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わたしと薬と水色の魔法  作者: 結城コウ
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チアキ編 4-4

彼に連れられ入った雑貨屋は彼の言うように様々な物が置かれていた。

生活用品……家具や金物、消耗品といったものや、装飾品、嗜好品、よくわからない装置、何かの部品、果ては飲食物まで雑貨というカテゴリーにおさめるのは少々乱暴な気がした。

「いるかい?」

「おや、これはブルーの坊ちゃ……今はご当主でしたか」

「どこに行ってもそう言われるよ」

店の奥から出てきたのは中年男性。

一言で言えば小太りで髪と髭が繋がってライオンのようになっている。

「これは失敬。おや、お連れ様ですかい?」

「ああ、ウチの店員だよ」

彼に視線を投げかけられて、察した。

「あ、灰た……じゃなくて、チアキ=ハイタニです」

「ライム=グリーンです」

「ミント……グリーン」

「これはどうも。あっしはダスク=ラスクと言います」

彼はそれを見届けると店の奥の方を気にした。

「ダスク、パティはいないのか?」

「いえ……」

「おや、アタシをお呼びかい?」

そう言って、商品の隙間から現れたのは、バンダナを巻いた長い髪のグラマラスな女性、バンダナの間からウサギのような長い耳が生えている。ボロいTシャツとサスペンダーに腰にサーベルのように(のこぎり)を下げていて、まるでその姿は女海賊の様だった。

「ああ、いたのか。じゃあ、この三人に服を何着か見てやってくれないか?」

「おや、工作の依頼かと思ったら、服かい?」

「ああ、パティならこの店の商品の事は知ってるだろ?」

「それはそうだけど、アタシに任せるのかい?いつものメイドさんはどうしたんだ?」

「今日は休養日だ。他に任せられるのはパティしかいない」

「ふーん……まぁ、やれって言うならやってやるよ。ついて来な、おチビちゃん達」

「お、おチビ……」

わたし達は面食らいつつもパティさんに従い、着いていく事にした。

「ああ、ライムとミントにはよそ行き……正装の類いも頼む」

「あいよー」


「ふん、こんなもんか」

別室に連れられ、下着姿にされたかと思うと各々のサイズを測られた。

測られたのは3サイズに留まらず股下や腕の長さ等様々な部位を念入りに測られてしまった。

「あ、あの……ここまで測る必要はあったんでしょうか?」

そう言ったのはライムだった。

「あん?まぁ、これはアタシの性分であり、職業病みたいなもんさ。気にしなくてもいいやつ選んでやるよ」

「性分って……職業病?」

「パティ……もしかして、大工さん?」

わたしの疑問の答えをミントが示していた。

「ああ、そうだよ。全部の長さを知っておかないと作れないからね」

「は、はぁ……」

この世界では違うのかも知れないが、大工と言っても服は作らないはず。

「よし、じゃあ、アンタらに合った服を持ってきてやるから、好きなのを選びな」


服を選んでいる間、彼とダスク氏は談笑していたようだった。

「しかし、店員ですか?えらく珍しい人選に見えますが」

「成り行きだよ」

「エルフが二人に……あの子は異国人ですかい?」

「まぁ、そんなところさ」

「失礼は承知ですが、店は大丈夫なんですかい?」

「明日オープンする。研修では行けそうだったから何とかなるさ」

「はぁ……そうですか」

わたし達はパティさんに連れられ、彼の元に戻ってきた。

お金を出すのは彼という事もあり、選んだ服の中で一着づつ着て来る事になった。

「ほら、どうだい?」

「お、お待たせしました」

「へぇ……いいんじゃないか?」

普段着と言ってもTシャツやデニムではなく、着心地のいい素材で作られたカッターシャツのようなものとスカート。

わたし達はそれを自分の好みやセンスで上下を組み合わせていた。

「随分、あっさりした感想だね。他の服は見ないのかい?」

「君が見て、彼女達が自分の好きなものを選んだのなら十分だよ」

「なんだい、そりゃ……ま、アタシは代金が貰えるなら構わないけど……」

「……けど?」

「この子らにもっと何か言う事はないのかい?」

「……ああ」

彼はわたし達三人を一人づつじっくり見ていった。

「よく似合ってるよ。みんな」

表裏のない笑顔でそんな事を言うものだから、思わずこっちが恥ずかしくなってしまった。

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