12魔法使いのオババ
薄暗い小屋の中。
目の前ではパチパチと音が聞こえる。
鍋に湯を沸かすのはこの世のものとは思えない程の恐ろしい鬼婆の姿。
「でたぁぁぁ!!モンスター!」
「誰がモンスターじゃ!」
ゴンとお玉で殴られる・
「あれ?」
「まったく道端で汚い猿を拾ったかと思えば人間だったとは」
ため息をつく老婆は鍋をかき混ぜる。
「おら、食べな」
森で迷子になりお腹を空かせて倒れているところを拾われた。
「既にいただいてます」
「あんた!もう食べたのかい!」
一瞬で大なべのスープは空っぽだった。
「空腹は最高のスパイス。でも砂かけ婆さんのご飯は美味しいです」
「褒めてんのかい?それとも貶しているのかい!」
ツッコまれてばかりだったが凪は食べ続けていた。
「んーまいう!!」
「それにしてもアンタ。よく生きていたね?」
「もごもご!!むごぉ!!」
口にパンパンに淹れたまましゃべる。
「おら、水でも飲みな」
「うぃ」
水を流し込みようやく一息つく。
「ごち」
「アンタねぇ」
ようやくお腹が膨れお腹をさする。
「おっさんみたいな子だね」
見た目はともかく中身はおっさんのようだった。
「それにしても何であんな場所にいたんだい?普通は野生の動物に襲われるよ?」
迷いの森。
通称悪魔の森と呼ばれている。
人が無闇に入れば野生の動物か、最悪魔物に食い殺される可能性が高い。
「えーっとパトラッシュと一緒に食料を調達に」
「キュー!」
「ちょっ…これは精霊じゃないか!!」
ガタンと立ち上がりパトラッシュを見て絶句する。
「へ?」
「しかも地の加護を持つ精霊!!アンタどんなスキル持ってんだい?」
「私のスキル?調理師?」
「調理師?聞いたことがないスキルだね」
「後は漢検と英検に…食生活アドバイザーの資格とか?」
スキルと言われて所持している資格のことかと思ったが違うらしい。
「まぁいい。私はリカルト。この森唯一の魔女だよ」
「なるほど魔法使いのオババ!RPGのお約束ですね」
「誰がオババだ!!大体なんだい?RPGってのは」
リカルトは首をかしげる。
「私は凪っていいます。えーっと話せば長くなりまして」
リカルトは悪い人に見えなかったので正直に話すことにした。
これまでの経緯を。




