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召喚  作者: 黒龍藤
第二章   選ぶ道
38/238

38 これで、決まり

  

 持っていくのは着替えの衣服に下着類。携帯用の食料にお菓子、水筒。お金代わりの貴金属に小物類。それらを入れる荷袋。形状リュックサックにウエストポーチ。

 

 いや〜、何にも無しで行くより、ずっ〜と有り難く。ほんとノってる時の思考って怖い…


 服装は行く世界に合わせた物をくれました。

 如何にも他所者の服で行って言葉もつたないから身ぐるみ剥がれたら危ないわって。治安が良くない世界だろうか…?

 

 おねえさんのチョイスが良いのか、貰えた服は、どっかおしゃれっぽい感じがする。

 体型に合ってるのが一番の理由じゃないかな? デザインは、ふっつーなシャツだよ。素材が〜って言い始めたら違うかもしれないけど、普通の服。なんか安心。



 貰った服に加護とかないよ。売る換金物にもない。ちょっとだけ特別なのは、リュックとポーチに水筒。


 リュックもポーチも水筒も無制限には入りません。はい、入りません。

 但し、リュックにもポーチにも条件付けがされているので、盗みの悪意とかで取られると完全取り出し不可。でも本体を取られたら返って来ないから要注意。ウェブでもない物にオートロックかけられるって、すごいよな。どうやってんだろね… 普通に魔法だよね〜?


 ほんとはさ、無制限できるんだって。

 便利なアイテムボックスとかあったら、すんごくいいな〜と思ったよ、俺も。青い猫のポケットとか、視認できるタブレット表示一覧表とか。

 

 でもさぁ、それ、自分で作れって言われたらできませんよ? 無理ですよ、不可能ですよ。現物の品がどこまでも入るって、リアルで考えれば恐ろしい事態だよな…


 俺も一応は聞いてみた。

 お前が自分で作るとしたら無理だろうって… やってみる前から無理って…


 「あのな、魔力が自分の内から成るものと仮定した場合と、仮定しない場合。どちらの場合でもな、理論と構築は必要だぞ。原理を理解して掌握し、そこから概念を確立したその上で力の源流を見極めて選択を行う。これをだな、こうあったらいいな〜とか、こんな感じで〜とかの曖昧なもので作成した場合、ざるだぞ。どこまで行っても後から後から継ぎ足しても仕上がらない笊しかできんぞ。もし、作れるだけの力があっても、それだと幾らあっても追いつかん。挙げ句にお前が倒れるな」


 …だ、そうです。


 例えばさ。

 青い猫のポケットに物を入れる → 取り出す。


 この過程で掛かるものって、なーに? 


 まずは思考だよね? これが、いるって取り出すんだよね?

 んじゃ、冷蔵庫みたいな大型品入れたとすると、取り出す時どうすんの? 重いよね。自力で取り出す事って無理だろ? 自分で、コレって掴んだ後、下から押し上げる力が無いと上がんないじゃん。しかも、取り出した後の力は自力だよ… 入れる時も問題ありそうだけどさ…


 つまり、ポケット内部で掴んだ時点で、自動で補助してくれる力の設定がいるわけよ。しかも、物の重さに合わせて補助力を自動調整してくれないと困るわけ。中型物品を大型物品と同じ補助力で押し上げたら飛び出ちゃうって。小型物品は暴発を飛び越えるっての。どっちも下手しなくても掴んだ腕が吹っ飛ぶっての…


 それに、奥底にあって中味が見えないって場合は、俺のコレ欲しいっていう思考に合わせてポケット本体が瞬時に適切品を検索した上で俺の手の中に差し出してくれるわけだろー? 思考が曖昧過ぎたら、そこら辺のテキトーなモンが飛んで来そうじゃね?


 本体にそういった設定せずに作成したら、一々、物を取り出すだけでも延々延々、要・力。どこにあったかな〜って手探りするだけじゃ無理。なんせ無制限に入ってるわけだから。


 タブレットでも、結局同じ。


 コレ欲しいって選択して押す → どっかの空間が開閉されて収納内部から物品が押し出されるか、それだけが目の前に突然出てくる。


 ポケットの開閉は自分でするのが普通だろ。自動扉なら電源いるだろ?



