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召喚  作者: 黒龍藤
第三章   道行き  友達に会いに行こう
57/239

57 スキル

 

 今朝は寝坊しました。夜中でも、あれは二度寝になりますかね? しかし、寝るだけ寝たから? 気分的には、スッキリ〜。


 「おはようです」

 「おはようございます。体は大丈夫ですか?」


 …俺も踏んだり蹴ったりなんだけどね。

 女将さんは、げっそりしてた。化粧してたけど目の下の隈とか短期間でも… なるもんはなるんですねぇ。


 この先、賠償金等の話が待ってるんですけどね。俺の分も含めて。


 個別に行うと他の被害に遭った人との金額の格差ってか〜 貰える人と貰えない人がでたら文句出るだろ? だから、一同打ち揃って話しましょうって事だった。

 その際、喧嘩にならない様に警備さんと領主館にお勤めの担当者さんが来て、公平に透明性を図るそうです。でも、捜査中でもあるんで〜… ちょいと時間がかかる。そこは旅行者だろうと何だろうと、動かない役所仕事です。まぁ、なんかの猶予期間みたく… 


 それでも時間的余裕が無い人や少額だから困らないとか、長い鬱陶しい事になるのは嫌!な人は、何か一律の最低補償金貰って済ますそうです。そこに落ち着く場合は、他の被害者さんでも文句言わない仕組みになってるらしい。 うん、らしい。

 昨日、警備さんに下町の場所を聞きにいった時、そういった説明もくれたんだよ。…だけどね〜、色々あるようですよ〜? いろいろ〜。



 「はい。ありがとう」


 深く言わずに挨拶で留めます。お互い爽やか笑顔には遠いのが残念です。

 俺は人を罵る 『だけ』 の大人には成りたくないと思ってます! はい! …気持ちを忘れないようにしたいです。



 明日の約束時間は昼前。遅れないように朝から行って、早めに到着して待つのが正解だ。


 なら、今日は。

 やってみようじゃないの。俺のスキルを!







 「うにゃにゃー、うななー、うにゃうにゃん!!  にゃーっ!!」



 いま〜、みちを〜、猫姿で〜、かっとんでまーす。

 最初は慣れなくてさぁ。手が痛かったんだけど、慣れるもんだわ。へーき、へーき。


 この世界に着いてから初めての猫姿です。


 今の俺のお手々は〜 うりゃ、見ろ! 肉球だ! に・く・きゅ・う〜〜〜。


 今の格好? 二足で座り立ち? 尻尾でバランス取って、両手を前に突き出してんだよ。 ふう。疲れるカッコはするもんじゃねぇな。



 ピンと立った猫の耳。シュルンとした長い尾っぽ。ふわっとした毛並み。でも、長毛種じゃないよ。すらりとした体格の〜 …………ちび猫です。


 ……………子猫です。

 ………………子猫、可愛いだろ〜?



 かわいーって言えよー! せめて!

 小さくて役に立ちそうもねーなんて、んな事考えんなよぉっ!! 小さい子猫である時点で、スイートラブリーキャッツだ!

 ……絶対そうだ。そうなんだ。 …黒猫じゃないんだし。





 朝飯食べた後に、また駐在所に行きました。

 話が回ってるのか、可哀想なモン見る目で見られました。

 話が早くて助かるんですが、全方位に話が回ると言うのは… こういう事なんですね。その場に居た警備さん全員の目がね… うん、ちょっとね。何て言うかねー…


 俺が被害者なのに、いたたまれない。 ニールさ〜ん…



 そこで危険地帯や人気が薄い所とか、注意する場所を頭に叩き込んだんです。もし、間違えて行っちゃった場合は、どこに逃げるか? そんな事もわかる範囲で聞きました。…地図と現実の道筋が重ならなかったら、アウトだけどな。カラフルな目立つ看板なんてないからな!

