最終話
『・・・・・。』
パンドラの箱・・・施設の中に入ると、聖夜か右近か左近か、それとも來佳かのせいか・・・ミオは目覚めた。
『來佳様・・・あの女。』
『だいぶ、核と融合したようですね。』
「・・・みたいだね。」
『・・・・・ウゥ。』
ミオの肌は金色に染まり、爪も犬歯も異常に伸びていた。
最早″人間″とは呼べない者に変わりつつあった・・・。
「・・・でもそっちの方が闘いやすい、かなっ。」
『・・・ッ。』
電光石火の攻撃でミオに殴りかかる來佳だが、ミオにガードされる。
(さすが・・・見えてる、ってわけ?)
サイキッカーの琴音たちの目でも追えなかった來佳のスピードだが、ミオには見えていた。
背後から殺気・・・輝が殴りかかってくるが來佳は避けて聖夜たちの元へと戻る。
(輝には私の姿は見えない、か・・・。)
輝はミオを護るように立っている。
「アイツ、どうあってもあの女を護るつもりみたいだな。」
その姿は姫を護る騎士の様・・・いや。
「妹を護る兄・・・かな?」
「・・・そういうことを言っている場合か?」
「だよね・・・って言っても、輝には攻撃できないしね。」
シャルの情報では輝は最後に触れたモノからの体力しか奪えないらしい・・・。
かといって遠距離で戦おうにも・・・。
レベルMAXに到達した來佳の雷を浴びせたネジは目視できない位速く、
輝は避けられないが、それはミオの手によって防がれるだろう・・・。
聖夜の水や來佳の雷を飛ばしても輝に吸収され、おまけに体力も奪われてしまっては本末転倒である。
「・・・いいコンビね。」
「さすが政府の切り札なだけあるか。」
敵ながら褒めてしまう・・・お互いをカバーし、能力が能力なだけに最強のコンビかもしれない。
『來佳様、我々がっ「却下。」っ、何故っ。』
「犬死にしてぇのか?」
2人とも覇王の血液を持っているのだ、2匹には危険すぎる。
「・・・・・。」
「・・・どうした?」
來佳は足で床を軽く叩く。
「イケるかも・・・耳貸して。」
「・・・?」
聖夜に耳打ちする來佳・・・その口角は上がっていた。
「・・・どう?」
「箱を水槽に模様替え・・・か?おもしろそうだな。」
聖夜の口角も上がった。
「右近と左近も、頼んだわよ。」
『『了解しました。』』
「行くわよ。」
來佳は駆けだした・・・それを追おうとするミオだが右近と左近が邪魔をする。
輝はそんなミオの元に駆け寄ろうとするが・・・。
「ワンパターンすぎるぞ。」
「・・・っ。」
聖夜に動きを先読みされた輝、思い切り蹴られ壁に激突する。
「・・・・・。」
体力を奪おうとする輝だが壁に触れたことにより奪えない。
その頃の來佳は・・・高々と上空に跳んでいた。
雷を纏った拳、それに地球の重力を加算させ・・・。
「はぁーーーっ。」
拳を床にたたきつける・・・床はミオが逃げ出さないよう特殊な金属で出来ていた。
その金属は壊れることなく、30m近く凹んだ。
聖夜たちは何事もなく着地、ミオと輝もそれぞれ着地した。
「聖夜っ。」
「・・・もうやった。」
來佳が着地する前、聖夜は凹んだ床に水を溜めた・・・まるで水槽の様。
輝がその水を吸収する前に來佳は着地し、雷を流した。
「『・・・ッ。』」
聖夜は左近に乗り右近と同時に跳んだためダメージは無く、ダメージを受けるのは輝とミオ。
しかしミオは核の所有者で輝は超能力を吸い取り無力化する・・・ダメージはそれ程与えられてはいない。
だが來佳の目的はダメージを与えることではなく。
(2人の動きが一瞬でも止まれば充分。)
水が跳ねる・・・來佳は電光でミオの目の前に。
2人とも痺れて來佳に反応することが出来ない。
「ここだぁ。」
來佳はありったけの力でミオを殴る、ガードの上だがミオは吹っ飛び壁の外(元の床)に・・・計画通りである。
「・・・そっちの方、任せたからね。」
30メートルの壁を降りることは出来ても越えることはサイキッカーでも困難、ミオに出来ても輝には出来ない。
左近たちは着地した・・・聖夜は來佳の隣に立つ。
「お前もな・・・死ぬなよ、″來佳″。」
「・・・っ。」
聖夜が・・・初めて來佳を名前で呼んだ。
「・・・・・バーカ。」
聖夜に認められた・・・喜ぶ場面ではないのに顔が緩んでしまう。
そんな複雑な感情を抱いたまま來佳は壁を跳び越えた。
