11話
「らいかぁぁぁぁぁ。」
やられるのを覚悟した瞬間・・・男は吹っ飛んでいた。
(今のは・・・水?)
「なぜっ・・・貴様が、邪魔を・・・する?」
男は地面に倒れ一点を睨みつける・・・その先には。
「そいつを負かすのは俺だ。」
「・・・っ。」
男は気を失った・・・死んだわけではない。
「・・・・・聖夜?」
そこにはケガ1つ見当たらない聖夜がいた・・・両腕も完治したらしい。
「腕、治ったみたいだな。」
「おかげさまで・・・そっちも元気そうで。」
來佳は聖夜を睨むが聖夜は相変わらずの表情。
「來佳っ、超能力はどうなったんだよ?」
「・・・そういえば。」
來佳は人差し指に力を込める・・・とバチッと雷が出現する。
「・・・でっ・・・っ。」
急にけだるさを感じ倒れそうになるのを聖夜に支えられる。
(今日はまだ・・・使ってないのにっ。)
このけだるさは体力を使い果たしたときと同じものであった。
「・・・・・。」
「來っ「いいのか?」あ?」
「玖城が鈴宮妹を奪還している。
俺とコイツはただの足止めだ・・・行かなくていいのか?」
「・・・っ、愛良が?」
來佳の身体が震えた。
あの時聖夜を助けた茶髪のツインテールの赤目の少女、″炎″のサイキッカー玖城 愛良。
琴音の風と相性が良く愛良は琴音には学校時代、全戦全勝の成績。
琴音は強いが相手が悪い・・・ネムは奪還されているだろう。
「・・・「先行って輝。」來佳。」
輝は琴音の元に走った。
「今のお前なら・・・このまま連れて行っても抵抗はないな・・・。」
「抵抗してほしいなら、してあげるけど?」
笑みを浮かべる來佳だが限界ギリギリなのは明白。
「・・・・・。」
「・・・何よ?言いたいことがあるならはっきりっ・・・んぅ。」
怒鳴る來佳の顔に聖夜の顔が近づく・・・そのまま來佳の言葉を遮るように自分の口で來佳の口を塞いだ・・・。
お互い瞳を閉じようとせずただ触れ合うだけの唇、唇から不思議な力が流れてくる。
「・・・っ。」
來佳は聖夜に殴りかかろうとするが唇を放され避けられた、もう片方の手は唇を拭っている。
「動けるようになったようだな。」
「・・・おかげさまで。」
あの口づけはただの口づけではない、超能力の源である体力を与えることができる行為。
いわば人工呼吸のようなもの・・・色気も何もない口づけだが、キスには変わりなく・・・。
「・・・っ、今どきこんなっ・・・しないってのっ。」
顔を真っ赤に染める來佳・・・今にも襲い掛かるほど警戒している。
「いいのか?向こうに行かなくて・・・そのために分けてやったのに。」
「・・・うっ。」
上から目線はムカつくが正直1歩も動けない状態だったので反論できず。
「つっ、次会ったときは覚悟しなさいよっ、その顔面っ見るかげもないほど殴ってやるんだからっ。」
まるで子どもの捨て台詞・・・來佳は走って行ってしまった。
「・・・もういいぞ、玖城。」
來佳の死角だった場所から現れるネムを抱えた愛良、琴音と戦ったのだろう切り傷がある。
「聖夜さん、來佳を遠ざけるためにあの行為を?」
愛良は先程の光景をばっちり見ていた。
「全力のアイツと戦わないと意味がないからな・・・帰るぞ。」
「・・・はい。」
その時、愛良はちゃんと見ていた・・・。
無表情だった聖夜の口角が上がっていたことと、來佳の後ろ姿をずっと見ていたことに・・・。
「・・・・・クソッ。」
愛良は唇を噛み締めていた・・・。
その頃の來佳は琴音の家に向かったがその家は愛良によって燃やされていて・・・。
その後すぐに直也から連絡があり、直也が所有している一軒家に着いた。
「・・・琴音はっ?」
「來佳・・・。」
映男は軽い火傷だったらしいが琴音は・・・。
「相性が悪いのに無理しちゃって・・・。」
直也によって包帯を巻かれた琴音はベットで眠っていた。
(琴音・・・敗けるって分かっててもネムのために身体張ったの?