 実践問題: 上記に該当する状態を希望的願望的思考ではなく、理論構築をした後、魔力を用いて細部に至るまで確実に組み上げて作り出せ。但し、理論は単一ではないので、独自の理論でも作り上げられれば可。



 しかもだな、無制限って事は収納場所が、どこまでもいるってことじゃねーか。物を置いて腐らない、傷まないって状態は時間が流れないって事になんね? 収納場所は、時間律から切り離された場所。


 「そっちで最適とするなら、切り取った過去の時間の中だぞ〜」


 そんなん、気軽に言わないで下さい! 一口に異次元と言いましてもですねぇ! 無限次元とか話されましてしてもねぇ!

 切り取った過去時間に、自分の手なんか突っ込めねぇって! 怖いって! どうすんですか!?



 おまけに、入れた時の保管時の設定。

 補助問題A: 内部にあるAの品に後から同じAの品を三つ追加して入れました。別々に分けて置くのはナンセンス。同じ場所に置きましょう。


 はい、魔力を使って自動で分別した上で、保管指定場所に優しく置くんですよね? 放り投げたら傷むから、常にや・さ・し・く。適切なお運びで。自分設定で。



 補助問題B: 同じ事を考える方は居られます。その方と収納場所が重なってないか、念入りに調べましょう。荷物の重複に、破損・欠損その他が認められれば、責任を問われます。財産目録もきちんとしましょう。


 そうですよね。便利なら皆持ちたいもんな…

 広い世界で収納場所の重複事態が無いと思うけど、絶対に無いって誰が保証すんのって言われたら…  絶対に無いと言い切れる原理の確立を自分で構築しろと?



 補助問題C: 収納場所を確保して、できたと思った時こそ油断は禁物。収納場所に穴が無いか、しっかり確認しておきましょう。弱い所があったら、ちゃんと補強を致しましょう。保管していた荷物が時空間を転がり落ちたら大変です。落ちた先で人災・天災如何なるモノになるかわかりません。極、稀に遺失物オーパーツとして上がる事はありますが、取りに行くのは大変危険です。原住民の驚異であり、脅威です。落とし主にも大変宜しくありません、最初の予防が肝心です。


 落ちたら、どこに落ちたか俺はわかんないってか… 探し出せないと思うんだけど… 時代考証異質物オーパーツならまだ笑えるけど、災害になったら嫌だなぁ… 怖いなぁ…


 補助問題が、ぽろぽろぽろぽろ出て来そう。



 ふ。

 俺が、そんなものを自分で作れるかよ!


 そして、作られた完品を貰った場合でも、自力維持はするようにって。自力維持って何? 維持管理の意味はわかるよ? けど、維持って…


 維持って手入れ?  自力維持 = 掃除? 


 ……もしも。

 もしも、スライムみたいなの入れた場合、汚れるんだろうか? 取り出した後、その上に違う品を置くんだろうか?  匂いとかは… やっぱ掃除しないと不衛生?


 あれ? 過去の時間軸にあるんなら、どうなるんだ? でろーんと広がらなくて済むんじゃないのか? いや待て、過去の終わった時間軸に、まずどうやって接続可能状態にして掃除するんだ? やっぱ掃除要らないんじゃ?



 もうよくわからない面倒くさそうな、それらの維持をおにいさんにして貰ったら、それはクラウド・サービス(大きな力を活用しよう)になるんだろうか? 共有品になるんだろうか? しかし、それならそれで契約使用料リースが発生しないだろうか… 


 俺自身に今、なーんの支払い能力もないですよ?


 ああ、なんか思考だけで倒れそうな気分。




 要は、魔力・魔力・魔力。   

 それに、理論・理論・実行理論に、実践構築。



 ……なんかカネカネカネみたい。 はぁ。



 魔力って… ほんと、なんなんでしょう? 思っただけで実行可能な便利スキル活用使用力じゃないんですか。


 スキル… 俺のスキルって… ne ko だけとか? とか? とかぁ!? まさかね! あの時どうやったか自分でも不明だけど、それだけじゃないよね!?


