2話
あれから來佳達は山小屋から移動し、現在神田の豪邸・・・。
「あなたが來佳ちゃんっ?お母さんにソックリ~。」
「これからお世話になります。」
3人を迎えたのは輝の母、雲母。
「來佳ちゃんボロボロね、すぐにお風呂準備するからね。」
「ちょっ、母さんオレ聞きたいことが「そんなの後っ。」・・・。」
來佳は雲母に連れられどこかに行ってしまった。
「輝はこっちだ。」
「・・・・・・。」
輝は正輝に連れられ書斎に。
「どういうことだよ親父っ、母さんまで來佳知ってるみたいだったけど
反政府とか・・・ミュータントだって何で知ってんだよっ。」
「「・・・・・・。」」
「・・・何とか言ったらっ。」
机を勢いよく叩く輝。
「母さん。」
「お父さん・・・。」
「輝がこんなに興味津々だ、成長したものだ。」
「「嬉しい・・・。」」
「そこのギャグ夫妻、真面目に聞け。」
この夫妻は普段は尊敬できる人なのだが、一回ボケると手が付けられない。
「・・・今の政治は実は2つの派閥に分けられていてね、
それに関係しているのがミュータントなんだ。」
急に本題に入る正輝、この人たちのスイッチが今だ分からない輝。
「ミュータントは密かに活動していたのだが、
普通の軍隊では歯が立たない・・・そこで政府はサイキッカーを集めた。」
政府はありとあらゆる方法でサイキッカーを世界中から集めた・・・だけでは終わらなかった。
「政府はサイキッカーを戦わせるだけじゃなく兵器として「実験のモルモットにしてるのよ。」おお、來佳ちゃん。」
「・・・らい、かか?」
「・・・何よその目。」
汚れを落とし、ボロボロの服ではなく清楚なワンピースを身に纏い、
胸を押さえつけていたサラシをはずし、年相応に膨らんだ胸。
最初にあったあの少年っぽかった來佳はどこに行ったのだろうか・・・。
見違えた來佳だが、輝が1番驚いたのは・・・。
「その目・・・。」
出会った当初は両目とも黒色だったが、今の來佳は左目が金色に輝いていた。
「ああ、さっきまでカラコンつけてたから。」
「本当香織ちゃんにソックリ、可愛いっ。」
來佳を抱きしめ頬をスリスリする雲母。
「來佳の・・・母親?」
「・・・來佳ちゃんの母親は俺の先輩で、反政府側のサイキッカーだった人だ。」
「だから、反政府って何なんだ。」
ミュータントは人類にとって危険な存在だ、
政府も動かないわけにもいかないだろうが・・・なぜ2つに分かれなければいけなかったのか。
「反政府の目的は政府の施設及び、人物の消去が目的の組織。」
「・・・っ。」
來佳の物騒な物言いに驚く輝。
「ははっ、物騒だな來佳ちゃんは・・・消去と言っても殺しはしない。」
「殺したほうがいい・・・あんな悪魔みたいな奴ら・・・。」
そう吐き捨て、來佳は書斎から出ていった。
「・・・何なんだ?アイツ。」
「仕方ないさ・・・さて話を戻そう。
サイキッカーをモルモットにした実験は決して危険なものではなかった。
・・・まぁ、大事な戦力だし貴重な戦力を失うわけにはいかなかったからね。」
正輝が知っているサイキッカーはたった数十人・・・それだけで
何十万といるミュータントと戦わなければいけない。
「最初は能力の向上・・・つまりレベルを上げるための実験だった。」
「・・・レベル?」
「その話は來佳ちゃんから聞くといい。
政府の実験は行われるに連れてエスカレートし、
非人道的な・・・悪魔の実験を始めた・・・・・それが。」
輝は自分の耳を疑った・・・そんなことが可能なのかと。
「人工・・・サイキッカー?」
サイキッカーの超能力は300年前の天災からもたらされた・・・。
しかし見方を変えれば宇宙から与えられた人間の新たな力、進化の形とも言える。
だが、それは1部の人間にしか与えられなかった・・・。
そこで生まれた実験が人工サイキッカーだ。
300年の歴史で分かったこと、サイキッカーは遺伝が多い。
しかし能力の形は多種多様、″炎″の親から正反対の″水″が生まれることや、子供であるからといって必ず受け継がれるとは言えなかった。
そこで政府は様々な人間を実験に使った。
サイキッカーの血を飲ませたり、体内に入れたり、
死んだサイキッカーの肉を肌に移植したり、細胞を移植したり・・・。
どの実験も成功例は無く、次々と死んでいった・・・そのほとんどがサイキッカーの身内だ・・・そしてそのことを当の本人たちは。
「知らされない。」
「・・・・・。」
サイキッカーだってただの人、家族の愛情・・・感情がある。
「それから政府は二分した、しかし・・・。」
