13スキル
ざっくりとこれまでの話を話すとリカルトは言葉も出なかった。
「あの馬鹿王子が…」
人として道に外れた行いをしている自覚はないと察する。
「異世界から聖女を召喚するなんて、なんて危険なことを」
「え?危険?」
「そうだよ。本来は女神様の力で聖女を召喚するんだ。ちゃんとした儀式をしてね?でないと犠牲者が出る」
その犠牲とは計り知れないものだった。
最悪巻き添えになるだけでなく世界の秩序が乱れてしまう可能性もある。
「しかしアンタは運が良かったよ。こうして生きているんだから」
「昔から運は強かったんですよね」
「それで今は宮廷にいるのかい?」
聖女と一緒に召喚されたならば保護するのが当然だと思いきや。
「いえ?離宮に」
「は?」
「ずっとそこにいます」
ここまでの仕打ちをした王族に怒りを覚えた。
あまりにも酷い仕打ちだ。
「腐ってやがる」
「別に腐ってないですよ…」
「果物のことじゃないよ!!」
テーブルに置かれている果物を齧る凪。
何故か気が抜けてしまうリカルト。
「大体アンタ!何平然としてんだい」
「だって起きてしまったことは仕方ないし?」
「どんだけ前向きなんだい!」
怒っているのが馬鹿馬鹿しくなるリカルトだったが、ふと気になったことがある。
「アンタ精霊との波長がいいみたいだね」
「え?」
「さっきから大気が揺れているよ。どんなスキルがあるのか見てやろう」
スキルの意味を今一つ理解していない凪は頷く。
「私は鑑定もできるから…そこに立ちな」
「はーい」
言われた場所に立つと。
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霧崎 凪 Lv.10/錬金術師
HP:∞/∞
MP:50/50
戦闘スキル:逃亡
戦闘回避
生産スキル:調理
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「何これ」
生まれて初めてスキルを見て落ち込む。
「戦闘スキルが逃亡って何!!魔法は?剣は?」
あまりにも地味なスキルに嘆きたくなった。
「あ、まだある」
「どれどれ‥‥迷子スキル?」
「迷子になるスキルって何?」
迷子にならないスキルならまだいいが迷子になってどうするのか。
「意味あるの?」
「ないね。これだけ役に立たないスキルもないけど…HP∞ってありえないだろ」
リカルトが気にかかったのはそこだった。
どんなにすごいスキルを持っていてもHP∞なんてありえないことだ。
それに魔力が思ったよりも高いことも驚きだった。
「アンタ儀式はしたかい?」
「儀式?」
「まさか儀式も受けてないでそれか!!」
さっきから怒ってばっかりのリカルトに人事だった。
とりあえず今は‥‥
「おやつが食べたいです」
胃袋を満たすことが最優先だった。