 でも、これも本当に、どーしてできたんだか。




 俯いてたら、変に慰められた。

 慰めにお茶とお菓子を食わせて貰った。

 よくよく考えたら、あれから初めてのまともな飲食だ。喉が渇くとも腹減ったとも思わなかったけど、紅茶らしいお茶の入ったカップを貰って一口飲んだら、体の中に水分が浸透していく感じに 『あ、生きてる…』 って思った。


 そっちに意識が飛んでる内に、おねえさんが、てんこ盛りの菓子皿からお菓子を取り分けてくれた。

 お菓子食ったら美味の単語が踊りまくった。美味しくって、おかわりした。お菓子の全種類制覇は多過ぎて無理だった。

 おやつに頂いていけるのが嬉しい。糖分補給も必要です。


 …どうでもいい事だが、俺が使ったカップや皿も実に高そうな品で、何故か全部に猫が描かれてたよ。




 んで、肝心なこれから行く世界に、無制限ができる完成品はないそうです。では、その世界に有り得ない物を一人所持して、それを他人に知られたらどうなるか? 


 俺が人に使用可で渡してしまった場合、後々悪いことの方が多く思いつく。いえ、それ以外思いつかないです。思考一つで出し入れ可なら問題ないかもしれないけど、そんな都合良くできません。現場見られたら恐ろしい感じしかしない。

 やる前から諦めるなとか言われたとしても、便利道具を獲得する為に命がけにはなれない。倒れたら道具を自分で使えない。意味がない。



 …自衛って大事だと思う。

 英雄になりに行くんだ!とか、そんなつもり全くないし、そんな力ない。


 自分が生きていく為の場所を友達がいる所に決めただけ。

 便利道具あると嬉しいけど、それに拘って結局心許せる友達の一人も出来なかったとかって… ほんと残念賞と違う?

 良い物を友達に上げられるのは嬉しいことだけど、上げるから 『友達』 だったら最悪じゃねーの。独り相撲で向こうにしたら便利な奴なだけだろー?

 自分が作れないもん上げて、もっとちょうだいって言われても困る。それで拗れて「出し惜しみするなよ!」とか言われたら、もうアウトだね。



 でも、魔力が満ちる世界って言われて、ちょっとトキメいてるよ。自分で何ができるのか不明な点が微妙なんだけどね!



 「此処は其処じゃないからな。そりゃあ、行ってからのお楽しみだろ」


 何ができるだろうかと、聞いてみたら笑顔で返事が来た。

 無一文じゃないし、行く先には友達がいるんだし、きっとなんとかなるはずだ! 言葉だって妙な感じだけど使えてる。


 大丈夫、大丈夫、大丈夫、きっと大丈夫! 


 やっぱ気分は上げる時に上げないと!



 それで、実際の見た目より容量が大きいリュックにポーチと水筒。完品でもこれなら負担ないって。しかも容量大なら行く世界にもあるって。すごいな、これから行く世界は。


 これらはアイテムボックスとは性質が似て非なるものだから問題ないっていうけど、何が違うのか? 

 空間を曲げて広げてる、らしいのはわかった。どうやったかは不明。

 中に食べ物を置きっぱなしにしたら腐るのも聞いた。アイテムボックスなら腐らない。 やっぱり時間軸みたいなのが関係してるんだろうな〜。


 誰か、物理系の人間がいたら教えてくれるだろうか?


 あ、違うか。魔法系の人間か。囚われるな、俺。

 あ、違う! 真実、魔法ってか魔力に精通してる人だ! 脳内魔法系の人間は、いーらない。



 おねえさんは使いやすいようにって、一度リュックを背負って確認した後、チクチク縫い直して俺の体に添うよう補正をしてくれた。内ポケットも増やしてくれた。


 貰えるリュックは俺が学生カバンとして使ってたバックパックより大きい。これが、小さめの形状ならもっと良いお品でしょう。でも、良いお品ならカツアゲ対象じゃね?

