3話
中身の濃かった1日が終わり、週初め・・・。
來佳が輝の通う学校に転校してくる日。
「來佳ー、着替えたか?」
「うん。」
輝の呼びかけに部屋から出てきた來佳は真新しい見慣れた制服を纏っていた。
「・・・昨日の夜で見慣れたから″こっち″の方が違和感あるな。」
「仕方ないでしょ、政府に見つかる可能性を少しでも減らすためよ。」
來佳の瞳は母の香織と同じ金色と黒のオッドアイ、
世間には出ていないが香織は政治界では有名な人物で
ただでさえ顔立ちが似ている來佳はカラーコンタクトを付け両目とも黒色にすることでバレる確立を減らしている。
「「いってきます。」」
2人で神田家を出て学校に向かう。
「今更だけどさ・・・輝ってなんで普通の学校に通ってんの?
仮にも大物政治家の息子で金持ちの坊ちゃんでしょ?」
「仮にとは何だよ・・・中学ん時は一応有名な国立だったんだけどさ、
つまんなかったんだよな・・・学校も、周りの態度も。」
将来のことを期待されるのは嬉しかったが、
媚びを売ろうとするものや恨み、妬みばかりで友達などろくにできなかった・・・。
「だから高校は普通の学校にしたんだ・・・楽だぞ?バカばっかりでさ。」
「・・・ふーん。」
「お前はどうだったんだよ?一応学校行ってたんだろ?」
と言っても学校とは言えないものだったが・・・。
「最強のサイキッカーの娘だし、物心つく前から能力使えたんだろ?」
正輝と雲母の話では香織は來佳を出産するとき、
來佳は全身から雷を放出しながら生まれてきたらしい・・・それもとても強力な威力の強い雷を。
その場に立ち会っていた医者は全員死に同じ能力を持つ香織だけが生き残ったらしい。
もちろんその病院も政府の息がかかっていたため、事件になることはなかった。
普通サイキッカーとは自分で能力に気づかなければ開花しないらしい・・・
「自分は他の者と何か違う。」と意識してから自分はただの人間じゃないことに気づく。
なので早くとも物心がつく年齢じゃないと能力には目覚めないと言われている・・・が、來佳はそれを覆した。
來佳はそのため政府全員が期待していた・・・輝以上の視線が來佳を襲ったはずだ。
「・・・さぁね、私卒業試験の日まで″落ちこぼれ″だったから。」
「は?それってどういう「はよ~~~~~ッス。」げふっ。」
言葉を放とうとした瞬間、輝の背中にもの凄い衝撃・・・前のめりに倒れる。
「な~に彼女なんか作ってんだよっ、独り者同盟はどうした?」
「・・・んなもんに入った覚えはなっ「オレ皆上 海斗よろしく。」おいっ。」
輝に突撃してきた同じ年代の少年は輝を無視して來佳に話しかける。
「皆上って・・・政治家の皆上 努の?」
「そうっ、息子・・・君は?」
皆上 努とは正輝と同じくらい名の売れた政治家。
「神田 來佳、この度神田家の養子になったの。」
政治家が養子をとるのは別に珍しいことではない。
「來佳ちゃんか~1つ屋根の下か・・・うらやましいな、おい。」
輝が起き上がってきたので肩を組み肘でつつく海斗。
「養子って言葉、聞いてなかったのかよ?」
「血繋がってねぇじゃんか・・・え?」
「・・・うぜぇ。」
その後3人で学校に向かい輝は來佳を職員室に連れて行くため海斗と別れた。
「・・・良い奴そうだね。」
「うぜぇ奴だけどな・・・なんだかんだ中学ん時の唯一のダチだからな。」
輝の親友の海斗、來佳も好感を持てはするが・・・。
(信用は出来ない。)
万が一海斗の親が政府側の人間だったら・・・そのことばかりが頭を支配する。
來佳は政府の情報を手に入れるため、裏社会に1度足を伸ばしたことがある、
その時、來佳は自分より年下の子供が大の大人をナイフで脅していたのを見た。
人を見かけで判断してはならない・・・海斗が政府の人間という可能性も少なからずあるのだ。
その後、職員室で輝と海斗と同じクラスだと知り來佳の紹介が始まった。
「神田 來佳です、よろしくお願いします。」
自己紹介が終わり、授業が始まった。
(・・・机に座って座学なんて、何年振りだろう。)
あの学校ではサイキッカーの能力の修行だけでなく、社会にでれるための座学勉強も行われていた・・・。
しかし來佳はある日を境に座学には全くでないようになってしまった・・・その理由は。
―――政府が秘密裏にしている学校は山奥の寮生活、
学校は巨大な壁で外界とはかけ放され、物資補給はすべてヘリ・・・学校というよりはそこは要塞に近かった。
そこで來佳は約10年いたわけだが・・・。
「・・・っ、またか。」
今は座学の時間だが外の階段に座っているのは当時13歳の來佳。
座学の成績はそこそこ、肉弾戦は男、大人顔負けの実力・・・なのだが、
この学校でなにより大事な、超能力がドベ・・・つまり落ちこぼれだった。
