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6話

「いかっ・・・來佳っ。」

「・・・・・んっ。」

輝に呼ばれ目を開けると、見慣れぬ天井と輝の心配そうな顔が入ってきた。

(・・・ネムを追いかけて、ネムの能力にやられて麻酔弾喰らって・・・。)

まだ麻酔が効いているのか身体がダルく上手く身体を動かせない。

 頭もうまく回らず・・・ただ自分と輝は助かった、ということだけは分かった。

「輝・・・ココは?どうやってアイツらから?」

「それなんだけどさ・・・オレもまだまだだよな、子供に助けられるなんてよ~「誰が子どもだ。」っ。」

気配もなく入ってきたのは小学生くらいの男の子・・・來佳には見覚えがあった。

「・・・映、ちゃん?」

「ちゃんつけるな、バカ來佳。」

「え?知り合い?」

「同期よ・・・卒業生の。」

輝は目を見開いて驚く。

「こんなガキがっ?「誰がガキだっ。」・・・っ。」

男の子は跳んで輝の頭を叩いた・・・並の身体能力ではない。

「輝・・・映ちゃんはこう見えて同い年なんだよ。」

「・・・誰と誰が?」

「私と映ちゃん、もちろん輝もね。」

「・・・・・はぁっ?」

どこからどう見ても小学生くらいにしか見えないのに同い年・・・?

「反動で身体の成長が途中で止まったんだよっ、文句あるか?」

「・・・反動って色々あるんだな。」

ジロジロ見ていたらまた叩かれた。

「補助タイプのサイキッカーは半永久的な反動が多いからね。」

「ってことは、映ちゃんは補助タイ「呼ぶなっ、オレの名前は武田たけだ 映男あきおだ。」・・・可愛くねぇ。」

容姿が可愛いのに名前は男らしい映男。

「だから映ちゃんか、納得「納得するなっ。」で?映ちゃんの能力って?」

「映ちゃん言うな・・・帰ってきたか。」

窓を見る映男だが、輝は何も感じない・・・とそこへ。

「起きたみたいだね、來佳。」

窓から普通に入ってくる少女。

「琴音っ。」

――――來佳が気を失った後、柔らかい風が吹いたと思ったら・・・。

「ぐぁっ・・・。」

「うっ・・・うわぁ。」

黒ずくめたちの悲鳴、輝が目を向ければ鋭い風に切り裂かれている姿だった・・・まるでカマイタチのように肉眼で風が見える。

「・・・・・。」

ネムの目が鋭く細められる。

「ずいぶんと質の悪い遊びを覚えたな・・・ネム。」

声を発したのはいつの間にか輝の目の前に現れた少女、

 ボーイッシュに切られた黒髪にメガネのレンズから見えるこげ茶色の瞳、

輝とは同年代そうなその少女は・・・身体に″風″を纏っていた。

「・・・アンタは?」

「麻酔弾で眠らされたのか・・・当分起きねーぞ琴音。」

背後から急に顔を出され驚く。

 來佳ほどではないが輝も気配には敏感な方、それなのに子ども(映男)の存在に全く気付かなかった。

「アキ、先に行ってな。」

「コイツ(輝)も連れてかよ?」

「アキが來佳を連れていけるんだったら置いて行ってもいいと思うが?」

「・・・・・連いて来い。」

子どもが自分の身長よりも高い來佳を運ぶ、というのは無理な話だ。

 輝は來佳を抱えて子供の後を連いて行った・・・。――――

「不思議なことに黒ずくめに1人も会わずにここに着いたんだよなぁ。」

「映ちゃんは″感知″のサイキッカーだから。」

「彼女は?彼女もサイキッカーだろ?」

少女に目を向ける輝。

「あたしは鈴宮すずみや 琴音ことね、來佳と同期で能力は風。」

「で、私の幼馴染。」

來佳が同期の中で1番付き合いが長いのが琴音である。

「映ちゃん、輝・・・席、はずしてもらえる?」

「「・・・・・。」」

2人は來佳の言葉に従い部屋から何も言わず出て行ってくれた。

「ネムと何があったの。」

「・・・疑問形ですらないわけね。」

「当たり前でしょ?何年琴音とネムの関係を見てきたか。」

琴音とネムは名字の通り血の繋がった姉妹、ネムが生まれてすぐ両親は死に、ネムはずっと琴音に育てられてきた。

 超能力も目覚めたのは同時、あの学校に入ってもずっと一緒だった。

「卒業試験以来、1回も連絡が取れなかった。」

もちろん琴音は連絡したが政府が全部潰していたのだ。

 ネムはそれを知らず、琴音は自分を見捨てたんだ・・・裏切ったんだと思ったのかもしれない。

「ネムはずっと政府の下で働いてたんだね。」

ネムの反動は身体がひ弱なこと、サイキッカーは超能力を使うたび体力が減る。

 ただでさえ弱い身体だ、学校でいつも倒れて医務室に運ばれていたのを來佳は覚えている・・・そのネムがレベル3に到達したのだ。

(どれだけ無理をしたんだろうか・・・。)