「バカはどっちだ・・・。」
聖夜の呟きは來佳に聞こえることは無い。
壁の上(元の床)に吹っ飛ばされたミオは体勢を整えると輝の元へ戻ろうとする。
「行かせないわよ。」
來佳が行く手を塞ぐ。
『ドイテ。』
「アンタに行かれたら分散させた意味ないじゃない。」
『・・・ドケ。』
「父の形見・・・返してもらうわよ。」
『ヤダ。』
「・・・わがままなお嬢さんだこと。」
『「・・・・・。」』
2人は同時に地を蹴り拳を合わせた・・・。
ちょうどその頃、シャルの超能力によって未来に飛ばされた琴音たちは無事にパンドラの箱に飛ばされたのだが・・・。
「うわぁ。」
「・・・っ。」
そこにあるはずの床が無かった・・・・・琴音たちは真っ逆さまに落ちる。
(・・・來佳っ。)
落ちる最中に見えた、ぶつかり合う來佳とミオの姿。
「・・・くっ。」
琴音の風で無事に着地するみんな。
「みんな、大丈夫か?」
「・・・なぜお前らがここにいる?」
「聖夜さんっ。」
今にも対峙しそうな聖夜と右近と左近・・・そして輝の姿。
「「「・・・・・。」」」
輝を知っている映男、琴音、ネムは輝のその変わり様に声も出なかった。
「・・・・・。」
『おい、だいぶ持っていかれたようだが?』
來佳の水を流すために溜めた水が1敵も残っていない・・・すべて輝に吸収された。
あの場で琴音たちが来なければ輝に体力までも奪われ聖夜は死に絶えていたかもしれない・・・。
「問題ない。」
そうは言っているが立っているのも辛い状態の聖夜・・・そこに。
「・・・なにを。」
聖夜の身体に触れる右近と左近。
『我らは來佳様の命で戦えないからな。』
『我らの力を貴様にくれてやる。』
「・・・・・。」
聖夜の身体に今まで以上の力が漲る。
「聖夜さん・・・。」
「玖城。」
「シャルさんが死なない程度に手助けしろ、って言われたんだが・・・どうやら來佳には手助けが必要ないらしい・・・出来ないというほうが正しいがな。」
「出来ないって言うけど断られそうだったみたいだけどね・・・上の戦い見たら。」
琴音と咲の言うことは合っている。
とても自分たちが行って手助けできるような戦いでもなかったし、來佳の手助けに行っても追い返されるだろう。
「・・・アイツの視力は常人と変わらない、玖城行くぞ。」
「・・・っ、はいっ。」
愛良の元気な声・・・聖夜に頼られて嬉しいのだろう。
「お前たちも体力をとられすぎないよう援護しろ、俺が決める。」
「相変わらずの自己中心的な奴ね・・・來佳はこんな奴のどこがいいんだか。」
こんな時に言うセリフではないし、この場に來佳がいたら「違うっ。」と否定していることだろう・・・咲はスケッチブックを構えた。
「全くだ・・・來佳の将来が心配だな。」
「緊張感が無さすぎるぞお前ら。」
「・・・・・。」
そんな2人に呆れる映男とネム。
「・・・動く。」
ネムの予知・・・それと同時に。
「・・・行くぞ。」
愛良と聖夜が突っ込む。
「・・・・・。」
輝はそれに構えるが・・・。
「・・・?」
両手が動かない・・・見れば両腕に鎖が絡まっている、咲の超能力だ。
「・・・・・。」
体力を奪おうとする輝だが琴音の風が吹き荒れ体勢を崩すことで阻止する。
体勢が立て直る前に愛良が足払いをかけ転ばせる、天井に向けられた輝の視界に聖夜が映り・・・。
「終わりだ。」
輝の頭に聖夜の手が置かれ・・・そこから冷気が生まれ″氷″が発生する。
「あっ・・・うっ。」
氷は輝の全身に回り、輝は氷に包まれた。
「水無月、お前″も″か・・・。」
「・・・覇王の力は予想以上だったな。」
右近と左近は覇王が造ったモノ・・・間接的ではあるが、
聖夜は覇王の力を取り込み、相性が良かったのか覇王の力は聖夜をレベルMAXへと到達させた・・・。
「氷か・・・悪くない。」
輝はまだ生きている、冷凍の状態だ・・・眠ってしまえば超能力も使えず体力が奪われることもない。
「・・・・・。」
聖夜は上を見上げる・・・上では更なる死闘が繰り広げられていた。
『・・・・・。』
「・・・くっ。」
激しい攻防が続く中、致命傷はお互い無いものの浅い傷は1つや2つではない、
2人の肌、服は血に濡れていた・・・。
(雷が効いてない・・・。)
