ライム編 3
その光は暖かかった。
そして、その光の中心には、立てるような傷ではなかったはずのあの人が立っていた。
「……」
「これは……回復魔法の奔流か」
仮面の男が事実だけを述べる。
そして、光が晴れるとシアンさんとアイリスさんがこの場からいなくなっていた。
「……くっ、二人が、限界だったか」
「そうか」
仮面の男は合点がいったように頷いた。
「あれを目くらましに逃げるつもりだったか、やってくれた」
そう言う男の声は落胆しているとは思えなかった、
「だが、貴様が残っているのならそれでいい」
「……?オマエ、まさか」
あの人が何かに気付く、だが、男はその先を与えようとはしなかった。
「っ!」
咄嗟にあの人がナイフで男のナイフを受け止めた。
「口にする必要はない。貴様はここで死ね」
男が自由な方の右手で何かを仕掛けようとして、その場を跳んだ。
「くっ!?」
男を背後から斬りかかろうとしたフィーナさんが虚空を空振る、それと同時にその背に男の蹴りが見舞われた。
「あぐっ!?」
フィーナさんが床に叩きつけられる。
動作が少し鈍く感じるのは怪我か、鎧が砕けたせいか。
「ちっ。さっきの魔法はコイツの回復も狙っていたか」
「……」
あの人は不用意に仕掛けず、その場で男を牽制するように睨みつけていた。
「余計な真似はよせ、元聖騎士だろう、貴様」
「!?」
「その太刀筋を見ればわかる。今の不意打ちも馬鹿正直過ぎて、真っ向からからしか戦った事がない、正道の聖騎士だったろ、貴様」
「お、お前は……」
何だろう、この違和感……
「身を落とした理由は知らないが、わざわざ教会と対立している魔導士の為に命を張って死ぬのはやめておけ」
この男はなんで、急におしゃべりに……?
「わ、ワタシは……ワタシの正義で、戦う……!」
「……そうか。なら、貴様も死ね」
シアンさんが出てきた辺りから……いや、そもそも、まるで初めから手加減しているような……誰もまだ死んでいないのは……
「……フィーナ、悪いがこれも契約だ。命をくれ」
「!!」
その言葉に場が凍りついた。
だけど、それは妥当で正確な判断だと思えた。
「……わかりました。それくらいの役に立てなければ、意味がない」
フィーナさんの表情はあたし達からは見えない。
「ああ、僕以外の全員をここから逃がせ。その為にいざという時は盾になってくれ」
――!?
「な……魔導士殿!?」
あ、あの馬鹿、どうして……
「……そうか、いい覚悟だ」
何をするつもり!?
「……何をしているんだ、早く逃げろ!」
ああ、もう!
あたしはその言葉を無視した。




