広がりゆく自然と非日常的な物
どの位の時間をこの宝石に使っただろうか? ずっと存在してたかのように太陽は輝き続け、風は涼しく感じられる程度に吹いている。俺は辺りを見回した。近くには石ころや花、木などがある。遠くを見れば、川や橋がある。上には雲がある。
そう、これらすべて俺が出したものなのだ。道中に青い宝石がいくらかあり、それら全てに触れ、そしてそれらから出てきた物だ。
非現実的……なんてすばらしい響きなんだろう。先ほどまで退屈だった1つの部屋が、今では自分の手1つで完成されていくのだ。
でもなんだろう? 完成には程遠いような気がする。それどころかまだ基礎すら足りないような気がする。なんというか身のない魚料理というか、肉の出ないステーキメニューというか、そんな感じがする。
歩いていると、今度は赤色の宝石を見つけた。まぁいい、宝石があれば触れる.それだけでいい
<実績:ナレーターを獲得しました>
「誰だ? いきなり……」
女性の可愛らしい声が聞こえたので、ふと辺りを見回してみる。が、特に何もない。声を聞かせろといっても、何も答えない。聞き間違えかもしれないが、もし本当に聞こえていたとすれば……
あぁ、なんて面白いのだろう。俺自身になかった物まで追加するとは。出来れば1つ1つ、家に持ち帰って、そしてコレクションしてやりたい。これが石で、これが木といったように名札を付けて、自慢してやるのだ……ん?
なるほど。この世界に足りないもの、それは人や生物……か。人がいれば村がいる。そして村があるなら食べ物、食べ物があるなら畑、畑があるなら柔らかい土……なんてことだ! 足りないものが多すぎる。早く探さなくては。俺はズボンの土を払い、また歩いて行った。
……さすがに歩き過ぎた。足は足枷を付けられたかの様に重い。道中の果物をむしっては食べていたので、腹は減っていない。そろそろ焚火でもするか。
水は……気を拾って火を起こして川の水でも飲もう。丁度いいくぼみがある石を持ってるし。火を起こせれる自信はないし、木を運ぶほどの力が残っているか定かじゃないが……
「お、こんなところに」
森の中に入り、木を集めていると、赤い宝石を見つけた。宝石とあれば、触れざるを得ない。
<実績:炎魔法を解除しました。使用回数は3回です>
魔法……だと。一体この宝石はどこまで俺を楽しませてくれるんだ! 魔法なんて非現実の中心的存在、誰が嫌いになれようか! よし、川の水を使って試そう。
木を適当な所に置いて、川の水を石に集めた。
魔法……そういえばどうやれば発動出来るのか……とりあえず、出でよ、炎! 駄目か。まぁそんなシンプルな詠唱あるわけな____
ボッ!
<使用回数、残り2回です>
出来てしまった……というより
ボッ!
<使用回数、残り1回です>
念じれば出るのか。炎自体は小さいが、木のおかげで焚火の役割は果たせている。さて、水は……そこまでおいしくない……が、川の水を飲むなんてしたことないから貴重な味だ。
それにしても魔法か。面白いものをもらった。記憶はないが、きっと俺は徳を積んだのだろう。そうでなければこんなにも素晴らしい世界、来れるはずもない。明日は何が見つかるのだろうか? あぁ、楽しみだなぁ。
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