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召喚  作者: 黒龍藤
第三章   道行き  友達に会いに行こう
43/239

43 クエスト

    

 羊もどき達と別れて道を行く。

 どーんどん道を下りる。樹々の間から家が見え始めた。トタン屋根や瓦屋根じゃない。ログハウス系ですかね。


  『もう一息』 


 そう思ったら、足も動く動く。でも、気をつけないと足裏の豆が潰れる気がしてしょーがない。痛いが無視。これも慣れだ、がんばれ〜 俺。


 「とうっ」


 ザッ!


 最後に、ちょーっと高い所から地面に飛び降りた。うう、足にキます。


 そうして、俺が辿り着いたのは一軒の民家の裏庭だった… 

 どうみても、道じゃなくて裏庭っぽい。何気なく横を向いたら道があった。そっちに行けば、その道の先に山に向かう普通の山道が見えた。



 …かっこいい、俺! 道なき道を通って(わざわざ裏道通って)辿り着くなんて、すっげー! やるじゃーん!


 意味なく自分を誉めて終了。さ、人に会おうっと。



 玄関を求めて、ドアを叩いて、こんにちは〜っと。  



 ……出てこない。お出ででない?


 まだ夜じゃないけど。  


 人が、いない? いない、いない、  いない。 



 また、いない?





 周囲は、とても静かだった。

 さわさわと草木を風が微かに揺らしていく音しか聞こえなかった。



 ドンドンドン!!


 「いま、せんか!?」



 もう一度叩いて呼ぶ。



 しかし、反応がない。ドアは開かない。隣のもう一軒の小さい家に行って、そっちのドアを叩く。こっちも返事がなく、開かない。


 近くに他の家は見えなかった。

 最初の家に戻って、ドンドン叩いてまた呼んで。やっぱり返事はなく、さっき見た庭の様子と嫌な予感が頭を横切ってドアを前に立ち尽くした。








 

 「何やっとんじゃ? 坊主」


 

 声に肩がビクッと跳ねとんで、勢いよく振り返れば籠しょってるじいさんがいた。

 

 …なんだ、普通に仕事行ってただけじゃん。そだよね? 午後のお仕事ですよね。あは、あは、あはは。 あー、びっくりした。頭回せよ、俺。時間考えたら、むしろ早いお帰りじゃねーの?  …いかん、そんなことより、会話だ、会話〜。


 幼児語がんばりした結果、ふっつ〜に家に入れてもらえた。 …この差って、なんだろうか?


 入った家の中は物が無い所為か、すっきり感が漂う。てか、片付け上手?


 「そこらへんに座っとれ」


 

 変に動くのは止めとくべきかな?


 頷いて大人しく待ってる。


 待つ間、失礼にならない程度に家の中を見させて頂いた。

 木の壁、木のテーブル、椅子に家具。うん、全体的にログハウス分類していいですね。

 窓もあるけど、透明じゃない。曇りガラス…だよな、あれ。窓にはブラインド。椅子には座布団。座布団はふかふかじゃないし使い込まれた感から、ちょっと荒い手触りだけど許容範囲だよ。



 「ほれ、待ったか?」


 お茶と豆みたいなツマミ。

 お礼を言って、あったか〜いちょっと黒めのお茶をごくりと飲んだ。


 「ぶ!  ごっ… ごほっ ご…  げ、げふっ!」

 「ん〜、なにしとんじゃ坊主」

 

 飲んだ直後、吹きそうになった! 

 吹くのを必死で堪えたら、器官に入りそうになって噎せた!! くっ 苦しっ! 水!!


 「ぶ!!」



 はー、はー、はぁぁ…


 持ってた茶を飲んで再び噎せた。馬鹿か、俺は!


 にがっ! てか、しぶーーっ!   …出枯らし? コレ。




 じいさんが、おっこらしょっと椅子に座って同じ茶を飲んだ。


 「かー、うめ〜」


 

 美味そうに飲んだ。 


 …味覚ちがう?


