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わたしと薬と水色の魔法  作者: 結城コウ
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アイリス編 1

一瞬の早業、という言葉では余りにチープだった。

敵は消えたかと思うと騎士(フィーナ)を倒していた。

傍から見た私でもそのような認識なのだから、当の騎士は理解が追い付かないまま、倒されたような認識だろう。

「あ……」

姉エルフ(ライム)の恐怖が漏れる。

彼女も気付いたのだろう。

ここに居る事自体が命を捨てた事と同義だ。

命の存続権はもはや敵が握っていると考えていい。

だが、それでも敵に立ち向かっていった存在があった。

それはスカイ様が作り出した影だった。

だが、スカイ様自身の影以外は倒された騎士にも及ばない影が二、三体群がったところで敵にかなうはずもなく、ほぼ同時に影は倒され、消えてしまった。

そこで、己の失態に気付く、今の一瞬だけがこの場から逃走する好機だったのだと。

100%逃げられるとは思わない。

ただ、影の対処をしている間に逃走を試みる事が出来た。

「そんな、事……」

でも、それは出来ない。

可能か不可能かという問題ではなく、この店の奥にはスカイ様とお嬢(シアン)様が居るのだ。

「……」

仮面でわからないが、敵が此方を見たような気がした。

私にも多少なり魔法と格闘の心得はある。

勿論、その程度で騎士を倒した敵をどうにか出来るとは思わない。

それでも、何でもいい。

かすり傷でも付ける事が出来たなら、死んだとしてもスカイ様をほんの僅かでも助ける事が出来たなら、それで構わない。

だから――私は拳を構えた。

「――ファイアっ!」

敵に向けて火の弾を撃つ。

敵は一歩横にずれる事で難なく(かわ)す。

そこに向けて私は突っ込む。

瞬間、世界がスローモーションで映し出された。

「――」

一歩目――

全速で突っ込んだはずなのに余りの遅さに自分でも呆れてしまった。

二歩目――

敵は此方を見たまま動かない。

三歩目――

先程の火魔法の応用で右手に炎を纏わせる――敵は動かない、動こうとしない。

四歩目――

おかしい、敵の実力では私は当に細切れになっていてもおかしくない。

五歩目――

遂に辿り着く、そして敵に渾身の一撃を――

「――――――――――」

ぐるん、と世界が流されていく。

そして、私は商品棚に叩きつけられていた。

「がはっ!」

気を失いかける。

だけど、まだだ。

私は仕込みナイフを持っている。

せめて、それを投げられれば或るいは――

「……あ?」

無い。

無いないナイ無いナいなイ無イ亡い無いナイない――どうして!!

「……」

敵はナイフを手元で遊ばせている。

待て――そのナイフは私の物だ。

「あ」

敵は此方に肘を見せていた。

その動作はつまり、私を投げナイフで――


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