スカーレット編 2-5
ワタシは魔導士に連れられ、彼の店に着いた。
前に出した看板だと、まだ営業時間内だったというのに、店仕舞いをしているようだった。
ひとまず、ワタシは荷物を床に置くと、鎧を入れていた袋口のゴムが切れてしまっていた。
みっともなかったので、切れたゴムは回収した。
「もしかして、また売り切れなのか?」
「はい、スカイ様が用意した薬はほぼ全て売れました」
「そうか……わかった。ところで、飯の用意はどうなっている?」
「今日もシアン様がどうしてもと……連日で、そういう訳にはいけませんので、他の方は手伝いに行かせました。」
「それで、アイリス一人で片付けを?」
「はい、流石にスカイ様不在の中で店を離れる訳にはいきませんので」
「わかった。手伝うよ。スカーレット……さんはそこで少し休んでいて貰えるかな」
「え、ええ」
「おや、其方の方が?」
「ああ、そうだよ。スカーレットさん、ウチのメイドのアイリスだ」
「お見知りおきを、スカーレット様」
「宜しくお願いします。ヒイロ……いえ、フィーナ=スカーレットです」
「はい、宜しくお願いします。スカーレット……?その名、何処かで……」
「それは……」
「その事はみんなが集まった時にでも話すさ」
そう言って、魔導士――殿は近場の物から片付けを始めた。
「スカイ様、そのような事は任せて下さい」
「手伝うと言ったろう?」
「いえ、スカイ様はこの後も薬の製造に向かわれるのでしょう?ただでさえお疲れのスカイ様の手を煩わせては、シアン様に叱られます」
「シアンはそんな事では怒らないよ……」
魔導士殿という人間を見極めると言ったが、このやり取りだけでも人柄が見えた気がした。