ネムは來佳にとっても妹のような存在・・・ただネムが心配だった。

「きっとあたしを許す日は来ないだろうね・・・ネムは。」

不安たっぷりという琴音、こんな琴音は学校時代見たことがない・・・それほどネムが大切なのだ。

「ネムは勘違いしてるだけ、また元のように戻れるよ。」

「來佳・・・。」

來佳の笑顔に琴音の顔にも笑顔が宿る。

「よーし、ネムを取り返しに行くよっ。」

ベットから飛び起きる來佳、麻酔は完全に切れたみたいだ。

「・・・相変わらず丈夫だな來佳は。」

「これも私の能力の1つみたいなものだからね・・・輝、まだ発信機動いてるんでしょ?」

「まぁな・・・ネムって子に繋がってるかは分からねぇけど。

  アキがフォローしてくれるし大丈夫だろ?な?アキ。」

「まぁ・・・な。」

來佳達が話している間にずいぶん仲が良くなったようだ・・・。

「寂しがり屋の兎さんの元に行こうか。」

「・・・そうだな、行こう。」

4人は走り出した・・・。

 4人の目的地は古びた屋敷、だが中身は政府が所有する実験施設・・・古いのは外見だけで中は最先端の設備。

個室はまるでホテルのスウィートルーム並みの広さと豪華さ、その部屋のベットではつらそうに眠っているネムの姿。

 誰かが入ってくる扉の音を聞きネムは目を開ける。

「・・・起こしたか?」

ネムは青年の問いかけに首を振る。

「大分無茶をしたな、寝て少しでも体力を回復しろ。」

「・・・來佳ちゃんたちが来るよ。」

「・・・・・フッ。」

青年は口角を上げネムの頭を優しくなでる。

「ついに来たか・・・。」

そう呟き青年は立ち上がり部屋を出た。

「お姉・・・ちゃん。」

意識を飛ばす前、無意識に琴音を呼ぶネム・・・その瞳から流れているモノを本人は知らない。

 來佳達4人は発信機と映男の感知を元にある場所に着いた。

「どうやら間違いないな、ネムはここにいる・・・輝?」

感知の能力で12歳くらいの少女がいるのを確認した映男だが、輝はその建物を見た瞬間驚愕していた。

「何で・・・何でココなんだよっ、ココは。」

そこは皆上 努が経営している孤児院だった。

「アキ、中の状況は?」

「百人近く灰持ちの奴らと・・・ガキも結構いるな、

  普通の大人もいる、どうやら実験施設みたいだが・・・。」

「努さんが・・・政府の?」

十中八九そうだろう・・・これだけ大きな施設を持っているとなると・・・。

(幹部、とみて間違いない・・・もしかしたら。)

