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10話

「あのっ、好きですっ付き合ってくださいっ。」

「「・・・・・。」」

どうしてこうなった・・・。

―――來佳の腕が治って1週間、來佳は2週間ぶりに学校に行った。

みんなは元気な來佳を見て喜んだ・・・「仮病か?」と疑った奴には軽く腹に入れてやった。

「おっはよ~來佳ちゃん。」

「・・・っ。」

輝の肩が強張る、いつもどおりの海斗だが海斗の父親の努は敵の幹部だった・・・。

 さらにネムを含むたくさんの子供たちや実験の数々・・・來佳が憎むべき存在。

海斗は全く関係が無いだろうが來佳は海斗をどう思うのだろうか・・・。

(やっぱ海斗も憎むのかっ「おはよう、海斗。」え?)

どうやら心配は杞憂に終わったらしい。

「え?おまっ・・・。」

「アンタが動揺してどうすんのよ。

  彼が関係していないのは確定したんだから警戒する必要はないし、気構えるだけ無駄な努力じゃない。」

ネムの証言で海斗は全く関わっていないことは証明した。

 言い方は悪いが関係ないと分かっている人間を気にかける暇など來佳にはない。

「・・・変わったな。」

「別に・・・ただココは変に気を張らないでいいかな、って思っただけ。」

そう言った來佳の顔は自然体であった。

「そっか・・・それならいいんだっ。」

まるで自分のことのように喜ぶ輝は海斗の元に行った。

「・・・・・。」

來佳の頭の中ではシャルの言葉がリピートされていた。

(輝が危険?)

ここ1週間シャルにはああいったものの・・・輝をずっと観察していた。

(どこをどう見ても普通の人間・・・まぁ普通っていうにはぶっ飛んでいるけど。)

銃が百発百中の腕だったり、身体能力の高さが一般人より高いなど普通の人間ではない者の、

 サイキッカーが危険になるほど脅威というものではない・・・。

(シャルさんはいったい何を知っているんだろう。)

シャルは絶対にまだ秘密を握っている・・・それも自分に繋がるものを、來佳はなぜかそう確信していた。

(そもそも私は知らないことが多すぎる。)

自分が他のサイキッカーよりも優先的に狙われているのは香織の娘だけが理由なのだろうか・・・。

 シャルだけでなく直也も知っていそうなのだが、あの時から1回も会えていない。

(初代サイキッカーのボス、晃牙・・・雷のサイキッカー。)

シャルから覇王の話を聞いたとき、震えが止まらなかった。

(同じ超能力だって・・・勝てるかなんて分からない。)

現にすべてのサイキッカーを率いた晃牙と同期のサイキッカーでさえ敵対している來佳。

 統率だけでなく、カリスマ、強さも比べ物にならないだろう・・・。

(もっと強く・・・もっと、母のように。)

香織が闘っている姿は1度しか見たことがない、それも幼いときに。

 でも幼い記憶ながらも、強く気高く凛としている母の後ろ姿は鮮明に覚えている。

(・・・・・そういえば。)

今まで全然思ったことがない疑問が頭に浮かんだ。

「私の父親って、誰なんだろう・・・?」

母がいるだけで満足だった・・・優しくて強い憧れの母、

 さらに直也が遊んでくれていたので直也が父親のようなものだった。(現在は全く違う)

自分の父が普通の人間なのか、それともサイキッカーなのかも分からない。

(直也に聞いて・・・答えてくれるのかな?)

なぜか直也は自分に過保護な部分がある。

「あのっ、神田さん。」

(今まで聞かなかっただけで聞いたらあっさり「神田さんっ。」っ。)

今更だが、來佳の今いる場所は教室ではなく中庭、時刻は放課後。

 掃除当番でゴミ出しをした後、中庭のベンチに座ってずっと考え込んでいたのだ。

目の前には見覚えのない男子生徒。

(気配にも気づかなかった・・・緩みすぎだ。)

気構え無くてもいいと確かに自分で言ったが、構えなさすぎるのもどうかと思う・・・。

「あのっ・・・神田 來佳さんですよね?」

「えっ?・・・あっ、はい。」

來佳は神田家の養子に引き取られたという設定・・・名字も枢木ではなく神田。

(・・・すっかり忘れてた。)