 

 それを逆手に取って、人目の付かない場所を選んで猫になりました。宿でなるのも、ちょっと考えもん。あそこ出入りが危険なんだよね〜。


 自分捜索は止めとこうと思う気持ちと、むかつく気持ち。これを天秤に掛けても均等で動かない。



 警備さんに悪いとは思いながらも、忙しい警備さん以外に頼める人はいないのかと尋ねたら、「便利屋を使う」だそうだ。


 …便利屋ですよ。よく聞いたら、傭兵で良いんじゃないかと思う。


 ただね〜。竜騎隊が来てる。なんか大掃除をするらしい。

 大掃除の意味で合ってると思うんだけどな… 詳しい事は秘密って教えてくれない。口外すんなよって、口止めされた。

 それで、そういう事する傭兵の人達は大人しくしとけ状態。普通なら雇うんじゃねーの? でもって動けないって事が、そういう方達のフラストレーション溜めて喧嘩がなんちゃらってさ〜。悪循環に思えるが最短で済ますには、なんでかそっちの方が効率良いらしい。



 そうそう、便利屋さんは雇う時には注意しないとスカを掴むって、しかめっ面で教えてくれた。

 以前時間で雇った際に最悪だったって。間延びした口調で、ベラベラベーラベラ喋るんだと。

 質問は構わないし、思い込んでやられるより良い。しかし、質問内容が常識問題な上に、手も動いてりゃ良いけど碌に動かない。内容捗らない。時間が過ぎる。はい、規定時間が過ぎました〜。延長入ります〜。追加金よろしく〜だと。始まりから終わりまでの時間申告時の口調は間延びしてないってさ。


 ……仕事内容は何だったんだろーね?


 なんかね、世知辛い? 悪徳業者? それとも真っ当な知恵? それでも一部の者達だけだからなって、摘発って難しいんだろうねー。噂話が回り切ったら、その人、終わりなんかな〜? 回り切るんかな〜?


 どっちにしろ、頼む側も前金が必要です。何故なら、頼む側が悪徳の場合もあるからです…




 とりあえず! 自力で、できるだけやってみます!!

 ですが、もう二度とカモはごめんです。人だと危険なんで猫探偵するわ!!


 その前に、このスキルが此処でどれだけ維持できるのかとか、確認すべき点は山の様にあるんだ。




 俺のスキル。

 俺の猫スキルの正式名称は知らないが、俺自身にスキルの名称なんて見えもしないが! どういったモノかと質問したら、おねえさん的にはこんな感じらしい。



 『 ちび猫、なれるもん。 』



 おねえさーん? ちょっと、待って〜?


 そう思ったが、残る二人は否定しなかった… 

 ゲームじゃないからね。名称なんかがアップされて人に見られる事もないからね? もう、もう… そこは……  流す!!



 次いで、どうして猫になれたのか聞いてみた。


 「推測にしかならないわ。そして、推測の総てが正解とは限らないわ。成ったのはわたくしではなくてよ。

 もし仮にわたくしが推測を話したら、あなたはそれが正解だとして、どこか納得できなくてもわたくしが言ったのだからと、そう自分を納得させてしまうのではなくて?


 そうなったら、あなたの可能性の芽を摘むことになるわ。それは嫌だわ。とても嫌。


 原理の全てを理解する事は難しくても、自分で、こうではないかと筋道を模索していく事の方が使いこなすという点では良いと思うの。そこから、思いがけない派生があったりするのだもの。特に、この事はあなた自身に連動していることよ。


 助言という言葉は… とても便利で優しくて、そして気付かぬ内に可能性の芽を摘めるのだわ」



 そう告げたおねえさんは、とても綺麗な透き通るような笑顔だった。

 優しさの中に凛とした空気。

 その笑顔に、俺は知恵よりも 『導きの女神様』 なんて単語を思い浮かべたんだ。



 俺の 『可能性』 だそうです。


 俺は猫になれる。なれるが理屈は、よくわかってない。わかってないけど、できた以上またなれる。だけど、や〜っぱり、ある程度自分の中で納得のいく原理があった方が望ましい。

 他からすれば、おかしいと思う内容であっても自分の中で確立している物は力強い。その後の修正は可能だし、納得がいったなら全部塗り替える事も容易である。


 当たり前に聞こえるけど必要な話をして貰って、行動・過程・結果を考える。


 なれた理由が不明でも使い熟したいなら、自分で理解しやすい形に持っていけです。

 

 んで、お試ししてみたわけですよ。



 ① 行動

   変身しようと考える。過程が不明だが、結果のなった姿を覚えているから、あの姿を思い出す。

 


 ② 過程

   不明。



 ③ 結果

   猫、なってた。



 ②の過程が、さっぱり不明です! 先生!!