政府側のサイキッカーと戦うことになるかもしれない・・・。

 ネムがいるなら自分たちがここに来ることなどおそらくバレているだろう、中は待ち伏せの他にどんな罠があるか分からない。

「映ちゃんと輝はここで待ってて。」

「・・・っ、ここまで来て今更っ。」

もちろん輝は反対するが・・・。

「・・・ぐだぐだうるせぇ。」

「~~~~~~っ。」

映男に膝を蹴られる・・・地味に痛く膝を抱える輝、目が涙目だ。

「何しやっ「足手纏いになりてぇのかよ、灰持ちも殺させないくせに。」・・・。」

「それに、この2人に任せればオレらはいらねぇよ。」

「ネムを見つけてすぐ帰ってくるから心配はいらないさ。」

「・・・私は施設壊す気満々なんだけどな~。」

琴音と來佳は中に入っていった。

「・・・・・。」

「・・・サイキッカーが中にいなけりゃいいけどな。」

映男の超能力のレベルでは相手がサイキッカーなのかは分からない・・・。

 映男が不安の中、來佳と琴音は施設の中を走っている・・・と広い場所に出た。

「大広間・・・扉がたくさん、骨が折れそうだし心も折れそう・・・。」

無数ともいえる位の数えきれない扉の数に地下を降りる階段、ネム1人を探すのにこの施設は広すぎる。

「アキを連れてくるべきだったな・・・と言っても戦えないアキを連れてくるのは気が引けたしな・・・來佳。」

「まだ入って3分も経ってないんだけど・・・。」

來佳の目線の先には監視カメラ・・・ネジを弾いて壊した。

 背後からたくさんの人の気配、來佳は雷を拳に纏わせ振り向いた。

「・・・・・子ども?」

幼い子どもたち・・・みんな震えた身体でナイフを持っていた。

「おっ、″お父さん″の邪魔をする奴らは僕たちが許さないぞっ。」

お父さんとは努のことだろう・・・何も知らない子どもたちを盾に自分は出てこようとしない。

「・・・むかつく。」

「うわぁぁぁぁぁ。」

男の子が1人來佳に突っ込んでくるのを來佳は手をはたきナイフを落とさせ、手首を掴んで動けなくした。

「私たちを相手にするなんて100年早いよ。」

首に手刀を入れて気絶させる・・・と同時に子ども達が一斉に襲い掛かってきた。

「・・・琴音?」

來佳と子どもたちの間に入り手をかざした琴音。

「ごめんね。」

手の平から発生する大風・・・子ども達は吹き飛ばされ壁に当たり気絶した。

「少し手荒だったかな・・・。」

「私の方が手荒になっただろうから助かったよ。」

來佳の雷は加減などできない・・・。

「・・・で?子どもの次は灰持ち?次から次へと・・・。」

「先行ってくれる?來佳。」

「ネムに会いに行くのに何で私?琴音が・・・分かったよ。

  必ず連れてくるからその不安そうな顔、どうにかしときなさいよ。」

「・・・分かってる。」

たった2人の姉妹、來佳は2人が、仲が良い姉妹だということを1番知っている人物。

(絶対に連れてくるっ・・・と言いたいとこだけど。)

走ろうとするがどこに行っていいか分からず・・・とりあえず行動しようとすると携帯が鳴った。

「輝?・・・もしもし。」

「來佳、ネムは地下にいるぞ。」

「映ちゃんさすがっ。」

來佳は携帯を繋げたまま地下への階段を降りた。

「待てっ「待つのはお前たちだ。」鈴宮 琴音っ。」

室内だというのに風が吹き荒れる。

「誰にも來佳の後を追わせない・・・お前たちの相手はこのあたしだ。」

來佳は映男のナビゲーションのもと、地下の奥に進んでいく。

「さっきから人っ子1人いないんだけど・・・映ちゃんの感知があるとしても怪しくない?」

「だがその先にネムがいるのは間違いねぇ。」

「・・・・・。」

前に海斗が言っていた病弱な女の子とはネムのことだろう・・・。

 政府の人間ならばネムの反動を知っているだろうに唇から血が流れ出す。

來佳は知っていた、政府はサイキッカーを殺さない・・・しかし死ぬ手前までは追い込むことを・・・1番の被害者は來佳だ。

「來佳っ、ネムが男と上に移動したぞっ。」

「・・・上?」

來佳は走るスピードを上げ奥の部屋に入った。

 女の子らしい家具が置いてありきれいな服もたくさん・・・だが。

(使われた形跡が全くない。)

あるのは大きなベットだけ。

「ネム・・・。」

部屋の奥にエレベーターを見つけ來佳は乗り込む、そこはあの廃工場の中だった。

(ココに繋がってたのか・・・ネムはどこに・・・。)

映男に聞こうと携帯を取り出そうとしたが・・・來佳は悪寒を感じその場から離れる。

 その瞬間置き去りになってしまった携帯が何かによって壊れる。

粉々になった携帯の破片と辺りに散らばる・・・それと一緒に散らばる液体は。

「・・・水。」

飛んできたのは水の弾丸・・・來佳にはいやというほど見覚えがある技。

(・・・まさかアンタまでっ。)

次々と飛んでくる水の弾丸を避け工場内を見渡す・・・いた。

 コンテナの上にネムを抱き、周りに水の球体を浮かばせている青年。

「・・・・・聖夜。」

かつての同期であり・・・そして1番忘れられなかった人物との悲しき再会だった・・・。


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