 「お、なんじゃ。坊主、飲めんのか? あー、子供にゃ無理だったか〜 かっかっか」


 …え? …子供にゃ無理? 

 アルコールは感じなかった。 まさか。


  ま さ か   こ れ !


 ここでの珈琲みたいなもん?



 もう一度、慎重に慎重を重ね、ちょっとだけ飲んでみた。


 渋いわ。

 違うわ。 …こんなん飲めるか。 濃厚とは話が違う! 飲めねぇよ!!



 驚愕の眼差しで茶を飲まずに見てたら白湯くれた。

 ちょっと悲しいけど白湯が美味い。あんなの飲んだから、すっげ美味い。水筒に汲んだ水の方が美味いと思うが、いつまでもあるわけじゃない。それに今、水筒の水を飲む失礼はしない。

 

 あったか〜い白湯うーまー。

 美味いよ、うん。    ……美味いよ。


 豆を食ってみた。豆。豆。豆。

 これ、固い。これ、不味い。これ、ピーナッツっぽい。当たりだ。

 当たり豆イケる。


 がっつかないように気をつけて、ぽりぽり豆食った。

 うまかった種類の豆だけ、こそこそ指で選り分けて食いながら、じいさんの質問に幼児語で答えた。


 「で、坊主はどっから来たんじゃ?」

 「山」


 「山って、この裏の山か?」

 「そう」


 「一人でか?」

 「うん」


 

 ………幼児語な前に単語なだけな気がするが、会話成立だから大丈夫。所々でわからない単語が出てくるが前後を繋げたら感覚でわかる。雰囲気や身振り手振りが入ったら、もっとわかりやすい。


 こうやって落ち着いてしゃべる事ができて、改めて思う。便利。

 使ったことも聞いたこともなかったはずの言葉が自分の口から言葉として出てくる。


 異常な正常。


 『縁が有る』

 その言葉が裏付けて俺の中で納得はしても、疑問はきっちり残ってる。

 どーしても教えて貰えなかった 『縁』 の内容。公平なはずの第三者からの見方を話す事が良くないって、どういうこった。だけど、本人同士が話さず人を仲介したら拗れるって話も、まぁ、無きにしも非ず? 伝言ゲームは、わざとズラすのが面白いなんて言う奴もいたな。


 でもま、会えなきゃ意味ないわ。とっとと会ってからだよな〜。




 質問に答えて山の中腹あたりで会った人達の話をする。

 話していけば、じいさんの顔が 『ああ?』 みたいな感じに歪んだ後に、まじで「ああ?」ってドスの利いた声で言った。


 「確かにな。あの山腹にゃ家があるが、本来住んどった奴らはもうおらん。ああ、年でな。過疎じゃよ、かぁーそ〜。最後は年寄りばっかになっちまってなぁ。は、ほんとによー。残っていた最後の一人も、昨年の冬の初めに降りて来て、今じゃこの村ん中に住んどる。若けりゃ、あーんな山ん中で過ごしたくもね〜わなー。年寄りでも、確実に誰にも看取ってもらえんわ。


 今、あそこは無人だ。猟の際に使用する約束は取り付けとるし、あそこに家があるのは位置としても助かる。だから、手が空いた時に村の誰かが手入れにも行く段取りをつけとる。しかし、人は住んどらん。それに一人じゃ行かねぇ。獣ならまだいいが、魔獣相手に一人は拙い。猟も皆で日を決めて連れ立ってやる。

 悪くない時期だが、今は誰も行ってねぇ。家畜もいなくなったとは聞いてねぇ… 誰もおらんから獣が入り込んで住み着いたってーのなら、そりゃ考えられんことじゃねぇが…  人が、か。 本当に、人がいやがったのか?」



 俺を見るじいさんの目が強くて押されて、なんか背筋が伸びた。


 「他の奴らも呼ぶからな。ちょっくら待て」


 

 じいさんは窓を開けて、おもむろに口笛を吹いた。 …口笛と指笛駆使してた。音程が上がって下がって、音が曲になって周囲に響き木霊こだまする。不思議なほど音が響いていく。


