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仕事をクビになったら、異世界から来た女の子を捕まえることになった  作者: 藤原・インスパイア・十四六
刀の少女
9/32

君の名は

自分が聞きたい情報を相手から聞き出すのってできるようで案外難しいものですね。

自分よがりにならず、相手の警戒心を解くことが一つの近道かもしれません。


 2回目に出現した銀髪の女が消え、2回目のインターバルの間、木崎は少し休もうとも考えていたが、善行寺がそれを許すはずもなかった。

 1時間のインターバルの内、最初に5分を報告に使われた。今は詳細を事細かく聞き出されているところである。


 ≪だから、言ってるだろ?木崎。安直に名前なんか聞くんじゃない!≫

 「いや、だから俺は名前を聞かなかったんだよ」

 ≪では、何の話をしたんだ?≫


 まくし立てるように詰問をしてくる善行寺に木崎の声もくぐもる。


 「て、てん、てんきの…」

 ≪は?聞こえないが?≫

 「て、天気の話とか、だよ…!」

 ≪天気だと…?はぁぁぁぁぁ………≫


 音声からだけでも善行寺が呆れているのが伝わってくる。

 真佐が木崎に近寄ってくる。


 「善行寺殿!木崎は決して名など聞いておらぬ。当たり障りのない天候の話をしようとしたが、生憎天候がすぐれておらんかったのじゃ」

 

 (真佐…それはフォローになってない…。もう…、もうやめてくれ~…)

 

 ≪分かった。俺の伝え方が悪かった。そういうことにしておこう。なぁ木崎≫

 「た、助かる善行寺」

 「良かったな!木崎!」


 真佐だけは義務を果たせたとばかりに達成感を顔前面に出して木崎を見上げてくる。


 ≪木崎。雑談という大雑把な言い方を改めよう。相手が興味のある内容を話するんだ≫

 「そんな、俺はあの銀髪の女のことなんか知らねぇからな」

 ≪そうだな。だが、探すんだ。あの女が興味を持ちそうなことを話して、お前が知りたいことを聞き出せ≫

 「そ、そんなこと…!」

 ≪いや、やるんだ。警察の時とは考え方を切り替えてくれ。現状はあれもこれもやらないとならない。こんなことはネゴシエーションという程、高等なことじゃないない。お前が相手に関心を持て≫

 「関心を持つ…」

 ≪そうだ。そうすれば、名前なんか勝手に向こうから言ってくる。通信は切らなくていいぞ。お前が名前を聞き出せた時点ですぐに特定作業に入るからな≫

 

 真佐が木崎を覗き込む。


 「木崎。お前が悩んでおるなら、私がその役目引き受けてやるぞ?」

 「ありがとう。でも俺が頑張るよ」

 「そうか…。うん!困ったら頼るんじゃぞ!」

 

 真佐は木崎の言葉に素直に従った。不服そうでもなくむしろ嬉しそうである。

 

 「では、私は先程のように木崎が脳震盪を起こさぬよう、あの女子(おなご)からそちを守れるよう万全の状態を整えておくとしようか」

 「ははは。ここにきてやる気満々だな。俺はてっきり真佐は戦うことはそんなに好きじゃないんだと思っていたよ」


 真佐が木崎の発言を聞き、慌てる。


 「いや、私は戦など好んではおらぬぞ?!」

 「え?そうなのか?」

 「そうじゃ。木崎はそんなことも分からぬのか!」

 「じゃあ、なんでそんななんだ今は」

 「それは、大事な街や大事な人を護る為に剣を振りかざすのは至極当然なことじゃ。私はこの街やお前を護る為に戦うぞ!木崎」


 あまりにも真っ直ぐに照れることなく話してくるので、逆に木崎が照れそうになる。


 「あ、ああ。ありがとうな」

「木崎。私はな。この世界の京都という街が懐かしくて仕方ないのじゃ。私のいた世界の街はこんなに複雑ではなかったし、塵屑(ちりくず)や汚れも気にすることはほとんど無かった。この世界に飛ばされて初めは、このような世界は不気味で仕方がなかったのじゃがな」


 真佐の大きな目から涙がこぼれ落ちる。ただ、悲しみや怒り、喜びなどの感情からくる涙ではなく、ただただその大きな目から涙が止めどなく流れ続けている。


 「今となっては全てが懐かしく、全てが愛おしい。私はここで産まれたのかもしれぬと錯覚する程じゃ。あれ?変じゃの。涙が止まらぬ」

 「真佐…」

 

