8話
聖夜との戦いから約1週間が経つ・・・。
「まだ腕の感覚が戻らないのか?」
「・・・・・うん。」
サイキッカーの中でも治りが速い來佳だが・・・今回は治る兆しが全く無かった。
聖夜にやられたお腹の方はもうとっくに治っているというのに、
両腕は肩から手にかけて包帯が巻かれ今でも熱を持ち、來佳はあれから痛みに耐えている。
「・・・コレってやっぱヤバいんだよな。」
「來佳じゃなかったら今頃悶絶死してるだろうな。」
「來佳ちゃん・・・。」
ちなみにココは琴音たちが住んでいる空き家、輝の家は努にバレてしまったため來佳は琴音たちの家にお世話になっている。
「ネム、政府から逃げてきたんだから、能力は使わず身体を「今日は調子がいいの。」でも・・・。」
1週間ネムは能力を使っていない、そのため体調がよく顔色も良い。
「來佳ちゃんの腕をネム視たの・・・でも止められなかった。」
「ネムに視させてやってくれ、あたしからも頼む。」
こういう1度決めたら曲がらないところなど本当にソックリだ。
「・・・無理しちゃダメだからね。」
ネムは來佳の腕に触る・・・数十秒後、ネムの目が開かれる。
「・・・″スター・BOOK″。」
「レナさんか・・・苦手だな。」
肩を落とす來佳・・・だけでなく他のサイキッカーもあまりいい雰囲気ではなかった。
「今の來佳をあそこに連れて行くのは危険だな。」
「ネム、あの場所嫌い。」
「スター・BOOKって?」
輝の問いに答えるのは來佳。
「世界一の情報屋で私たちの1期前の卒業生。」
「・・・あそこは裏社会の中枢だぞ?」
そんな所にいる人間・・・いったいどんなサイキッカーなのか。
「裏社会の人間とはいえただの人間だからな・・・。
超能力は使いたくはないがあたしは肉弾戦が苦手でな、來佳は戦える状態じゃないし。」
「そのことなら心配ないよ。」
そう答えた來佳の視線の先には・・・。
数時間後・・・來佳達は警察でさえ手出しできない無法地帯″ブラック・カンパニー″に来ていた。
入ったその瞬間から人相の悪い男達に声をかけられること20人目。
「ガキがこんなとこに何のよっぐはっ。」
「ココは危険だぞ~うげっ。」
「姉ちゃんらっ、うがっ。」
「しつけぇぇぇぇぇ、何なんだよココはっ。」
すべて輝が蹴散らしていた。
「神田もやるもんだな、來佳と良い勝負なんじゃないか?」
「・・・けっ、猿みたいに身軽なだけだろ?」
「ただのバカじゃなかったんだね。」
「そこのガキ2人、褒めるなら素直に褒めろや。」
最後の2人は全く褒めていない。
「ほぉ、一般人にしてはやるね~。」
「・・・っ。」
何の前触れもなく縄のようなもので全員の身動きが封じられる。
「なっ、いったいどこから・・・。」
「いや~女だったら是非とも一夜を共にしたかったね~。」
「何だ・・・コイツ?」
裏社会には不釣り合いな白衣を着た男性・・・一目見て強いと分かってしまうオーラを放っている。
「・・・・・変態。」
「おっ、琴音ちゃんじゃ~ん元気にしてた?「寄るな変態。」冷たいねぇ~裸見た仲じゃん~。」
「誤解を招く言い方をするなっ、ただの健康診断だろうがっ。」
あの琴音がうろたえていた・・・。
男のこのふざけた喋り、先程のオーラは気のせいなのだろうか。
「ガキもいると思ったらネムちゃんか~美人になった「近寄るなゲス。」