クラスメートがレベル2に到達する中、來佳はレベル1ですら今だ扱えずにいた。
「もう1回・・・イタッ。」
人差し指に雷を集めようとすると・・・身体全身に反動の余波を喰らってしまい、
能力を使うのを止めてしまう、全身からは煙をだし、痛さで自分の身体を抱きしめる。
「・・・・・っ。」
來佳は期待されていた・・・その潜在能力の高さに、
來佳は期待されていた・・・その能力の圧倒的な強さを・・・
しかし來佳は強すぎるその力をコントロールすることが出来なかった。
1の力を出すのに自分は10を喰らってしまう・・・実戦では何の役にも立たない、足手纏いだった。
「・・・もう、1回。」
しかし政府は來佳の力を諦めることはできず、能力を使わせた・・・。
何回も何十回も何百回も何千回も何万回も、毎日黒こげになるまで來佳は大人たちから解放されない。
そして來佳のもう1つの能力とも言えるモノ、それは圧倒的な回復力。
元々サイキッカーは常人が1週間かかって治す傷が3日で治る・・・が來佳はそれが1日で治る。
そのため毎日居残り修行と言えば聞こえはいいが、実際は拷問のようなとても辛いものでも來佳には出来てしまった・・・身体に包帯を巻かない日はない。
それなのに、拷問のような修行に耐えても來佳は成長することが出来なかった。
他のみんなは成長しているのに自分は立ち止まったまま・・・最悪だ、
みんなは來佳の死に物狂いの努力を分かっているので嘲る者は1人もいない・・・それが逆に來佳には悔しくて仕方がなかった。
「・・・・・。」
來佳自身が周りに壁を作りあまり人と接しなくなった・・・
みんなが入ってきたときは、成長していなかったときは、あんなに仲が良かったのに・・・しかし來佳の壁を壊そうとしている人物が1人。
「・・・優等生がサボり?珍しいじゃん。」
「お前は相変わらずだな。」
その目線は先ほどの反動でできた包帯が巻かれていない個所の火傷・・・來佳はそれを隠しその人物を睨み上げた。
「・・・っ、アンタには関係ないでしょ。」
「・・・・・。」
人物、少年は無言で來佳に近づき火傷した腕を掴み上げると彼の能力である″水″が火傷した個所を優しく包み込んだ。
「・・・っ、毎日毎日しつこいっ、
いったい優等生のアンタが落ちこぼれの私に何の用があるわけ?」
腕を振り払う來佳・・・來佳の悲痛な叫びが辺りに響く。
「・・・お前が俺の″天敵″だから。」
確かに水と雷では雷の方が有利だが、それはあくまでも自然の摂理だ。
「何が天敵よっ、アンタとやり合って私は1回も勝ったことがないのにっ。」
彼は遠距離を得意とするサイキッカー、來佳は近距離のサイキッカーで近づく前に彼の水にやられてしまう。
もし近づくことが出来ても肉弾戦も彼の方が上・・・頼みの綱の超能力もこのざまで來佳には勝ち目がなかった。
「それはお前自身が弱いからだ。」
「・・・・・っ。」
悔しすぎて涙も流れない・・・握った拳からは血が零れる。
「だから・・・強くなれ、俺に勝つくらいに。」
「は?」
何を言っているのだコイツは・・・。
「お前が俺より強くなり、次に俺が勝つ。
そうなれば・・・俺は自然の摂理を覆したことになる。」
滅茶苦茶なことを言う彼だが・・・目が本気だった。
「・・・呆れた、変わってる。」
思わず笑ってしまう、この男は無表情なのに・・・。
そういえば笑ったのは何時ぶりだろう・・・それからだ、
來佳が少しずつ成長するようになったのは。
拷問の修行に毎日耐えることが出来たのも、彼のおかげかもしれない・・・。
そして迎えた最終戦・・・この戦いで來佳は急成長を遂げ卒業した。―――。
(・・・何でアイツのことまで思い出すかな・・・。)
忘れようとするが頭から離れない彼、今彼はどこで何をしているのか・・・。
(″次は俺が勝つ″か・・・もう会えるかもわからないのに。)
彼以外のサイキッカーも今どこで何をしているのか來佳には分からない・・・このまま再会しないこともありうる。
「來佳っ、何ボーとしてんだよ。」
目の前にはボロボロで得体のしれない自分を助けた輝。
「・・・バカみたい。」
「おまっ・・・心配してやったのになんだよその言いぐさはっ。」
そういう意味で言ったわけではないのだが・・・あほらしくて笑いが込み上げてくる。
「雨・・・・・か。」
外を見れば雨が降っていた・・・遠くの方では雷も鳴っている。
「・・・・・。」
学校から少し離れたマンションの屋上では傘もささず雨に濡れる人影は教室で笑っている來佳を見ていた。
その後人影は空を見つめ鳴り響く雷を見つめ始めた。
「・・・・・雷。」
人影は妖しく口角を上げると・・・その場から消えた・・・。
その後も雨は止むことはなく、空から降り続けていた・・・。