 「あ〜、お前の中で説明がつかないか、考えたくないか。しかし、ならねばならないとの強迫観念があった時と考えれば、それも道理。自分の命が脅かされる時に、一々理屈で考えながら動かんわな。そんな悠長な事しとったら死ぬわ。その姿であったのは、それが最適であると判断した又は理解しやすかった、だろ」


 所々での質問に、この様に返事が返ってきます。

 本当の大本の部分については、ノーコメントでも過程やちょっとした違う見方でしたら返事がきます。



 「お優し過ぎません?」


 それでも、おねえさんが心持ち唇を尖らして… 言ってた…



 だから、俺なりの筋道を立てれば良いわけだ。



 「それからなぁ、此処は俺の場だからな。あの時は、お前の姉が強く望んでいた。希望を願った。他愛ない願いであったしな、それに添う形で場が反応して動いた。此処ではならないが降りたらなる。気をつけろよ」



 その言葉に首を傾げたが、もっと細かい説明に理解した。

 嫌んなった。

 そう、俺は猫スキルを使って猫になり、猫から人に戻ったら真っ裸になる。 ………真っ裸です。



 使えるかぁぁ! そんなスキルゥゥゥ!!!


 此処で俺が猫になった時、服は散乱していない。猫から人に戻ったら服を着てる。でもそれは此処だけ。世界に降りたら、そうはいかない。


 おにいさんの界に居る、今だけの特別状態。

 

 し ん そ こ   いやだっつーの!!


 誰ですかー! 公共における猥褻物陳列罪とかって、ナ・ン・ですかー! 完全な着用時の形での衣服の放置って、それホラーじゃねぇかぁぁ!!



 総ての嫌さ加減を払拭する為に必死で考えた! 泣きそうな位、考えた! 

 せっかくあっても使えないのは嫌だ。だが、使う度に恥ずかしい思いすんのは、もっと嫌だ! 過程が不明でも、自分で使えるのなら使ってみたい! 今、他にできること無いしぃぃ!!


 理屈を捏ね繰り回わそうにも、どの理屈でいいのかすら不明。

 だからだ。自分の過去知識を引っ張って、わかるように筋を建てた。



 ① 猫変身スキル発動。発動に伴って猫の着ぐるみが発生する。

 ② 着てる服を脱ぎ捨て、猫ぐるみに着替える。

 ③ にゃおんと鳴いて猫、降臨。

 ④ 発動終了。人に戻ると真っ裸。



 これが実情なんだよ。

 おかしいだろ!? 普通なら②で脱ぎ捨てずに、そのまま猫ぐるみ着るだろー? 変身装着すんなら服の上から着るだろーがっ!

 だが、俺の場合は脱ぎ捨ててるんだよ。だから真っ裸になるんだよ…



 必死こいて服を着たままでの猫ぐるみの装着が可能になるように、意識して頑張った。


 しかしだ。頑張ったとは言ってもだな。

 おにいさんが、 『笊だぞ』 と言った「こうなれー!」と願うやり方しかできない…



 「坊。思ってなる事はの、難しくもあるが簡単でもある。理屈で通れば一番安定して速いが、理屈が追いつかなくても、イケるものはイケるんじゃ。結果が示されておるのじゃしの」

 「今、あなたがしているのは内に向かう力よ。外に向かって、世界に押し広げる為の力ではないから、まだ重たいものではないはずなのよ」


 励ましが優しいです。

 でも、やっぱりわからんでした! おにいさんに泣きついたよ!



 「うーむ、あそこまではできるんじゃ。なら、替えられそうなもんじゃのにな」

 「余裕がないのでしょうか? それとも、負荷が掛かって無理なのでしょうか? 着たままでは、できないと、体が受け付けないのかもしれませんわねぇ… 」


 「着たままじゃったら、暑くて蒸れるんかいの?」

 「熱中症になっては大変ですわね。よく動く小動物ですし…   二人羽織り… ではなくて、二重羽織りになったら動きにくいのでしょうかしらねぇ…」


 「あっ! そうだわ。体もそんなに強い子ではないのですもの、重ね着が重過ぎるのかも!!」

 「重いと、やはり暑いかの。 ううむ、そうなると体力問題じゃろかのぉ?」


 おじいさんとおねえさんの合ってそうな、なんか違うんじゃないかとも思える会話も聞こえたぁぁ! 二人が首を傾げて、やれやれみたいな感じでいるのも見えたー! 



 ああああ、    おにいさぁーん、たぁすけてぇぇ!


