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12話

「・・・・・。」

朝・・・輝はいつものように起きるが、いつもとは違う1日にヤル気が無くベットに寝転がっていた。

 あの夜痺れが取れ、真っ先に來佳の部屋に駆け込んだ・・・そこにはベット以外何もないもぬけの殻だった・・・。

「・・・來佳。」

1つだけベットの上に置いてあったもの・・・それは來佳のコンタクトケース。

 金色の瞳を隠すためのもので中身は入ったままだった・・・それはつまり。

(もう・・・学校にも来ないつもりなんだな。)

自分の両親に深く追及する気にもなれなかった・・・。

(サイキッカーと人間の溝は埋まらない・・・か。)

來佳の部屋で正輝に言われた、その瞬間全身の力が抜けるような・・・そんな感覚に陥った。

「・・・きっつい言葉。」

輝の父正輝と來佳の母親の香織が会ったのは今の自分たちと同じ高校生の時、

 先輩だった香織に憧れを抱いていた正輝は嬉しいことに香織と一緒だった、大学の学部も・・・その後の政治家の道も。

しかし正輝は、同じ道に進んでいるのに香織が遠い存在だと感じていた。

 それが分かったのは香織と会って8年後、ミュータントとサイキッカーの存在を知ったとき。

(親父は・・・來佳の母親がいなくなるまでずっといたけどオレは・・・。)

來佳に拒絶された・・・自分は來佳のそばに入れない・・・ただの人間だから。

「・・・あーっオレとアイツの関係って何なんだよっ。」

叫ぶ輝・・・相当ストレスが溜まっているみたいだ。

「・・・・・決めた。」

ベットから飛び起き部屋を出る輝。

「どこへ行く気だ?輝。」

「・・・親父。」

玄関には正輝が待ち構えていた。

「決まってるだろ、來佳のとこだ。」

「・・・殺すと言われたのに行くのか?」

あの時の來佳の目は本気だった・・・行ったら本気で殺されるかもしれない、それでも輝は。

「大切な・・・ダチのそばに行ってダメなわけあるかよっ。」

勢いよく出ていった輝・・・その後ろ姿を正輝は真剣な眼差しで見つめていた。

(・・・來佳っ。)

「・・・輝?」

愛良との約束(?)のため廃工場に来ている來佳。

(今、輝に呼ばれたような・・・。)

しかしその考えはすぐに否定される。

(自分から拒絶しといてバカみたい・・・引き締めないと。)

廃工場の中には気配が1つ、愛良だ・・・來佳は1つ息を吐いた後、扉を開けた。

「来たわね・・・來佳。」

「・・・愛良。」

目が合った後、2人は同時に構え同時に動く。

 蹴りや拳を相手に喰らわす・・・風の切る音がすることから2人が本気ということが分かる。

激しい攻防が繰り広げられ、2人は離れた。

「・・・お互い1発か。」

愛良の頬には來佳の拳が掠り、一線の傷。

「・・・・・。」

「でも、傷の重さはアタシの拳の方が大きかったみたいだけどね。」

「・・・っ。」

來佳の唇から血が流れる・・・愛良の拳は來佳のお腹を捉えていた。

 流れる血を手の甲で拭う、愛良も格闘は得意で來佳とは学生時代勝敗は5分5分だった。

「格闘はアタシの勝ち、今度は・・・。」

愛良は手から炎を、來佳は雷を出現させる。

「今のうちに言っておくけど火傷したくないなら降参した方がいいわよ。」

「・・・降参?」

「アタシらのボスがアンタに会いたがってんの。」

愛良たちのボス、つまりは政府側のボス・・・確か今回のボスは。

(今回のボスは天皇・・・高齢のじいさんが私に一体・・・。)

テレビで何度も見ているが顔も合わせたことなんてない。

(会いたいって言ってるなら・・・。)

