チアキ編 4-7
翌日、オープン初日。
彼曰く「まぁ、宣伝は頑張ったけど、街の外れ、山の近くだし、3~50人くらいでも来てくれたら御の字かな」との事だったが……
「は、はい!あ……其方の商品はもう売り切れになります……」
「えっと、薬のご予約ですか?えっと、スカイさ……店長、来て下さい!」
「お待ち頂いて!はい、では此方の方にサインを……」
「……そのような症状でしたら、此方のお薬が宜しいかと」
「ありがとう、ございました……いらっしゃい、ませ」
大盛況の内に在庫切れ多数により、閉店時間3時間前に店仕舞いとなった。
「あー……疲れたぁ……」
事前に担当を割り振ってはいたものの、それでは対応仕切れず、わたし・彼・ライム・アイリスさんの四人でお客の対応に追われた。
わたしはアルバイトで店員の経験もあったのだが、一番の繁盛期以上の盛況を見せていた。
「お疲れ様です」
シアンさんがハーブティーを淹れて、わたし達の前に置いていった。
「シアン様!?お茶でしたら、淹れますのに」
「アイリスもお疲れでしょう?」
「だったら、僕が淹れるさ」
「もう、兄様こそ一番動いてたではないですか」
それだけ、盛況状態であっても、むしろだからこそだろう。
彼はシアンさんを店には出さなかった。
「お店に出れないのですから、家事くらいは致します。これでは身体がなまってしまいます」
「しかし……」
「兄様は過保護すぎます。少しは身体を動かさないと、病以前に身体が弱ってしまいます」
「……だが、シアンには立場が」
「当主である兄様がお茶を淹れられる事の方がおかしいのでは?」
「その当主の方針には従って欲しいんだけど」
「従いますよ。でも、こんな日くらいはいいでしょう?」
「……」
彼は諦めたように目を瞑った。
「……おいしい」
「ミントさんも今日は頑張りましたね。あの人数の会計をこなしてしまうなんて」
確かにそれは凄い事だ。
店員の経験があるからこそ、レジを一人で大量にこなす事は大変だとわかる。
予備のレジがあるにはあるが、他の店員は其方には回れない程に対応に追われていた。
「ミントだけじゃなく、皆よく頑張ってくれたね。今日だけで、月間の目標額を達成してしまったよ」
「凄い!でも、あれだけお客さん来ましたからね。当たり前と言えば当たり前かも」
「喜ばしい事だけど、大変な事でもある。明日も店を開ける為には今から薬を作らないと」
前述の通り、薬の殆どの在庫がない。
「間に合うのですか?」
「間に合わせるさ」
「シアンも手伝います」
「いや、徹夜仕事になるから駄目だよ」
「なら、尚の事です」
「……言うと思ったよ。なら、途中までは手伝ってくれ。その後は僕の判断で休ませる」
「その後は兄様お一人で作られるつもりですか?」
「そうだよ」
「兄様こそ、お身体を大事になさって下さい」
「この程度の事は問題ない。まぁ、明日は店には出られないけど……そういう訳だから、アイリス、明日は任せる」
「畏まりました」
「さて、夕飯にしようか」




