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仕事をクビになったら、異世界から来た女の子を捕まえることになった  作者: 藤原・インスパイア・十四六
刀の少女
8/32

銀髪の女

久々のバトルシーンです。

 銀髪で茶褐色の肌をツヤツヤがきらめき、衣服から出た引き締まった太腿や二の腕が(たくま)しさを際立たせている。少女と呼ぶには大きく、女性と呼ぶには幼さの残る銀髪の女。

 銀髪の女は、一度消えた自分の身体がまだ存在することを確かめるように手首や肩を触っている。


 「なんだこれ…?身体が重い…」


 次に屈伸を始めた銀髪の女。

 木崎は頭の中を整理するように、もう一度真佐に同じ質問をした。


 「あの銀髪の少女のことを真佐は知らないのか?」

 「ああ、あのような女子(おなご)、見当もつかぬ」

 「ま、真佐が会ってないだけで、同じ世界の人なんじゃないか?」


 (俺は何を焦っているんだ)


 「いや、恐らくじゃが、同じ世界のものではあるまい。私には分からぬのじゃが、刀が怯えておる。先ほどからガタガタと震えておるのじゃ。そなたらと初めて会った時もこんな感じじゃったかな」


 「マジかよ。刀が間違ってるんじゃないか?」


 銀髪の女が首の筋を伸ばす仕草をした後、こちらを見据えるように睨んでくる。

 銀髪の女の目を見て、木崎は確信した。


 (こいつはヤバい。これまでにあの銀髪の女と同じ目を幾度となく見てきたような気がする。刑事の勘か。あれは人を殺した経験がある者の目だ)


 自然と力が入ってしまう身体をほぐすように両肩を回す木崎。


 (あの殺伐とした気配、ラブコメディのマンガにはおよそ出てくるキャラクターではなさそうだ。バトルマンガ。しかも殺しなどが平然と行われるグロテスクな部分を含んだモノである可能性が高い)


 「木崎。そちが行かぬなら、私から行かせてもらうぞ」


 真佐の鯉口を切り、いつでも刀を出せる構えに入る。


 「待て待て。落ちつけ真佐」


 (そうだ落ち着け俺)

 

 「いいか?俺たちは必ずしも戦う必要はないんだ。それに今は倒すことより、捕まえることの優先順位が上がった。そんな時だ。争いを避ける為にもまずは日本人らしく会話といこうじゃないか」


 (そうだ。まだ銀髪の女がそうと決まった訳じゃない)


 木崎は表情を和らげ、銀髪の女に話しかける。


 「すみませ~ん。そこの銀髪のお姉さん。お姉さんのお名前伺ってもいいですか?」


 「…だ…」


 銀髪の女が何か話したようだ

 

 「え?聞こえませ…」

 「ここはどこだ?!」

 「ここは日本という国です。もしかするとアナタがいた世界の日本とは少し違うかもしれませんが、ここは日本という国です。安心して下さい」

 

 銀髪の女が日本であることを確認するように辺りを見回している。


 「それで、お姉さんのお名前何ていうの?」

「なんで、アンタらに教えなきゃなんねぇんだ」


 真佐が話し出す。


 「無礼を詫びよう。こちらから自己紹介を致す。私の名は真佐と申す」

 「は?だから?アタシは答えねぇよ」

 「何?貴様その態度はなんだ?そこに直れ!」

 「おう?やんのか?お嬢ちゃん」

 「お嬢ちゃんではない!!」


 (ちっ名前だけでも聞き出せればと思ったが、こいつがどこから来たのか特定できると思ったんだが…。それにしても真佐沸点低すぎるな…)


 口喧嘩では相手の方が一枚上手のようだ。真佐が良いようにやられて、怒り散らしている。フンガフンガ


 「さてと…」


 銀髪の女の仕切り直すような言い様。


 「やるか」


 二人に向かって突っ込んでくる銀髪の女。一発目の右ストレートを木崎が手で受けた。

 

 (お、重い…)


