第5話 僕に抗う術なんか……
地獄のような日々が過ぎてゆく。
死にかければすぐさま回復魔法が飛んできて、治ればまた拷問室へ。
ただ最近は拷問というよりも何かの実験にでもされているような感じであった。
まっ、どっちも変わらないけどね。
あいつら精神を癒す魔法も使えるらしく、あんまり酷いとそこら辺の記憶すらなかったりしている。
外が見えない為あれからもうどれくらい経ったかわからないが、ここ最近牢屋の場所が移った。
新しい場所は地下ではなくなり鉄格子の窓から外が見えるようになった。僕は星には詳しくない、その為か随分と久しぶりに見えた夜空は日本でみた夜空と変わらないように見えてしまった。
涙があふれた。
たすけて、たすけてよ。
そう言わずにはいられなかった。
――拷問部屋に行くことがなくなった。
それは良い事だけどいい事じゃないんだろう。三日置きぐらいに兵士が来て人を連れていく、そして戻ってこない。
死にたくない。
こんな目に遭いながらも僕は死にたくない。死にたくないんだ!
最近は怖くて眠れない。朝がもう来ないのではないかと不安で仕方がないんだ。
そんな日が続いたせいだろうか。ついにもの凄い睡魔が襲ってきた。
ああ、もう限界だ……
――ドーン!!
耳を劈く音に飛び起きる。
「なっ! なんだ今の音!」
そういった瞬間!
ドーン!!!
目の前の壁が音と共に破壊されその衝撃に僕は鉄格子へと転げまわった。
粉塵のなかから人影のようなものがこちらに近づいてくる。だが、僕はもうファンタジーに期待しない、きっとこの後もよくある展開になんかなりゃしないんでしょ?
そう思っている間にも目の前のそれの姿が……
それの………
ちょっと待て、なんだおまえは!?
そいつは想像の範疇を超えた姿をしていた。
まずなんか半透明の宇宙服みたいのを着ている。
えっ!ファンタジーどこいった?
次に半透明なんで中身が見えるんだが…… SAN値がゴリゴリ無くなる見た目をしている。ちょっと詳しくいうと、蟲の体に人の臓器が混ぜ込まれたような感じです。
うん、度重なるあの拷問を経てなければここで狂ってたね。んで、なんか蟲の複眼みたいのをクリクリ動かしながらこちらを観察している。
クリクリ動かしたと思ったらソイツは背中にある管みたいのからポーって音が鳴るみたいに蒸気を出してなんかソワソワし始めた。
あーこれあれだ、エイリアンって奴だわ。間違ってもこれを宇宙人とは呼びたくないなぁ。
えっ、こいつに喰われて僕死ぬんですか?
ないわー
そんなこと考えていたら、ソイツがついに近づいてきた。
そして、しゃがみこみぶつぶつと何か言った後“日本語”でこう言ってきた。
「一目惚れしました!! 助けてほしかったら付き合ってくれ!」
いや、ほんと…… どうするよ僕。