 少ししたら、同じ様な音が返ってきた。


 「ん、何人か来れそうじゃ」


 返ってきた音に頷いた後、茶瓶を持ったから今度は手伝おうとした。


 「手伝い」

 「かまわんから、そこ座っとれ」


 じいさんは台所へ行った。この部屋からも姿が少し見える。手伝う為に立ち上がり、差し出した手が行き場を失くして宙を泳ぐ。じいさん、見てないから手だけで踊ってみた。


 ……えーと、俺、微不審者続行中だろうか?      


 ちょっと、しょんぼり。 







 

 

 「どーしたよ、じいさん」


 大きめの足音が聞こえて、声と一緒に扉が開く。入ってきた人と目が合った。


 「誰だ? この辺りじゃ見かけん顔だな。用事はこれか?」


 指差されての、これ扱いが 『うわー』 なんだけど、こんなもんか。一々、失礼だとか、そんなん気にしてたらやってけないよ。スルースキル所持してまーす。ってね。


 

 「お待たせ。何があったの? お父さん」

 「来たけどよ〜 何があったって?」


 

 合計五人の大人が次々とやって来て、現在七人になりました。


 「あ、お父さん! そんなシブいの出してどうするのよ、飲むわけないじゃないの! ごめんね〜、自分が飲みたいもんしか出さないから〜。 も〜、そんなん誰も飲みたくないわよ」

 「んなことあるかい! これの美味さが、なんでわからん!」



 俺の味覚は、この世界で権威を取り戻せそうで大変嬉しいです。


 じいさんの娘さん。だから、おばさんと呼んで問題ないと思われます女の人が淹れてくれたお茶は、色は同じでも美味しかったです。はい。


 茶葉の種類とか、わからないけど砂糖無しでいけるから緑茶系でいいんだろか? 色が黒だから黒茶なのか? あやめねーちゃんは紅茶に砂糖入れずに飲んでたっけ…


 そんなこと考えてたら皆さんに、じっと見られてて 『まずっ!』 と、しゃっきりした。


 そっからはハキハキと、お話しましたとも。

 山腹での人達の話は、ここの人達の顔を顰めさせるものだったらしく…  やっぱり俺、微不審者続行だろうか?



 「悪いんだけどよ。ちょっと荷物の中を確認させてくれるか?」


 断りが入って荷物改め。

 自分で毛布やら服やら出して、貴金属もあらかじめ言われてた一袋を取り出す。貴重品専用内ポケットがきっちり閉まっているのを目視確認した上で、もう入ってないよとを逆さに振って中も見せた。



 通過した! 他の貴金属所持の発覚はまぬがれた! おねえさんが言った通りに、バレなかった! すごいね!



 発覚して安全管理をしっかりしなさい、とかなら良いよ。有り難い話だね。

 でも、貴金属に目が眩んで、さっくり殺される殺人路線は嫌だよ。山に、ぽいっしょされて埋められたら終わりだっての。

 誰も文句言う人や俺を探してくれる人は、いないんだから。警察があったって身元不明者で終わりだろ? 実際、身元ないっていうか… 俺、住所不定の無職じゃん! 


 あ、変にリアリティーが湧いてきた。なんか冷や汗も出てくる。

 当座分にしても困らないようにって、「この分も、これもね」って、数多く入れてくれた。あの時は、やったーって普通に喜んだ。



 最初の人達の問い掛けは、尋問のようで本音で言えば怖かった。

 聞かれる内容は同じでも、最初の人達より格段に優しい態度のこの人達でも強く思う。


 知らない世界に送ってもらって、やって来た。

 会った覚えも無い上に、名前しか知らない頼る相手(ともだち)。会いに行く為の換金物は… がっつりある。しかしだな、預ける先もなければ、信頼していいはずの相手は、俺がここにいる事実を知らない。自分で持つしかない。


 う・あ。

 下手に換金物がっつり持ってんのが妙に怖い。持ってんのバレたら完全に鴨ネギ状態じゃねぇの?



