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仕事をクビになったら、異世界から来た女の子を捕まえることになった  作者: 藤原・インスパイア・十四六
刀の少女
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海回…なるか…

少しだけ文章貯金が作れました。

もう少しは、週1ペースを続けられそうです。

 ―――日は明けて―――


 職場で集合となったので、木崎が真佐と玲香を待っている。


 「今日も真佐と外に行くんだが、本当にこんなことしていて良いのか?」

 「ああ、構わん。今のところ大町からの情報も上がってこない、新しいビッグアイの出現も確認されていない」


 善行寺はディスプレイから目を逸らさず、話続ける。


 「一日一緒にいて、お前はどう思う?」

 「何が?」

 「木崎、お前は真佐を人間として扱えるか?」

 「…は?何を言ってんだ…?」

 「真佐がどう出現してきたのかは、未だ分からんが、アニメもしくはマンガのキャラクターだ。それは確かだ。昨日一日一緒にいて、アイツを人間として認識できたか?」

 

 木崎が善行寺に近付き、目を合わせてこない善行寺を見下ろす。あきらかに表情が険しい。

 

 「真佐は、自分の意見を持っていて、実際の食べ物を食べ、俺たちと同じものを見て笑って話す、それに感情だってある。彼女を人間と呼ばないなら、何なんだ?!」


 善行寺が目だけ、木崎に向ける。

 

 「お前がそう思っているなら、それでいい。これから真佐がどんな目に遭ってとしてもお前はアイツを人間として扱ってやれよ」

 「ああ…。当然だろ」

 (何を言ってんだ?コイツ)


 事務所の扉をノックし、玲香が入ってくる。一緒に大町も入ってくる。


 「おはよ~ございます!善行寺さん!木崎さん!お二人とそこで一緒になりまして」

 「ん?真佐は?」

 「そう!それがですね!実は…」

 

 大町を静止する玲香。


 「本人に来てもらった方が早いでしょ?」

 「そ、そうですね!玲香さん」


 玲香が扉の外にいる真佐を連れてくる。真佐は恥ずかしいのか足が動かず、玲香に背中を押され、部屋へ入ってくる。


 「真佐…なのか?」


 真佐は後ろで結んでいた髪をおろし、真っ白なワンピースを着ている。とても恥ずかしそうにモジモジとしている。


 「こ、こんな格好したことなくて…。は、恥ずかしい…」

 「そんなことないわよ真佐ちゃん。すごくかわいいよ。ねぇ木崎さん」

 「あ、ああ。いつもと違ってビックリしたよ」


 真佐がさらにモジモジとする。

 

 「だから、分かってないなぁ。カワイイでしょ??」

 「あ、ああそうか。かわいいよ。真佐、すごくかわいい。似合ってる!」


 モジモジしていた真佐が顔をあげる。


 「あ、ありがとう…。ただ…」

 「ただ?」


 真佐がワンピースの丈を少し持ち上げる。


 「このスースーするのが慣れないのがどうしても…」


 笑う木崎、大町、玲香。


 「たぶんすぐ慣れるさ。それより、今日はどこか行きたい所はあるか?」


 首を傾げ、悩むような表情の真佐。


 「今日は足をのばして大阪まで行こうと思う。どこに行くと思う?」

 「うーん…、お好み焼きは昨日食べたし…」

 

 腕を組み、自信あり気な木崎。


 「正解は…、大阪で最も有名なテーマパークへ行こう!諸事情によりテーマパーク名は言えないが、Uがついて最後にJのつくテーマパークへ行こう!」

 「おお!VRが発達した現代でも実体験が味わえることをウリに、今でも人気であり続けるあのUがついて最後にJのつくテーマパークですか?!いいな!僕も行きたいな!」

 「うんうんそうだろ?大町も行くか?」

 

 テーマパークがどういったものか分からないのか、考え込む真佐。

 笑顔だった大町の顔が固まり目だけが善行寺の方へ向く。

 無表情の善行寺。


 「大町やるな。テーマパークに行ける程、(はかど)ってるのか。報告を楽しみにしている」


 言葉の内容とは裏腹に感情が(こも)っていない善行寺。

 善行寺を見て、震え上がる大町。


 「キョウハ シゴトガ シタイキブン ダッタナ」

 「おい、どうしたんだ!大町!これが善行寺の恐怖政治なのか!?そうなのか!?」

 「キザキ サン… オゲンキデ」


 「ちくしょう~」と言いながら走って出て行く大町。

 目を細め、見送る木崎と玲香。

 何か決心をする真佐。

 