困ったことに相手の戦力は全く未知なのだ・・・。
政治家の中でもミュータント、真実を知らない奴はごまんといる。
正輝は敵の正体を知らない・・・がそれは相手も同じ、
相手も正輝が反政府の人間だとは知らない。
「わかっていることは相手のボスは天皇か、総理大臣だということ。
向こうのほうが人員も財力も・・・何もかも我らより優れている。」
正輝の話を聞いていると、こっちに勝ち目がまったくないように聞こえる。
「・・・ただ1つ我々にも勝つ方法はある。」
「・・・っ、どんっ「來佳ちゃんに聞きなさい。」・・・。」
当事者の彼女の方が色々と詳しいと、正輝から來佳の部屋の場所を聞き、向かった。
「・・・・・。」
「香織ちゃん、本当にどこに行ったんだろう?」
―――「香織さんっ、アナタでも危険すぎる。
向こうにもサイキッカーがいるんですよっ?」
「私を誰だと思ってるの?私がやらないといけないの・・・。」
1度言い出したら絶対に曲げない香織は正輝がどれだけ止めても考えを変えない。
「正輝・・・後のこと、まかせたから。」
そう言って彼女、香織は帰ってくることはなかった・・・。―――
(情報では政府の手から逃げたとは聞いている・・・だが。)
その後の情報は正輝も、政府も知らない。
実の娘である來佳も香織の行方を知らないのだ・・・。
「・・・・・香織さん。」
「・・・・・。」
その頃、來佳の部屋についた輝。
「來佳、入るぞ。」
ちゃんとノックをしてからドアを開ける。
「・・・何か用?」
「おっ、まえその火傷っ。」
來佳はベットに座り自分の髪を結っている最中だった。
髪を上げたその首には痛々しい火傷の跡がくっきりと残っていた。
「ミュータントかっ?それとも黒ずくめの「自分でやったのよ。」
・・・・・お前ってマ「違うっ。」うぐっ。」
お腹を殴られる輝・・・デジャヴだ。
「・・・私たちサイキッカーには″反動″っていう、いわば弱点みたいな・・・。
私は自分の攻撃の余波、つまりは雷を自分でも喰らうの。
この火傷がその跡・・・勘違いしないでくれる?」
威力が強ければ強いほど、使う時間が長ければ長いほど・・・。
まるで諸刃の剣のような・・・來佳の場合弱点というよりハンデに近い。
「だから、相手からの攻撃を私は避けなきゃいけない。」
自分も相手と同等まではいかないがダメージを負う、
その上、相手の攻撃を喰らっていては來佳はいつまでたっても勝つことはできない。
だから身体を鍛えているのだ、よく見ればワンピースから覗く足に無駄な筋肉はついていない。
「・・・″覇王″と戦うためにはまだまだ強くならないと。」
「覇王?」
「ミュータント、すべての変異種の王・・・。
その王の力を手に入れることが2つの組織の最大の目的。」
覇王の力を使えばすべての変異種を元に、
すべての人間を変異種に変えることができると云われている。
「反政府は前者、政府は後者を目的にしている。」
覇王さえ倒せば・・・それが目的なら戦力差があっても勝ち目はまだある。
「ただし、覇王の力は未知数・・・向こうはサイキッカーが多数。
こっちも手数が欲しいとこだけど・・・。」
「サイキッカーっていっても見た目はただの人間だろ?」
サイキッカーに目印などない、それをどうやって探し出せばいいのか・・・。
「顔見知りはいるわ、政府が作ったサイキッカー専用の学校。
私もそこでこの能力を鍛えてきた・・・少なくともサイキッカー200人はいたかな?」
「にひゃっ・・・?」
政府はあらゆる情報網を使い、サイキッカーを集めこの学校に集結させた。
「年齢はバラバラ、ある程度能力を使えたら卒業。
卒業生には政府から2つの道を迫られる。」
政府の飼い犬になるか否か・・・と言っても道は決まっているようなもの。
衣食住すべてが安定している檻に入るか、
無一文、生活できるかわからない補助一切ない自由の鳥になるか・・・。
普通なら政府側を選ぶ、モルモットにされると分かっていても自分の命の保証はされるし、学校内でも同じ扱いだったのだ。
「でもある日革命的なことが起きた・・・。
178回目の卒業生、まぁ私の代なんだけど・・・卒業生全員が政府の飼い犬になるのを拒否した。
その後はバラバラになったから今どこで何をしているかは分からない。」
「・・・そいつらならこっち側に来てくれるってことか、なるほどな。」
輝も納得したようだ。
「あ、先生質も~ん。」
「・・・変なノリやめてくれる?」
こういうところもしっかり受け継いだらしい・・・。
「・・・で、何?」
「親父も言ってたけどさ、レベルって何?
