第8話 ファンタジーが息してないよ……
「自己紹介をしましょう! ヒロシ!」
そんな事をエイリアンは言ってきた。
「いや、ちょっと待ておかしい、なんで僕の名前を知ってるんだ!?」
僕の記憶によればこの未確認生命体には僕の個人情報を与えた覚えはどこにもないんだけど。
「いや、だって脳みそ修理した時全部中身見たから。悪いとは思ったけど君を君のままにする為にも仕方がなかったんだよ。」
「怖くてずっと聞けなかったんだけど、治すじゃなくて修理なのは……」
「君、完全に壊れちゃってたからね。 新しいパーツとかくっつけたりもしたから治すとはいえないかなぁ、なんて。」
悲報! 僕氏元の僕ではない説!
「そんな事よりさ、先に私の自己紹介させてよ。話が進まないじゃない。」
「お、おう。」
そんなことって…… 僕に一目惚れしたって割には存外な扱いだなぁ。
そんな事思っていると、彼女は複眼をクリクリさせて、
「#ザ##%%ザ==ザザザ!!」
「ぎにゃああー!み、耳が!みみがー!」
ノイズをさらに不快にさせて鼓膜に響く音がする!た、たえられん!!
「あーごめんなさい。君の脳じゃ私の名前は耐えられないのかぁ うーん、できたら本名で呼んでほしいけど仕方がないか。」
「発音できないから! マジ勘弁して下さい」
不定の狂気に陥りそうだよ!SFホラーはこれだから嫌なんだ!
「じゃあ君の言語に合わせると…… うん、私の名前はエイリアン。よろしくね、ヒロシ!」
「そのままじゃん! 固有名詞のままじゃん!」
「だって、私の名前の意味って“異星に住まうもの”って言葉からきているから。ヒロシの言語に合わせるとエイリアンって言葉が一番ヒットしたんだもん。」
「エイリアンってそういう意味だっけか? ああ、僕の知識を元にしているからか!」
「そんなとこね、まあ呼びづらかったらエリとかリアとか、可愛い語感でいってもいいよ!」
どの見た目して言っているんだコイツは、声だけはかわいいが、
「じゃあ、エリリアでどうでしょう?」
「エリリア…… うん! いいわね! 私はエリリア! 君の伴侶になる女よ!」
僕はこいつコミュ力高いなぁ、なんて思いながら最後の言葉は聞かなかったことにした。