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鈴音響けば  作者: 秋本そら
『不思議』が集まる場所
5/18

県立風波高等学校

「学校終わったー!」

 うんと伸びをして、帰り支度をする。と、その時、「ねえ優妃」と心細そうな声が降ってきた。

「今日って、部活あったっけ……?」

 振り返った先にいたのは、同じ部活の友達、波津子だ。たれ目がいつも以上に下がっているところを見ると、結構不安に思っているらしい。

「んー、いや、今日はなかったと思うけど、どうかしたの?」

「よかった! いや、今日はみんなと遊びに行く約束してたから」

 ぱあっと波津子の声が、表情が明るくなっていく。

「みんなって、舞ちゃんたち? 仲がいいねぇ」

「小学校からの付き合いだもん。それじゃ、また明日ね!」

「うん、また明日ー」

 波津子がいなくなったあと、私はふと、思い出した。

「そういえば、波津子と仲がいい舞ちゃんって『二重人格の魔法使い』らしいって噂があったよね……?」


 県立風波(かざなみ)高等学校。

 それが、私の通う高校の名前。

 この街、夜見月(よみつき)市のトップ校だ。

 中三の時、学力が高いということもあったが、文武両道を掲げていたことと、校則が緩く過ごしやすそうだと感じたことから、私はここを志望校にした。

 が、両親からはだいぶ反対された。

 学力が理由ではない。風波高校にまつわる噂のせいだ。

「県立風波高等学校には『不思議』が集まる」

「県立風波高等学校の生徒は『不思議』を引き寄せやすくなる」

 両親はこの噂を知っていて、私を無理矢理説得しようと試みた。

 この『不思議』が悪いものだったらどうするのか。優妃には普通に生きてほしい。『不思議』を引き寄せやすくなるようになる、そんな学校に行かなくても、と。

 でも、その声を跳ね除けてここを受験した。

 夜見月市は、不思議なことが多く起こり、言い伝えが現実になる街だ。きっと風波高校の噂も本当なのだろうと思ったけど、そんな理由で志望校を諦めたくなかった。あと、『不思議』に出会ってみたかったことは、両親には内緒だ。


 そして私は、『不思議』に溢れた高校に入学することになる。

 本当に驚いた。この学校に入学してからというもの、私はいろいろな『不思議』の噂を聞いた。同級生には二重人格の魔法使いがいるらしいし、一個上には妖の血を引いた先輩がいる(その人の名前は中村顕子というらしい)。前者は、波津子が小学生の時から彼女の魔法を見ているというし、後者は、その先輩と同じ部活に所属する友人たちが何度もその『力』を見たことがあるという。

 他にも、この街で有名な言い伝えの中の存在や、時を遡ることに特化した魔法使いがいるらしいって噂を聞いたことがある。

 そんな高校で、私は毎日楽しく過ごしている。


 さて、私も帰ろう。

 そして、みいやんに会いに行こう。今日もあの場所で待っているはずだから。

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