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召喚  作者: 黒龍藤
第二章   選ぶ道
30/239

30 奔り上がる思考

   

 私の弟が死んだ。

 私の弟は、どこの誰とも知れない男に殺された。その男は何人もの人を殺め傷つけた。弟と一緒にいた友達や居合わせた女の子達も怪我をした。

 俗に言えば、無差別という一言で片付けられる。


 私は事件の事に全く気がついていなかった。

 弟から夕食不要との連絡を受け、それならどうしようか? 自分の分だけでいいなら、簡単に済ませてしまうか、それこそ楽をして店で惣菜でも買おうか? 外食にするには、今日はちょっとね〜。有り合わせなら何が出来るかしら? それとも新しい創作メニューでも繰り広げてみようかしら? そういや、この前作ったのは、今ひとつ納得できなかったのよねぇ… そんなことを考え悩んでいただけだった。


 そして、思考を切り替えた時に電話を受けた。


 警察から連絡を受け、病院へと言われた時、頭が全く追いつかなかった。

 電話を切った後、 『まさかね?』 という気持ちから、だんだん現実味を帯び始め、 『まさかほんとに!』 と心が悲鳴を上げる。心臓が跳ね上がり、ついで血の気が引きかけた。


 いけない、決定ではないのよ! そう、確認しなくては。


 その一心で指定された病院に行けば、物言わぬ弟の骸があった。


 呼びかけても、返事をしない。体を揺さぶっても、起き出さない。

 血の気が失せていく弟の体。この先どうあっても、自ら熱を生み出すことはない。触れた弟の手は、まだどこか温かいような気もしたのだけれど。私の手を握り返すこともしない。


 徐々に冷えていく熱を帯びぬ体に、心のどこかが引き切れそうになる。




 何も考えられないで見ているだけの私は、はたから見れば、まだ理性的だったのかしら?


 何も考えられず、頭の中が白くなる。

 そのままの状態で話しかけられれば、現実から目を逸らしたい気持ちからか、即座に振り向き話を聞けた。


 …聞かねば良かった。

 聞いている内にどこかが覚醒する。心を綺麗に切り分けて、私は自我を取り戻し、私の前に差し出された内容に思考を回す。その間だけは何かを考えなくて済むはずなのよ。


 その頭の片隅で、 弟の通夜を、 その後の葬儀を、 火葬を、 墓を、 その準備に連絡を… 


 心が納得しないのに、せねばならぬことがある。怒りのままに行動し、その衝動に身を委ねたい。なのに、起きた理性が歯止めを掛ける。その衝動よりも弟のことをと思考が切り結ぶ。泣き崩れる心を押し宥め、何かが焼き切れる一歩手前でなんとか動いてみせた。


 再び触れた弟は、先ほどよりもっと冷たかった。それをそのまま口にした。


 「冷たい」


 口から滑り出た言葉が言った私自身を凝らせた。

 







 意外ね。無理だと駄目だと思っていたけど、立っていられるものだわ。


 確たる現実として事実が私の前に在るというのに。

 心が追いつかなくて、どこかふわふわしたような、どす黒いような。覚めない悪い夢を見ているようで。 …気持ちが悪い。


 でも、この子の姉として、私が立たねば。

 一通りのことが済むまで何としてでも立っていなくては… その為にも動かなくては。いいえ、休まなくては。 ああ、そうだ。 喪服は…  千々に乱れる心を抱えて痛みを押し殺して道を歩む。


 泣きたい。泣きたい。 …本当に泣きたいのかしら? 