 でさ、これ行軍用荷袋〜な感じで、俺的表現としてはリュックサックって言葉の方が適切なんですよ。まぁ、呼び方はなんでも構わないけど。作りもしっかりしてるし、デザイン的に見ても結構カッコいい、このリュック。カッコ良過ぎてもカツアゲ対象だろうけどさ…


 後、これもしとかないとって、こっそり二つに内部の重さに対する軽量化を促す縫い取りをしてくれてた。


 「二人には内緒よ? でも入れ過ぎたら重いから、自分の体力を考えるのよ。それと、他人の目を誤摩化せる様にもしてるから、やり方教えるからね」


 縫われる端から透明になって糸が消えていく。糸自体残ってない。さっぱり図柄とかわかんないですね。


 こっそりしてくれてる所に、おねえさんの愛情を感じます。

 二人に内緒って言った時点で、おにいさんとお話した分の規定より大きめである事が推測できるからです。お小遣い貰った感じで嬉しいです。やったぁ。


 けどほ〜んと、異次元に通じていて中味をそっちに置いてるわけじゃないから、軽量化されないと重いだけで持てないんで、意味の無いお品になる所でした… 

 全軽量化してしまうと、どう見ても異常。そうなるとやっぱしカツアゲ対象じゃないかと…


 あ〜、こえぇ… 



 その間、おじいさんとおにいさんは話し合いをしてた。

 おじいさんからは、お守りを貰いました。なんでも身体負担を軽減してくれるお守りの玉で、失くさないようにと言われた。


 「その守りがなくても、平気になるじゃろうがな。知らぬ所へ行くのじゃ、最初の内はちゃーんと気をつけるんじゃぞ〜」


 ストラップ状の飾り玉。それを革紐で組んで首飾りにしてくれた。

 これ、俺専用って。 …やっぱ、優しい。



 欲をかいてはいけません。ろーくなことになりません。

 それに俺は貰っても貰い物に返す物がありません。返す宛もありません。貰えることが当然じゃないですよ。この人達がしてくれているのは好意です。おねえさんは別ですが。



 そう思うものの、最後だと思ったら試してみるのもいいだろうと。

 おにいさんからも何か貰えないだろうかと期待を込めた眼差しで、じいいっと見上げて、にへっと笑って両手を、こそっと出してみた。

 

 自分でもどうかと思うけど、してみた。


 たら、貰えたよ! してみるもんだね!

 ちょっと固まって、こっちを見た後で、おにいさんくれましたよ! 


 水の入った容器を二本と、さっき掛けてくれてた薄手の毛布を貰った。いえーい。

 毛布っていっても、そんじょそこらのもんと違って、これも触り心地が素晴らしくいい。大きさはバスタオル(大)な感じ。…子供用?





 男の私物 その一 

  

 xxx神泉の美味しい水 


 お品書き xxxx世界のxxxxxxx大陸北部に位置するxxx神泉から汲み上げた水。


 使用方法 そのままで美味しく召し上がれます。瀕死状態時に飲用すると体力の回復と同時に生命力の底上げが可能です。また傷口にご使用することでも回復は可能です。回復量は変動することがあります。開栓後は、お早めにお召し上がり下さい。

        尚、本品は医薬部外品です。体力回復と生命力の底上げが、怪我の治療と同意義であると考える不思議便利思考はお止め下さい。治療等は怠りませぬよう願います。また、治療に置いてご使用を希望する場合には、別途に 『xxx神泉の有意義な水』 を是非お買い求め下さい。




 美味しい水。

 これ、猫の時に飲んだ水じゃないかと思うんだ。あの水、美味しかったです。


 でもさ、なんだろう? なんと言っていいのか不明な、この感覚は。

 現実なのに現実味が変に薄れていく。このお品書き、確かにわかりやすいんだけど… 親切なんだろうけど…

 読めない字があるって言ったら、「これから向かう世界じゃないんだ、読めなくていい」だそうです。これは非常に大事に使おうと思います。

 もう一本は、xxx神泉の有意義な水でした。二本でワンセットのお品です。どちらも二百ミリリットル程度だと思います。…お値段は如何ほどでしょうか?


 どちらの水にも使用期限は、ありません。

 ありましたけど、なくなりました。おにいさんの保護プロテクトが掛かったので開栓しない限り、どんな炎天下だろうが、氷点下だろうが現状維持されるそうです。開栓したら、早く消費しろです。使うことがなかった場合には、是非とも末期の水に、このxxx神泉の美味しい水を頂きたいと思います。はい。


 あれ? 純粋に美味しい水を頂こうと思ったんだが… 生命力の底上げ…    先の話だ、まぁいいや。





 おにいさんがおねえさんと話していた時に、おじいさんが口に指を当てた内緒のポーズで、ささっとブツをくれた。

 はっ!として、こそこそっと受け取り、二人に背を向け見えない体勢を取る! ちょっとドキドキ〜。


 このブツにもお品書きがあって読んで驚愕した。驚愕に顔を上げると、にんまり笑って小声で「坊、欲しいじゃろ〜」って。

 黙ってブツを抱きしめたね! 返せって言われても返せない!

