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わたしと薬と水色の魔法  作者: 結城コウ
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チアキ編 4-6

買い物を終えて、何時ぞやの広場に来ていた。

買った物は彼が初めて会った時の怪物にしたように瓶の中に仕舞った。

「スカイさ……ん?あのような物を買ってどうするのですか?」

「ああ、中々面白い仕組みをしていたからね。少し手を加えれば、面白いものが出来ると思ってさ」

「面白い仕組み?パティさんって大工さんですよね?スカイさんがそうもいう魔法があるんですか?」

「いや、魔法というより……設計かな、帰って幾つかバラしてみたくなったんだ」

「職人ならでは、の、発想?」

「そういう事さ」

彼はそこで足を止めた。

「休憩していこう」

彼はお菓子か何かを売っている露店を指差した。


わたし達の世界で言うところのそれはアイスクリームだった。

「こっちでは、シェイブっていうんだ」

「……聞いた事ある。どういう意味だったっけ」

「え、この食べ物の事でしょう?」

「そうじゃなくて、元の世界で聞いた事あるなぁ、って」

というより、使われている単語に聞き覚えのある物が多い、

「ふむ、興味深いね」

彼はいつの間にかそのシェイブを食べ終わっていた。

「どういう事ですか?」

「君が毎日飲んでいる翻訳の薬は異世界の人間にも効果がある事は実証されてある。他でもない君自身によって」

「え、ええ」

「とは言え、わからない部分もある。翻訳がどこまで活きているのか、例えば固有名詞なんかはどうなっているのか」

「固有名詞?あ……!」

人の名前、物の名前……それら全てに聞き覚えがあった。

「そうだ。シェイブ……シェイブアイス、かき氷だ」

「ん?どういう事かな?」

「それだけ、じゃない。人の名前……ここで聞いた名前……色、ばっかり?」

「どう、したの?マスター……」

「あ……いえ」

でも、その事に何の意味があるのだろう?

「察するに、君はここで聞いた名称に聞き覚えがあるものが多いって事かい?」

「は、はい……」

「だけど、それも翻訳が掛かってる可能性がある。聞き覚えがあるのは翻訳された言葉だからではないのかい?」

「そうかも知れません。でも、それなら日本語に変換されるんじゃないでしょうか?わたしが聞いた名称は……英語、なのかな?」

「英語……確か、君にとっては異国語だったね」

「はい」

「となると……興味深い、でも残念ながらそうなると僕の専門外だな」

「え?」

「言語学者辺りに持っていけば、いい研究対象になるかも知れない、ってところさ。僕では、その疑問は答えられそうにないなぁ」

「そ、そうですか」

「とは言え、覚えておいた方がいいかも知れないね。わからないとしても……いや、だからこそ意味のない事とは断定出来ない」

「は、はぁ……」

「さて、チアキが食べ終われば帰るか」

「え?」

気が付けば、ライムもミントもシェイブを食べ終わっていた。

「あっ」

わたしだけが今にも溶けてコーンから落ちそうなシェイブを持っていた。

「別に急ぐ必要はないよ、こっちはね」

シェイブが溶けるのは待ってくれないという事だ。

わたしはかなり柔らかくなったシェイブにかぶりついた。

「――――!!」

頭が痛くなった。

「ところで、ライムとミントはこの街を歩いてみてどうだった?」

「そうですね、馬車から見た事しかなかったので、都会を歩くのは新鮮です」

読書感想文のようだ、と感じた。

やはり、ライムはまだ彼に心を開いていないようだ。

「建物、いっぱいで、凄い」

「成る程、この広場はどうだい?」

「賑やかな所ですね」

「大きな噴水、凄い」

「うん、実はここが街の中心なんだ。だから、目印代わりにあの噴水がある」

「街のシンボル、という事ですか?」

「大々的に(うた)ってる訳じゃないけど、この街の観光名所らしいし、そういう認識でいいと思うよ」

「だから、こんなに人、いるの?」

「ああ、ここが一番、人が集まるからね。だから、さっきみたいな露店もあるし、店の休日とはずらしてあるけど、国民の休日には大道芸人なんかも来るんだ。だから、掲示板なんてものも……」

彼の視線の先には掲示板があった。

そこには現場仕事を終えた風な肉体労働者が掲示板を見ていた。

屈強な男性が多かったが、中には女性も混じっていて、特に赤い髪を後ろに結っている女性は肉体労働の後にしては小奇麗に見えた。

「そうか、日雇い労働者か……」

「どうしたの?」

「ああ、いや、すまない、栄養剤が売れそうだなって思ってね。宣伝は、やってるつもりだけど、そういう告知もしておけば、あの人達も来てくれるかも知れないだろ?」

「仕事熱心ですね、スカイさんは」

「まぁ、色々賭けてるからね。むしろ、今まで気付けなかった事が情けないよ」

「……あにょ人達は、仕事を探してりゅんでしゅか?」

わたしは最後の一口を頬張りながら、そう言っていた。

「行儀が悪いよ、チアキ」

「ごくっ……ごめんなさい、でも気になって」

気になる理由の大半は赤髪の女性だった。

「まぁ、そうだね。掲示板には仕事の募集もあるから、今見てる人達は明日の仕事を探しているのが殆どだろう」

「そうなんですか、仕事って肉体労働だけなんですか?」

「全部が全部って訳じゃないだろうけど、殆どはそうだね、興味あるのかい?」

「あ、いえ……何となく」

「まぁ、日雇いと言ってもそれだけで生計を立てる人も居たら、小遣い稼ぎの人もいる、収入を余分に稼ぎたいっていうのなら止めはしないけど……多分、向いてないんじゃないか?」

「き、気になっただけですよ」

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