さすが、頑固姉妹の姉なんだから・・・無茶しすぎだよ。)
「それはそうと、來佳どうやってここまで来たんだ?」
「・・・え゛っ?」
「あんなにヘロヘロだったくせっ「あー」もごっ。」
輝の口を塞ぐ來佳。
「まさかっ、水無月 聖夜に何かされっ「されてないっ。」・・・。」
來佳に本気で殴られ気絶する輝・・・來佳は肩で息をし、顔を赤くする。
(はっは~んっ。)
何かに気づいた直也・・・來佳に近づき顎を持ち上げる。
「來佳ちゃ~ん、おじさんと熱いキッスしようか~?」
「キッ・・・。」
さらに頬を染め慌てる來佳・・・決定だ。
「あのクソガキ・・・言葉ではなく態度で表しやがったか。」
(次会ったら殺そう。)
密かに誓う直也からドス黒いオーラを感じる。
「ちっ、違う・・・アレは人工呼吸のアレでっ。」
「・・・そんなにヘバる程超能力を使ったのか?」
「・・・・・。」
映男の質問にはNoだ、來佳は今日超能力を1回も使っていなかった、いや使えなくなった。
(今まで超能力が使えなくなるなんてなかった・・・そんなデータも知らない、それに。)
來佳は普段鍛えている分体力は普通の成人男性よりもある。
能力の最大開放や3日3晩戦い続ける位しないと使い切ることはないだろう・・・。
(確か超能力が使えなくなったのは・・・。)
岩のサイキッカーが現れる前、來佳は輝と言い争いをしていた・・・その時に。
(私が・・・サイキッカーじゃなければいい・・・か。)
來佳は気絶している輝を見る。
(まさかね・・・。)
輝が何か関係している・・・そう思った來佳だが輝は普通の人間だ、と言ったのは自分、すぐにその考えを消した。
それから3日が経ったが琴音はまだ目を覚まさない。
(・・・琴音。)
琴音のこともそうだが・・・來佳の視線は。
「・・・でさ~」
「おもしろーい、輝君。」
輝に告白してきた女子生徒はすごく積極的で休み時間は必ず遊びに来て輝と話している。
輝が楽しそうに話していてなによりであるが・・・。
(この3日間、輝といて超能力が使えないとか身体に異変が起こるわけでもなかった・・・ただの考えすぎ。)
自分でもそう思っているのに身体の奥底で何か違和感があり、また探ってしまう。
「・・・・・。」
楽しそうに笑っている輝からは前回見た怒りと悲しみに満ちたあの表情が出せるとは思えない。
(私が・・・輝と出会ったことであんな表情をさせてしまった・・・。)
あんな顔は2度と見たくない。
(そろそろ、潮時かな・・・直也も味方になってくれるみたいだし、神田家を出て直也の家に・・・。)
頭では分かっている・・・が、身体が行動しないのだ。
この3日間試みたが出来なかった・・・神田家の温かみから抜け出せなかった。
「・・・來佳ちゃん。」
「海斗?どうしたの、いつもの元気さが全く無いけど?らしくない。」
「あの、さ・・・輝の親父って家に帰ってきてる?」
「・・・?帰ってきてるけど。」
海斗の顔は不安そうに曇っていた。
「・・・最近家に親父帰ってこなくてさ、母さんも心配してて。
仕事が忙しいと思うんだけど、連絡ひとつ無いのは今までなかったからさ。」
「・・・・・。」
「孤児院も潰れてさ・・・今オレ柄にもなくテンパって。」
父、努が帰ってこないのは自分のせいだと言ったら海斗はどう思うか・・・。
孤児院はあの後反政府の人間によって潰され子供たちは全員別の孤児院に移され、
