15話
來佳と聖夜たちはデビル・フォレストを抜けシャルの家に来ていた。
「・・・來佳。」
「來佳っ。」
「來佳ちゃん。」
來佳に駆け寄ってくるみんな。
「聖夜さん・・・。」
「・・・・・。」
聖夜の無事に胸を降ろす愛良。
「アレが右近と左近か・・・。」
右近と左近を始めて見る琴音たちはその圧倒さに息を呑んだ。
「久しぶりですね・・・右近、左近。」
『シャルか・・・変わらんな。』
『まだ生きていたのか、お前・・・。』
シャルは右近と左近に普通に話しかけている。
(・・・來佳?)
感知の超能力を持つ映男だけが・・・來佳の違和感に気が付く。
「來佳ちゃ~ん、おじさんまた逢えて嬉しいよ~。
無事におじさんの元に帰ってきてくれて嬉しいな~。」
「変態ヤブ医者・・・こんな時に「無事に?」・・・來佳、ちゃん?」
直也の手によって政府の施設から戻ってきたネム・・・が、來佳はそんなことお構いなしで・・・。
來佳の声は今まで聞いたことのないほど低く、殺気が込められていた・・・皆が息を呑みこんだ一瞬。
來佳はその場から消え去り、距離の離れていたシャルの胸ぐらを掴んでいた。
何時の間に・・・皆が驚く中、シャルは予想していたのか全く動じていない。
「來佳っ、師匠に何をっ「話せ。」・・・っ。」
咲が止めようとするが來佳の獣じみた目に何も言えなくなる。
「・・・その怒りよう・・・やはり″彼″は死んでしまったのですね。」
「やっぱりっ・・・全部知ってたのねっ、直也っ、アンタもグルなのっ?」
「・・・・・。」
直也を睨む來佳・・・何も言わないということは肯定なのだろう。
「全部右近たちから聞いた。
後分からないのは、パンドラの箱の真実と・・・アンタたち2人の目的だけ。」
鬼気迫る來佳・・・シャルの焦点の合っていない目が來佳を見据える。
「政府のボス・昴を含め直也も・・・來佳に背負ってほしくなかったんですよ、覇王の役目なんてね。」
「・・・どういうこと?」
「すべて話しましょうか・・・立ち話もなんですから中へどうぞ。」
家に入り椅子に座る・・・右近と左近は外で話を聞いている。
來佳はシャルが話す話を目を閉じて聞いていた・・・。
「・・・300年前のサイキッカーのボスが覇王?」
「聖域・・・。」
「來佳が・・・覇王の娘?」
全員がそれぞれの反応を見せる。
「輝が人工サイキッカー?輝に妹がいてその妹も・・・。」
「彼は・・・覇王の血液がまったく拒まなかった唯一の人間。
同じ血を持つ妹のミオでさえ力を暴走させ、パンドラの箱に閉じ込められていた。」
普通のミュータントの灰でさえ人間は狂い暴れる。
ミオが、輝がどれだけ特別な存在か灰持ちを知っているサイキッカーたちにはよく分かる。
「知っていればっ・・・少なくともお父さんは殺されずに済んだっ。」
「・・・″あの時″真実を話していれば來佳は輝を殺せましたか?」
「・・・っ。」
顔を背ける來佳、答えはNoだからだ・・・輝を殺せるわけがない。
「彼はサイキッカーにとって脅威の超能力の持ち主。
体力を奪われては我々は手も足も出せないからね・・・・・。」
体力が無い状態でサイキッカーに襲われた來佳、
たった1回の攻撃、だが輝の呼吸は継続的に奪う超能力・・・立つこともままならなかった聖夜。
サイキッカーの中でも上位の2人だが、ああなっては誰が相手でも勝ち目は無い。
「ミオに会えば覚醒する可能性は高かった・・・だから離れるよう言ったのですが。」
1度は離れた・・・それは來佳が輝を巻き込まないよう突き放したものだ・・・。
「來佳と輝君の友情・・・というやつは思ったよりも根深かったみたいですね。」
「・・・・・。」
そして昴が來佳と輝を引き合わせるよう輝を捕らえたのだ。
「まぁっ、これで良かったじゃないの~。
覇王の役目は2人に任せれば地球は安泰だし、おじさんも隠居できるってもんだね~。
來佳ちゃんも全部忘れておじさんと2人で平凡に暮らそ~。」
「直也っ、輝とその妹を見捨てるつもりかよっ。」
「・・・・・。」
