前のお店で食べて帰りたいわ」

「あぁ、おいしかったね。分かった!帰りに寄ろう」

「楽しみにしてる」


 今日は残業もないし、久しぶりにリンと外食だ。リンのご飯はとてもおいしく(俺の料理はイマイチ)あまり外食は行かなかったけれど、外食もデートみたいで俺は好きだった。


 それなのに、その日は通り魔が出て被害者が5人も出ていた。騎士団が捜索にあたり、捜索をしてない騎士は城内の警備となったため帰りは遅くなりそうだった。俺は急いで伝言をリンに出した。



『すまない。残業になってしまった。先に帰って家で待っててくれ、リューン』


 日勤で働いたあとの遅くまでの残業は辛い。明け方になって、夜勤組が捜索から一旦帰ってきたころに、城内警備を任されていた日勤組みは帰宅を許された。3時間ほどの休憩時間ではあったけれど、リンが心配でもあるし、どうしても帰りたくなって短時間だが帰宅することにした。

 

「リューンさん、勤務表がまだ出てないですよ。昨日までだったんですけど…」


 後輩が寝不足な顔で声をかけてきた。


「あ、うちにある…。悪い!あとで持ってくる」

「いいですよ。取りに伺います。俺もうちに今から寄るところでしたから」

「すまんな」


 うっかりしていた。これを出しておかないと、上官から何を言われるかわからない。

 足早に帰った。


 まだ明け方だし、寝てるかな。

 俺は静かに玄関を開け、勤務表を取りに部屋に入って異変に気づいた。


「リン!リン!どうした!?何があった!」


 俺の異変に気がついたからか、後輩が飛んできた。部屋の様子を見ると「お医者さんを呼んできます」と言って駆け出して行った。


 部屋の中は散乱していたわけではなかった。食事をしたあとがあり、テーブルのセッティング的に俺のを誰かが食べたという感じだった。


 リンは腰あたりをナイフで刺され、ナイフが刺さったまま血を流していた。心音を聞くと、小さいながらも動いていて、早く早くリンを助けてくれ!と強く祈った。



「リン!リン!目を覚ましてくれ」

「リューンさん、お医者さんがきました」

「先生!リンが!!」


「これは……。

 リューン、よく聞け。

 残念だが、リンは助からない。出血の量が多すぎる。通常この量の血液が流れたら即死なんだ。

 ナイフが刺さったままだから長い時間ゆっくり失血していったんだろう。だからまだかろうじて息はある。傷は塞いでおくが失った血は戻せない。すまない。

 こう言ってはなんだが、リンはお前が帰るのをがんばって待ってたんだな」


 先生が処置しながら話しているが何を言ってるのかわからない。リンの心臓は動いてるじゃないか。リンはまだ暖かいじゃないか。

 処置が終わり俺はリンを抱き寄せた。


「リン、リン、目を覚まして。お願いだから起きて。リン、リン」



 リンの目がそっと開いた。弱々しいけれど、俺の目を見てくれている。


「リン!待たせてごめん。ただいま」

「ご……め…」

「謝らないで。リン愛してる」

「リュ…あ……い…し……て……る…」



 だんだんリンの目が虚ろになり、目の焦点が合わなくなってきた。



「リン、昨日食べに行こうって言ってたよね。元気になったら一緒に行こう。デートもいっぱいしよう。これからおじいさんになってもおばあさんになっても一緒に笑ってすごそう。だから、だから…」

「リュ……あ…り…が……。」


「リン!リン!」




 リンの目がゆっくりと閉じられ、リンの呼吸が止まり、リンの体は全く動かなくなった。


「リューン、リンを助けてやれずすまない」


 先生が俺の肩に手を置いたが、先生の言葉は耳に入らなかった。



 リンが死んだ?ウソだろ。まだまだやりたいことも、やってあげたいことも、いっぱいいっぱいあった。


 俺の帰りが遅かったからリンは襲われ、俺の帰りが遅かったからリンは助からなかった。



 俺のせいだ。


 



 どれくらいの時が経ったのかは分からないけど、気がついたら俺は病院で拘束されていた。


「目が覚めたか?」

「先生、俺はなぜ拘束されている?」

「覚えてないのか?」

「なにを?」

「何度も自殺未遂を起こすから騎士団の方から病院預かりになった」

「俺が自殺…未遂…?」


 自殺未遂を起こす?


「あ……あ……う、あぁーーーー」




 俺はこのとき狂っていったんだと思う。


 でもふとある時、急に前世を思い出した。長い長い夢を見たのだ。

 初めは違和感があったが、だんだん前世のことだと認識してからは急速に思い出した。


「あぁ、俺とリンは魂が繋がってたのだな。女神様、繋げてくださってありがとうございます。これで安心して逝ける。来世ではリンをひとりで逝かせたりしない」



 俺は誰にも言ってないが実は魔力が高い。水の属性があり氷を自在に作ることができる。

 リンが死んでしまった今、この世に未練は全くない。


 拘束され身動きが取れないため、氷をナイフのように細くし、自分の胸に刺すように飛ばした。


「か、は、……」




 

 リンに会えることだけを願って……






このお話は「召喚された私は魔法の国で王弟殿下に蜂蜜のように甘く溺愛される」 の主人公アリスが知らなかったエピローグ的なお話です。合わせてこちらもどうぞ。https://ncode.syosetu.com/n6370gp/


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