來佳の口角が上がる。

「私から会いに行ってあげるわよ・・・ただし。」

「・・・っ。」

愛良の視界から來佳が消える。

「愛良っ、アンタに勝ってからねっ。」

愛良を殴った來佳・・・愛良は咄嗟に腕でガードすると共に炎の壁を出現させた。

 來佳の拳からは皮膚の焼けた嫌な臭いがした・・・。

「・・・アンタ、火傷が怖くないわけ?」

「つい最近大ケガ負っててね・・・この位何ともないのよね~コレが。」

來佳は聖夜との戦いで細胞が死滅するほどの大火傷を負った・・・皮膚が少し焼けた位どうってことはない。

「やせ我慢して・・・。」

「やせ我慢はどっち?息、上がってるわよ。」

愛良の反動は呼吸が短くなること。

 さらに愛良の炎は周りの酸素を使うため少し動いただけで息が上がり、体力が削られる。

「周りの酸素が無くて困るのはアンタもでしょ?」

「・・・・・。」

正確には酸素ではなく水だ。

 愛良の炎は酸素を消費するだけでなく、水分を蒸発させてしまう。

(愛良の周りで雷は使えない・・・。

  身体を強化するだけで愛良に勝てるとも思えない。雷雲を作ろうにも・・・。)

レベル3のための雷雲を作ろうとすれば、愛良は必ず邪魔をしてくる。

(遠距離で戦おうにも・・・。)

ネジを弾くが、愛良に当たる前にすべて溶けてしまう・・・さらに愛良は火の玉を飛ばしてくる。

「・・・くっ。」

難なく避ける來佳だが床が火の玉の熱によって溶けていた。

(・・・溶ける?)

溶けた床の窪みにはドロドロの液体。

「フッ。」

來佳は愛良に背を向けコンテナに向かって走るとコンテナを破壊した。

「何を・・・っ。」

來佳は破壊した自分よりも大きなコンテナの破片を愛良に向かって投げた。

「はっ・・・それがどうしたわけ?」

一瞬驚く愛良だが、コンテナは愛良の手に触れた瞬間ドロドロに溶けた・・・愛良にダメージは無い。

 それでも來佳は1つ、また1つと投げていく。

愛良はそれらをすべて溶かし、コンテナはすべてドロドロの液体に変わり果てた。

「いい加減にしなさいよっ・・・アンタ何がしたいわけ?」

「・・・・・フフッ。」

怒鳴る愛良に対し來佳は笑っている。

「愛良・・・電気を通すのは水だけじゃないの、もちろん知ってるよね?」

「・・・っ、まさかっ。」

愛良の足元にはドロドロになった金属・・・電気をよく通す物質。

 その場を離れようとする愛良だが時すでに遅し・・・來佳の手は金属に触れ。

「・・・終わりよ。」

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁ。」

來佳の雷が金属に通り愛良の身体にも雷を流す。

「・・・っ、くそっ・・・。」

「さぁ・・・ボスの元へ連れて行ってもらうわよ。」

気絶する前で雷を止め愛良に近づく來佳。

「・・・ふざけないでよ、まだ・・・敗けてないわ。

  奥の手は、ちゃんと残しとくもんよっ。」

「・・・青い、炎?」

愛良の手には赤い色の炎ではなく青い炎。

「レベル3なんて別に珍しくないでしょ?」

「・・・青い炎を出したところで何ができるわけ?」

今の愛良はまともに動けるとは思えない。

「勘違いしないで、この炎はアタシを護る壁を作るためのモノ・・・。

  來佳、アンタを倒す・・・いえ、殺すのはコレよ。」

そう言って愛良の懐から出てきたのは小瓶・・・小瓶が宙を舞った。

「・・・・・?」

「木端微塵になりなさいっ。」

「・・・っ。」

愛良は小瓶に向かって炎の球を飛ばした・・・愛良の言葉から爆発するのだろう・・・。

(間に合わないっ。)

唯一の救いは仲間がそばにいないこと・・・。

(やっぱり輝と離れたのは正解だったな。)

爆発音がする前、何か温かいものに包まれた気がした・・・。

(・・・やった?)

青い炎で自分の周りに壁を作り爆風から身を護っている愛良、

 アレならば來佳でも確実に死んだはずだ・・・本当ならばこの手を使わずに來佳に勝ちたかったが。

(・・・ある意味、アンタにとってはココで死んだ方が良かったのかもしれないわね。)

残酷な真実を知ってしまう前に・・・。

(そろそろ治まる頃のはず・・・。)

愛良は頃合いを見て炎を消した・・・爆発は計算でこの工場内に納まるようにした。

 コンテナはすべて液体も残らず、すべて蒸発した・・・何も残っていない空間、のはずが・・・。

「・・・なっ。」

愛良は驚愕する。

(・・・?なんだろ・・・フワフワして気持ち良い?)