 

 

 後は注意事項を聞いたり、質問事項を聞いてみたり。


 聞いて試した結果、恐ろしい事実が判明した。



 「なんとかしてぇ!!」


 さっきまでの遠慮思考を総てかなぐり捨てて、おにいさんに泣きついた!

 青い猫に泣きつく某人間のように泣きついた! 必死だった。なんとかしてもらわないと、俺、一生撃沈しそうだったから、マジ泣きついた!

 おじいさんでもおねえさんでも、なんとかしてくれるなら誰でも良いけど! 印貰ったんだから、おにいさんだろ!


 「あ? …要領良くやれば、いつか自力でだな」

 「できなかったら、一生このままなんて嫌です! 嫌です! イ・ヤ・す・ぎ・で・す! お願いですから! なんとか、してえぇぇ!!!」


 必死でお願いした。

 あ〜、と横目で思案するおにいさんの腕に取り縋っても聞いて下さらない。



 したら、こうなる。そうするとこうなる。

 この場ではならなくても、降りたらこうなる。 んですよね? 


 だから、これを、どうにか、して欲しいんです! して欲しいんです! お願いですから、して、して、して、してぇぇぇぇ!!!



 neko化して足元にり寄り、腕にじゃれついて、あぐあぐ甘噛みした。甘噛みしつつ、顔を見上げても苦笑してるだけ。


 ダメだ! 聞いてくれない! お願い度が足りない!!



 ていっ!と腕から胸元に飛び移って、服に爪を引っかけてしがみ付く!

 下から顔を見上げて猛アピールした!! 爪を引っかけただけで、体がぶらーんと宙吊りなるのが、ちょっと怖いがそんなの問題じゃねぇ!


 ここが俺の運命の分かれ道だと、必死で、にゃが・にゃが・にゃが・にゃがとnekoの姿でお願いし続けた。最後半泣きで、胸に猫頭をぐりぐりこすり付けながら鳴き続けてお願いした。いつの間にか、ぶら下がってる俺の足がおにいさんの手のひらにの上に乗ってるのも気がつかなかった。


 「だからな。お前が一生懸命頑張れば、たぶん、きっと、おそらく、いつかだなぁ… 」


 


 断定でもない希望的観測でいうの、やぁめぇてぇぇぇ!! しかも、目ぇ合わせてくれないしぃぃ!!! 


 ああああ、     おにいさーん! たぁすけてぇぇ!!!! 




 「………………直で言うか。 ……………… 助けて、か」

  



 半泣きで目を潤ませて、見上げ続けた。

 ちょっと額を押えてる、おにいさんを見上げ続けた。



 「………なぁ? もっと命に関わる様な時にこそ、助け手が欲しくはないか? 今のお前の助けが欲しいと望む願いは惜しいものではないか? それこそ、とても大切な時に。大切な相手に。お前が至りかけたあの時の様に。

 本当にその助けでいいのか? その姿でなく、もっと違う姿になる助けも有りだぞ? ん? 本当に、それでイイのか?」


 優しい、とても静かな目で微笑むおにいさんに、その願いで良いのかと念押しされた。


 一瞬、頭の中にいっろ〜んな事がドバッと流れた。 ような、流れないような。


 ええと、ですね。

 突然、それ以外って言われても頭の中その事しかなかったから、咄嗟に出て来ませんよ。欲を出しすぎてはいけません。あやめねーちゃんも言ってました、その時々で思考をブラすんじゃないわ!って。身の丈も覚えとけって。

 

 俺も他は自分できっとなんとかできると思うけど。自分の事は自分でしないといけないとも思うから。自分でできた事で満足しとけと思ってるから。


 けど、コレは絶対無理だと思うから!