 「木崎、そのUなんとかに私は行ってみるぞ!大町が善行寺に惨い(むごい)働き方を強要されて、渋々(しぶしぶ)(あきら)める程の場所なのであろう?楽しみじゃな」

 「ま、真佐…。そんなあからさまに…」


 地下の駅構内、地下でも空気が暑くムワっとしている。前に並ぶサラリーマンがシャツの首元を開きハンカチで汗を拭い、扇子で扇いでいる。

 今日の木崎はYシャツを着ておらず、半袖のポロシャツの為、真佐は木崎の袖を掴めず、先ほどよりもさらにモジモジとして身体を揺らしている。

 電車が駅に到着し、乗り込む木崎たち3人。


 電車が発車する際に汽笛音を鳴らす。パァーン

 地下を進む電車。


 外へ出てきた電車、ボックス席の窓側に座った真佐が外の流れる風景を見ている。

 木崎が真佐を微笑ましく眺めている。睡魔も襲ってきて、ウトウトとする。



 セミが鳴いている。



 テーマパークに着く3人。

チケットで園内に入ると、玲香が真佐の手を掴み、はしゃいで走っていってしまった。


 ジェットコースターに乗る二人。ジェットコースターが動き出す。

 ベンチに座って二人に向かって手を振る木崎。

 

 ジェットコースターから降りてきた二人はキャッキャと飛び跳ねて、次のアトラクションに向かっている。木崎の存在を忘れたかのようだ。

 

 昼の水を使ったイベントがあり、それには木崎も一緒に向かった。

 上空に大きな風船が飛んできて、頭上で割られる。弾けた風船から飛沫(しぶき)のような水が落ちてくる。

 しかし、木崎の上にだけまとまった水の塊が落ちてくる。ドバババーー


 ケラケラ笑う玲香の横で、コロコロと笑う真佐。

 水がかかり、ムッとしていた木崎も二人の笑顔を見て、自然と顔が(ほころ)ぶ。


 (楽しそうでよかった)


 木崎の時計に善行寺からメッセージが入る。


 ≪真佐のマンガが発見された。帰りは事務所に寄ってくれ≫

 

 真佐は、ピョンピョン跳ねながら楽しんでいる。


 

――――――――――――――――――――――――――――――――


 事務所に戻ってきた3人。

 木崎が真佐をおんぶしている。帰ってくる途中で寝てしまったようだ。


 「お帰りなさい。真佐ちゃん寝ちゃったんですね」

 「ああ、はしゃぎ疲れたんだろうな」

 「楽しかったんでしょうね」

 「お昼ご飯を食べてた時は大変でしたね。木崎さん」

 「ああ」

 「何があったんですか?」

 「真佐ちゃんって、目が大きくてかわいいから、横に座ってた人に写真を一緒に撮って欲しいって言われて。そしたら、近くにいた人たちもバァーって集まってきちゃって大変だったんです」

 

 大町が噛みしめるように頷いている。

 

 「真佐ちゃんなら、そうなるのも分かる」


 善行寺が眼鏡を外し、肩が凝ったのか背伸びをしてから、首を左右に曲げてまた眼鏡をつけた。

 

 「大町、木崎たちも帰ってきたことだ。報告をしてくれ」

 「あ、そうでしたね」


 大町が資料とマンガを取り出す。


 「真佐ちゃんの出典場所が特定できました。電子漫画雑誌『コミック電脳』にて2021年後半から半年連載されていたマンガです」


 大町が資料をめくる。


 「作者は多奈(たな)可仲汰(かなかた)という人のようです。単行本1巻のみ出ています。タイトルは、『そちらに村正はありますか?』というラブコメマンガのようです」

 「真佐はヒロインか?」

 「そうです木崎さん。設定は、古美術商の父親の息子である主人公の家に真佐が転がり込むというものです」


 大町が涙ぐむ。


 「これが良い話なんですよ。基本的にはラブコメなんですがね。頭の良い高校生の主人公は、古美術商を継ぎたくないんです。自分は医者になりたいと。でも、真佐と過ごしていく上で古美術の魅力を感じていくんですよ!!」

 

 大町が木崎に単行本を手渡す。


 「読んでくださいね。木崎さん」

 「ああ」


 そういった木崎は、単行本を読もうともせず、机の上に置き、別室に歩いて行く。


 「木崎さんどうしたんですか?読まないんですか?」


 木崎は振り返りもせず、歩いて行く。


 「便所だよ」

 「トイレはそっちじゃないですよー」


 一度止まり、また歩き出す木崎。


 「じゃあトイレじゃない。寝てくるわ」


 木崎はなぜかむしゃくしゃとしていた。朝、善行寺に言われた一言が脳裏に浮かぶ。


 【お前は真佐を人間として扱えるか?】

 (そんなの決まってるじゃないか!)


