2古びた離宮
現在の状況を把握したくてもできない状況だった凪は考えた。
ここは剣と魔法のファンタジーな異世。
聖女として召喚されたの凪ではなく亜美だけで巻き込まれたに過ぎない。
「そうなると自力でどうにかしないとまずいよね」
元より自立心に強い凪はいつまでもこのままでいるつもりもない。
だが、現状では一人で外の世界に出て生きていけるかと言われればそうではない。
「今は今日を生きることを考えるしかない。幸い雨風を凌げるだけマシだとしよう」
亜美と隔離された凪は離宮に追いやられてしまい放置された状態だったが、考え方によれば悪くないのではと考え始めた。
「危ない目に合うわけじゃないし…それに私考古学が好きだし」
ファンタジーなものは大好きだった。
考古学や遺跡も好きでよく本を読み更けていたぐらいだった。
ここの宮殿の作りはギリシャ神話で出て来るような遺跡のようで興味がそそられた。
「随分古い作り…」
壁に触れながら進んでいくと違和感を感じた。
ガコン!
「あれ?壁が動いた」
右に左にと一部の壁がスライドしていくと扉ができる。
「え?嘘!隠し扉?」
好奇心が勝り中に入って行くと蝋燭の明かりがついていた。
「なんか、エジプトの遺跡見たい」
足場に気をつけながら奥へ奥へと進んでいくと。
その先には古びた本が並んでいた。
「わぁ…秘密の部屋見たい」
ファンタジーでお約束、秘密の部屋。
古びた時計に机と砂時計が置かれている。
「ん?」
暗がりの場所に金色の鍵が落ちている。
「わぁー…綺麗な鍵」
一目見て気に入ったのでポケットに入れる。
「んー…でも文字は読めないな」
本が並んでいるが異国の文字は流石に読めなかった。
「どうしたものか…」
ため息をつきながら部屋に置かれているランプは使えそうなので持ち帰り秘密の部屋を出ていく。
「さてとどうしようか」
今頃手厚くもてなされている亜美が心配になるが聖女様としてお姫様の様に大切にされているなら問題はないはずだ。
それよりも今は自分のことを考える必要がある。
部屋の前には食事が置かれていた。
「厄介者扱いか」
声もかけずに食事だけ用意してある。
とても質素な食事でパンとスープだけだった。
「はぁ~‥‥」
用意されたパンは硬くて味のしないパンだった。
スープも水臭いが空腹なので我慢をして流し込むように食べながら空を見上げた。
孤独感に苛まれ不安を抱きながらパンを食べようとしたら。
「ん?」
千切ったパンが動いている。
「何?」
パンが勝手に動いていると不思議に思ったが、パンを運ぶ小人がいた。
「うぉードワーフだ」
目を輝かせながら見つめる。
必死でパンを運ぶドワーフに興味津々の凪は早くも不安など消えていた。