 震え上がるような、狂え上がりそうな心を、今は駄目だと押さえ込む。泣くのは帰ってから、家に辿り着いてから。それまでは…


 


 見栄じゃないわ。見映えじゃないわ。心意気でもないわ。単なる意地よ。


 傍から、どう見えてでも立っていてみせる。


 弟を家に連れ帰りたいが、連れ帰っても棺を置く場所を作らねばならない。まだ棺も無い。連れ帰れるわけもない。まして、自分一人でできようはずもない。


 結局、私一人。


 タクシーで家に帰る道すがら数カ所に連絡を取る。

 家に帰り着けば、あれも、それも、これも機械仕掛けのように動いて、考えて、動いて、同じ事をして、一体何をしているのか次第に分からなくなり動けなくなる。


 座り込んで室内を見回した。

 今朝、食事をして出て行った弟が。


 閉めた玄関を見ていれば、弟が玄関のドアを開けて「ただいま」と帰ってきそうなものなのに。



 「ひっ ……くっ ぁ  」


 真実、現実が私に追いついて、私の心が引き付けを起こして悲鳴を上げる。


 泣いた。 

 泣いて泣いて泣いて、声を引き絞る様に泣き上げてクッションを叩き付けて、やっぱり泣いて。



 ぼんやりした。


 思い出して、のろのろとシャワーを浴びに浴室へいく。

 頭からシャワーに打たれていれば、意識が戻ってくる。湯を浴びて血の気が通う温かくなった自分の体と冷たくなった弟を想う。


 そこからは、もう思考を留め置いた。私が狂えそう。


 明日、いいえ… もう今日じゃないかしら? 今日の夜には… そう、弟の通夜が。そう、通夜をしなくては。可能なはず。


 そう、だから。

 少し休みましょう。だって、起きたら、再度連絡をして、それからその手筈を整えて、それからーー


 もう考えられない。考えたくない。



 もう一度、頭からシャワーを浴びる。

 総ての思考を切り落として、身支度を済ませて無理やり眠りについた。





 朝、定時のアラームで目が覚める。

 一応寝てたんだわ。あの状態でも寝れるものなのね。


 食欲も湧かないけど、何か口にしないと私の血肉にならない。気力も空腹なら続かないわ。知ってるわ。今日は、動かないと、いけないのよ。


 ヨーグルトに、梓が好きな私が作った苺ジャムをのせて食べた。口にした甘味が、過去となった現実を思い出させる。弟が食べることは、もう、 ないのね…


 朝から、やっぱり現実に打ちのめされる。





 家を出れば、報道という名の人達がいた。

 どこそこのテレビのリポーターだという人が、私にマイクを向けて「今、どのような御心境ですか?」そんな類いの言葉次々に掛けてきた。



 なに、この、 現実。

 

 は? どのような御心境? なに、それ? ああ、そうね。ニュースに… とっくになってるわよね? 

 情報なんて落としてたから、忘れてたけど。

 そうよね。こんな事件ニュースにならない方がおかしいわよね? そんな事にも気がつかない、私の方がおかしいんだわ。

 


 再度、同じ内容を問われた。



 …ねぇ、あなた。

 あなたは私が今、どのような状況下の置かれているのか、知っているのよね?


 知ったその上で、「どのような御心境?」と、聞いてきているの? 

 ねぇ、あなた何考えているの? なんにも考えてないの? 考えてないから、そんな無神経な聞き方してくるの?


 身内の者が亡くなった者に対して、「どのような御心境?」と聞くの? それを聞いてどうするの? それを聞いてあなたがどうにかしてくれるの? 

 なにかしてくれるの? なんにもしないでしょう? 

 なんにもしないのに、どうして私の心に爪を立てるようなことを聞くの? あなたにとって、それは聞かなくてはならない最重要課題なの?



 そうね、話をして聞いてくれることは良いことよね。

 ただ、聞いてくれる。

 それはとても有り難いことだわ。


 でも、あなたは違うでしょう? ここには自分の仕事で来ているのよね? 聞いて人に伝えることをしているのよね? マイクを向けられて、怒りを伝える為にそれを握る人はいるでしょう。聞いて欲しいと握る人はいるでしょう。

 その人は、それを良しとして行ったのだから問題なんて、ないわ。それは、その人の望みに添った有り難い話よね。


 じゃあ、それが嫌な私は? 