映男が立ち上がると同時、來佳は静かに立ち上がり、扉に向かって歩いていく。
「・・・どこ行くのかな~?來佳ちゃん。」
來佳の行く手を塞ぐ直也。
「″約束″を守りにいくの、邪魔しないで。」
覇王を継ぎ來佳自身の手で未来を変える・・・父・晃牙と、母・香織の、両親との約束。
「行かせねぇぜ・・・來佳ちゃん?」
「そこどいて。」
「「・・・・・。」」
睨み合う2人・・・数秒後、シャルの家の壁が壊れる。
「「・・・・・。」」
外に着地する2人、戦う気満々といった雰囲気。
「來佳の奴、直也と戦う気かっ?」
琴音は壊れた壁から2人を見る。
直也は現サイキッカー最強と云われている・・・とても來佳に勝ち目があるとは思えない。
琴音たちは割って止めようとするが・・・。
『來佳様の。』
『邪魔をするなサイキッカーたちよ。』
「・・・・・。」
右近と左近、そして聖夜が止める。
「水無月どけっ、このままじゃ來佳が・・・。」
「黙って見ていろ。」
聖夜は2人を・・・來佳を見る。
「まさか來佳ちゃんと戦うことになるなんておじさん思ってもみなっ「直也。」・・・。」
「アンタが父と母を裂かなきゃ、今こんな状態にならなかったのよね・・・。」
直也の肩が跳ねる・・・直也らしくない反応だ。
「・・・・・うな。」
「私は両親と一緒に聖域に住んで・・・もっと早く覇王の跡を「言うなっ。」・・・。」
直也の荒ぶる声・・・誰も、シャルでさえ聞いたことが無かった。
「直也・・・っ。」
影で四肢を拘束される來佳。
「なんで・・・。」
1歩、1歩と來佳に近づく直也。
「なんで・・・お前なんだ?
地球を護るなんてそんな重荷っ、なんで來佳が背負うんだっ?」
來佳が背負う意味なんて無い、必要なんて無い・・・直也は來佳を抱きしめる。
「來佳・・・″俺″は何よりも誰よりもお前が大切なんだ・・・だから、死にに逝かせたくねぇんだよ・・・。」
親友の娘であり、自分にとっても娘のような妹のようであり・・・大切で愛しい存在。
「だから・・・手足切り落とせば何も出来なくなるだろ?」
影で作られるのは斧・・・直也は本気だった。
「來佳っ。」
助けに行きたいが聖夜たちが邪魔をする。
斧が來佳に迫る・・・四肢を拘束されている來佳に逃げることなどできない。
「「「「來佳っ。」」」」
「來佳ちゃんっ。」
琴音が、映男が咲がネムが、愛良までもが叫ぶ。
「・・・ごめんね、直也。」
斧は空を斬った・・・目の前に拘束されていたはずの來佳が姿を消した。
「・・・お前も、覚醒したのか。」
直也の背後・・・無傷の來佳が立っていた。
「・・・速すぎる。」
この場にいる全員、目で追うことが出来なかった。
「・・・アレが雷のレベルMAXですよ。」
「師匠。」
稲妻のように空中電気を自在に操り、放電することによって電光の速さで移動する。
さらにその応用で來佳自身が不可能と言っていた雷を飛ばす遠距離攻撃が可能にもなった。
「私は2人の約束を守る、命を懸けて戦ってくれた2人の約束を私は必ず継ぐ。」
そしてその約束のためには・・・。
「どうしても核が必要になる・・・だから私は行くよ直也。」
「來佳・・・。」
「私の幸せは・・・″私の大切な人みんなの幸せ″。
私はそれを自分の力で叶えたいの、輝やあの子に任せたくなんかない。」
そう言って微笑んでいる來佳はとても大人っぽく、綺麗で凛としていた。
シャルはその時感じていた・・・來佳の近くに晃牙と香織がいることを。
(いつのまにか來佳は・・・2人を超えた存在になっていたのですね。)
今の彼女なら300年変わらなかった現実が変わるかもしれない・・・。
「直也・・・私は死ぬつもり全くないし、みんなのために犠牲になるつもりもないからっ。
私は両親に、仲間に・・・直也に大切にされている自分も大切な存在だから。」
來佳は自分から直也に抱き付いた。
(私のもう1人のお父さん。)
「・・・いってきます。」
「あぁ、行って来い・・・來佳。」
笑顔になる2人・・・來佳は直也から離れると右近と左近の元に向かう。
『『來佳様。』』