 「へへへ」


 銀髪の女は笑いながら、右手を引く動作に合わせ時計回りに360度回転し、右脚で後ろ回し蹴りを入れてくる。

 咄嗟に腕で受けようとした木崎の前に真佐が入り込み、刀の鞘で蹴りを受け止める。


 「真佐!」

 「木崎!世界の違うそちでは、分が悪い。私に任せておけ」

 「へへへ、見せつけてくれるねぇ。お二人」


 真佐が、蹴りを跳ね返し、振り上げた刀を鞘に入ったまま打ち下ろす。ドスン

 銀髪の女は蹴りを跳ね除けられた反動を利用して、左手を地面につき左足を高く浮かせていた。振り下ろされる左キック。

 真佐は刀を振り下ろした状態で身動きができない。

 木崎が左足を頭上に蹴り上げ、靴の底で相手の蹴りを受ける。


 銀髪の女が数回後転し、距離を空ける。


 「へぇ~面白れぇじゃねぇか」

 「なぜ?攻撃してきた!」

 

 銀髪の女は質問の意図が分からないのか、顔がキョトンとしている。


 「なぜ、戦う理由も聞かず攻撃してきた!?」

 「え~、そんなの面白そうだからに決まってんだろ?頭おかしいんじゃねぇのか」

 「それはお前だろ?!」

 

 また、銀髪の女が一直線に突っ込んでくる。


 「ガタガタうるせぇよ。おっさん」


 また右ストレートが木崎に向かってくるが、当たる手前で勢いが弱まり、拳が引き戻される。

 そう思った瞬間、真佐の腹に左フックが入っていた。ボフ


 「くっ…!!」

 

 真佐が後方へ転がっていた。転がった先でも腹を抱えうずくまっている。


 「お嬢ちゃん軽いねぇ。そんなに飛ぶとは思わねぇからな」


 真佐が腹を押さえながら、立ち上がる。


 「受け身も知らぬ輩が、聞いた口を…」


 (真佐は、腹を打たれる瞬間腰を引き、威力を弱めていた。しかし、あの威力。通常の打ちとは思えない程の凄まじさ。弱まりきらなかった力を転がることで、ダメージを最小限に抑えたか。)


 今度は真佐が突っ込む。刀は鞘に差したまま。鞘ごと刀を振り回す。

 銀髪の女は、真佐の斬撃を、笑みを浮かべたまま避けていく。


 「おいおい、お嬢ちゃんの本気はこんなもんかよ?」

 

 真佐が鞘を抜き払う。


 「木崎すまぬ!この私が好きな世界を崩したくなったのじゃが。しかし、案ずるな!すぐに仕留めてみせよう」


 銀髪の女がニヤニヤと笑い堪えている。


 「いくぞ!」


 距離のある所から真佐が刀を振り下ろす。風圧が銀髪の女を襲う。

 だが、銀髪の女は一歩右へ動くことで真佐の斬撃波を避ける。


 「見事じゃ。じゃが、そう何度も続くかの?」


 真佐が縦に横にと斬撃波を繰り返し放つが、軽いフットワークと柔軟な身体で全て避けられる。


 「はははは。飾りじゃねぇみたいだが、まぁ扇風機みたいなもんかな?気持ちい~」


 幾度となく斬撃波を放ったことで、肩が上下し疲労が出てくる真佐。


 「真佐。俺が行く。その間に態勢を立て直しておけ」


 木崎が距離を詰め、ジャブを繰り返し打ち、蹴りも入れるが全て避けられる。


 「へへへ、おっさんバテてんのか?今度はこっちから…」


 銀髪の少女が渾身の右ストレートを打ってくる。


 (きた)


 「お前、格闘技つっても殴る蹴るの類のしかやってきてないだろ」

 「なんだと?!」


 木崎はしゃがみ込み、ストレートを避け、相手の二の腕を右手で持ち上げるように下から押し上げ、左手で相手の手首を持ち一本背負いで投げる


 銀髪の女が地面に叩きつけられる。バン!


 「ぐはっ!!」

 「日本の警察舐めんな!!!!!」元だがな!


 腰に手を当て、起き上がる銀髪の女。


 「へへへ…、おっさんポリ公かよ」

 「ポリ公ではない。警察と呼べ。元だがな。それと、おっさんではない。お兄さんだ。もしくはお兄ちゃんと呼べ。こう見えてまだ28歳だ。失礼にも程がある」

 

 銀髪の女がニタニタと怪しく笑う。木崎の発言にウケて笑っているのではない様子。木崎どんまい!


