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召喚  作者: 黒龍藤
第四章   道中に当たり  色々、準備します
234/239

234 虫のいどころ宴です?

別ジャンルにフライングジャンプしてから帰ってくるのに時間が掛かってまー。まー。まー。 あっはっは。 戻りに景気良く二文字使ったです。


んで、昨日のリニューアル。自分的に良いのは一点で後は残念なまでにハズレ。肝心の執筆画面横に居座る広告がうざい上に、 あああああ。


なろう創設者の退陣は知ってましたが、 あああああ。


ごめ、どうぞ。





 溺れちまえ、溺れちまえ。

 小さな子供の命に取り縋って生き長らえようってんなら、お前が溺れちまえよ。



 坊ちゃん泣いても変わらない女官さんの目付きべったり漬けが頭にきて、吐き捨て気分で俺も沈めと思った。


 それが正しい裁定だろと。

 だけど、よくある立場逆転インスピレーション。


 『俺があの立場なら?』


 ザバーッと頭から水を被って濡れる冷たさ、冷気を呼んで意気激減。俺が沈む。所詮、小物の俺には沈黙が似合うらしい。


 人様の尻馬にも乗れず、いじけにもなれず、何とゆーかの打開もできない〜〜 もやった気分でいましたら、聞こえる潮騒。 ざわわわわ。 おねーちゃん達の区画から空気の揺れが発生してます。


 拘束なしだと暴動しそう。実際しそうな面構え。


 「お、お、お立ちなさい! アルヴィール様!」


 女官さん、すんごい形相で息を吸いの吐いので立ち直って泣きぐずっちゃってる坊ちゃんを一喝。


 「まだ終わっていません。終わったと思わされる事こそ謀略なのです!!」


 ほわっちゅ?

 試合しゅーりょーが早いですと?


 「良いですか、そのお手紙は最後の最後に出すものでした。書かれていましたでしょう? こちらに非はないと! 内容は奴隷の取り扱いに対する返答です。証拠不十分でも、相手側から掛けられた疑いを晴らす為の苦渋の選択であると! ご領主として誠実なのです!」


 うん? そういえば… そうで、す、 ね?


 「領内において不穏なる複数の殺害事件が発生し、それは此処 エルトシューレでもあったと聞き及び! そして、エルトシューレにこそ発端たる元凶の疑いが有り!」


 へあ? 


 女官さん、声を荒げて興奮の余り、今度は逆に息を詰まらせながらも糾弾されまする。そんで王都でもどーのと言われまし。 …地方から都会へ広がる連続殺人事件ですと? こんな田舎から? あ、おーさまの別荘は聖地扱いでしたね。


 「わかりますか、エルトシューレが怪しいのです!」


 ほう、聖地が怪しいですか。


 王様の力は目に見える。

 なら、信心力は桁違い。求心力も桁違い。


 な、筈でしょー。違うゆーなら仮ゆーしゃの行動どうなるですか? あれこそ敬虔でござーましょ? なら、地元はもっと強いでしょ?


 「殺戮の風が吹いたと、そう断言されたのです!」


 誰が?


 んで、聖地が血塗ろ? 血塗れ聖地?

 それを本気で許す信仰者って居ますのか? あ、その際の衝突で?


 うわ、やっべえ! 俺、地元の人も知ってなさそーな地下のアレを知っちゃってるぅうう!!


 「糾弾するのです、アルヴィール様! 姫様が何と言って囚われたのかはわかりませぬが、血を継ぐ貴方様には権利があるのです! 貴方が権利を持つのです! 貴方が為さねばならぬのです! さあ!!」


 …あの、それ七歳児に言うの? 知識も理解も体力も足りない子供にそーゆっちゃうの? 不発でも感情花火をドンしちゃってスッキリよりもお休みモードに入りたそーじゃん?


 ってか、どーしてだろか。


 坊ちゃんにのみ権利があるのはわかったが、坊ちゃんに全責任を被せようって感じにしか聞こえないのは。俺の穿ち過ぎ?


 「ぇ、ぇと キルメルを騒がせたのは あなたですか?」


 ………きょーいくの行き届いた坊ちゃんであるなー。俺ですら思う、こんな質問ではどうやっても真実には辿り着けないと。ところで坊ちゃん、背中に不思議パペット貰ってなぁい? 


 鼻をぐずらせ続けても、頑張って泣き顔をあげる坊ちゃんが…   大人のよーきゅーに従って顔を上げる坊ちゃんの自制と根性に… うーん、男らしいと言っていいのかああぁあ〜〜  って、男らしいって表現はどうとか言われてたな。


 なら、雄々しくも男気もアウトなんか? この坊ちゃんの凛々しさと遠い凛々しさを、どう表現してやれば!?