 真佐が袖で顔をゴシゴシと拭う。木崎がハンカチを真佐に渡す。


 「本当は汗拭き用の替えのハンカチだが、良かったら使ってくれ。まだ未使用だ」

 

 ハンカチを受け取る真佐。


 「かたじけぬ木崎」


 ハンカチで涙を拭った真佐が微笑みかけてくる。


 「急に変じゃの。私としたことが、まだあの女子(おなご)のことが解決した訳でもないのに。琴線が緩んでしまっておるわ」


 鼻をすする真佐。


 「これが終わったら真佐。向こうの世界で行ったことのないような所へ連れて行ってやるよ。どんどんこの世界を知って、もっと好きになってもらうぞ」

 「こ、これ以上好きにさせられるのも困ったものじゃ。罪が深すぎるぞ。木崎」


 真佐が少し顔を赤らめている。


 (もっとこの世界を好きになってもらおう)


 ≪お取込み中すまんが、あと3分で銀髪の女が戻ってくる≫

 「もうそんな時間か…」

 ≪木崎、俺はお前たちの体力も心配だ。今回ももしかすると、6回目までかかる可能性がある。真佐はあちらの世界の者ということもあるのか、体力の戻りが異常に早いが、お前はあくまで現実世界のアラサーのおっさんだ。戦闘の時間を極力減らせた方が良いのは確かだ≫

 「善行寺にしては、人を労わったことを言ってくれるじゃないか」

 ≪お前たちの体調管理も社長である私の責任だしな≫

 「今日は雨が降るな。こりゃ」


 急に空気がピリっと冷え込む。

 

 (真佐の時を合わせれば、ビッグアイの出現を目にするのもこれでもう4回目か。そろそろ出現の感覚が分かってきたな)


 「来るぞ。木崎」

 「ああ」


 (こんな暑い夏にこの独特な感覚。鈍感な俺でも分かっちまったよ)


 雷光が地面に向かって鳴り響き、雷が落下して発生した煙の中から、銀髪の女が現れる。

 先ほどの真佐とそして銀髪の女自身が傷付けた傷跡がなくなっている。

 一度戻ると回復をするようだ。


 「まぁた、ここかよ」


 銀髪の女が前回同様辺りを見渡す。そして木崎、真佐に視線を向ける。


 「お前たちも相変わらず残っていてくれたんだぁ。感謝するぜ。あんな終わり方でイライラしてたんだよぉ~。さぁヤロうぜ。ガンガン殺し合おうぜ!」


 ≪木崎!≫

 「ああ」


 (そんな慌てんなって)


 「君がいたのは、どんな所なんだ?」

 「どんな所って、こことそれ程変わらねぇな。クソみたいな所だ。優しいヤツがいたって、偽善者みてぇな腐ったヤツしかいねぇ」


 銀髪の女の表情に影が落ちる。


 (…)


 「あんなクソみてぇな所にいると思ったら、今度はおっさんとガキ相手に闘わされてよ。まったくアタシの人生産まれてからこんなのばっかだよ…」

 「な、何かあったのか?」

 

 下を向いていた銀髪の女が伺うように木崎を見てくる。

 

 「へへへ敵に心配されるなんてな」

 「俺たちは敵じゃないぞ」

 「またまた」

 「いや、本当だ」


 銀髪の女の表情が険しくなる。明らかに苛ついている様子。

 

 「アタシはそういう上辺だけ嘘を重ねる輩を見ているとイラつくんだ」

 「何を言ってるんだ?」

 「もうやろうじゃねぇか。ガタガタ言わねぇで。ぶっ殺してやるかよ」


 銀髪の女が自分の拳を鳴らしながら歩み寄ってくる。


 「木崎、そちは頑張ったと思うが、反対にあの者の触れてはならない部分に触れてしまったようでもあるの」

 「そ、そのようだな…」

 ≪まずはあと、7分凌げ木崎≫

 「善行寺殿。任せておけ。私が木崎には指一本触れさせぬ」


 鯉口を切る真佐。

 

