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8美味しいは幸せ




レグルスは凪のような少女は初めてだった。

見た目はお上品な装いをしている中身はかなり大雑把だった。


「苦しかった」


「あれぐらいじゃ死なないよ」


「窒息死するかと思った」


肩で息をするレグルスだったが、無理矢理つっこまれたフレンチトーストは美味しかったのは心の中で留めておいた。



「ねぇ、レグルス」


「何?」


「なんか集まって来た」


見渡すと家を囲むように村人たちが集まって来た。


「甘い香りがして」


「それにすごく美味しそうな香りが」


近所の人達だった。

彼等も香りに誘われて集結している。


「皆も食べますか?」


「いいのか?」


「まだあるから!」


台所に戻り大皿にフレンチトーストをドンと置く。


「うぉぉぉ!!」


男達はすぐに飛びついた。


子供達も負けずに飛びつき食べ始める。



「うめぇ…こんな美味い物は初めてだ」


「あんな硬いパンがこんなごちそうになるのか!」


平民は基本硬い黒パンが主食だった。

柔らかい白パンは貴族だけが口にできる高級食材だったので凪が作ったフレンチトーストのように柔らかいパンを食べるのは初めてだった。


「シチューも美味しいわ」


「ああ、俺達が普段口にするのは水臭いシチューだ」


パンと一緒に食べるシチューも同じだった。

味の無い薄いスープに野菜は硬く。


最近は作物が不作なので傷物や売り物にならないのを村人が食材に使っている。


いい野菜や肉、魚はすべて口にするのは貴族だけだった。



「ナギは魔法使いなの?」


「私は魔法なんて使えないよ?このスープには魚の骨で出汁を取っただけだし。牛乳はジョニーさんのだよ?」


「何!ジョニーのミルクで!」


「だが俺のミルクでこんな美味いものが作れるのか?」


ミルクは飲むもので料理に使う発想がなかった。


「ミルクは何でも使えますよ!お料理にもお菓子にも。ジョニーさんのミルクは濃厚だから美味しいモノが沢山作れます」


「お嬢ちゃんは料理に詳しいな」


「えへへ…」


食堂を営んでいた祖母の手伝いをし、凪も料理をしていた。

料理のことは全て祖母が教えてくれていた。



食べることは幸せと繋がっており、美味しいモノを作るのが大好きだった。



「私の国では食べると言う字は人を良くするって書くんです」


「いい言葉だ」


「お祖母ちゃんが言ってました。この世で一番大切なのは美味しいモノを食べること。どんなに辛い時でも美味しいモノは人を幸せにしてくれるって」


小さい頃から何時も言われて来た言葉。

どんなに辛い時でも空腹になる。


そんな時はまずは美味しいモノを食べれば元気になる。


「食べ物は人を幸せにできるんです」


「ナギ…」


祖母の教えを大切にしこれまで数多の料理を作って来た凪の思いだった。





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