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身代わりのはじまり

更新がかなり空いてしまいすみませんm(_ _)m

「下がるんだ。この方は帝国からの客人だ。心配ない。

申し訳ない。紫来(シライ)殿、王宮に不慣れ者が失礼した」


蓮莉(レンリ)を隠すように咲陽(ショウヨウ)が前に出た。

咲陽を守らなくてはと、とっさに前に出た。

けれど、どうして良いか分からなくなっていただけに視界の全てを覆う背に蓮莉は安堵した。

まさか帝国からの客人だったなんて。

隣国であり、500年の歴史と広大な領土を持つ帝国は常にこの国にとって脅威な存在だ。

幸いにも直接争ったことなどはないが、下手に刺激してはならない相手。

何より争えば勝てる見込みなどない相手


その帝国からの客人を、思いっきり不審者扱いしてしまっていたなんて。


(ほんと私、役に立てない。どうしてこんな役立たずなの だろう)


兄のように咲陽の心に寄り添い、その心を守り、望みを叶える。

そんな策略を張り巡らす力などない。

そして咲陽を守る力もない。

もしもこの場に咲陽の命を狙う刺客が現れたとしても、

蓮莉に出来るのはこの身を投げだして一瞬の盾になることだけ。

きっと刺客を倒すことも、咲陽を逃がすことも出来ない。

盾となり傷つく蓮莉の姿は、咲陽の心をまた傷つける。

咲陽(アルジ)の心を傷つけてしか、役に立つことが出来ない。


傷つけることでしか咲陽を守れないなら、

そばにいてはいけない。

咲陽の心を守りたかったのにそれが出来ない。

咲陽の心を守れる存在にはなれなかったのだから、

仕方がない。

叶うなら咲陽のそばにいて、

役にたちたかった。

それが叶わないなら、せめて駒になりたい。

咲陽の友にして、その心の守護者たる兄の駒となりたい。

どんな使われ方をしてもいい。

咲陽の役に立つ事が出来るなら、それでいい。


守るべき咲陽の背中に守られながら、蓮莉はそう思った。



「なんだ婚約者殿を隠してしまうのか。せっかくだ、挨拶をさせてもらおうか。これから共に過ごす仲だしな」

「この子は違いますので」

「婚約者殿ではないのか……ほう、こんな場所で密会とはな。噂とは随分と違うものだ。噂は噂ということか。いや、噂を利用したお得意の策略ということか。危うく騙されるところだったようだな」


この客人は何を言っているのだろうか。

まるで蓮莉と咲陽の仲を誤解しているような。


違う


誤解させられているが故にこの発言だ。

咲陽と緑莉(リョクリ)の恋物語は有名だ。

他国であるとはいえ、隣国の皇太子の恋物語を知らないとは思えない。

何より客人としてこの国に滞在しているのならば尚更だ。

知っているのに何故こんな誤解をさせられたのか。

それは咲陽と緑莉に対して思惑を持っているから。

だからこそ必要以上に警戒し、思考を巡らせる。

それを利用して緑莉から、蓮莉に目を向けさせ見事に誤解をさせたのだ。

最愛の恋人がいるはずの皇太子に密会するような娘がいると。

そんな誤解を帝国の客人にさせてどんな意味があるのかは分からない。

だけれど、誰が企んだのかは分かる。

帝国の客人を欺くような危険な企みをするようなものなど兄、琳灰牙(リンカイガ)くらいだ。


この状況があなたの企みならば、私はいくらでもその企み乗る。

だって兄が動くのは咲陽を守る為だから。


(だから兄様、陽兄様の為に私を駒と使ってください)



「相変わらずまっすぐでいらっしゃるな。その目に入れた事をそのまま信じられる。相変わらずお変わりないようで、安心どころか感動してしまいましたよ」


琳灰牙、そう紫来が恨みのこもったつぶやきだけで、突然の乱入者に誰も驚かなかった。

現れるべき策士が現れた、そう思うだけだった。


「貴様も変わりが無いようだな。そのふてぶてしさ、舌を切り取ってやれば収まるか」

「さあ、どうでしょうね。舌など無くても、変わりませんしね。まあ何処にでもいる愚かな者どもに声を掛けなくて良くなると思えば、むしろ色々と楽になるかも知れませんしね」

「貴様は本当に変わり無いな。今の私によくそのような態度をとれるものだ」

「ありがとうございます」

「褒めてなどいない!貴様、私の一存でこの国がどうなるか分かってるのか」

「どう出来るというのですか、紫来第2王子将軍」



帝国の”将軍”

蓮莉は声には出さずに驚いた。

まだ若い第2王子が、帝国軍の将軍の地位にいるとは。

そして、そんな軍の権力者である帝国の第2王子にすら動じない兄にも。

きっと兄とっては相手が誰であろうと、咲陽をこのように守ってきたのだろう。

私もそうありたかったな。

こんな役立たずではなく、守りたいのにな。

寝不足と疲労で既にふらふらだった。

気を張っていたのに、兄の姿をみたら力が入らなくなった。もう、視界が暗く揺れて狭まってきた。

こんな所で。

こんな警戒しなくてはならない相手の前で倒れたくないのに。

6年前から思い通りにならなくなった身体は、蓮莉の意に従わない。

力を失った身体を抱きとめる暖かくて優しい腕のぬくもりと、”蓮”と呼ぶ声を感じながら、蓮莉は悔しげにその意識を失った。

次話は連休前に更新出来るように頑張ります!

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