來佳はあの爆発の中生きていた・・・自分にあの爆発を防ぐ手段はなかったが目を開けると視界が一面銀色だった。

(・・・生きてる。)

銀色が離れた・・・その正体が分かった來佳は愛良と同様に驚愕する。

「ミュー・・・タント?」

銀色はミュータントの毛だった・・・。

「ミュータントが人間を・・・來佳サイキッカーを庇うなんてっ。」

ミュータントが人を助けるなど前代未聞・・・それもミュータントが1番危険視しているサイキッカーの來佳を・・・。

 來佳も本人も驚いている・・・しかし來佳は不思議な、懐かしいと抱いていた。

「・・・・・っ。」

ただその光景を見ていた愛良だったが殺気を感じその場から離れた・・・そこにはもう1体、別のミュータントの鋭い爪が跡を残していた。

「愛良っ。」

「・・・・・っ、くそっ。」

愛良はもう体力の限界で超能力が使えない・・・避けるだけで精一杯。

(このままじゃ愛良が・・・。)

あのミュータントに殺されてしまう・・・そんなことは。

「ダメッ。」

「・・・・・っ。」

逃げ場のなくなった愛良の頭上に振り下ろされる爪・・・が止まった。

「・・・・・止まった?」

愛良を襲っていたミュータントが近づいてくる、殺気は無い。

 ミュータントは人間と同等の知性を持つが獣並みの理性、なぜ・・・。

「・・・私と、同じ?」

2匹のミュータントを真正面から見て初めて気が付く・・・ミュータント2匹の瞳は來佳と同じ黒と、金色のオッドアイ。

 今まで遭遇したミュータントも政府の何百年という情報のミュータントもすべて銀色の瞳だった。

2匹は來佳に擦り寄ってきた・・・普通のミュータントとこのミュータントたちは圧倒的に違いがある。

「・・・もしかして。」

『お怪我はございませんか?來佳様。』

「シャルさんの言ってた、右近と左近ね。」

『來佳様の呼びたいようにお呼びください。』

人間の知性と″理性″を持ったミュータント。

「なぜ・・・私を?」

『來佳様は我らの大切なお方。』

『何より・・・あのお方が悲しむ。』

ミュータントの優しげな眼差しは、來佳にとって心地良かった。

「あのお方って誰のこと?」

『それをお知りになるならば。』

『我らと共にあの森へ「ちょっ、ちょっと待ちなさいよっ。」何だ小娘?』

來佳に向けられた優しいモノとは全く違う、殺気に満ちた目が愛良に向けられる。

「來佳をどこに連れて行く気っ?」

『貴様らはあの森をデビル・フォレストと呼んでいたか?』

どうやら來佳をデビル・フォレストに連れて行くつもりらしい。

「・・・そんなのっ「それは困るな~」ヤブ医者っ。」

「なお・・・や?」

愛良の後ろにはいつココに、工場の中にいたのか・・・直也がいた。

「來佳を連れて行かせるわけにはいかねぇ。」

「・・・っ。」

今まで感じたことのない直也の本気の殺気、その影の動きに來佳は恐怖する。

『″あの時″の影か・・・忌々しい。』

『あのお方と香織を引き裂いたのも怒り狂うというのに、來佳様までも奪う気か?』

「來佳はこっちの人間だ、香織もな・・・絶対にやらねぇ。」

殺気を込め睨み合う中・・・。

「・・・お母さん?」

「・・・っ、來佳聞くなっ。」

來佳を取り戻そうと影を伸ばすが・・・。

『邪魔をするな。』

左近がそれを邪魔する。

「右近、お母さんを知っているの?母は今どこにいるのっ。」

『香織は・・・森にいます。』

「・・・連れてってっ、お母さんのところにっ今すぐっ。」

「來佳っ、行くっ「行ってはなりませんよ、來佳ちゃん。」・・・。」

凛とした声が工場内に響き渡る。

「・・・・・誰?」

この場にいるということは一般人では少なくともない、

 周りに黒ずくめたちが護るように囲んでいることから政府側の、それも幹部以上の地位を持っているのであろう品のある老婆。

しかし來佳には見覚えが無かった・・・政府側の可能性がある人間はすべて頭の中に入っている、政治家・弁護士・議員など。

 その老婆は來佳の記憶の中にはいない・・・いったい誰なのか?

「まさか・・・アンタ直々に動くとはな・・・。」

「・・・・・。」

直也と愛良は知っている様子。

「・・・この御人が、アンタの会いたがっていた″ボス″よ。」

「・・・・・。」

愛良の言葉に何も返せなかった來佳だった・・・。


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