 なにがなんでも話さなければ、ならないことではないのでしょう? それとも、あなた達が期待するような言葉を私が吐けばいいの? それとも、吐かなくてはいけないの? 

 あなた、私になにを言わせたいの? 私に選択権はないとでも? あなた達の言う報道の自由とはなんなの? 報道の自由を行使するために、私の心を抉じ開ける自由があるとでも? 私の凍えそうな心を他人に伝えることの自由があるとでも? 


 伝えることの重要性はわかっているわ。確かに知っているわ。


 でもね、あなた、すぐ忘れるでしょう? 次に何か別のリポートする仕事がくれば、そちらに行って仕事をするだけよね? 仕事を熟して新しい情報で埋めていって忘れるのよね。

 たまにそういった事件があったと。季節が一回りもすれば、ああ、去年はそんな事件があってあの時はどうだったと思い出すくらいで、結果的には、あなたは私に何をするわけでもないのよね。


 ただ、仕事で、私に「今の御心境は?」とマイクを向けただけだものね。一回仕事で来ただけよね。

 だけどね、そんな無神経な行動に傷つくのは私なのよ? そう言って向けられた方なのよ。忘れられなくなるかもね。私にどこか痛ましそうに見せかけた口調を使って、無神経な言葉を吐いたのは誰だ、ってね。



 忘れられなくなる… ああ、嫌だわ、嫌だわ。

 こんなどうしようもない相手のどうしようもない言葉で傷つくなんて、私が可哀想過ぎるわ。そんなことに時間を割いてやるなんて無駄で馬鹿みたいよ。



 一言切り返す。



 「無神経にマイクを向けられて不快です」



 ええ、そうね。本当に頭の良い人はこんなこと言わないわね。言ったりなんかしないわね。

 上手に返して 『心境を思いやって静かにしておいて下さい』 と言われるのでしょうね。もしくは、相手にこれ以上聞くのは失礼だと思わせる態度と取って黙らせるのよね。無神経なこの人が黙るかどうかわからないけど。聞き出さなきゃいけない仕事だって言うのなら、それはそれで、大変なんでしょうけどね。


 でも、私いま余裕ないのよ。

 いつでもキレることが、当たり散らして泣き喚きたい状況でいるのよね。

 なのに、なんで、この聞けば満足して、その後のことはどうでもいい人達に私の忍耐を試されなければならないの? それとも私が泣き喚くのを待っているの? それを映し出すことこそが最良だとしているの? 泣くまで色々私の感情を無遠慮に突き回して良いでも思っているの? それとも、私に浸れとでも?


 自分達は、良い事を、している、とでも?


 ねぇ、誰か。

 この人は自分がなにをしてるか、正しく理解していると思う? 

 理解した上でやっているなら、悪意よね? 他人の感情を逆撫でして喚き散らさせて、それを撮ってなんぼだとしているわけよね? 悪意を報道の自由という名目を盾に堂々と行使しているのだもの、最低よね。


 …まぁね、必要性はわかるわよ? 何千歩か一応譲ってあげて、わかるわよ?



 でも、どうして私なの? 私なのよ!!



 そんな最低な人に対応しなくてはいけないのだから最悪だわ。感情が溢れ返りそうな人間に、感情論で話すなと言っているのよね。いえ、話し出したら最良だとでも?

 もしも、自分達がなじられたら、都合良く変えて自分の行為は棚上げして、人の事だけは賢しげに上げ連ねれば良いんですものね。


 …私、いま正常な思考でいるのかしら? 

 ああ、これから弟を送る準備をしなくてはいけないのに。こんな気持ちで行くなんて… こんな気持ちを抱えて送り出すなんて。


 どうしてくれるの? そんなことまで考えてもいないくせに! ちょっと悼んだ振りして瞑目すれば、それで終わると踏んでるだけのくせに。


 ああ、嫌だわ。嫌だわ。嫌なのよ。私は!