 銀髪の女を包むように地面から光が現れてくる。

 銀髪の女が透けていく自分の手を見て、驚いている。


 「な、なんだ!?うわぁー!!」


 木崎の時計に善行寺からの通信が入ってくる。

 ≪まもなく、10分が経つ。何か情報は手にできたか?≫


 (もう10分か…)


 銀髪の女が光に包まれ消えていく。


 「とりあえず、1回目は終わったな…」

 「私は何もできなかった…」

 「そんなことないさ、真佐に助けてもらった」

 「…」

 「…」


 (どんな(ねぎら)いの言葉にも(むな)しさがつきまとう。捕まえられなかった時点で完璧な敗北と言っていいだろう)

(俺たちにあの銀髪の女を捕まえることができるだろうか)

 

 ≪木崎、疲れている所すまんが、さっそく報告をくれ≫


―――――――――――――――――――――――――――――――


 ≪今の木崎からの報告をまとめると、やはり別の作品である可能性が高いな。しかし、素手の相手に二人がかりで圧倒されるとはな…≫


 「…」

 「…すまない」


 ≪ああ、言葉が過ぎた。すまない。相手の弱点を探る為にも現段階では情報が不足している。長期戦となることも踏まえてやり方を変えよう。2回目はできるだけ銀髪の女と会話を続けろ≫

 「1回目もそうしたつもりだ」

 ≪いや違うな。木崎考えてみろ。いきなり知らない奴に名前を聞かれて、簡単に答えるか?一見関係のないような話でも会話が続くよう、努力してみてくれ≫

 「う~ん。分かるような気もするが」

 ≪取り調べをしていた刑事なら、こういったことは得意なんだろうが、お前は警官の頃、中での仕事を嫌ってばっかで外にばっかり出ていただろ?そういった行いが今ツケとして返ってきてるんだ≫

 「身体を動かしてないと、気持ち悪いんだよ…」


 (あれ?ちょっと待てよ…)


 「善行寺、お前なんで俺が取り調べとか内勤を嫌ってたことを知ってんだよ?」

 ≪俺が鎌をかけただけで、お前はどんどん自分の情報を垂れ流している。そういった所が日頃の行動にも出てるんだ。見ていなくとも、およそ想像はつく≫

 「な、なるほど…」


 (なに感心してどうすんだ…。くそぉ…!!)


 ≪とりあえず、会話をしろ。引き延ばせ。以上だ。健闘を祈る≫


 善行寺との通信が切断される。


 「木崎。会話なら私に任せろ」


 (いや、真佐は俺よりももっとダメだろう。すぐ頭に血が上るからな)


 「これは俺がやってみるよ」



 2回目の出現を善行寺が通信で告げてきた。

 間を置かずして、銀髪の女が煙に包まれ現れる。


 「まただ。どこだよここは…?」


 木崎の顔が強張る。


 「よ、よぉ!げ、元気してるか?」

 「はぁ?またおっさんかよ」

 「おっさんではない。お兄さんだ。そ、そんなことより天気がいいな~。今日は」

 「何言ってんだおっさん。曇りじゃねぇか」


 何も考えていなかったのか、咄嗟に口から出た言葉に慌てる木崎。


 「え?あ?えーと、そのあれだ。夏は曇りの方が気持ちがいい天気だな~と思っただけだ。うん。そう!そういうことだ!!」


 銀髪の女が首を傾げている。


 「なんかよくわからねぇけど、まぁやっか」

 「お、おい!ちょっ待て」


 銀髪の女が飛び込んでくる。

  

 「木崎!交渉決裂じゃ!」


 真佐が鞘を抜き払い、銀髪の女へ向かっていく。

 真佐が銀髪の女に斬りかかるが、刀が空を切る。代わりに膝裏に蹴りを入れられ、片膝をつく真佐。


 (な、なぜだ?!関係ない話をしたのに、何も話が進まなかったぞ…。善行寺の野郎嘘を教えやがったな~)


 「善行寺のくそったれ~!!」うおー!!


 その間も真佐は執拗に銀髪の女に斬りかかる。だが、一度としてその刀は相手を斬ってはいない。

 それでも真佐は銀髪の女への攻撃を止めない。


 「くそ!なぜ当たらんのじゃ!」

 「おいおい、アタシの方がリーチは短いんだぜ?なんで当たんねぇんだよ」

 「そんなこと私が知りたいわ!」


 真佐が相手の足を狙い、横一閃に薙ぎ払うが、飛び上がりかわされる。


 「そろそろ、こっちの番かな?お嬢ちゃん」


 銀髪の女が真佐に殴りかかってくる。


 「拳なんぞ、刃先をそちに向けておれば、何も恐れるものでもない」

 「さぁ?ホントにそうかな。頑張って抗ってみろよ」


 銀髪の女が打ってくる拳の速さに細かな修正が利かず、顔面や肩、胸、腹に打撃を受ける真佐。

 

