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ハズレ職業『テイマー』

マサハル視点です。

呼び方は

生徒→苗字呼び漢字

異世界の人→名前呼びカタカナ

天の声→気分

です。



女子トイレの件の後、俺達は食堂で朝食をとった。


その後着替えて、再び王の間に来ていた。


今日も王様の威圧感が凄い。



「さて、これから魔王の討伐を貴殿達にしてもらいたい訳だが、まずこれから各々の職業を調べさせてもらう。」


「職業ですか‥?それなら口答の方が早いのでは?」



王様の意見にもっともな意見を岡山が言うが、王様は難しい顔をした。



「そうすれば確かに早いのだが、前に一度職業を偽った者がいてな、その者を重要な役職に就かせたせいで一時期国の経済が大混乱してしまったことがあったのだ。

そう言う訳で職業は特定の魔道具を使って調べなければならない決まりがてきたのだ。

決して貴殿達を疑っている訳では無い。」



王様がそう言うと、段下の脇にいた使用人達がサッカーボールほどの水晶玉を持ってきた。



「それに触れると職業が分かる仕組みになっている。

それを元に貴殿らのステータスプレートも発行する。」



ステータスプレートとは、自分のステータスが評価化される板のことである。


非常に軽量でコンパクトなサイズのため、身分証にも使われている。



「では、僕からいきます。」



そう言って岡山が水晶玉に手を触れた。


すると、水晶玉は一瞬だけ光ると、続けて中に白い煙のような物を漂わせた。



「岡山翔太 職業が…ゆ、『勇者』⁉︎しかも、ステータスもレベル1で平均男性のそれを超えている⁉︎」



どうやらあの煙が文字になるらしい。


水晶玉を見ていた宮廷魔術師が声を上げると、周りの騎士たちはおろか、あの王様でさえも驚愕を隠し切れていない様子だった。


「な⁉︎本当にあの『勇者』なのか⁉︎」


「本当だとしたら、これはもの凄いことだぞ…」


その声を腕を上げることで静めた王様は、椅子の手すりに肘を乗せ、溜息混じりにこう言った。



「まさか異界の勇者殿の職業があの伝説の『勇者』だったとは…。」


「すいません…俺達にもよく分かるように説明して下さいませんか?」



岡山がそう問いかけると、ゆっくりと王様が口を開いた。



なんでも、職業『勇者』は伝説で語られている職業らしく、かつてこの世界が混沌にまみれていた時代、この世界の種族がそれぞれ覇権を取り合っていた時代に『勇者』の職業を持つ者が生まれたらしい。


そして、そいつは強力な力を持ち、一時絶滅寸前までいった人類をこの世界の覇権を取るまでにした人物らしかった。


そしてそいつはこの国の初代王様だった事もあって、この騒ぎがあったと言う訳であった。



「なるほど…そう言う訳だったんですね…」


「うむ。しかし女神の信託では『勇者達』とあったので、個人を指す言葉かどうか分からん。

よって今は其方を他の者と同列に扱う。良いな?」


「…はい。俺はそれで構いません。」 


「うむ、では次の者前にでよ。」



そうして次々に職業を調べられていった。


俺も無事調べてもらう事ができ、残すところはあとハルだけとなった。



「次の者、前に出よ。」


王様がそう告げると、ハルは気楽そうな顔で前に出てきた。


「ほな。」


そう言いながら水晶玉に触り、いつも通り煙が水晶玉内部で発生した。

すると…



「……は?」


水晶玉の文字を見ていた魔術師さんが呆気にとられたような顔をした。


目を擦って何度も確かめているが一体なんなんだろう……?


ハルの職業って確か『テイマー』とか言うやつだったよな…?



「どうした?早く結果を申さぬか。」


「は、は‼︎申し訳ありませんでした!」


痺れを切らして王様が問いかけると、魔術師は驚いて返事をした。



「か、彼の職業は『テイマー』です‼︎」


「…………何?」


その瞬間、岡山の時と同じくらいのざわめきが王の間を覆った。



「なんだと…?もう一度申してみよ。」


「は、はい‼︎彼は『テイマー』でございます。」


この返答に王様はまた長い溜息をついた。



「じゃあ僕にも説明よろしゅう。」


そしてその場の空気を当然とでもいうようにいつも通りのニコニコ顔でハルが王様に言うと、王様は近くの使用人に「説明してやれ」とでも言うように顎をクイッとした。



「ハルト様、でよろしかったでしょうか?


「うん。合ってるで〜。」


「ハルト様。『テイマー』という職業は最底辺の職業、所謂“ハズレ職業”でございます。」


「……は?」


使用人の言葉を聞いた時、ハルではなく俺の口からそう疑問がとんだ。



「なんや一体その“ハズレ職業”言うんは?」


「“ハズレ職業”と言うのはその名の通り職業の中でもハズレ、つまりあまり役に立たない職業にございます。


『テイマー』は魔物をテイムすることができますが、代わりに自身のステータスが他の職業に比べると格段に劣ります。

そして魔物を育てるにしても莫大な金が必要となります。

それに追加して、この国の国教であるメリアム教では、魔獣は忌まわしき物とされているので、あまり良い目はされません。


以上のことから、『テイマー』はその職業上、それ一本で生きていくことが難しく、鉱山の下っ端で一生を終える者も少なくないので、“ハズレ職業”とされているのです。」


「なるほどなぁ〜」


「まぁ“ハズレ職業”を授かるのは500分の1の確率なので運が悪かったと言うことでしょう。」


「まぁそう言うことやろなぁ〜」



結構絶望的な話をされているが、ハルは気のない返事をしている。


だが、()()()()()()