 彼らを無視してタクシーに乗り込む。話しかけられる言葉に、私の意識は向かわなかった。


 行く間にも思考が止まらない。

 怒りに触発されて犯人に意識が向かう。




 許せない。許せない。許したいなんて思わない。


 『許してあげなさい』 なんて言われたら、その人に殺意が芽生えそうよ。

 『憎しみは虚しい、あなた自身の為にお止めなさい』 そんな判で付いたような事言われたら、私から感情を奪うことを良しとしているのか疑ってしまうわよ。今の私にそんな事を言うのなら、それは 『人形におなりなさい』 と言ってるんじゃなくて? ああ、嫌だわ。考える私自身も嫌だわね。



 犯人は逮捕された。なら、裁判になって判決が下る。

 そこに私の意思は反映されるのかしら? 犯人の現状が上がり精神状態が加味され、その上で判決時の態度とかで変わったりするんじゃなかったかしら? 

 精神状態が不安定であったとか今後更正の余地ありとか、年齢を… 聞いていたかしら、私?

 思い出せない… 

 もし、未成年だったらそれも考慮されて、私の弟を殺した犯人は生き延びるということになったりするのかしら?

 …裁判員裁判になるのかしら? 裁判員裁判は一審だけ。二審、三審になれば、裁判官裁判になる。一審の判決に納得できずに控訴して、通れば二審で再審となる。新たに審査して判決が覆ることは当然あることだわ。三審まで縺れるのも聞く話。


 裁判員裁判での…死刑判決は…  あれは、制定時にそういった事案になるものの取り扱いになる前提では… なかった… の かしら? その公算が高いものが…  でも、刑事訴訟なら、被告に再審請求権が認められて… 


 嫌だ、嫌だ。はっきり覚えてない。 どうなるの?


 嫌だ、こんなこと。

 嫌だ。こんな時にこんな風に考えて、私が。  こんな風にーー









 ああ、でも。  

 死んだ者より、生きている者。  


 そうね、そうだわね…


 更正するから、生き延びさせて今後の社会に貢献させて償わせていく…

 もしかしたら、そうなるのかしら? 私の弟を殺した犯人は死刑にならないのかしら? 弟は殺されたのに、殺した者は平然と生きていくのかしら…?

 平然じゃないとか言われても、ほんとかどうかなんてわからないわよ。



 死ねばいいのに。 更正したからどうだというの? 私にはなんの役にも立たないわ。

 死ねばいいのに。 弟は帰らないわ。人は忘れる生き物よ。忘れて初めて前を向けもするのよ? 償いの心だけで生きていけるわけないじゃない。馬鹿ね。


 死んでしまえばいいのに。 いつか、誰かの役に立つから?  ふざけないでよ!!


 その両親も、その兄弟も、居るなら死んでしまえばいいのに。

 突然突き付けられた絶望に、関係ないなんて言わせないわ! 


 どうして、私の弟を殺そうとしたの? そこに居たから? 目の前に居たから? 複数の人達に、どうしてそんなことをしたの? 誰でも良かったの? 誰でもいいのなら、自分を殺して終わりなさいよ。は、その後のことなんてほんとに何一つ考えていやしないのよね。

 寂しかった? 誰かに知って欲しかった? 目立ちたかった? だから誰でもいい私に負の感情を押しつけた? 負の感情を押し付けられた私が、自ら負の感情を呼び起こして穢れていくのを待っているのかしら。



 今まで、全く知りもしなかった人間の死を願う。

 感情が、頭をもたげて厭悪を吐き散らす。

 

 自分の内から穢れの濁りが生み出されて澱となり、自身が醜く成り下がる感覚がズルズルと引き摺り出される。  気持ち悪いったら!