サイキッカーの超能力ってRPGなわけ?」
「似たようなもの・・・か、レベルは全部で4段階。
レベル1、2、3と上がるほどに能力は増していく、
私なら雷の威力が上がるとか範囲が広がるとかね・・・。」
サイキッカーには色々な能力があるから一概には言えない。
「へぇ~~~~~~~。」
「「・・・・・。」」
部屋が静寂に包まれ、見つめ合う2人。
「・・・何期待してんの?」
「いや、こういう時ってさ・・・実戦で~とかって流れじゃん?」
來佳は重い溜息を1つ吐く。
「アンタ、馬鹿?さっき私の反動教えたでしょ?」
それは能力を使えば自分も能力を喰らってしまうこと・・・。
「相手がいるわけでもないのに自分を傷つけろと?
それって自殺行為、もしくは本当にマゾ、
・・・それとも、アンタが的になってくれるの?ん?」
「スミマセンッ。」
能力を使っていないのに來佳の背後には雷が鳴っているように感じた輝。
「じゃ・・・じゃあ4段階目は?」
何とか話を逸らそうとする輝・・・それは成功したらしく來佳は再び説明に入る。
「4段階目はレベルMAX、到達したものは政府の歴史の中でも3人しかいない。」
300年の間でサイキッカーの数は何万といたはず・・・それがたったの3人。
「1人目は300年前、覇王を倒しその力によってデビル・フォレストの進行を止めた、その時のサイキッカーたちのボス。
能力は私も知らなっ「質問っ。」・・・。」
ジト目で睨むが今の好奇心旺盛な輝を止めることはできず・・・。
「何でデビル・フォレストを消滅させっ「知るかっ。」・・・。」
300年前の人間の考えなど來佳が分かるはずない。
「2人目は今もどこかで生きてるらしい・・・。
名前はシャル「外人かよ。」・・・能力は″時″。
200年前の人間らしいけど自分の時間を止めていることは政府も確信してるんだけど、居場所は分かっていない。」
ということは実年齢は200歳を超えている・・・輝は想像するのを止めた。
「そして3人目、雷のサイキッカー・・・私の母である枢木 香織。」
「・・・お前の母親ってそんなスゲー人なの?」
「その年代のサイキッカーの中で1番最強だって聞いたけど?」
何百種類ある能力、サイキッカーの頂点に立った香織・・・そんな香織が。
「だからこそ、その母が行方不明だってことを信じられない。
その真実と、母との約束を守るために私は今ここにいる。」
「・・・約束って?」
聞いてはいけないことだろうか・・・恐る恐る聞く輝。
「″絶対に捕まらない″・・・それと″生きてほしい″って、
だから私は絶対に捕まるわけにはいかないの。」
「・・・・・來佳。」
その時の來佳の顔は大人びていて輝は見惚れてしまった。
輝と初めて出会った森は何日も追われ体力が尽きていたらしい・・・、
サイキッカーの能力の源は体力、体力が尽きれば能力は使えない。
「約束・・・守らないとな、サイキッカー相手には分からねぇけど
オレ超強いから、頼ってくれよな。」
「・・・期待しとく。」
笑いあっているとノックされた・・・入ってきたのは雲母。
「・・・・・雲母さん?」
「母さん?」
2人の目線の先は雲母の持っているソレ。
「來佳ちゃんこれ見てっ。」
「それって・・・。」
「オレの学校の制服じゃねぇかっ。」
輝が通っている私立の学校の女子の制服。
「來佳ちゃん、明日から高校生よ。」
「え?いやっ、でもミュータントや政府のことも気になりますしっ、
学校に行ったら行動が制限されるんじゃ・・・。」
「そこはお父さんに任せればいいのよ。
來佳ちゃんはまだ16歳よ?学校に行って青春しなさい。」
來佳が通っていたサイキッカー専門の学校は学校と言えるものではなかった。
少なからず、來佳は普通の学園生活に憧れを持っていた。
「・・・・・。」
しかしそれとこれとは話が変わる。
「それに木を隠すなら森の中、でしょ?
政府も学校に通ってるなんて思わないわよ、ねっ?來佳ちゃん。」
「・・・・・はあ。」
「じゃあそういうことでっ。」
雲母は制服を置いて部屋から去った。
「「・・・・・。」」
先行きが不安になった2人だった・・・。




