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表と裏の狭間の世界で  作者: 珠椛
第1章
6/14

計画

 廊下はやけに静かだった。

 人っ子一人いない。人の気配すら感じない空間は、定時制の学生がいる事を思わず忘れそうになる程静寂に包まれている。


「話は終わった?」

 廊下に出た途端ふいに横から声をかけられ、アカリの肩が跳ねる。どうやら二人の会話が終わるのをずっと待っていたらしい。

「え、えぇ、終わったわ」

「ふーん?」

 さして興味がなかったのか、カナヤは適当な相槌を打ってフイと視線を逸らす。


「で、これからはどうするつもり?」

 ぶっきらぼうにカナヤがアカリに問う。何処に向かうのか、という事だろう。

「とりあえず、校内を片っ端から探してみるしかないわ。何処にいるのか、見当もつかないもの」

「ならー...四階には行かない方がいいよー...」

 二人の会話に、今まで空気だったミワが口を挟む。

「どうして?」

「危険だからって、言われてるんだー...。こっちでもねー...滅多に立ち入らないんだよー...。まぁ、立入禁止区域だしねー...」

「何故立入禁止なの?」

「さぁー...。詳しい事は分からないなぁ...。生徒会や先生に聞けば、何かしらの情報を得る事は出来るかもしれないけどー...」

「会ったら確実にこっち側じゃないって悟られるだろうね。生徒会や先生は、転校生含め全生徒を把握してるから」

 ミワに続いて口を開き、淡々と述べるカナヤに、アカリはがっくりと項垂れる。

「そうよね...。なら、カナヤかミワが生徒会なり先生に聞くっていうのは?」

「そんな事をやったらー...不審がられるよー...?」

「た、確かにそうね...」


 はぁ、と重たい溜め息を吐いて、アカリは額に手を当てる。これは四階に行く事を諦めなければならない。

「君が探してる人も、こっちの友達とやらから聞いてるんじゃない?わざわざ危ない所に行きたがる人なわけ?」

「いいえ。...なら、いないと仮定してもいいのかしら」

「うん...まぁ、いいんじゃない?」

 アカリの言葉にカナヤは煮え切らない様な返答で頷く。「それで?結局どうするの?」

 早く決めて欲しい。その雰囲気がカナヤから出ている。面倒事はさっさと終わらせたいのだろうと、アカリは胸中でぼんやりと思う。

 対するミワはニコニコと笑ったまま、アカリの返答を待っている。これはこれでプレッシャーだ。いっそ急かされた方がマシである。

「...とりあえず、この階から探してみるわ。因みに、この校舎は何階建て?」

「四階かなぁー...」

「分かったわ。今は二階だから...結構かかりそうね。まぁ最初だし、二階を徹底的に探してみるわ。えーと、三人で分かれて...」

 「はぁ?」心底呆れた様に、カナヤが声をあげる。「本当馬鹿だね、君」


「僕は君の監視役なんだから、君から目を離すわけないでしょ。少なくとも、僕と君は一緒に行動だよ」

 当然でしょ?とでも言いたげな視線がアカリに向けられる。出会ってまだそんなに時間が経っていないというのに、アカリはカナヤに呆れられてしかいない。

「それならー...もういっそ皆一緒に行動しようよー...。効率は悪いけど、不穏な空気の中で探すのも嫌でしょー...?」

 ミワの提案にまたしてもカナヤは嫌そうな顔をしたが、開きかけた口を閉じ、何も言おうとはしなかった。

 そしてアカリも、これ以上口を出すべきではないと思ったからか、はたまたその方が良いと思ったからか、「そうね」と意見を呑んだ。

「えーと、この階に特別教室はある?」

「あるよー...。技術室」

「タクマは物作りが得意だから、そこにいるかもしれないわ。そこに行きましょう」

 「はいはーい」そう言ってミワがアカリの隣に立ち、歩みを進める。カナヤは二人の後ろからついてきている。


「こっちに不法侵入しといて、わざわざそんな所行くのかな...ったく、まぁいいか...」


 そんなカナヤの呟きは二人には届かず、静かに廊下に溶けていった。

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