 ハージェスト…  非常にハージェストが俺の命綱な気がしてきたわ。無性に会いたい!



 ここって銀行とか貸金庫とかあるんだろうか?

 でも、それは会って拠点が決まってからだしなぁ。ここに貸金庫とかあっても、預けてま〜た取りに来るって正直面倒い。それに本当に信用していい所なのか、わっかんねぇし… ゲームじゃギルドやなんやで便利仕様だけど、銀行間取引なんてほんとにあるんか?



 そんな事を考えながらも、他に持ってんのがバレなきゃいいんだ、ここにいる間は内ポケットには触るまいと決めた。


 ウエストポーチにも入れといた換金物袋、別名財布も取り出す。

 そんで、出した一袋と財布に入れといた分の換金物を出して見せる。多くはないけど無一文じゃない、お金に替わる物は持っているとつたなく話した。

 

 おばさんが飾り止め(ブローチ)の一つを手に取って見てる姿が良い感じ。


 もしかしたら売れる? 売れる? 売れちゃう? 

 いま、商魂たくましくセールストークかまして売り込みすべき!? でも、そんなトーク咄嗟にしても出ないんだけど。


 あと、羊もどきからの頂き物の綺麗っぽいのも二つ置いといた。

 あの時、面倒くさがらずに選り分けしといて良かったぁ。普通に見てるだけで変な反応されてないから問題なさそうだな。内心ヒヤヒヤだっだから、ちょっと安心。飾りの部類分けでいいんだな。



 武器がなかった事がお間抜けさん通過し、魔力が使えなかった事実があちゃーな認定になり、ほんと大丈夫か?こいつ認可で裁決は一応 『良』 で下りたっぽい?


 決め手は俺に行く宛があるって事らしい。友達のとこに行くっていう宛が、不審者をずっとここに留めさせることにはならない、に行き着いた感じだろうか?

 まぁ… 違うかもしれない。どこにいるの?に、「あっち。たぶんでわかる」って答えたら生温い顔になった。言葉の使い方間違えたかもしれない。


 だが、総ての杞憂を払拭する有力なモノがあった。


 悲しいことに俺の足裏に出来た豆だった。


 「いだだだだっ!」

 「完全に柔な足してるわ。こんなんで、俺らと張り合うなんて無理無理。洒落にもなんね。それよか行く宛と所持品なかったら誘拐説が出るわ」


 

 こうだった。迷子話も微妙な感じだったが、人にはいろいろあるしな〜とかで流してもらえたような、違うような。聞くことは、ぎちぎち聞かれたしね。でも、わかんない単語には?を飛ばしてスルーした。柔な足でどうやってここに? には適当に話して大筋はスルーした。わかんない振りしてわかる形で話してスルーした。



 明日は朝っぱらから山狩りというか、俺の言った事の確認に山に登ることになった。


 俺はここに残りますけどね。もう、行きたくありません。登りたくありません。

 この足じゃ、ほんっと付いて行けません。邪魔にしかなんないって。俺は、じいさんの家でみんなの帰りをお待ちします。ちゃんと大人しくお待ちしておりますからぁ〜。


 あー、良かった〜。もっかい登ることになってたら泣くと思ったわ〜、しんどいんだって。ほんと勘弁してほしいんで助かった。



 ブツを持っていても換金できない以上、俺に金はない。金に拘るなら無一文だ。みんな知ってる。確認済んだとこだしさ。

 さて、この状態でどう色々教えて頂いていくべきでしょうかね? それに、換金物以外での確認内容にびくつく事がありましたし?