輝とは義理の兄妹だったのを忘れていた。

「あ・・・で、何?」

「あのっ・・・・・その・・・。」

頬を赤く染め、もじもじし出す男子生徒。

「ぼっ、僕とつっ、付き合ってくださいっ。」

「・・・・・・・・は?」

生まれて初めての告白に開いた口が塞がらない・・・。

「な・・・なんで?」

來佳はかなり焦っていた・・・生まれて16年、戦いの修行しかしてこなかった。

 さらに自分の容姿は琴音、ネム、咲など美人たちと長年一緒にいたのだ・・・いかに自分が平凡な人間かいやでも分かる。

まぁ他人に言われたらムカつくので殴るのだが・・・自覚はしている。

「神田さん、前に包帯巻いてたことあったじゃないですか・・・。

  その後も2週間ぐらい休んで・・・何かこう、護ってあげたくなったんです。」

「護って・・・か。」

力説してくれた男子生徒には悪いが笑いが込み上げてくる。

(護ってるのは私の方なのに・・・。)

ミュータントから人類を護っているのは來佳達サイキッカーだ。

 それに護ってもらわなくても男子生徒なんかよりも來佳の方が何百倍も強い。

「・・・悪いけど、私はアンタが思ってるようなか弱い女の子じゃないし、

  今恋愛にかまけてるヒマないんだ・・・ゴメンね。」

「あっ・・・。」

男子生徒を放置して來佳は立ち去った。

「恋愛・・・か。」

学校内を歩けば仲好さそうな男女のカップル。

「・・・「羨ましいの?」っ、海斗っ。」

背後から囁かれ思わず叫ぶ。

「來佳ちゃんも恋愛に目覚め「興味ないっ。」ふ~ん、

  じゃあ親しい男でも思い浮かべてみるといいよ、きっと何か分かるよ。」

「・・・親しい?」

「そ、近しい人とか・・・例えばオ「ない。」ヒデェ。」

その後海斗と別れ再び1人で歩き出す。

(近しい奴・・・か、映ちゃんは・・・見た目がアレだし。)

1番最初に浮かんだのは映男だがただ付き合いが長い友達、仲間。

(直也は・・・お父さん?お兄さんみたいな?変態だしな・・・。)

2番目は直也・・・第一に歳が離れている。

(シャルさんは知り合いだけど特に近しくないし・・・本当は200歳だし。)

直也以上に離れている歳・・・第一あの人は謎すぎる。

(後は・・・聖夜?・・・ないない。

  目の敵にされてるし、半殺ししたしされたし・・・確かにカッコいいとか認めてほしいって思ったことはあるけど・・・。)

4番目は聖夜、3人とは違う感情を聖夜には持っているが、それは恋愛感情などではない。

(大体敗けまくって半殺しにされても好きだったら私どんだけマゾだよって話だし。

笑えない冗談にもほどがある・・・來佳はノーマルだ。

(身近な男って・・・ロクな男がいないじゃん・・・。)

というよりも、知り合いが少なすぎる・・・。

(あ、もう1人いたわ。)

教室の扉を開けると輝が待っていた。

「ゴミ捨てに行くだけでどれだけ時間かけてんだよ、告白でもされたのか?」

「・・・・・まぁね。」

「そう、そりゃよかっ・・・えぇーーー。」

「うるさっ。」

持ち前の反射神経で耳を塞ぐが何でそんなに驚かれないといけないのか・・・。

「だっ、誰にっ?」

「他のクラスの男子。」

「・・・・・で?」

輝は來佳の告白の返事を聞きたいのだろうが・・・。

「アンタ・・・私が恋愛にかまけてるヒマがあると思ってんの?」

輝は冷静さを取り戻した。

「それもそうか・・・まさか來佳がな・・・。」

「・・・な、何よ?」

「いや何でも・・・で、なんて言われたんだ?」

「・・・護ってあげたいって「ぶふっ。」笑うな汚い1発殴らせろ。」

自分が言われた時にも笑いそうになったがその時は我慢したし、他人に笑われるとムカつく。

「はっ、護ってあげたいとかっ・・・知らないとはいえ、ぶっ。」

(こいつだけは絶対にないな。)

輝とは今の関係が心地良い、帰る來佳の後ろではまだ笑っている輝。

「ふっ・・・ぷぷっ、腹痛ぇ。」

「まだ笑ってるし・・・いい加減に「神田君っ。」ん?」

本当に殴ろうかと拳を構えようとしたら前から可愛らしい女子生徒が走ってきた。

「ふっ・・・な、何か用?」

で、冒頭に戻るのだが・・・。―――

「好きですっ、付き合ってくださいっ。」

「「・・・・・。」」

輝はそこらの男子よりはカッコいいし性格も・・・まぁ悪くはない。

 将来政治家ということもあり嫁になる子は玉の輿だろう・・・しかし。

(何でこのタイミング?)