 「傷は癒えたようだが、恐怖心までは消えておらぬであろう?」


 真佐が鞘から刀を抜きざまに横に薙ぐ。

 高々と跳び上がる銀髪の女。

 真佐も追うように跳び上がる。


 「そちの行動パターンはもう見えておる」

 「くっ!」

 「空中では防御もままならぬからな…」

 真佐が空中で前宙からの斬撃。

 

 (真佐は勝利を確信しただろうその時。銀髪の女は受けるでもなく、避けるでもなく、自身の本能のままに斬撃から逃れるべく)


 自分の頭と腹に渾身の二発を撃ち込む。

 

 (銀髪の女の風圧をも繰り出すパンチ力で、通常起こらない奇跡が起きた。銀髪の女が70㎝後方へ移動した)


 「なに?!」


 着地もできず落下する銀髪の女。倒れ込んだまま(うめ)いている。

 真佐は音もなく着地し、刀を鞘に収める。

  

 「天晴じゃ。自身を殴って、私の斬撃を避けるとはな」

 「真佐。確保を」

 「木崎。彼者(かのもの)の強靭な肉体と勇ましい心への称賛としてここは待とうではないか」

 「何を悠長なことを」

 「私は武士だ。あのように力尽きそうな者へ慈悲の心も見せられぬ者にはなりとうない」

 「俺は警察だ。治安維持の為にも彼女を確保することが最優先にされるべきだ」

 「木崎。正義というものは、唱える者や信じる者によって姿形(すがたかたち)をかえる。そちの正義はそうかもしれんが、今回のこの場面においては私と彼者との問題じゃ。そちの正義の出る幕ではないかの」


 (なんて強情なんだ!)


 銀髪の女が立ちあがる。まだ足元はふらついているが、目の光は失っていない。


 「へへ、へへへ。アタシを殺さなかったことを後悔するよ」

 「そちは暴力だけの者かと思っておったが、そちの力に対する純粋な心が垣間見えた気がする。その新しい発見に比べ、後悔など(いささ)かもあるとは思えんがな」


 銀髪の女が鼻の片方の穴を親指で塞ぎ、鼻から息を出すと血がホースの水のようにドバっと出た。

 唾も吐くと大量の血が出た。


 「こんな状態では闘いなどできぬじゃろ。どうじゃ次の10分で決着をつけるというのは」

 「おい。真佐!」

 「木崎。そなたは言を控えてもらおう」

 「な!」

 「どうなのじゃ?」


 銀髪の女は立っていられない様子で、座り込む。

 

 「どこまでお人好しなんだよ」

 「武士道を重んじておると言ってもらいたいのじゃがな」

 「アタシがそのおっさんを今から殺すと言ったら?」

 「木崎は今のお主に負ける程弱いとも思えんが、契約の反故になるのぉ。その時はお主を斬るしかない」

 「ははは。武士に二言はねぇのか」

 「ないの」

 

 銀髪の女が足を放り出し、仰向けに寝転ぶ。


 「勝手にしろ」

 

 戦場での休息を称えるように気持ちのいい風が木崎たちの周りを吹き抜ける。

 木崎ももうどうにでもなれと言わんばかりに足を放り出し寝ころぶ。

 立ったままの真佐が銀髪の女に話しかける。


 「お主はなぜ闘うのじゃ?」

 「…」

 「今は休息の時間じゃ。少々の会話ぐらい良いのではないか?」

 「…。アタシは産まれて物心ついた頃には、人の殴り方を教えられていた。闘うことに正義もなければ悪もねえ。ただ闘うことで飯がもらえたし、人間として扱えてもらえた」


 (………)


 「アタシにとって闘うってのは、人として生きることなんだよ」

 「そうか…」


 銀髪の女が腕で目を覆い隠す。


 「だからぜってぇ闘うことを止めない。ぜってぇにだ」

 

 木崎が上半身をお越し、空を仰ぎ見る。雲一つない快晴だ。


 (殴り合わなきゃならないのに、相手のことなんか知らない方が幸せだ)


 木崎が銀髪の女と真佐を交互に見る。


 (やっぱりみんな生きてるんだ。こいつらは、異世界から来たと言っても人間なんだ)


 ≪木崎。そろそろ時間だ≫

 「善行寺。すまなかった」

 ≪いや、ああなってしまったら、難しいだろ≫

 

 (こいつって、意外と物わかりがいいのかも)