 考えている間にも腹が鳴る。そう、夕食のお時間です。豆では足りません。

 

 腹をぐうぐう鳴らせば、おばさんが、 いや違う! おばさまが「あら、あら」言って簡単な夕食を作ってくれることになった。


 確認の終わった服とか詰め直し〜、換金物も片付けます。ギュッと口紐を締めますが〜、なんかこっちを見てる視線が微妙です〜。


 きっちりと片付けました。

 心証を上げる為にも、早く頂く為にも、おばさまのお手伝いに向かいます。手当してもらった足裏に気をつけながら、俺の脳は「ごっはん、ごっはん」と歌ってた。


 脳内で歌ってた俺の姿を見た後ろの皆様が、ある種の無害レッテルを俺に貼ったことなんか知らない。


 『言われる前に少しでもいいから手伝え!』 は、あやめねーちゃんの教えだ。



 台所は勝手がよくわかりませ〜ん。電子レンジなんかないよー。コンロっぽいのはあ〜るー。あれ、取って。それ、取って。そこのお皿を並べてね。言われる通りに動いてお手伝い〜、足裏に気をつけて動きます。


 作ってくれるのは肉と野菜の炒め物に根野菜メインのスープ、後は取り置きのパンを再加熱。全部にほかほかの湯気が立つって素敵過ぎ。


 俺は台所で生活水準を知った。

 塩も砂糖もあれば、香辛料もある。じいさん一人暮らしなんだろか? 


 「ない。空じゃないの! 言えばいいのに、もう」


 使おうとしてた香辛料を使い切ってたらしく、おばさまが色々ぼやいてた。



 使用素材がこれまた不明でお世辞にも新品に見えないが、水道が通ってる。コンロっぽいのはコンロだった。


 「熱くなるから触っちゃダメよ」


 注意されたが、火が出なかった。火を使わないこのコンロってガス火じゃなくて、IH仕様? 加熱対応っても電気通ってないからIHって言って… いいのか? あ、そか。加熱をIHとするなら、電気に拘らなくていいのか。  …内部構造を知らなくても手順を把握していれば使えるから問題ない。よくあることだ。気にしない。


 でも、ほんとに気にならないわけじゃないから、ちょろちょろ質問してみた。



 「え? ああ、これ? そうなのよね。私の子供の頃には、こんなのなかったのよね〜。 ほーんと便利な世の中になったわぁ〜」


 この様に質問とは微妙にれているお返事が来たあと、立て板に水の状態で様々なご近所さんのコンロ事情を知りました。特に知りたいわけではありませんでしたが、どこの人が一番最初に購入したとか、その使い勝手におばさま方が大変お喜びになられたとか、金額が良くてお財布の中が痛かったとか、買ってない人は買ってないとか、うんもう色々ね。


 途中、お話を遮るなんて、そんな勇気ある行動は取れませんでした。

 お話していても、おばさまの手は休むことなく働いてご飯が作られていきます。腹を空かせて鳴らしている人間がお話を遮ることは不可能です。手伝いに来た人間が逃げることも無理です。


 それに、そこまで言葉を操れてない…

 操れてないから、不明単語はそのままで聞けたし流せもしたが、ある種の弾む読経のようにも聞こえた… でも、眠気は訪れなかった。どこかで辛かったが助かった…


 すげえいい勉強の方法を発見した。しかし、おばさまは… ちょっとキツい。

 よく喉が渇かないもんだとか、息継ぎなめらかで、どこで呼吸してるか不明すぎ。途切れない連続会話に頭が、ちょっとクラクラするんです…


 「それでね〜、こういった物は、御領主様がお変わりに成られてから手に入り安くなったのよ。御領主様、さまさまって言うのよ! やっぱり上が違うと下に回って来る物も違うのねぇ。ほーんと実感したわぁぁぁ〜」



 ご機嫌なお顔でおばさまは、そう締め括られた。うん、結論まで長かった。



 おばさまも内部構造は詳しく把握してないようだ。その代わり魔石で維持管理してるとかなんとかって。


 あれだね! ゲームやなんかで出てくる魔石使用の小道具ですね! 電気の代わりになる、あれですね!


