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九曜の母は言っていた。
すでに始まっているようで、終わっていると。
それはこのことだったのだろう。
しかし鏡を盗まれた今が始まりなのか、それとも終わりなのかは分からなかったが…。
魔鬼が連れてかれた土地で何かを始めるのか、…それとも終わらせるのか。
いずれにしろ、何かが起きれば九曜達の耳には入り、そして上代の耳にも入る。
だか彼は平然として、責任逃れができるのだ。
―自分のせいではない。あの鏡を盗んだ者が悪いのだと。
「…お祖父さまは上代のおじさんを怒りますか?」
「同じ神道系に通じる者としてならば、怒りはあります。しかし彼の気持ちも分からなくはないというのが本音ですね」
「お祖父さま…」
「そんなに不思議そうな顔をすることもないでしょう? 九曜」
九門は苦笑した。
「私とて、自分に降りかかる全てのことを受け入れられているわけではありません。しかし逃れられないのなら、立ち向かうまでとは思っています」




