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7母親



城下町は賑わいでいるが、そこし放れた村や町は貧しいのが現状だった。


特に貧民街と呼ばれる町は孤児が多く。

トリアノン村も男手が少なく女性や老人が村だった。



レグルスに案内されて凪は家に招いてもらった。


「母さんただいま」


「お帰りレグルス…ゴホ!」


咳き込む女性にレグルスは駆け寄ろうとする前に凪が近づく。


「大丈夫ですか?」


「ええ…ありがとう」


背中をさする。

とてもやせ細った体に顔色が真っ青だ。


「レグルス。お母さんは病気なの?」


「うん…五年前に病にかかって。食欲もなくて」


貧しいながらも食事を用意しても嘔吐してしまう母親にどうしていいかわからなかった。


「ちょっとごめん」


「えっ?ちょっと」


枕元に置かれているスープを食べる。


「まずい」


「ええ!」


勝手に食べてダメ出しをする。


「こんなんじゃ良くならないよ。野菜は硬いし生だよ?それにお肉の油が固まっている」


宮廷で出された食事も美味しいとはいえないがまだましだった。

今食べているスープよりもましだといえるレベルだが。


「でも…食べる物はこれしかなくて」


「台所を貸して」


「え?」


腕をまくり髪を縛る凪はどや顔をする。


「私が美味しいスープを作る!」



十分後、凪は温かいスープを持って現れる。


「これは?」


「ミルクスープ」


牛乳たっぷりのスープでチーズの香が食欲をそそる。



「母さん…」


「でも、食事は…」


飲んでも嘔吐するので無理だと思いながらもスープを見ると。


「懐かしい…この香」


スープから懐かしい香りを感じ、思わず一口食べる。


「母さん?」


「……美味しいわ」


「え!」


スプーンを握りしめ一口、又一口と運んでいく。


「おばさん、パンもどうですか?」


「え?でも…」


硬いモノが食べられない母親には無理だと思ったレグルスだったが。



「甘い香り…それに柔らかいわ」


「フレンチトーストにしてみたんです」


お皿に飾りつけされたフレンチトーストをフォークで差し食べる。


「甘い…」


「母さんが食べてる…」


これまで水すら満足に飲めななかった母、レノアが食事をしているのに驚く。


「すごく美味しかったわ…本当に」


「お粗末様です」


食欲がなく日増しにやせ細って行くレノアの笑顔を見て泣きそうになる。



……が


「モゴォ!!」


「レグルスも食べなよ。美味しいよ」


「モゴゴ!!」


泣きそうな顔で見ていたレグルスにフレンチトーストをダイレクトに放り込む。


「そんなもの欲しそうな顔をしなくてもあげるよ?泣く程食べたかったの?」


「モゴモゴ!!(違う)」


レグルスが涙ぐんでいた理由をまったくわかっていない凪だった。

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