もちろん地下の実験施設も壊した・・・幹部の人間であろう努にとっては取り返しのつかない失態だろう。
「ごめん海斗・・・何も知らないや。」
「そっ・・・か、そうだよな変なこと聞いてごめん。
お礼に今度合コンでもどうっ「却下。」えーーー。」
元の調子に戻った海斗だがやせ我慢をしているのはバレバレだ。
(・・・ごめんね。)
來佳が呟いたその4文字の言葉には色々なものが詰まっておりとても重いものであった。
放課後來佳と輝はいつも通り2人で帰っていた。
「・・・あの子と帰ればいいのに。」
「襲われたらどうすんだよ?あの子を巻き込むわけには行かねぇだろ。」
「・・・・・。」
放課後も一緒に帰りたいと彼女は言っているのだが輝は断り続けている。
「・・・ひかっ「なぁ、來佳の子供ってやっぱサイキッカーなのかな?」はぁっ?」
何をいきなり言い出すのか・・・。
「子供って・・・そんな先の話分かるわけないでしょ?」
「そうなんだけどさ・・・前にアキがさ、直也さんに聞いたじゃん?
ミュータントがいなくなったら自分たちはどうなるんだって・・・。」
「・・・それが?」
「ミュータントが消えたら・・・サイキッカーはどういう扱いをされるんだろうなって。」
300年前、人類の危機にサイキッカーたちは現れ、英雄として称えられたと物語では語られている。
もしミュータントもデビル・フォレストも無く、サイキッカーだけだったら・・・。
「十中八九、化け物扱いで嫌われるでしょうね。」
現に聖夜は忌み嫌われ、政府に引き取られたのだ。
「サイキッカー、來佳と結婚する奴はちゃんと理解してくれる奴じゃないとな。」
自分は・・・サイキッカーたちはどうなるのだろうか。
超能力が無くなって普通の人間になれるのだろうか、それとも・・・。
「そう、かもね・・・でもそんな人なかなかいないと思うけど?」
「そうだな・・・例えばオレとか?」
「・・・・・え?」
「あっ・・・。」
変な空気になる・・・。
「アレだぜ?こっ、これは言葉の綾ってやつでっ。」
「当たり前じゃない・・・輝とはずっと友達でいたいな。」
初めて出来たサイキッカーたち以外の絆・・・來佳はずっとそれを大事にしたかった。
「だよなーそうだよっ「來佳っ。」・・・アイツは?」
「・・・愛良。」
10m程先に愛良の姿が・・・その目は殺気に満ちていた。
「誰よその男っ、アンタ・・・聖夜さんとあんなことしときながらっ、
そんな男と将来の話なんてっ「あーーーっ。」何よ?」
「相っ変わらずっ、妄想が激しいんだよアンタはっ、忘れかけてたのに・・・。
それとしたんじゃなくされたんだよっ、文句言いたいのはこっちだバァーカ。」
「・・・・・。」
まるで子供の言い争いだ・・・見てる輝は何も言えず呆れてくる。
「・・・いっつもそう、聖夜さんは昔も今も・・・気にかけてるのは來佳、アンタのことばっか。」
「だからさ・・・何度も言ってるけど聖夜が私を気にしてるのは私の雷で私自身じゃ「その雷もアンタ自身じゃないっ。」・・・そうだけどさ。」
自分が選んで雷になったわけじゃない・・・他のサイキッカーもそうだ。
「アタシは、絶対アンタを許さないっ。
聖夜さんとアンタが闘ったあの工場、あの工場で明日アタシと戦いな。」
「・・・「拒否なんてさせないから。」まだ何も言ってねぇよ。」
相変わらず人の話を聞こうともしない・・・愛良は何にでも猪突猛進なのだ。