 銀髪の女が光に包まれ、消えた。


 「木崎。すまなかった。許せ」

 「ああ、もう気にしてねぇよ」

 「優しいんだな」

 「そういうのじゃないよ」

 「すまなかった…」


 (笑ったつもりだった…。謝らせたかった訳じゃない…。はぁ…自分が嫌になる)


 気まずい雰囲気を打ち消すように善行寺から連絡が入る。


 ≪俺は飯にするが、そっちにも送ろうか≫

 「もうそんな時間か。では頼むよ」

 ≪勝手に選んでおくぞ≫

 「ああ」


 善行寺が通信を切る。


 「木崎。出前でも頼んだのか?」

 「出前?ああ懐かしい響きだが、ちょっと違うな。」

 

 岡持ちのような形をしたスタンドが市役所前に移動してくる。


 「回転寿司みたいなもんかな。色んな飲食店がこういったオケモを道路に走らせてるんだ。善行寺が近くを走ってたオケモをここに来させるように手配したんだ。好きじゃなかったら、別のを取り寄せるよ」

 「はぁ、出前と変わらぬ気もするが」

 「まぁ、今日みたいな使い方の場合は、そんな風に思うかもな。でも実際に商品を見て選べるしな。それだけでも便利になったもんだよ」


 木崎が小さなサイコロのようなものをポケットから取り出す。おもむろにサイコロの端と端を掴み、伸ばすような仕草を何回か繰り返ししていたかと思えば、机ができあがっていた。同じようにサイコロを伸ばして椅子を2つ作った。


 「ああ、これか?素材が薄くて丈夫だから、こんな小さなサイコロにできるんだ。椅子にもなるし、机にもなるし結構重宝してるよ」


 真佐が関心するような顔で椅子に恐る恐る座る。座るとその安定感に楽しくなってきたようだ。足をプラプラとばたつかせている。


 木崎がかつ丼とミニ冷やし中華。真佐がざるそばと天ぷらを選んだ。

 気まずかった空気も食べ物を囲むことで、和らいだようだ。


 (俺自身の浅ましさに今回は助けられたかな?また真佐と笑って会話ができる)


 「木崎。次は名前聞けそうだな」

 「ああ、俺もそんな気がする」

 「あいつ、悪い輩ではないのかもしれんな…」

 「そうかもな…。そうかもしれんが、考えない方が良い」

 「そうじゃな…」


 食事も終わり、オケモと同じように走っていたダストカーに食器を入れる。


 「腹ごしらえも済んだな」

 「そうじゃな」

 「彼女を待つか」

 「ああ」


―――――――――――――――――――――――――――――――


 ≪そろそろ出てくるぞ≫

 「ああ」

 「名を知りたいのお。木崎」

 「そうだな」

 

 (関心を持つってのは、こういうことを言うんだろうか…)


 雷鳴の轟きと同時に雷が光る。煙と共に銀髪の女が現れる。


 「よっ!」


 銀髪の女は怪我が消え、状態は良好のようだ。今までのようにしかめっ面ではなく、何か憑いたものが取れたように柔らかい表情をしている。


 「待っておったぞ」

 「…」

 「さぁ、やるか」

 「まぁまぁ焦るでない。昼は食べたのか?」

 「いんや。喰ってねぇな」

 「腹は減らないのか?」

 「う~ん。良く分かんねぇな」

 「好きな食べ物とかはあるのか?」

 「フィッシュ&チップス。あれ以外あんまり食った記憶がねぇから分かんねぇ」

 「そうか。でも俺もあれ好きだぞ。フィッシュ&チップス。腹にたまるしな」

 「そうそう。喰ったって感じがしていいんだよ」

 「分かる分かる」

 

 木崎が頷く。


 「おっさん」

 「木崎だ」

 「木崎。アタシはなんでこの世界に来ちまったんだろな」

 「俺もそれが知りたいんだ。何か手助けができると思ってはいるんだが」

 「それで名前か?」

 「ああ。そうなるな」


 銀髪の女が呆れたように笑う。


 「まぁいいよ。教えてやる。アタシの名前はソフィア・エインズワース。出身はイギリスらしい」

 「そうか。では、こちらで調べて君が元の世界に帰れるよう頑張ろう」


 善行寺との回線を開いたこともあり、善行寺が話しかけてくる。


 ≪ソフィア・エインズワース。すぐに大町に調べさせるぞ≫

 