 そう理解したら、わーいって考えた。

 でも、石炭なんかはないんだろうか?とか、ガスボンベ(小)とかって思ったら、魔石が 『あ、乾電池だったか』 と改めて理解し直した。


 だが、ほんとにそれで正解かと増えた疑問に頭を悩ましつつ、できたてご飯をさっきの居間へと運ぶ。



 木の盆。木の器。陶器の皿にカップ。おばさまが振っていたのは鉄鍋だと思う。

 椅子もそうだったけど、木工製品は職人さんが作ったよって出来で文句のつけようがない。つけもしないけどさ。


 スプーンとフォークで箸はない。でも、困らない。いざとなれば、マイ箸作ればいいんだ。金に余裕が出来たら作ってもらうのも有りだ!

 


 ご飯を持っていったら、話し合い終わってた。

 三人の人は明日の山狩りの準備も含めて帰るって、帰りました。その帰り際に一人が俺の頭をポンポン叩いて行ったのは、なんでだ?


 おばさまも、「帰って、ご飯作らなきゃ〜」とお帰りになられました。帰ってまた、ご飯を作られるそうです。大変お疲れ様です。ありがとうございます。ごちになります。


 残ったのは、じいさんに俺。男の人が一人。

 三人で出来立てのご飯を食った。食べながら話をする。


 …わかりました。この人は独身者ですね。色んな意味でサッと動けるのは、やっぱフリーの人間だからか。



 肉と野菜の炒め物。なんの肉か知らないけど、美味い。


 しかし、もたもた食ってると肉を二人に取られる! 肉・肉・肉! 肉取ったら野菜も食えって言われる〜。まぁ、野菜も美味いんだけど。香辛料の効いた炒め物は飯がすすむ! 白い米の飯が無いのが悲しく恋しいが、焼いたパンに肉汁つけて食った。これはこれで、うまぁー。


 あったか、うまい飯さいこーです。

 


 飯を食ったら眠くなる。とろーんとしたくなるが、はっと意識を取り戻す。

 皿を台所まで下げて、 『うう、面倒い。寝たい』 と腹の中でぼやくが、おばさまに教えられた通りに洗っといた。


 微・不審者脱却! 無銭飲食回避!


 だってさ、貴金属の現物見せても、微不審者は脱却できなかったんだぜ。え〜?とも思うけど、世の中、金だけでは済まないものは済まないようです。

 台所からトイレに寄ってから部屋に戻る。ここのトイレは家の外だ。汲取式のぽっとんトイレだ。足場に不安を覚えるし臭うから、ちょっと木の陰に失礼しといた。小だから気にしな〜い。あ〜、すっきり。



 部屋に戻って、じいさんに寝たいとお願いした。


 部屋の隅、マットレスみたいなもんの上で寝る。掛け布団も貸してくれた。


 野宿じゃなくて納屋ん中じゃなくて、ちゃんとした家の中で飯を食って人と話して、寝床で布団かぶって寝れる。安心する。欲を言えば風呂に入りたい。頭も洗いたいが、もう寝たい。手と顔は洗ったから最低限何かは守られたはずだ。


 横になったら、ほっとした。疲れてるんだ〜って、全身が言ってる感じがする。

 じいさんともう一人が話している理解しきれない単語の羅列を聞きながら、今日一日を振り返った。



 ほんと色々あった… 置いてかれたしさ… 大ジャンプは、まじで落っこちなくて良かった。これからするべき事は… 

 

 やるべき事は決まってる。

 わかってることだけど、一つドンッと立ててみた。


 

 そう、クエスト。

 ゲームじゃないけど、それっぽく。





 自分クエスト・ワン 『ハージェストを探せ!』





 その前に山ほどあるけどさ。明日聞けばいいや。おやすみですよ〜っと。



 寝た。ウエストポーチも外して、スカッと寝た。

 残ったその人が、いざという時の俺の見張り役だとは思いつきもせずに寝た。


 早すぎる寝付きにいぶかしんで、その人が俺のほっぺたに指をぷすっと指したのも知らない。




 

前回は二話連投しましたが、以降はしないと思います。

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