 



 助けて貰えて嬉しい。涙でます。


 おにいさんの推測では、②の変更は〜 多分俺には難しいだろうです。絶対無理だとは言わないけど、身体的負担を和らげる為に無意識に自衛しているんだろうと。


 ②の脱ぎ捨てる変更が不可避なら、次はどうするか?

 追加作成です!


 ②で脱ぎ散らかした服を異次元収納boxに入れる。④で戻る時にboxから服を出して着る。そんで、⑤で服を着て無事変身解除になるんだ!




 では、誰がどうやって俺専用の異次元boxを用意するんですか… 

 A地点で猫になり、B地点で人に戻る。その時、異次元収納boxが無い限り着る服が無いから真っ裸。


 思考が埋まっても現実は埋まらない。お先真っ暗。


 「収納先もそうだが、お前の考える瞬間着用が可能なのか? その猫ぐるみに着替えるので、いっぱいいっぱいなんじゃないのか?」


 わかりません…



 「しかし、他に筋立てが思いつかんのだろ? 構えてやるから着用できるか試せ、ほら」


 視認できる収納boxを構えて頂き、そこにあると認識して〜〜〜〜〜 強く強く意識して〜〜〜〜〜

 


 発動!   猫ぐるみ、ひらりん。

 脱ぐ!   パパッとね。

 着る!   ファスナーもボタンもなく、着たと思ったら着てるナチュラルフィットな不思議ぐるみの、にゃんぐるみ!


 猫、降臨!


 入れる!  boxにポイッ!



 

 この時点で収納boxから服がはみ出していた…




 〜〜〜〜〜〜〜〜 気にしない! はい! 次ぃ!



 猫、解除! にゃんぐるみ、ペーイッ。にゃんぐるみが空中で消えていっても気にしない!

 着る!   ササッとね。


 完了。


 元通り!



 着るには着れてましたが… はい、成功ではありませんでした…

 boxから服がはみ出ていたのも敗因です。 


 なのでもう人に見られてない事を前提に、脱ぐ→ 入れる→ 着るに変更して再チャレンジ!


 …いえね、言っときますけどね。着替えてる最中に不思議光線が発されて、シルエットなんか作ってませんからね、俺は。シルエットなんかあったら憤死するぞ。



 結果。

 ええ、着るには着れてました。ええ、成功と言うには遠いんだけど…




 一人で〜 服が〜 上手く〜 着られない〜   着れてない〜



 子供状態。

 泣く。



 何度も何度も嫌になる程、試した。




 ひとりで できないもん。  できないんだもん。




 うがぁぁぁ! 腹立つ! なんでできねーの、俺! 着替えるだけだろーがぁぁ!



 「着替えに拘るからだろうが… そこが筋になっているなら仕方ないか。 あ〜、それなら感覚で覚えろ。俺が補助してやるから、とにかく感覚だけで良いから掴め。 な」


 呆れを含まない顔が本当に嬉しくて…


 要するに子供状態の俺の着替えの手助けをして貰ったんだが、脱ぐ時点でのレクチャーから入った。そして、脱ぎ散らかす状態でboxに投げ入れる事の訂正から、着る時の順番まで。


 その一つ一つを、この順番だから次はこうするのが早い。その理由はこうなるから。


 説明してくれた上で、おにいさんの力の補助が入った。

 入った途端、自分の体が自分の物じゃなくなって、さっき教えてくれた通りに動き出す。俺の意志はどこにも無い。どこにも無いが体は滑らかに動いて、俺がもたつく箇所を難なくクリアして着替えが完了した。そして、猫から人への戻る時の着替えも完了して、課題は恙無つつがなく終了した。



 「ふ、ふわぁぁぁ… 」


 終了した時点であまりの衝撃に魂が抜けそうで、その場にへたり込んだ。


 俺の意志なく体が動く。それは、おにいさんの力。補助によるもの。

 よくよく考えれば操り人形だが、そんな事より何よりも! 俺の体は、こんなに動くのかと思った。こんなに動くんだって!


 体のどこにも痛みはない。

 

 「お前の体の負担を考えて、一番適度な状態で教えた。どこも痛くないだろう? さっきの速度感覚を忘れず、行った動きをトレースしてみろ。きちんと覚えれば、最終は意識せずとも可能になる」

 「 … はい!」



 さっきの体験で覚えた流れの再現にチャレンジ!