効いていないという言葉には語弊がある、再生が速すぎるのだ・・・血で分かりくいが、傷が塞がっている。
一方來佳は傷から血が流れ続けこれ以上流れると危険な状態である。
「・・・・・。」
しかし、激しい攻防の中分かったことが2つある、1つは・・・。
『・・・ッ、ガアッ。』
ミオには理性が無い・・・つまり我慢が無いということで自分から動く。
覇王の核を上手く使いこなせていないのか脳は虚ろ・・・來佳の動きが先読みされることは無かった、
目と身体は追っているが見て追いかけても來佳の電光は追えない。
「・・・理性を持たない獣は檻にでも入ってなさいっ。」
『ウガッ・・・?』
ミオの後ろに回り雷を放電する・・・雷は形を成しミオを閉じ込めた、雷で作られた檻。
触れれば高熱で火傷する檻・・・再生能力の高いミオには大したダメージにはならないが、動きは封じた。
「ねぇ・・・ミオ。」
『・・・ウゥ。』
ミオは檻を破ろうとするが今のミオに檻を破る術はない。
「ミオにとっての″幸せ″って何・・・?」
晃牙を刺し、投げたときのミオの表情はとても悲しそうだった・・・。
『・・・こ、ろ・・・。』
激しく争ってる中聞こえた・・・ミオの本当の願い・・・。
(ミオは・・・終わることを願っている。)
ミオの願いは自分にしか叶えられない・・・拳を強く握りしめる。
中途半端な攻撃ではミオはすぐに回復してしまう・・・、
ミオが晃牙を殺した時のように、身体を貫き核を取り出さなければミオは死なない。
「・・・・・っ。」
躊躇ってはいけないのに迷ってしまう・・・。
『・・・ル。』
「・・・・・ミオ?」
『ヒカ・・・ル。』
ミオが輝の名前を呼んだ・・・。
「・・・っ。」
ミオは自分が傷つくことは厭わず、無理やり檻を破り床の下の輝の元へ・・・。
「待てっ。」
後を追う來佳・・・下には聖夜たちと、何故いるのか分からないが琴音たち、
そして氷漬けになっている輝に寄り添うミオの姿・・・。
「來佳っ、無事かっ?」
來佳に気づき駆け寄ってくる仲間たち。
「・・・アレは?」
どうしているのか気にはなったが今はゆっくり聞いている場合ではない。
「聖夜さんのレベルMAXよ・・・覇王の力が聖夜さんの超能力を高めたの。」
「そう・・・右近と左近が・・・。」
「・・・お前は何をしていた?」
「うっ・・・。」
すべて見透かした様な聖夜の言葉に來佳の言葉が詰まる・・・。
苦戦していたのは事実だが、檻にミオを閉じ込めた時点でミオを殺す機会はあったから・・・ここまで来て迷っていたなど聖夜にはとても言えない。
『ヒカル・・・ヒカル?』
輝の名前を何度も呼ぶミオ・・・が輝はピクリとも動かない。
『ヒカッ・・・グッ。』
「・・・っ。」
來佳の背筋が凍る・・・最も恐れたことが起こってしまった。
「・・・暴走。」
このままではミオは地球を滅ぼしてしまう・・・初代の覇王がミュータントを率いた300年前のように・・・。
「・・・やらせない。」
指を天に掲げる來佳・・・稲妻が天井を突き破り來佳に落ちる。
自分で雨雲を作って起こしていたチンケな稲妻ではない、自然が起こす大規模の稲妻の威力。
(私は・・・未来を掴むっ。)
金色に輝く來佳・・・その姿は覇王・晃牙を連想させた。
「『・・・・・。』」
核の力を暴走させたミオと、最大限の力を使っている來佳。
その2人の攻防はサイキッカーの目にも映らぬほど速かった・・・。
『・・・今のお姿を。』
「・・・・・。」
『今の來佳様のお姿を・・・晃牙様や香織に見せられることが出来たら・・・。』
右近と左近の悲しい願い・・・が聖夜はそう思わない。
「・・・見てるだろ。」
死んでも繋がりが消えていない來佳たち・・・その時聖夜は長年思い出すことは無かった家族の、両親の笑顔を思い出していた。
「・・・っ、來佳っ。」
「・・・・・。」
愛良の叫び声で我に返る聖夜・・・顔を上げれば空中で左肩を貫かれた來佳の姿。
「・・・っ。」
心臓は避けている・・・ミオは右手を抜き來佳の血で染まったその手を再び來佳に向けて降ろす。
「・・・・・フッ。」
ニヤリ、來佳の口角が上がる・・・來佳の身体は放電し、ミオのバランスが崩れた。
『・・・・・。』
上下が逆になった2人・・・視界には來佳の顔と今にも振り下ろされそうな手・・・。
〔あぁ・・・やっと・・・。〕