口の悪い所も琴音ちゃんに似ちゃって~将来大きくなったらおじさんとイイこっ「ネムに変なことを言うなっ。」・・・。」
琴音は風を操って男性を八つ裂きにした・・・が。
「はぁ・・・はぁ。」
「無駄な体力を使うな琴音、コイツの″影″を八つ裂きにしてもコイツは死なねぇんだから。
「おーおーさすが身体は子ども、頭脳は大人の映男君。君を見ているとおじさんはいつも切なっ。」黙れ歩く18禁。」
地面から浮き出てくる男性。
「・・・・・影?」
縄のようなものをよく見ると黒く、影にも見えなくはない。
琴音たちと知り合いっぽいこの男性もどうやらサイキッカーらしい。
「・・・で?こんな団体でおじさんに逢いに来て「アンタに会いにも逢いにでも来たわけじゃないわよ。」來佳ちゃ~~~~~んっ、逢えておじさん嬉しいっ。」
身動きの取れない來佳の腰を抱く男性・・・やりたい放題だ。
「何々っ?ついにおじさんに操くれる気に「なってねぇよ、この変態すけこまっ・・・イツッ。」・・・。」
痛みのあまり顔を歪める來佳を見て、真面目な顔になる男性。
「・・・だいぶやらかしたな・・・誰とヤりあったんだ?」
「・・・・・聖夜。」
「あのガキか・・・とうとう手を出しやがったのか。」
「テメェが言うと卑猥に聞こえるから喋んな。」
映男の的確なツッコミもこの男性には通用しない。
「この身体で何しに来たんだ?」
「スター・BOOKに会いにきたの。」
「なるほどね、あの女はさすがのおじさんも手が出せな「そんなこと聞いてない。」おじさんがみんなのガイドをしてあげよう、そうすればもうアイツらも寄ってこないよ~?」
影の縄から解放され手足が自由になったメンバー。
「・・・どういう意味?」
「この男は裏社会で有名な″闇医者″でな、恐れられているんだ・・・信じたくないが。」
「超能力も攻防適していて超能力を使わなくても強い・・・変態だが。」
「医者の腕も良いの・・・死んで欲しいけど。」
「・・・ようは凄いんだな、嫌われてるけど・・・。」
会って数分しか経っていないが、輝の中で男性は危険人物に認定された。
「黒須 直也、本当は女以外とは仲良くしたくないんだが・・・行こうか。」
「・・・っ、ちょっ、何して・・・。」
直也に横抱き(お姫様抱っこともいう)される來佳、本人は拒絶するが・・・。
「立ってるだけでも辛いんだろ?」
「・・・・・。」
直也は性格がアレだが医者としてはネムの言う通り超一流である。
「おじさんに全部まかしてくれれば安心「不安しかないんだけど。」ははは~。」
來佳達は直也を先頭にさらに奥に進む・・・。
「ココだぜ?」
着いたのはブラック・カンパニーの中でも1番ぼろい家。
「・・・どんな人なんだよ?」
「星井 レナ(ほしい)26歳、バストは8「真面目に話せ。」おじさんにとっては真面目なのに~。
彼女もサイキッカーなんだが・・・唯一レベルが無いのが彼女だ。」
「・・・・・?」
「会えば分かるさ。」
そう言って直也は扉を開ける・・・中はホコリくさい。
琴音は風を起こしホコリをすべて払う・・・便利な技である。
「・・・生活感0じゃね?」
「彼女は5年間奥の部屋から1歩も出ていないからな。
お~いレナ~?おじさんが逢いに来たよ~。」
物静か・・・人の気配さえない。
「誰もいなっ「呼んだかしら~?」ひぃっ。」
壁をすり抜けて輝の目の前に現れる女性(?)
