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鈴音響けば  作者: 秋本そら
『不思議』に囲まれて
11/18

魔法の種明かし

 いったん深呼吸して、頭の中を整理してみる。いろいろなことがいっぺんに起こりすぎて、頭がパンクしそうだ。


 唐突に、謎の熱を持った痛みに襲われたこと。

 痛い部分は赤い痕ができていたこと。

 波津子が何故か、耳を澄ませるようなしぐさをしていたこと。

 扉が開いたわけでもないのに、突然彩ちゃんが現れたこと。

 彩ちゃんが、恐らく魔法で赤い痕と痛みを治してくれたこと。

 そして彩ちゃんの見た目が、波津子の友達、舞ちゃんにそっくりだったこと。

 それは、舞ちゃんの体に、舞ちゃんと彩ちゃん、二人の精神が同居しているからだということ。

 それが『二重人格の魔法使い』の名の由来だということ。


 ……うん。とりあえず、言ってることは分かった。

「えっと……彩ちゃん、さっきはありがとう。今はもう、なんともないよ」

「それならよかった!」

 私のことなんてそんなに知らないだろうに、彩ちゃんはそう言って嬉しそうに笑う。


 さて、改めてちゃんとお礼も言ったことだし、気になったことをいろいろ訊いてみることにしよう。

「……ところで波津子、さっき耳を澄ませてたのって、あれ、何だったの?」

「ああ、あれ? 実はあれも、あーやの魔法なんだ。普段は目に見えないようになってるんだけど、ここ」

 波津子はそう言いながら、右手の人差し指、その付け根を指した。

「ここにね、実は指輪をつけてるの。そこに息を吹きかけると――」

「――その感覚が、うちに伝わるようになってる」

 彩ちゃんが波津子の言葉を引き継いだ。ピン、と右の人差し指をあげているから、もしかしたらそこに伝わるのかもしれない。

「そしたら、うちが心の中でなあちゃんに話しかけるの」

「その声を聞くために、耳を澄ませるしぐさをしていたんだ。ちなみにこの指輪、伝えたいことを念じれば、こっちの言葉をあーやに届けることもできるんだよ」

「そうそう」

 二人の息の合った説明に、その内容に、私は驚くことしかできない。

「そうなんだ……。彩ちゃんが部屋に入ってきたとき、扉が軋む音がしなかったけど……それってもしかして、瞬間移動みたいなことしたの?」

 私の問いに、うなづく彩ちゃん。

「うん、したよ。その方が早く着くからね」

 扉の開く音がしなかったことについては、少し考えれば簡単に分かった。直接ここに移動してしまえば、扉を開ける必要がないから。

「あと、少し気になったんだけど……彩ちゃんと舞ちゃんの関係って、なんなの? どうして精神を同居させることになったの?」

「うーん……うちと舞の関係は、双子だよ。舞が姉で、うちが妹。どうして精神を同居させてるかは、話が長くなるから、時間があるときになあちゃんから聞いて」

「え、なんか責任重大な役を押し付けられた気がするんだけど」

 突然名指しされたのもあってか、不機嫌そうにそう言う波津子に「なあちゃんも当事者の一人でしょ」と、彩ちゃんはあっけらかんと一言。そのやり取りがなんだか面白くて、笑いを堪えるのに苦労する羽目になった。


「ところで、うちも訊きたいことがあるんだけど……いいかな?」

 彩ちゃんが……訊きたいこと?

「うん、いいけど……何?」

「あの赤い痕って、なんなの?」

「……分からない。出来るなら私が知りたいぐらいなんだよね」

 そう答えると、明らかに残念そうにする彩ちゃん。なんだか申し訳ないけど、本当のことだ。

「ねえ、そのことについて、ひとつ提案があるんだけど」

 突然そう言い出したのは、波津子だった。

「何?」

「なあに?」

 見事に私と彩ちゃんの声が見事にハモる。


「――妖の血を引いてるって噂の、中村顕子先輩のところに行ってみない?」

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