 さっきよりはぎこちなかったけど、自分だけでしていた時とは格段の違い。雲泥の差。一回だけの実地体験が全てを切り替える。

 最初っから最後まで自分で成し遂げたっていう充実はないが、そんなん放り捨てる程に次元が違う。違い過ぎるっ…!


 こんなにできるもんなんだと。

 自分だけでは、どうやっても登れそうにない高みに導かれたという実感。こんなん励ましだけじゃ無理だって。



 その高みに立ってるだけで世界が変わる。位置が違う。自分の位置が違う。世界の位置が違う。



 理屈抜きに 『違うモノ』 の意味を身震いする程に理解した。


 涙が出そうなこの感覚が、この高みに立っているからなのか、自分が導かれた事実に対する嬉しさなのか。それとも、高みから下の位置を理解したからなのか。それとも…… 何であるのか。


 それなのに、「一人で、できたんだ」と言ってくれる言葉に大きさの違いを知った。



 でも、原理追求すると俺の脳が崩壊する。本当に、本当に、本当に! 印の加護を貰えて嬉しいです。ああ、寄らば大樹の陰って言葉がよくわかるぅ〜♪(涙)


 

 練習用テキストまで貰って、涙でる。

 しかも俺。猫専用時、衣類収納カゴ貰っちゃったですよ! 着替えの完了まではなんとか成功したが、どうやっても収納boxは作れません。代用できるもんも思いつきません。


 収納boxや箪笥形状なら出し入れが不便だろうって、わざわざの脱衣カゴですよ!

 使用時にはカゴに取り付けてる布をパッと開き、使用中は布でカゴをサッと覆う。覆う布はカゴの側面にしっかりと取り付けられてるから、飛んで行く心配もない。簡単しかも覆うだけで絶対 ok! 猫から人に着替える時も布をペッと剥がすだけ。すごいよ! 俺のスキル発動に合わせて結びつけたって事なので、紛失しません。すごすぎなんです!


 脱衣カゴが俺の後を追ってくると考えたら怖いがな。実際は異次元待機だ。



 あそこで何度も練習した時、脱ぐにしても… さすがにパンツだけは履いてた。履いてて、いけた。

 おねえさんもいるから本当に真っ裸での練習は嫌だ。俺の精神が、ガリガリ削られてしまう… でも、パンツがいけるなら全部いけても良い筈なのにな… TPOなんか関係ないと思うけどな…

 


 そう思ってた。


 「一度確認しておくか。ぶっつけ本番はキツいだろう」


 おにいさんが今居るこの場を降りる世界と同じ状態にしてくれて、仕上がりを確認させてくれた。


 本当におにいさんて何でもできるんだなぁ… そんな事を考えながらも、失敗を恐れず成功を信じて勢いよく猫になった。


 なったら…  猫になった俺の横に俺のパンツが落ちてた。



 「うにゃん!」



 猫手で落ちてたパンツをタシッ!と押えて項垂れた… 猫手では押えたパンツを隠す事もできない… !




 俺は…   俺は、おにいさんの優しさを身をもって知った。


 ありがとう、ありがとう! おにいさん! 優しいおにいさんで良かったよ、俺! 涙溢れるよ! もう滲んでるよぉぉ!! 


 俺もきっと何時か、おにいさんみたく気遣いのできる大人になりたいと思います!(なみだ)





 それで、だ。

 俺の猫スキルは獣化スキルとは違うと思っている。

 でも、周りからすれば獣化スキルで正解なんだろう。実際、猫スキルを使った俺の姿は猫だ。言葉も猫語だ。

 だけどさ、俺的には持ち服の猫ぐるみに着替えただけ、なんだけどな。猫ぐるみ着てるから自分でも真っ裸の感覚ないしさ。


 …第一に真実、獣化スキルと考えてみろ。恐ろしいわ! 俺の身体どうなると思ってんだ? ああ? 骨から何からバキボキ音立てて、リアルに縮んでいくってことだろが! そんな恐怖思考要らんわっ!


 俺のは猫変身スキルでも。にゃんぐるみに、お着替えスキルだ。

 しかし、魔女ッ子スキル思考は断固拒否する! 俺は男だ。断然、特撮変身ヒーロー思考を要求する!





