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わたしと薬と水色の魔法  作者: 結城コウ
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チアキ編 4-1

「は、はぁ……何というか……」

「……お人好し?」

「ミント、そういう事を直接言うんじゃないの」

エルフの姉妹に事情を伝えるとそう言われてしまった。

「あはは……自分でもそう思う」

「まぁ、でも、そんな人でもなかったら、自分達を助けてはくれない、か」

そう言ってライムは微笑んだ。

その表情がまるで、一枚の絵画のような、芸術作品のようで思わず息を飲んだ。

「ありがとう、ご主人様(マスター)。助けてくれて」

「いいよ。お礼なんて……まだ、ちゃんと助けられたとは言えないし」

「ああ、あのスカイって人の手伝いをしないといけないんだっけ」

「うん、多分そっちは暫く頼りきりになると思うけど……」

「それくらいは、ね。あのまま売られてるよりは、マシなんだろうし……ミントもいいよね?」

「……うん」


それから一週間は研修期間だった。

接客の事をアイリスさんに、薬の事を彼に教わり、徹底的にお店の事を叩き込まれた。

そして、わたし達がそれなりに様になってきた事と、薬の安定供給のめどが立ったので一日の休みを挟んでオープンという事になった。

「まぁ、一通り教えた訳だけど、それぞれの適正がわかったから、それぞれに担当を振り分ける事にするよ」

実践はまだだが、大体の仕事は覚えたつもりだ。

ただ、それぞれに得手不得手がはっきりしていた事もあり、彼はそう提案した。

「まず、チアキには商品の陳列や清掃を担当してもらうよ」

「はい」

此方のマナーに不安がある身としてはお客さんよりも、商品に触れる役割がいいと言う事だろう。

「ライムには直接的な接客を任せるよ。時間が空いた時はチアキのフォローで見栄えのいい陳列をしておいてくれ」

「わかりました」

ライムは何というか、猫かぶりが凄く上手い。

それはつまり、接客の上手さにも反映されている。

というか、この三人の事を考えると消去法でもライムしか接客の選択に入らないのだが。

「ミントはレジだな。一応、僕やアイリスも管理に回るけど、触る機会はライムが一番多くなる。責任は大きくなるが頼むよ」

「……了解、しました」

ミントは人見知りしてしまう為、接客には向かない。

それでも、レジを任せられるのは計算が早く、また梱包・袋詰めが上手い。

少し前に聞いてみたところ、物体の構造を見て、パズルのように考え、組み立てるだけ、だそうだ。構造とは形だけではなく、脆さ――つまりは潰れ易い物、割れやすい物、漏れやすい物なども含まれるらしく、無口だけど頭がいい子なのだとわかった。

「僕とアイリスは店の状況を見てヘルプに入る形になる。アイリスは各々の休憩に合わせて出てくる事になるだろう。逆に僕はよっぽど忙しい時とトラブル以外では店には出ないと思う」

何か質問は?と彼は問いかけるが、わたしは特に何も思い浮かばなかった。

「……スカイ様?」

手を挙げたのはミントだった。

「だから、様とまで言わなくていいのに……何だい、ミント」

彼は、二人の主人ではないからと、二人に“様”と呼ばれるのを断っていた。

「スカイさ、んやアイリスさんはどういう……ポジションだと思えばいいんで、しょうか?」

「ポジション?役職という事かい?」

「はい、明確にしておいたほうが、やりやすい、です」

「成る程。僕はオーナー兼店長となる。薬の製造も担うから担当薬師でもあるね。アイリスは……リーダー、チーフそういう役割になるかな。僕がいない時の責任者だと思ってくれればいいよ」

「シアンさんは……?」

「ん……まぁ、シアンも責任者と考えてもいいかも知れないが……まぁ、余程の事が無ければ僕かアイリスが居るし、何より彼女を前に出したくない」

シアンさんは元々魔導士の娘という事もあって、魔法に対する造詣が深い。

そして、シアンさん自身も自分が何もしない事を嫌い、薬の製造を手伝っている。

薬の製造者という意味では確かにシアンさんは責任者だった。

「まぁ、そんな感じかな。他には?」

今度は誰も手を挙げなかった。

「はい。じゃあ、解散」

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