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奪取

相棒のシマムラと昼食をしている時、一つ奇妙な噂を耳にした。

育ちの良さそうな男と女が会話をしているのを盗み聞きしたのが始まりだ。

男と女曰く、敵国の王女が捕虜として囚われている。

男と女曰く、奪還のために敵国の精鋭が密入国している。

男と女曰く、闇オークションで競りに出されるとのこと。

俺はすぐさま金の匂いがするのを感じた。

最近はドブさらいと、ツノうさぎ狩りに身を落としていた身としては、絶好のチャンスだと思った。

「シマムラ、良い話がある。」

俺がそう言うとシマムラは胡散臭そうな顔をした。

「それは真っ当な話なのか?」

「いや、真っ当な話ではないな、どちらかと言うと賭け事に近い」

シマムラは眉間に皺を寄せる強面に顔が余計険しくなり老けた顔へと変貌した。

「サイトー、お前忘れたのか?」

「何をだ?」

俺がそう言うと奴はなんでこったと天を仰ぐ、酒場の天井など見て何が面白いんだが、俺にはよくわからない。シミの数を数えて楽しむ奴もいたような気がする。

「前の仕事のことだ。」

「ドブさらいか?」

「それは最近の生活であって仕事ではない。」

シマムラの言葉で思い出す、前に受けた仕事といえば、エルフを捕まえて髪の毛の薄い太っちょな男に納品するというものだ。ほとばしる女好きの業が、毛根を死滅させたのだと勝手にストーリーを作ったので、俺としてはよく覚えている。

「あれか、エルフを捕らえるという奴か?」

「ああ、そうだ。お前は簡単な仕事だと言って引き受けただろう。」

「簡単だっただろう。」

「確かに簡単だった、エルフの娘を捕まえる予定だったが、結局捕まえたのは少年だった。」

「まぁ、奴らは男も女も身綺麗な顔立ちをしているから仕方がないだろ。」

俺の言葉にシマムラはイラっとしたようだ。一回の話題で3回までシマムラは我慢してくれるのは経験則でわかる。ただ、3回を超えると戦争になる。

「依頼人は娘をご所望だったが、お前は、少年を女装させて突き出す準備をしていた。」

「女装させておけば言い訳できるだろう。」

俺としては依頼人には余計な物はついてますが穴はちゃんとありますよとアピールしたんだがな。

「確かにそうだが、依頼人はカンカンだった。それはもう火山が噴火したようにだ。」

「確かにあれはそれくらい真っ赤だったな。」

「それで俺たちはトラブった。お前が依頼人を殺したせいで。」

「そりゃ誰だって間違いはある、山火事に水は無効だって学校で習わなかっただろう。それと同じで、依頼人をぶっ殺したせいで逃亡生活を送ることになるとは先生は言ってなかったから仕方がないさ。」

「戯言をほざくな、おかげで俺らはエルフを連れて逃亡する羽目になった。」

「お前が3人も護衛を始末しなければもうちょっと穏便に行けたと俺は思うぜ。」

「テメェが護衛1人を始末したせいで、成り行きで3人あの世に送る羽目になったんだろう。その後に勇者にばったり出くわしてより悲惨になった。」

「同郷に会えたのは幸運だろう。」

あのお花畑勇者と出会ったのはまさに幸運だった。いろんな意味で

「おかげで殺し合いをして、よりお尋ね者になったがな。エルフを拉致ってたのが仇だった。」

「次は穏便にお話ができるといいな。」

「俺はそんなことを求めてるわけじゃない。前から言っているが計画性と報連相をしっかりしろ、もう、ハズレを引くのはウンザリだ。」

よしギリギリ3回までのルールは守られたシマムラの青筋は三つしかない。

戦争は回避された万歳!

「大丈夫、次は大丈夫だ。」

「行き当たりばったりじゃないんだな?」

シマムラは睨むように俺を問い詰める。大丈夫だ、今回は大金を得るチャンスが到来している。たぶん

「まぁ聞け、というよりも巻き込んだ方が早い。」

俺はナイフを抜き、怪しい男女に近づいていく。

よく観察すると身なりがなかなか良く、能力もなかなか高そうに感じる。

最悪、逃げられたとしても拷問でもして、情報を吐かせればいい。そう思うとワクワクが俺の中を渦巻いていく。

「お兄さん、お姉さん、面白そうな話してるね。」

俺がそう言うと、2人は警戒したように俺を見た。




闇オークションに仮面の二人組の男が乱入してきたのはオークションの目玉であるカストリア王国第三王女アリシア・オルフ・カストリアの競りが始まる瞬間であった。

黒い髪の二人組、その特徴だけでわかることがある。

エルブレッドの戦場、アルムレアの丘の戦いで悪魔と呼ばれた二人組の暗殺者だ。

その証拠とも言うようにオークション会場に一つの爆裂が走った。


「おい、サイトーやりすぎだ。目標に傷でもつけたらどうするつもりだ。」

シマムラは怒ったように喚くというか、怒っていた。

「ドブさらいじゃ、いつもできないだろう?だから、久々なんで火力をミスった。」

俺が心が踊りながら魔法を使うとシマムラは怒りながら気絶している王女を肩に担ぐ。王女の膨よかな胸が奴の背中に当たっているのは正直羨ましい。後で存分に揉もうと思う。

「よし、ずらかるぞ。」

シマムラと一緒にうめき声と血の池を作ったオークション会場を後にする。

久々に魔法を使うとスカッとした。

やはりストレスを溜めるのは良くない。

俺とシマムラは王女を抱えて夜の街へと走り出した。



次回予告

騒ぎは起きたがオークション会場から王女を奪取したサイトーとシマムラ。

彼らは王女とともに国境を目指す。

迫り来る追跡者から逃れることはできるのか?

次回、敵襲

2人の旅路が始まった。

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