「行こうか。」
右近の背に乗る來佳。
『では行きまっ「待てっ。」・・・。』
琴音は行こうとする1人と2匹を止める・・・自分たちも行きたいと。
「足手纏いです。」
それをきっぱりと切り捨てるのはシャル。
「ミオの超能力のキメラは動物の融合体、普段の超能力ですら危険なうえに今は覇王の核を持っている・・・貴方たちの能力で太刀打ちできると思いますか?」
さらに、ミオは暴走していて意識は無いに等しい・・・視界に入ったモノは容赦なく襲い掛かってくるだろう。
戦闘タイプではない映男やネムは絶対、接近戦でない琴音と咲もミオと対峙するのは危険だ。
「そして輝君・・・超能力は彼に効かない、物理的な攻撃でしか意味が無い。」
「ならアタシは行けるっ、來佳1人行かせてたまるもんですかっ。」
確かに來佳と互角な身体能力の持ち主の愛良ならいけるかもしれないが・・・。
「体力の少ない君には無理です。
輝君も同じくらいの身体能力の持ち主です、捕まれば終わり・・・君は勝てますか?」
「・・・・・。」
顔を歪める愛良。
「右近と左近が一緒なら來佳1人でも「俺は行く。」・・・。」
聖夜は周りの言葉に耳を貸さず左近に乗った。
「アイツ(輝)は俺が殺す。」
『・・・お前なら我らも許可してやろう。』
「フッ・・・。」
「聖夜・・・。」
來佳は止めようとするが聖夜はこうなったら絶対に動かないし考えを変えない。
「お前を倒すのも俺だ。」
「私が輝たちに負けるって?」
「落ちこぼれが言うようになったな。」
「・・・おせっかい。」
來佳は諦めた・・・聖夜は口ではあぁ言っているが來佳の約束を守らせたいのだ・・・多少(半分近く)本音も交じっているが。
「來佳、電光は雷を生む・・・その雷で先読みされるかもしれねぇから気を付けろ。」
「相手は核の所有者、紛い物でも覇王は覇王ですから。」
「分かってます。」
右近と左近は足に力を溜める。
「それともう1つ・・・核のことですが「大丈夫です。」・・・そうですか。」
2匹は飛ぶように空を跳んだ・・・。
「あの優しい子に・・・殺せますかね?」
「・・・・・さぁな、ってなに目に見えて落ち込んでるのかな~?君たちは。」
シャルと直也以外のサイキッカーは先程のシャルの言葉に撃沈していた。
「・・・・・。」
直也は頭を掻きながらシャルを見た。
「・・・はぁ。」
シャルはため息を吐いた後、手を翳した。
「・・・っ、傷がっ。」
琴音と愛良の傷がみるみる完治していく。
「・・・今から貴方たちを″未来″に送ります。
來佳達の手助けを死なない程度にしなさい、それが行くための条件です。」
「師匠、それはっ・・・。」
「咲・・・特に貴方の超能力は足止めに最適です。」
「・・・・・。」
咲に物を言わせないシャル。
「私はこの200年、終わらない戦いに嫌気がさし、
いつか来る地球の滅亡を視てみたいと思って今まで生きてきましたが・・・それも変わるかもしれません。」
愛良たちの足元が光る・・・と愛良たちはその場から姿を消していた。
「・・・・・っ、ごほっ。」
シャルは急に咳き込み始め、吐血した。
「珍しく無茶したな・・・シャル。」
「直也こそ珍しい・・・行かなくて良かったんですか?來佳の元へ。」
「バカ言ってんじゃないよ~後始末、誰がすんだよ。」
いつの間に集まったのか、周りには無数ともいえるミュータントの群れ。
「お前が無茶するからココの時間が動いて気づかれたじゃねぇか。」
シャルの超能力で時間を止めていたので今まで気づかれることは無かったが・・・気づかれた今、恰好のエサである。
「・・・死ぬつもりだったのか?200年も生きておいて。」
今のシャルは超能力の使い過ぎで身動きが取れない状態・・・とてもこの数を相手に逃げることは出来ない。
「戦いが終幕を迎えられるなら・・・それもいいかな、と思ったんですよ。」
「いいのかよ?大事な″娘″置いて逝って。」
「・・・・・。」
17年前・・・街を訪れたシャルは1人の娘と出逢いそして・・・。
「お前といい、晃牙といい・・・お前らロリコン趣味か?」