「みんな久しぶり~元気だった?」
「ゆっ、ゆゆゆゆゆっ。」
輝はオカルトに興味はない・・・が今自分の目の前に身体が薄く、
宙にふよふよ浮いている女性がいる・・・夢ではなく現実である。
「輝、幽霊じゃねぇぞ?この女は″霊魂″のサイキッカーで本体はちゃんとこの奥に「映ちゃんもビクビクしてるくせに~。」・・・っ。」
感知のサイキッカーの映男は気配が無いものが苦手・・・レナも苦手だ。
「星井 レナで~す、よろしく神田 輝君。」
「・・・・・。」
霊体ならばどこへでも行きたい放題、除き放題だ・・・彼女に知らないことは無いくらい、彼女がスター・BOOK、世界一の情報屋だ。
「で?何が聞きたいの?ネムちゃんの予知で来たんでしょ~?」
「來佳、包帯とるぞ。」
直也は來佳の包帯を丁寧にとっていく・・・1週間前から何も変わっていない黒コゲの両腕。
「痛そ~。」
「・・・感覚は?」
「まったく・・・っ。」
「だろうな、細胞が死滅してる・・・。
來佳じゃなきゃ腕の形すら保ってねぇだろうな、おじさんの力じゃ無理だ。」
細胞自体が死滅しているなら自己回復などできるはずがない。
「・・・アイツにしか頼めねぇか・・・レナ、シャルはまだあそこにいるのか?」
「シャルって・・・。」
レベルMAXに到達した″時″のサイキッカー。
「直也、知り合いなの?」
全員が驚く・・・政府でさえ生存していることしか知らないのだ。
「行くの?誰にも関わりたくないって言ってたのに。」
「緊急事態だ・・・それに、シャルも來佳だったら許すと思うよ~。」
「・・・・・?」
どういう意味なのだろうか・・・。
「変わってないよ~今もデビル・フォレスト近くの陸地に住んでるよ~。」
「・・・・・來佳ちゃんを死なせたくないし、おじさんも行ってあげよう。」
語尾にハートがついていて気持ち悪いが・・・心強い味方ではある。
「明日港に來佳ちゃんだけ・・・って言いたいとこなんだけど、
ミュータントもたくさん出るし映男もこっ「オレもっ。」輝君・・・これ以上男を増やさないでくれるかな?第一学校は「休む。」・・・ま、いいか。」
「待て、あたしも「琴音ちゃんはネムちゃんとお留守番。」・・・。」
琴音は黙る・・・確かにネムをデビル・フォレストになど連れて行きたくはない。
「おじさんが誰も死なせないから安心しなさい。」
「まったくできないな・・・が少しは信じておく。」
「本当?じゃあ別れる前にベットで「刻まれたいか?」残念~。」
こうして來佳の腕が治る希望と、ミュータントの巣窟に向かうという不安を抱えながらブラック・カンパニーを離れる・・・。
その夜・・・直也とレナは。
「はぁ~5年ぶりの自分の身体で飲む久しぶりの酒は美味しいわ~。」
「じゃあこのままおじさんと「來佳ちゃんたちにあの場所はまだ早かったんじゃないの?」・・・。」
軽く躱される直也、レナの方が上手なようで・・・。
「いい歳だろ?特に來佳ちゃんにはさ。」
「攫われたらどうするの?」
直也は度の強いお酒を一飲み。
「・・・惚れた女の娘の1人や2人、護ってやるさ。」
直也は來佳の母親、香織と同期で主席を争う仲だった。
「惚れてるのは來佳ちゃんの方にでしょ~?このロリコン。」
「厳し~言い方。」
直也と香織は親友だった・・・。
―――「お兄さんだれ?」
「ん~お兄さんはね~君のお母さんの知り合い。」
直也と來佳が初めて会ったのは3歳の時。
「お兄さん、來佳の初めての友達になってくれる?」
「大歓迎っ、そのかわり來佳ちゃんが大人になったら操を「ありがとうっ、お兄さんっ。」・・・っ。」―――
初めてだった・・・あんなに純真無垢な笑顔で「ありがとう。」と言われたのは・・・。
「おじさん参っちゃったわ・・・。」
お酒をまた一口・・・今夜は眠れそうにない。
・・・後日、酔い潰れ何時まで経っても港に来ない直也を叩き起こしに来る一同であった・・・。