あの職業は女神様直々にハルに渡したものだ。

つまり、女神は最初からこうなる事をわかってハルにあの職業を渡したんだ‼︎


そう思うといてもたってもいられず、思わず口を開いていた。



「あ、あの‼︎」


「…ん?確かあなたは…。」


「西河正晴です。あの、職業を交換することってできませんか?」



俺の職業は『錬金鍛治師(メタル・アルケミスト)

ステータスはそこまで高くはないが、生産力で言ったら高い性能を持つ。

俺はコレを見たときからずっとこの職業が欲しくて運良く手に入れる事ができたものだ。


(だが、ハルのためなら…)

そう思っていたが……


「すいません。職業を変えるということは現在のところ不可能でございます。」


「そ、そんな……。」



そしてここは見知らぬ異界の地。

恐らくここがゲームなどで良くある世界ならば怪物達がウヨウヨいるだろう。


そんな中、俺達に自分の身以外をかまっている余裕があるかと言えば無い。


そして俺達の目標は魔王討伐だ。

ハルはそれが出来ない、そしてサポートさえできない以上王様達がハルを城に残す理由はない。


最悪、適当な理由を付けてハルは城から追い出される。


そんなことを思っていたが…



「まぁまぁ、心配せんでも僕は大丈夫や。」



ハルはいつも通りの笑顔を浮かべていた。



「それに異界の勇者様御一行の王都到着はおそらくもうすぐ国中に広まるやろ。

『テイマー』と言えどもそんな輝かしい人達の一人を城から追放なんかしてみたらもの凄いバッシングを反王様派辺りから受けてめんどそうやしなぁ」


ハルはそう言うと、王様の方を見ながらニヤリと笑った。


王様は眉をピクリと動かすと、


「何故異界から来たばかりの貴様が我が国の情勢を知っている?」


そう静かに問いかけた。


それに対しハルはいつもの飄々とした笑顔をしながらこう答えた。


「別にぃ〜。ただ、人が寄るとその分派閥が生まれるのはこの世の理っちゅうてええほど常識的なもんやさかい、そうやろか〜思うて言うただけや」


王様はその言葉を聞くと、フンと鼻を鳴らすと、


「では、これで職業を調べる時間は終了とする。」


言い放った。




あの後、俺達は直ぐにそれぞれの部屋に帰された。



「あのオッサン僕が『テイマー』や分かった途端明らか感じ悪うなったなぁ」


「おい、それよりも大丈夫なのかよ、ハル。」


「なにがや?」


「お前の職業のことだよ!王様達の話聞いてたのか!?

運が悪かったらこのよくわからない世界に一人放り出されることになるんだぞ‼︎」


「あぁ、そのことか。なら心配いらへんて。」


「それもこれもアイツならこうなるって分かってただろ‼︎あのクソめー」



「マサ‼︎‼︎」



その時、いつもニコニコしているハルからは想像もできないような声が俺の言葉を阻んだ。



「僕は、大丈夫やから。マサが心配することなんかなんもあらへんねん。

それに僕、結構この職業気に入ってんねん。」



ハルはそう言いながらいつものニコニコ顔で笑っていた。


俺はその笑顔はどこか言い知れぬ不安が漂っているように思えた。



「それよりマサ、ホレ」


「うぉ!?おい、ハル‼︎急に物投げるなよ‼︎」


「ハハハ、ごめんな。」



ハルが制服から何かを取り出し、いきなり投げて来た。


なんとかキャッチしながら文句を言うものの、本当に反省してるのかコイツ。



ハルが投げてきたものは毎年盆の時期にくれるお守りだった。


今年はハルの家が旅行に行っててもらっていなかったのだった。



「それにしても、今こいつを渡すか?」


「まぁこんなことになったしお互いの安全を祈って、な。」


まぁハルのお守りは効力がある(と思っている)からいいか。



「ありがとう、大事にする。」


「おう、油揚げ一個で勘弁したるわ。」


「金取るの!?」



それより油揚げなんて無いんだけど!?



「冗談や冗談。そんなもんで金取る訳ないやん。」


「いや、お前ならやりそうだぞ。」


「変な信用されてるなぁ。」



そう言いながらいつも通りの顔でハルは笑った。

そこにさっきの様な不安さは無かった。


「ま、代わりにそのお守りずっと持っといてくれたらええわ。」


「おう、分かった。」


「そんなことよりも、マサの職業、『錬金鍛治師(メタル・アルケミスト)』ってどんなやつなん?」


「ん?気になるか?気になっちゃうよな。仕方ないな。なんてったってこの職業ってこれまでの「鍛治」の概念を丸っと変えるものなんだからな。」


「わー、すごそー」


「そうだろそうだろ。これはなー」



そんな事を話してるうちに気づけば俺は眠っていた。

この世界に来てから初めて気持ちよく眠れた。


きっとハルの笑顔に感じた不安は俺の考え過ぎなのだろう。





========================

〈登場人物紹介〉


・メリアム


・性別:女

・身長:約170cm(登場時)

・体重:乙女のヒ⭐︎ミ⭐︎ツ♡

・誕生日:12月24日

・血液型:女神にそんな物ありませ〜ん

・趣味:人の世を見る事


〈紹介文〉

白柏高校の生徒を異世界転移させた女神様

メリアム教の唯一神であり、人の世の平和を願っているとされている。


しかし、ハルトにハズレ職業『テイマー』を渡したりするなど、不審な点が目立つ。


神様なので身長や体重は自由に変えられるが、ここで記されている身長はハルト達の前に姿を初めて見せたときの身長である。



やっと説明回が終わったよ

次回から書くのが楽しみです。

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