「断る理由なんてない、それにアンタが反政府側のサイキッカーならいずれは戦う、それが明日ってだけ。」
「死なない程度に燃やしてあげるわ。」
燃やすという時点で手加減などアレだが、コレは常識の通じないサイキッカーの会話。
愛良は言いたいことだけ言って去って行った・・・。
「・・・すげぇ女だな、水無月どんだけ愛されてんだよ。」
「本人(聖夜)はまったく気にしてないけどね・・・。」
愛良は聖夜信者と言ってもいいくらい聖夜のことが大好きなのだ。
しかし愛良の超能力は炎・・・聖夜は1度たりとも愛良に関心を抱いたことは無い。
愛良は女子のサイキッカーの中でもトップクラスの実力者なのだが、
聖夜には全く相手にされず、落ちこぼれの來佳には聖夜自らが近づいていた。
「よく目の仇にされたもんよ・・・。」
「・・・女って怖ぇー。」
「輝も注意しときなよ、あの子可愛いけど積極的だったから・・・何するか分かったもんじゃないよ。」
「彼女は関係なっ・・・珍しいな、來佳が携帯いじってるなんて。」
來佳はあまり携帯を使わない、携帯に登録してある人間とはすぐに会えるからだ。
「ちょっとね・・・帰ろうか。」
「おいっ・・・。」
携帯をしまいさっさと歩きだす來佳・・・神田家に着くと・・・。
「おかえり~。」
「直也さんっ、何でココにっ?」
「私が呼んだの。」
直也と会うのは久しぶりだ・・・なぜ自分の家の前にいるのか、そして・・・。
「その荷物は?」
「これはな~「私の荷物よ。」そういうこと。」
「はっ?どういう・・・。」
全く展開が分からない輝。
「・・・輝といるのもこれが最後、私はこの家を出ていく。」
「なっ?どういうことだよ?」
急になぜ・・・輝には理由が分からなかった。
「輝が言ったのよ?自分は足手纏いだって。」
「・・・っ、アレはっ「はっきり言ってあげる。」・・・。」
來佳の目はとても冷たかった。
「アンタは足手纏い、邪魔な存在なの・・・だからこれっきり、じゃあね輝。」
「・・・っ、待てよっ。」
腕を掴もうと腕を伸ばすが來佳にかわされ、額に指が触れる・・・その瞬間。
「・・・っ。」
雷を流され身体が倒れる・・・手足が痺れて上手く動かせない。
「・・・あぁ、後、愛良との明日の戦い、来たら殺すから。」
先程のは脅しの行為・・・來佳は本気だ。
「普通の生活の戻りたいなら早くすべてを忘れることね・・・。」
「待っ・・・來佳っ。」
輝の声は2人には届かず、2人は姿を消した。
「・・・くしょう・・・ちくしょぉーーー。」
自分と來佳の関係とはそんなちっぽけなものだったのか・・・。
「おーおー、叫んでるねぇ~少年は。」
「・・・・・。」
輝の悲痛な叫びは2人にも聞こえていた。
「・・・これで良かったのか?”來佳”。」
「・・・っ。」
直也が來佳を呼び捨てにするときは父親のソレに近いもので・・・。
「あ、んな顔・・・させるつもりなんてっ、なかったのっ。」
「うん。」
「もうっ、危険なっ・・・目に遭わせたくないっ。」
「うん・・・來佳は優しいからな。」
優しく頭をなでる直也の胸に縋り付く來佳・・・胸に顔を埋める。
「私っ、輝を傷つけるつもりなんてなかったのっ、
それなのにっ、輝に超能力使って・・・最低だ・・・さいてい、だ。」
ポロポロと目から涙が零れる。
「そんなことないさ、來佳は優しい・・・優しい子だ。」
直也は來佳を包み込むように抱きしめる・・・來佳は声を押し殺し泣いていた・・・。