『終わ、れ・・・る。』
「・・・っ。」
可愛らしい少女の声と笑顔を浮かべながら・・・ミオは胸を貫かれた。
「・・・・・。」
「來佳っ。」
「傷は大丈夫かっ?」
「・・・″コレ″のおかげで平気。」
來佳の手には血で真っ赤に濡れながらも淡く光る覇王の核。
「聖夜、氷・・・溶かしてあげて?」
「・・・・・。」
「すぅ・・・すぅ。」
輝の氷が解ける・・・ちゃんと呼吸をしている輝。
「良かっ・・・た・・・。」
「・・・ミオ。」
死ぬ間際になって人間に戻ったミオ。
「・・・ありがとう、來佳ちゃん。」
「私のこと、知ってたの?」
來佳の問いに力無く頷くミオ。
「昴、さんがね・・・自慢の孫娘だ、って話すんだ・・・。
私は喋れなかったけどちゃんと覚え、てるんだよ?羨ましかった・・・だ、から。」
首を動かせば自分と似た輝の顔・・・。
「輝(家族)に会えただけで・・・ちょっとだけど、一緒にいれただけで・・・幸せなの。」
「・・・逝くの?」
その言い方は酷かもしれない・・・心臓が無いのにどうやって生きることが出来るのか・・・。
「うん・・・輝の、こと・・・よろ、しくね・・・?」
ミオはそっと目を閉じ息を引き取った・・・とても穏やかで安らかな寝顔だった。
「・・・さよなら、ミオ。」
來佳達は輝を連れシャルの家に戻った・・・。
「・・・・・なんだ、コレは?」
木々は折れ、森の原型は無かった・・・辛うじて残っていた家でボロボロなシャルと直也が出迎えてくれた。
「・・・・・。」
数十分後、輝は目を覚ました・・・瞳には光が戻りいつもの輝だったが、輝はしばらく泣き崩れていた。
今まで意識はあったらしい・・・その泣き姿は妹の死を悲しむ兄のものだった・・・。
「・・・本当に行くのか?」
「うん、何年かかるかは分からないけど・・・絶対今の状態より良くするから。」
輝が泣き止んですぐの出来事・・・右近と左近、來佳の見送り。
「1人で・・・大丈夫なのかよ?」
「アンタは正輝さんたちに早く報告しに行きなさいよ、そのカッコいい″顔″でさ。」
泣き腫らした輝の顔・・・笑う者は1人もいない。
「それに・・・1人じゃないわよ?
右近と左近がいる・・・それに両親も、ねっ。」
來佳の顔は今までで1番生き生きしていた。
「・・・デビル・フォレストはともかく、おじさんたちはサイキッカーのままか~?」
「今更戻っても過ごしにくいし、良かったんじゃない?」
「ネムちゃんと映は人間に戻った方が良かったんじゃないのかな~。」
直也の言葉には一理ある・・・ネムは一生病弱で映男は身体が一生子どものまま。
「ネムはこれでいいの・・・この身体と付き合うって決めたから、ね?お姉ちゃん。」
「これからはずっと、ネムはあたしが護るから。」
「オレも・・・出来ないことを願っても仕方ねぇからな。」
ネムと琴音は嬉しそうに笑い合い、映男はどこか清々しい顔をしていた。
「でも映ちゃんはさ~色々と困るんじゃ「テメェと一緒にすんな、一生独り身。」・・・おじさん傷ついたぞ~~~。」
「・・・フフッ、映男くんの言葉は的を射てますね。」
じゃれ合う2人を見て笑うシャル・・・車いすに座っている。
超能力の使い過ぎで身体にガタがきたらしい・・・もう2度と歩けまいと本人が言っていた。
そんなシャルだが咲は離れるつもりはなくこれからも一緒に暮らしていくらしい。
「聖夜さんはこれからどうするんですか?」
「・・・・・。」
「・・・って、聞くまでもないですよね。」
聖夜の視線の先は変わらない・・・いつも來佳のことばかり、
昔は悔しくて仕方なかったが今の愛良の心はなぜかスッキリしていた。
「・・・玖城はどうするんだ?」
「アタシは・・・とりあえず彼氏探しですかね?
聖夜さんよりもカッコいい男捕まえて來佳に自慢してやろうって思ってるんですけど。」
「・・・お前らしいな。」
聖夜の口角が上がる・・・愛良も笑顔を浮かべた。
『來佳様。』
『行きましょうか。』
「うん・・・じゃあみんな・・・またねっ。」
仲間に別れを告げ、來佳は右近と左近と共にデビル・フォレストに姿を消す。
それを合図に他の仲間たちもそれぞれの道を進み始めたのだった・・・。
最終話としながらまだ続きます!!
みなさん、これからもよろしくお願いしますっ。