 「アタシを助けてくれるのか?」

 「ああ。そのつもりだ」


 銀髪の女が木崎の方に歩いてくる。殺気は無い。


 「アンタたちにもっと早く会っていたらアタシはもっと違った人生を歩めたんじゃないかって思うよ」

 

 銀髪の女が木崎の横をすれ違う瞬間、木崎は鳩尾(みぞおち)にとてつもない衝撃を受ける。


 「ぐはっ!な、なぜ…?」


 銀髪の女の顔は笑っているように見えるが、その眼からは涙が流れている。


 「アンタには感謝している。感謝しているからこそ、より一層アタシの手で殺してやらなくちゃ」


 ソフィアが倒れ込む木崎の側頭部を蹴る。


 「ソフィア!何をしておる!」

 「性癖って言葉で片付けちゃいけねぇんだってアタシも分かってる。でもよ仕方ないんだ。アタシはアタシが好きになったヤツを自分のモノにしたくて、したくて、仕方なくなっちまう。もう止まんねぇよ…。木崎もアンタもアタシが殺して、本当のアタシのモノになにしてやるよ」

 「そ、ソフィア…」

 「木崎、すまねぇ。でもよ。アンタはアタシの事が解決するとまたどっかに行っちまうんだろ?そんなの嫌だアンタたちはずっとアタシと一緒に居てくれよ!」

 ≪木崎!大丈夫か!何があった?!≫


 ソフィアが木崎の前髪を掴み、頬を舐める。舐めた箇所を思いっきり拳をぶち込む。ドコ!


 「ソフィア!もう黙っておれぬ」


 真佐が鯉口を切る。が、その瞬間に真佐の横にソフィアが移動してくる。刀の柄を握る左手を小突き、横腹に突きを入れてくる。

 あまりの速さと横腹を突かれたことで、言葉が出ない真佐。


 「うっ!」

 「すまねぇ。アンタの動きも読めちまった。こうなったらアンタじゃアタシを止められないよ」

 ≪真佐!!≫


 左ハイキックで真佐の首を蹴り抜ける。ソフィアの眼からはまだ涙が流れている。情けなく垂れた眉とは違い、口角が上がり焦点が合ってない。


 「すまねぇ!すまねぇ!許してくれ!でも止まらないんだ。アタシはアタシが好きになったヤツを殺す(やる)時が一番気持ちいいんだぁあああああ。仕方ねぇぇぇえんだよぉぉぉおおお!」


 ソフィアが行ったり来たりしながら、真佐と木崎の頭を交互に複数回ずつ殴り続ける。

 木崎が立ち上がろうとすると腹に膝蹴りを入れ、また頭を殴る。

 

 「大好きなヤツの血がアタシの手にかかるのが好きなんだ。大好きなヤツがアタシに命乞いをするのもなんともいえない。馬乗りになって命乞いの声が聞こえなくなるまで殴り続けている時にアタシは本当に生きてるんだって思えちまう」


 ソフィアが木崎の上に馬乗りになり、頭を殴る。ドコンドコン


 「木崎。アタシはあんたを簡単に殺したりしねぇよ?だって、アタシたちはこうやって死に近づきながら愛し合ってるんだからよぉ」


 倒れていた真佐が起き上がり、渾身の力を振り絞り横に薙ぐ。

 ソフィアは高々と跳び上がり、斬撃をよけた。


 「ソフィア!止めるのじゃ!」

 「もう無理なんだよぉ。許してくれなんていえねぇのは分かってる。だからよぉアタシにいたぶられて、泣いて、喚いて、懇願して、そして何も言えなくなって死んでくれよぉ」


 ソフィアを光が包みだす。


 「ま、待ってくれよ!今からじゃねぇか!アタシは木崎たちとヤリてぇんだよ!いやだぁぁぁあああ!!!」


 ソフィアが逃げるように走るが、足から徐々に消えていく。

 真佐はソフィアが消え切る前に急ぎ木崎に近寄る。膝をつき、呼びかける。


 「木崎!大丈夫か!?」

 ≪真佐!木崎はどうした!?何があった!?≫

 「木崎!木崎!!」


週一ペース続けていきます。

たぶん!!

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