 …それでも良いのか悪いのか、わからない。

 でも、この猫スキルに拘らなかったら。こんなん要らないって使わない事にして、あそこで特訓して貰えなかったら。

 絶対一人ではできなかった。高みも知らないで、カゴも貰えなくて。


 もしも違う助けをお願いしてたら、どうなってたんだろう? 何が違っただろう。何が違って変わっていくんだろう?



 そう思いもするけど。

 あそこでおにいさんに泣きついて頑張った事実に、おじいさんとおねえさんの声援に励まされた、この思い出。俺の努力の結晶。


 これで満足。この猫スキルで満足。俺の証。

 これでいい。俺はこれで遊ぶんだ。

 

 そうだ。生き残るのは強いものでもない、賢いものでもない、唯一変化するものだって誰か言ってた。


 俺は変わるものになったんだ。

 微妙な気もするけどなった。平気。良い方へ良い方へ考える。

 

 そう、考える。


 俺は勝ち組なんだぁぁ!!




 でもさ、やっぱ、な〜んか、おにいさんに手伝って貰ってんじゃないかって思う… 

 脱衣カゴは俺のスキルと結びつけたって言ってくれたけど、異次元にあるカゴをできる誰かが勝手に持ってちゃう危険もあるじゃないか。その用心にカゴにマスコット人形を置いてくれたんだ。所謂、盗難防止装置。どう防止するのか知らないけどね。


 俺が猫ぐるみに着替えて、カゴに服を入れるわけよ。

 ちゃんと教えてもらった通りに入れてるんだけど、俺が猫から戻る時、俺が入れた以上に綺麗になってカゴの中にあるですよ。その御蔭で着替えが、めっちゃ楽なんですよ。


 この小さなマスコット人形さんのお力でしょうか? 

 生きてないし、言葉を話すこともない。いや、いつ使うかわからないスキルの為に、ずっ〜と番人として生きてる人がしてくれてたら申し訳なさで潰れるから人形でいい。


 きっとスキル発動で onになって発動終了で offになる。その時だけの使用設定なんだと… いいな。


 お世話になりっぱなしです。

 おにいさん、ありがとう。ありがとう、俺のマスコット猫。俺の脱衣カゴを頼んます。


 それにしても、あの自力頑張り推奨派のおにいさんが、ココまでしてくれたなんて… やっぱり、あの成績じゃあ、一人で完璧にできる事に不安が残ったんだろうか…? できるようにしてやるって言ってくれた言葉を、違えない為にしてくれたんだろうか? コレ、俺にくれた力じゃなくてカゴに備わってる力だしなぁ…


 …………………  大変ありがとうございます!



 



 こうして俺はあそこで 『 ちび猫、なれるもん。 』 を修得したんだった。


 …ちょっとまだ不安も残ってるが、その為に補助の力(テキスト)貰ってるからな。

 言っておくが、ジョブじゃねーからな! 猫を仕事にする気はないわ! しかし、猫レベルはいちだろう。零ではないよなぁ?




 だけど人前でなるなんて、そんな度胸ねーよ。

 今まで使う機会なかったし、確認はしときたいと思っても使おうとは思わなかった。忙しかったしさ。今回は絶好の機会だ。そう捉えると何もかも前向きだ。

 

 今こそ、スキルの現地確認の時なんだ!



 それに脱衣カゴ。

 猫になる時は、人目に付かずに安全な場所でこっそりと。

 そう考えていたし、着替える際は身軽でいる事を前提にしていた。確認を忘れていたが、ウエストポーチ程度の物なら置きっぱなしにしても… 大丈夫なんじゃないだろうか? 番猫もいてくれる。カゴとスキルは連動しても同一じゃない。ちょっと違うが異次元ポッケ状態じゃね? おそらく一番安全。


 荷物を置きに一旦戻るが可能かどうかも、今度確認しなくては。





 

 次回の確認予定を立てながら、猫姿で走り回ってるんだ。

 体力・持久力・ジャンプ力・捕獲力・俊敏力、基本姿勢に動作に腹持ち具合。午前中から始めて、午後の部に突入しました。


 どんだけ可能かと昼飯食ってないです! + 補助力テキストの数が決まってるから大事にしないと!








 そろそろ倒れそうです。


 キュウ… キュルル〜


 腹の虫が鳴いてます。鳴くのにも力がないです…

 倒れた場合、俺は猫姿で倒れっぱなしになって人の姿に戻らないんでしょうか? どうなんでしょうか? 確認あるのみでしょうかぁぁ!? 