 屋上に上がり、風に当たってみた。このぐらいの時間になると暑さは弱まり、秋に向かう準備をしているかのように涼しい風も吹いてくる。


 (真佐は真佐だよな…)

 (俺が知っている真佐もマンガの中の真佐も、全てが真佐本人なんだ…)


 頭が少し冷えたのか、木崎が善行寺たちの待つ部屋に戻る。


 扉を開けると、真佐が目を覚ましていた。


 「ああ!木崎!どこに行っておったのじゃ?」

 

 ぴょんぴょんと跳ねるように近づいてくる真佐。


 「ちょっと風に当たっていたよ。真佐、この世界は好きか?」

 「好きじゃ!みなもおるしな!」


 木崎が真佐の頭を髪がクシャクシャになるほど撫でる。やめろやめろと言っている真佐。


 「真佐。先程の話だが…」

 「ああ、間違いないと思う。これまでの5人は私が知っている人物じゃよ善行寺殿」

 「4体目もそうか?」

 「私も見た訳ではないので、断言は致しかねるが、妖刀村正を狙う一党の一人じゃよ」

 「これで分かってきたな」


 善行寺が自分の机の上に浮く電子ディスプレイを掴み、皆が見やすい場所へ移動する。

 電子ディスプレイの端を持ち、伸ばすような動作をし、電子ディプレイを大きなプロジェタクの投射画のようにする。

 電子ディスプレイには、これまでのビッグアイ事件の相関図が記されている。


 「これまでに当事件に出てきた6体のキャラクター達は、『そちらに村正はありますか?』に出てくるキャラクターだと判明した。次出てくるキャラクターもこのマンガのキャラクターである可能性が高い」

 

 真佐が頷く。


 「駆除、もしくは捕獲をしなければならん訳だが…」

 「おい、善行寺。そういう言い方はねぇだろ?真佐がいるんだ」

 「私はいいぞ。善行寺殿続けてくれ」

 

 善行寺が頷き、話を続ける。


 「ビッグアイが出現してくる度に、逐次対応することは当たり前だが、なぜビッグアイが発生しているのか。調べることも進めていかなければならない。その為にも真佐からの情報は重要であり、次に出てくるビッグアイも駆除でなく、捕獲が望ましい」

 「僕は何をしたらいいですか?善行寺さん」

 「大町は出版社に行き、この多奈可仲汰について調べてきてくれ。木崎は真佐と7体目の対応策を考えておいてくれ」

 

 大町と真佐が頷く。木崎はやる気が無さそうに机に尻を乗せて立っている。


 「真佐。明日はどこへ行く?海は行ったことあるのか?」

 「え?!木崎さんここで、(・・)(・・)をするんですか?!」

 「(・・)(・・)?あーもう!大町。お前が入ってくると話がこじれる。真佐、海は行ったことあるか?」

 「海ならあっちの世界で一度、みなで行ったな」

 「(・・)(・・)やってんだ…。あとでしっかり読もうっと」

 「海で何をしたかと聞かれると、答えに苦しむが、ちょうどみなと仲良くなった後に行ったので、よく覚えておる」

 「うわ~、やっぱり(・・)(・・)だ~」

 

 木崎が大町を殴り飛ばす。ピュ~ン


 「じゃあ、明日までに考えておいてやるよ」

 「いいな~木崎さん」

 

 木崎が部屋を出て行こうとする。


 「木崎!」

 

 真佐が呼び止め、木崎が振り向く。


 「木崎は、どこにも行かぬな?」


 間が空き、笑う木崎。


 「ああ、お前もな。真佐」



 ―――次の日―――



 木崎は、時計の呼び出し音で目を覚ます。善行寺からの通信が入っていた。


 ≪7体目が現れる。至急集まってくれ≫


 警察の頃のくせか、思いのほか身支度に時間がかからない。急ぎ事務所へ向かう。


 事務所には大町と善行寺が先に集まっていた。少し遅れて、真佐が入ってきた。


 「今日は玲香は仕事で来れないようじゃ」


 善行寺が頷き、説明を始める。

 

 「今回、7体目は京都市役所に出現する。木崎と真佐は、急ぎ市役所へ向かってくれ」

 「善行寺さん。僕はどうすれば…?」

 「大町には、別の仕事を頼む。二人が行った後伝える。木崎!真佐!すぐに出動してくれ」


 二人が走って外に出る。クロスバイクに乗り、走り出す木崎。横を並走する真佐。


 「遅い。先に行くぞ」


 真佐が並ぶ家の屋根を飛び越え、尋常でない速さで木崎を離していく。


 (ちくしょう…負けてられっか…!)


 全速力で真佐を追い駆ける木崎。

 京都市役所は事務所から近く、5分とかからずに到着する。

 息を整える木崎。


 「着いたか。ちょうど今から現れそうじゃ…」

 「分かるのか?」

 「何か似た空気を感じる。そしてそれは少しずつ強くなってきよる」


 空がいきなり曇りはじめ、突然雷光が一筋落ちてくる。ゴロゴロドッカーン

 その後、曇り空が一気に晴れ、雷が落ちた辺りには煙が漂っている。

 「現れよったか」

 

 木崎が特製の手袋をした手首にもう片方の手をぐるりと回す。


 煙が晴れる。出てきたのは、男性の短髪程に短いベリーショートの銀髪に茶褐色の肌で袖なしスポーツタイプの上にこれもスポーツタイプの短パンを履いた女性。あきらかにボクシングなどの格闘技をしていそうなスタイル。


 「………」

 「真佐、あれは誰だ?」

 「………」

 「真佐?」

 「あれは、誰じゃ…?」

 「なにっ…?!」


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