 お願いに助けをくれるなら、此処ですっぱり使い切っとけ! 宵越しの何かはいらねぇぇ! 惜しくないです! お願いします、助けてプリーズ。 お願いぃぃ!!




 「………思い切りもイイな、お前。 …まぁ、手を加えるにしても流す筋を作って残らん様にすれば構わんか。いや、此処で、とことん仕込めばいいか」


 

 俺は、おにいさんに講義とその実践を指導して貰った。


 結果。


 はい、先生。わかりません。 

 うわぁぁぁ!! できない生徒で、ごめんなさいぃ!


 「そう、落ち込むな。俺がいるのに、できんままにするわけないだろ」


 …やっぱり、おにいさんのキラメキ度数半端ないです!



 「坊。ほりゃ、頑張れ」

 「そうですわ。これからですわ。しっかり〜」



 声援を貰って、頑張ります!

 張り切って、再チャレンジ!






 しくしく。しくしく。

 ………………難易度高いです。やっぱ微妙なんです。ある程度理解の筋ができても、実践には追いつけないんです。


   

 「 あ〜、それなら感覚を覚えろ。俺が補助してやるから、とにかく感覚を掴め。 な。 」


 半泣きの俺に、呆れを含まない笑顔が眩しいです。

 その後、必死で頑張った。掴む事のできた状況に涙出そう。


 補助って、すごい。ほんとにすごい。

 してくれた補助だけで、自分が何でもできそうな気持ちになる事に目眩がする。


 『世界が変わる』 


 自分一人では到底できないだろう感覚に。導かれるという意味を実感して。


 『違うモノ(高位次元)


 言葉の意味を理解した。




 「よしよし、ちゃんとできるだろうが。焦らんでいいんだ。もう少し頑張れば完全にできる。そうだな… 後、数回だけ補助の力を添え置いてやるから、その間に習得しろ。お前の中に添える力じゃない、使い切れば自然消滅して何も残らん。しかし、ちゃんとできたんだ。確実に自分一人で、できる様になるさ」



 優しさが眩しいです。泣きそうです。

 本当に、なんとかなる目処がついて心底安心した。

 現在まだ、おにいさんの補助付きです。もし、これをチャリンコで例えるなら補助輪付きですが気にしない。必ず補助輪がなくなる前に完全習得してみせます!

 けど、この補助輪、ただの補助輪と違って噴射機能ブースター付きな感じでほんとすげぇ… まじ、あったらチャリで空カッ飛べそう。…してるのはチャリンコとは関係ないけどね。全く関係ないんだけどね。




 だけどさ、これがどうなって、こうなるのか。

 なーんて基本理論を追求すると俺の脳がゲシュタルト崩壊するんで、そんなもんは、もう泣きそうな感じでどーでもいーですよ… あと、本来の助けの主旨の想定がどうのって言ってた気もしたけど、それもいい〜。


 ああ、良かった〜。おにいさん、ありがとー。

 やっぱり最後は、ナニ頼みだよね。 俺はナニじゃなくて、おにいさん頼みだけどね〜♪



 

 最後、みんなに言葉を貰った。

 特に、おにいさんが「楽しんで来い」と言ってくれた言葉が嬉しかったよ。


 疲れて横になって、眠りに落ちる前、姉には言いたくても言えなかった「行ってきます」と言えた。

 






 「うわっと!」


 最後は嬉しくなって頬が緩む思い出に浸って歩いていたら、樹の根っこに足を取られそうになった。

 駄目だね。他の事考えてたら、注意力散漫になる。


 下りの山道は気をつけて行かないとね。





























 その手を取った事、逃げた事実、一つに決めた事から得た物、成った事で頼ったまこと

 あった出来事に対処した。


 それだけのこと。


 それだけに意志の介在が真にあろうとなかろうと、感情であろうとも大差ない。



 其は確かに 選択。


 お前が、選んだ。

 





 


 え ら ん だ   さ が れ な い   み ち ゆ き 。   


 









 道を行く。

 遊びに行こうと。

 自分と相手の縁を知ろうと。














 それを何と呼べばいいのだろうか?

 気が付かれなければ、罪に非ず。罪に成らず。罪に成れず。罪と感じれず。

 それでも、事実は付いて回って息を潜める。 何時、囁こうかと。




 

 select future.

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