 「うっ!がっ!うはっ!ぐっ!」

 「刃先をこっち向けてくるってことはよ、お嬢ちゃんの身を守る幅も狭まるってことだぜ?アタシのパンチが目で追えて、刀を拳の軌道に合わせれるなら別だがな!」


 殴打が続く。防戦一方の真佐。刃先を銀髪の女に向けていたが、それでは防ぎきれず、刃先を上に向け鎬地(しのぎじ)を持ち、刀の側面で打たれてくる拳を防ぐことで精一杯のようだ。


 「真佐!どけ!」


 木崎が二人の間に割って入ってくる。銀髪の女が打ってくる拳を掴む。木崎。


 「俺が相手してやる!」


 木崎が相手の拳を握ったまま、拘束するように関節が曲がらない方へ動かす。

 明らかに顔を歪ませる銀髪の女。


 「くそっ!」

 「拘束したぞ!観念しろ!」


 歪んだ顔をパッと露骨なだらしない笑みへと変化する。


 「ってな、こんなもん痛くもねぇや」


 銀髪の女が自信の肘の関節を抜き、木崎の顎めがけてつま先で蹴りを入れる。


 「がっ!」


 顎を蹴られ、脳震盪ぎみにふらつく木崎。

 慣れた手つきで抜けた肘を入れる銀髪の女。ゴキ。ゴキ。

 肘が入ったことを確認するように肘の動きを確認する。


 「仕返しといこうじゃねぇか」


 銀髪の女の渾身の一発が木崎の腹に入る。腹に入った右手を引くと同時に左拳からのフックが木崎の横顎にキレイに入る。

 間髪を空けず、右のハイキックが木崎の左耳近くに当たり、そのまま蹴りを振り抜く。

 5m程、横に跳ぶ木崎。意識を失っているのか、起き上がれずにいる。


 「木崎!」


 真佐が銀髪の女を睨む。(おぞ)ましい程、目が釣りあがり、顔が歪む。


「おのれ、よくも木崎を!!」


 真佐の雰囲気が変わる。怒りによって、メラメラと気が漂いだす。刀を振り上げる真佐。刀から湯気が立ち上っているように見える。


 「はぁっ!!」


 ドゴン!!!!!!!!

 真佐の斬撃音が凄まじい音を出す。

 銀髪の女が恐れをなして、上空へ跳び上がる。斬撃は回避したものの、すぐに真佐が跳び上がってくる。


 「そちは、少々私を怒らせすぎた。死ね」


 真佐の刀が銀髪の女の胴を横に()いだ。

 かのように見えたが、銀髪の女は態勢を思い切り後ろへ逸らし、ギリギリの所で致命傷を免れる。ただ、鼻先から血が噴き出す。


 「仕留めきれなかった…」


 銀髪の女が鼻に手をやり、自分の血がついた手を見ている。


 「おいおいアタシの血がついてるじゃねぇか。くそっ気にいらねぇ!気にいらねぇ!気にいらねぇ!気にいらねぇ!」


 頭を地面に打ちつける銀髪の女。額から血が流れる。顔は笑っている。


 「へへへ。ほれ見ろ。この額の傷。アンタがアタシに作った傷より、ひどいだろ?」


 目から涙が流れているが、顔は笑い人差し指で額を指している。


 「これでアタシ(・・・)の方がアタシ(・・・)を傷つけたことになるから、アンタが作った傷よりアタシが作った傷の方がアタシを傷つけた。アンタよりアタシが強い…。アンタよりアタシが強い…!!アンタよりアタシが強い!!」

 「狂っておる…!!」


 銀髪の女が狂ったように笑う。目の瞳孔が開いている。

真佐は彼女に同情をしたのか冷めた表情。


 「へへへ。ハハハハハハ!」


 真佐が刀の柄を握りしめる。ギュッ


 「苦しまずにあの世へ送ってやろう」


 真佐が重心を低くし、刀を鞘に収め、抜刀の構え。空気がピンと凍り付くようだ。


 その時、銀髪の女を包む光が地面から湧いてくる。


 「逃がすか!」


 真佐が急ぎ、鞘から抜刀し斬撃を打ち出すが、刀が銀髪の女を通り抜ける。

 銀髪の女が自分の消えていく手を見て、真佐を見る笑う。


 「絶対に忘れねぇ。今度はお前をいたぶらず、ソッコーでぶっ殺してやる。覚えてろ!」


バトルシーンが続きます。

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