 ああ、 …消えてしまえばいいのに。 

 この者の存在のすべてが抹消されてしまえばいいのに。


 この正しい私の感情が。

 ………いま、私、なにが正しいと言ったのかしら? 誰が? 何が? 感情が? 正しい? 正しく? ああ… ああ、ああぁぁあ   私は!






 それでも。


 それでも私はこの感情をそのままに、他人に話す愚なんて犯さないわ。

 私は大人ですからね。そうよ、私は、大人なのよ。

 社会に出て揉まれて少しは呻いて生きてきたのよ。たった一つの見方で穿たれて、全てを狂わされるほどに幼くも弱くもないつもりよ。その… つもりよ。痛いものが、 痛くてもね。痛過ぎれば喚くわよ。ガス抜きの必要性だって知っているわよ!

 

 ああ、でも、やっぱり許さない。許せない。死ねばいいのに。



 「お客さん、お客さん」



 でも、安楽な死なんて許せない。安易な死なんて認めない。更正して人に償って生きていけ、なんて口が裂けても言いたくない! 生きていると考えるだけで腹が立つ。腹が立つ。腹が立つ!

 どうせなら、役に立って死ねばまだ許せるかもね?



 「お客さん! 大丈夫ですか?」


 ビクッ!と我に返って、運転手と顔を見合わせ、引き攣るような愛想笑いを一つする。



 「ごめんなさい。ちょっとボケちゃってたわ」


 精算を済ませてタクシーを降りた。

 頬に手を当ててみれば、顔が強張っているのがわかる。歯の根が震えそう。最低だわ。



 「 はぁぁ…… 」

 


 一つの思考に囚われそうな自分自身を振り払う。


 青い自分を嗤いながら、 『そうよ、私は年寄りじゃないんだもの。達観なんてしてないもの。こんなことに経験値なんてどれだけあっても足りないわよ』 とうそぶく。

 滲みそうになる涙を瞬きで追い払う。頭を振って息を吐く。歯を噛み締める。頬を手で叩く。足を動かし、踏み出して歩き始める。


 黒いローヒールの靴の踵が、それでもカッと音を立てた。











 夜が明ける。

 しらじらと、夜が、明けていく。


 長いような短いような、その実、全く変わらない秒速を針が刻んで時が進み、通夜が終わる。

 変わる事なく日が昇り、変わる事なく時が流れる。





     おかしい… おかしいわ どうして? どういうこと?



 棺の中、冷気に包まれた、もう目覚めない弟を見遣って私は狼狽える。



     どうして、ここにいないの?   あーちゃん? 


     あーちゃん、返事をして? 


     あーちゃん、お姉ちゃんに返事をしてちょうだい! 





     …梓! どこにいるの!?  梓!?



 

 私は周囲を見回して考える。



     もしや現場? あっちにいるの? 


     でも、私の声が届かない?   私が気がついていないだけ?

     まさか! そんなはずないわ!!



     おかしいわ  どういうこと? 




     私の弟は   梓は 一体どこにいったというの!?

 


 

 度重なる事態に、自分の目が据わっていくのが自分でもわかる。



     どうして、こんなことに、なるの…!   あーちゃん!



     どこなの!






 弟の気配が全くない不条理に私は虚空を睨みつける。

 駆け上がる理不尽に怒りが奔り、私の身を灼く。

 私の身に絡み付こうとしていた穢れた糸が、身の裡を灼く力に溶け落ちるのを感じた。溶けて消えゆく糸が二色ふたいろに感じられる事実に、私は嘲笑い、そして自嘲した。



 でも、棺に眠る弟を見れば、すぐに怒りと悲しみがぜになり、苦しい。嘲笑った事実も嫌でしかない。こんなものむしり取りたい。




 遣り切れることのない想いに、洗面所へ顔を洗いに行くことで私は逃げた。





 

はい、本日は仏滅。回の周り当たりが素晴らしい。

不要だと思いますが、一応明記。一つの思考を、ぐーいっと引き延ばした。それだけです。


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