「・・・直也に言われたくない言葉ですね。」
「うっ・・・今ここで言うことか~?」
ミュータントに囲まれてるというのに陽気な直也とシャル。
「・・・寂しいんですよ、永く1人でいるのは。」
「コレが終わったら・・・俺も真剣に考えるかな~?」
「直也は一生、独り身な気がしますけどね。」
「・・・・・。」
ミュータントが一斉に襲い掛かってくる・・・直也の顔から笑みが消えた。
その頃の上空・・・右近と左近、2匹に乗っている來佳と聖夜。
パンドラの箱がある政府の施設へと向かっている。
「お前・・・本当に殺せるのか?」
「・・・・・。」
核は心臓と融合して初めてその機能を果たす・・・核を取り出すとはつまり。
(彼女を・・・ミオを殺すということ。)
そしてそれは覇王の血、力を受け継ぐ來佳と右近、左近にしか出来ない。
自分と同年代の少女、親の愛情をもらえず実験の数々、昴の人形・・・本当なら学校に行って友達を作って恋をして・・・。
「正直・・・迷ってる。」
「親を目の前で殺されているのに・・・か?」
聖夜は親に拒絶、捨てられた・・・。
殺されようが実験に使われようが何の感情も抱かなかった・・・が來佳は、來佳達は違う。
右近や左近は晃牙によって生まれた命、謂わば晃牙は2匹にとっても親のようなもの、
。
現に2匹から感じる殺気は肌に痛い程感じられた。
「・・・それは許さないし、約束もあるから覚悟は出来ているよ?
でも、あの子が体験するはずだった生活を私は体験した。」
悪ふざけも多いが愛情溢れる神田夫妻、とても楽しく安らげた学校生活・・・輝の存在。
「それを・・・愛情を知らずに死ぬのは人としてどうなんだろうなって・・・。
ただの私のエゴなんだけどね・・・今更、後には引けない。」
『來佳様・・・彼らは人ではありません。』
『我らより不確定な存在・・・化物です。』
「うん分かってる・・・救えないってことは。」
「・・・・・。」
それでも來佳の顔にはどうにかしたいと言っていた。
『着きましたよ來佳様。』
右近たちが着地した場所、そこは・・・。
「ひまわり畑・・・。」
2人の墓と一緒・・・一面ひまわりの庭。
「私なりの香織のお墓・・・素敵でしょう?」
「・・・・・。」
テラスに腰かけ紅茶を優雅に飲んでいる昴・・・だが様子がおかしい。
『お前も晃牙様の血液を・・・。』
「ミオちゃんを操るには同じ力を得ないとね?超能力は使えないけどね。」
だが狂いはしなかった・・・が、その身体はもうガタがきていた。
「フフッ、″あの人″の所に逝けないのは分かっているから・・・。
せめて死に場所は一緒にしたくてここで紅茶を飲んでいたのだけれど。」
あの人とは香織の父親で來佳の会ったことのない祖父、昴の夫。
「來佳ちゃん・・・来て、くれる?」
來佳は言われるがまま昴の元へ・・・。
『『來佳様っ。』』
2匹は止めようとするが聖夜に静止された。
「・・・ちょっと見ないうちに大人っぽくなって・・・。
來佳ちゃん、私が消えるまで・・・手を、握っててくれる?」
「・・・はい。」
來佳は壊れ物を扱うように優しく、そしてしっかりと握った。
「來佳ちゃ・・・ん、死な・・・ない、で・・・。」
昴は灰となって消えてしまった・・・。
「・・・死にませんよ、私は・・・。」
ひまわり畑を後にした來佳達は施設の中に入っていく。
『この奥です。』
この頑丈な扉の向こうにミオと輝がいる・・・。
「おい、俺がアイツを殺しても文句は言うなよ。」
「・・・・・。」
覇王の血を持つ輝は聖夜の手で殺されることは無い。
それが分からないほど聖夜はバカではない、むしろ頭は同年代の誰よりも良い。
「フッ・・・そっちこそ、死んで私の前に化けて出ないでよ。」
來佳は頑丈な鉄の扉を開けた・・・その中には。
「・・・輝。」
『「・・・・・。」』
瞳に光の無い輝と・・・輝に膝枕をされて眠っているミオがいた・・・。
次最終話となりました!!
ここまで読んでくださった読者様、最後までお付き合いお願いいたします。