普通告白というものは1対1でやるものではないのか・・・無知な來佳でもそれ位分かる。

「私邪魔なら帰るけど「邪魔じゃないです、妹さんでしょ?」・・・あぁー。」

((そういえばそうだった・・・。))

2人の心が揃った・・・來佳は先程も思い出していたが頭からなくなっていた。

「入学した時からずっと好きでしたっ。」

顔を真っ赤にした彼女はとても可愛らしかった。

「えっと・・・友達からなら。」

「本当っ?ありがとう。」

女の子は満面の笑みで走って行ってしまった。

「可愛い子じゃない・・・私と違って護ってあげたくなる子だし。」

「そうだな。」

「付き合えば良かったのに。」

「・・・そうだな。」

自分とは全く違う少女・・・何より″普通″の人間。

「私たちに遠慮してる?心配しなくても輝1人いなくても・・・っ。」

輝に押され壁に背中をぶつける來佳。

「なにすっ「・・・・・。」・・・輝?」

文句を言おうとした來佳だが輝は今までにないくらい真剣な顔で何も言えなくなった。

「そんなに・・・。」

「ひかっ「そんなにオレが邪魔かよっ。」っ、何言ってっ。」

「オレがいたら思うように動けねぇもんなっ、

  それなら最初から足手纏いだって、突き放せばよかったんだっ。」

來佳は目を丸くした。

「違っ「違わなくねぇだろっ。」・・・。」

輝の悲痛な叫びに何も言えなくなる來佳。

「・・・オレがサイキッカーだったら・・・。

  お前がサイキッカーじゃなくて普通の人間だったら、こんなわけの分かんねぇ感情なかったのに・・・。」

「・・・ひかっ、輝っ。」

「・・・っ。」

頭上から大きな岩が飛んでくる・・・來佳は輝と共に難なく避ける。

「輝っ、大丈夫?」

「・・・ああ、何なんだよったく。」

「はぁーーーはっはっはっ。」

男の高笑い声が響く・・・塀の上にがたいの良い男がいた。

「久しぶりだなっ、枢木 來佳っ。」

「・・・・・誰?」

男の頭に岩が落ちる・・・。

「・・・っ、岩のサイキッカーだお前には格闘戦でさんざん敗けまくったっ。」

「全然知らない、それに格闘戦で負かした相手なんていっぱいいるし・・・いちいち覚えてるわけないでしょ。」

ガンッ、ガンッとまた頭に降ってくる岩。

「・・・結局何しに来たんだ?コイツ。」

「用がないなら私たち帰るわよ?アンタと違ってこっちは忙しいんだから。」

「バッ、バカにすんじゃねぇーーー。」

塀から跳び、岩を纏った拳を來佳に向かって振り下ろす、がスピードは遅く軽々と避けると拳は地面に当たり出来たのは丸いクレーター。

「威力だけなら來佳よりあるんじゃねぇか?」

「当たらなければ関係ないねっ。」

來佳は男の懐に瞬時に入り鳩尾に1発。

「やった。」

「・・・?」

輝が喜ぶ中、來佳は違和感を感じていた。

「なんだ?その軽いパンチは。」

「・・・・・。」

來佳の拳は全然効いていなかった・・・男と距離をとる。

「・・・・・。」

「どうしたんだよっ、來佳。」

「・・・出ない。」

「何がっ。」

自分の手を見て愕然とする來佳。

「・・・雷が、出ない。」

「・・・・・は?」

輝も呆然とする・・・がすぐ近くには。

「來佳っ。」

「もらったぁ。」

「・・・っ。」

雷を放出しようとするが出ない・・・。

 やられる・・・來佳はそう脳裏に浮かんだ。

「らいかぁぁぁぁぁぁ。」

輝の叫び声が辺り一面に響いた・・・。


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