 思考自体が馬鹿な気がする。



 復習はできねーし、予習するにも参考書ないからな。イメトレはするにしても、何をするかをきっちり決めないといけないか〜。…しかし、猫だからな。



 「せっ… と」


 周囲を確認して、猫から人へと戻ります。素早くその場から離脱します。

 駐在所に寄って、ウエストポーチ入りのリュックを取りに行きます。可哀想なモン見る皆さんに、開き直って泣き落とし系で今日一日のリュックの預かりをお願いしたんだ。



 「お、帰ってきたか。危険な所に行ったりしてないな?」

 「ほら、お前のな」

 「ありがとうです!」


 あれ? 預けたリュックが膨らんでますが…


 不審を感じて皆さんを見たら。


 「あ〜、大した事はしてねぇよ」

 「そうそう、ちょっぴりだ」

 「上から押し込んだだけだからな」


 まさかとは思うが、ウエストポーチ! 瞬間過った嫌な考えに、とにかくリュックの口を開けた。


 甘い匂いがした。


 ……… 中にタオルとかシャツみたいなのに、お菓子とかお菓子とかお菓子とか。


 ………… 俺のリュックがクリスマスの靴下状態になってた。


 

 「余り菓子だからな」

 「大したもんは無い。お下がりって奴だ」

 「頑張って見つけ出すからよ。お前もしっかりするんだぞ?」

 「遅くなりすぎんなよ〜」


 「…はい。 ありがとう」



 なんかね〜、顔がね〜。にへら〜ってね〜。泣き入る感じでさ〜。なんかね〜、嬉しいです。



 すっげ顔が笑います。笑ったままです。

 でも疲れた。腹も減り過ぎ。宿に帰還して明日に備えよう。風呂にも入りたい。


 あ〜、体がしんど〜い。バキバキする〜。


 ……筋肉痛になったりしないよなぁ? にゃんぐるみお着替えスキルだから、なるわけが… いや、待てよ? 俺のスキルはお着替えスキルであって、行動とスキルは別物じゃね…ぇ?  調子に乗って猫で駆け回ったから… 今日一日で普段、人として使ってない筋肉めっちゃ使ったんじゃねーの?





 ふ、ふふふふ。


 明日、筋肉痛なってたら最悪だな。



 大丈夫、大丈夫。

 塗り薬は直ぐに取り出せる様に、ウエストポーチに入れてたから大丈夫。























 『ちび猫、なれるもん。』 変改録。


 初期、通常状態ノーマル・モードで純粋に、ラブリーキャッツ。


 寝ぼけて男にしがみつき、スーパーデラックス超絶ウルトラサンシャイン連続にゃんこヒーローキックを仕掛けた上に、がっぷり噛み付いた。

 これにより、ちび猫時の爪と牙は、男の黒い何かに浸され済みである。そして、ごく微量であるものの、誤飲した。スキル発動時であった事から、スキル使用時の+αとして流れ込んだ。


 それこそ、あっと言う間の一連の流れを口を開けた男が驚愕の想いで見取っていた。


 見取ったはいいが、影響の可能性を懸念した男から即座に与えられた「xxx神泉の美味しい水」の飲用(相殺)により、身体への影響は払拭された。


 この時点で、 『ちび猫、なれるもん。』 は、黒色浸漬塗装ブラック・コーティングの恩寵を授かった武器装備改定版グレード・アップ・バージョンへと移行した。


 そして完全修得後になると、武器装着完全改正版ハイグレード・バージョンへと格付変更クラスチェンジが果たされるのである。

 




 現在の猫レベル、一。


 猫武器、黒色浸漬塗装ブラック・コーティングの爪 & 牙。 レベル、一。



 

 


理屈が追いつかなくてもイケる  

その当時の魔鏡の作成方法がメジャーかと。西洋に渡って物理学の一つに昇華されましたし。


ひとりで、できxもん  

…どこかの教育番組。


生き残る 〜 変化するものだ  

進化論のダーウィン先生も思ってた『かも』しれないの有り難いお言葉。著書である「種の起源」や他の書のどこにも明記されてないと論争がございました。

どこかの誰かが作られた名言。



黒色浸漬塗装ブラック・コーティングの爪と牙  

力が浸漬しんせきしたのであって、黒のマニキュアをしているわけでもお歯黒でもない。



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