 「聞くのではありません! 弾劾するのです!」


 いや、それ無茶でしょー。

 でも、それで自分の奴隷化が免れるんなら言うよあ。




 「この地に蔓延り根付いて甘露と啜り、肥え太るモノが弾劾なる言葉を知るか」


 魔王様、微笑まれ。


 「本当に、人に似ておるわ」


 さらりと人で無し発言されたです。

 魔女様と悪魔は何も言いませんが、お変わりもなく。しかし、豚とリチャードさんがピク反応。緊張が走ります。そんでガリッて聞こえまし。


 音に目を向けると無風地帯の端っこに来られた書記さんからです。ペンを持つ手がお止まりで、真面目無表情に見えても『え、それは?』な動揺顔してた。


 そー見えた、きゃー。

 意訳が大変そうですが奴隷のランク別選手権がこーわーいー。


 ハージェストは子供の奴隷には政策的配慮があーるーよーって教えてくれたけど、こーわーいー。しかし、魔王様は既にご決断済みで問答無用の ってぇ、んん? んんん?



 人権問題+金銭問題+損害問題+殺人事件=超会議。


 超会議ー騒動=怪我人(複数)+動物。

 駱駝+白猫=免責(豚+黒犬)+怪我人(一)。


 (人権侵害ー人権擁護)+(貴族定義+貴族的瑕疵)=代理闘争(ー貴族定義)=意見衝突。


 意見衝突=貴族尊厳。

 尊厳=基盤。


 帰結、拘束。


 残務処理、身柄問題+キルメル領平定+隣領地問題2(new!)。 殺人事件=未解決。



 おぉう、確かに!

 んでも、それはキルメル領主を貴族に非ずと平らげてからでも〜〜 とも思うんですよ? ですが、一度議題に上がったものを未解決のままに閉廷ってのは良くないです。それで終えちゃうのはヒドインってなものでございましょう。


 「自分達の 行いを!」


 女官さんの血を吐くよーな叫びを無視して魔王様、坊ちゃんに話される。


 「我がシューレを陥れようと誰ぞが画策し、迷惑極まる陣を描きおった。誰がやったと探れば愚か者の足跡がキルメルに向こうてな」


 魔王様、坊ちゃんと目を合わせるも高さを合わせず。


 「この地は奥まった場所ゆえ道は限られる。キルメルを通るも道理」


 坊ちゃん、首を上げたまま一生懸命聞いてます。『うん、そう』な顔してるので地形も頭に入ってる。ちゃんとわかって聞けてる。すごい子や。


 「だが、足が付かぬとするならキルメルだ。賑やかさで言えば、そうであろう」


 魔王様、坊ちゃんに聞いた。

 女官が言う複数の事件の死亡者の素性がわかるかと。


 坊ちゃん、当然わかんない。

 なので、女官さんの方を向く。王都がどうとも言ったので知っているかと思えば、沈黙して何も言わない。


 それを横目に魔王様。

 計画性と組織的犯行と規模からなる理屈を教えられるのが優しい。


 また、無認可奴隷の売買がその資金源の一端との推測から「何に使って何処へ流れた?」闇取引の裏金の流れとゆー子供にはわかりそーにない事を聞いてた。


 女官さん、何も言わない。

 坊ちゃん、視線がおろおろ前と横。涙でぐちゃったお顔を誰か拭いてやって欲しいです。


 「末端の確保に裏付けと、彼方此方に連絡を飛ばしておる。キルメルの領主に問うた返答は人身であり、答弁ではない。 其は何故か?  そうよな、物の序での小遣い稼ぎと連れ去りの被害に遭った者の声を聞くか?」


 魔王様のお言葉に『はい、俺でーす』と、つい両手を上げた。


 残念、この場での万歳は意味不明で流された。

 しかし、三魔様方が苦笑したのでちょっとだけ場が和む。その和みも直後の悪魔の「ふ」で霧氷を帯びてキラキラしく消えた。


 当時を思い出して俺よりもキちゃう悪魔の取り扱いが困ります。


 そんでも、坊ちゃん俺を見る。

 視線が俺の手で止まる。


 賢い坊ちゃん、知恵熱でそうで更に顔がぐにゃりそう。

 子供の素直さが謝りたげに口を押しても、お家教育に『弾劾しろ』が声にするのを許さない。



 ……この坊ちゃんの心境を汲んでやるのが大人だと思うんです。


 ぐにゃるに留まるこの顔を意固地だなんだと言うのは簡単ですが〜 あ〜 助けてコールないしー。でも、安易にかわいそーにしちゃったらあ〜 家の教育どーなってえー あー、この子の自尊はどこいってー? 


 そこまで待てたら余裕です?


 俺とゆー犠牲者も出てますし、他にもいるよーですし。でも、それだからと話を進めるのもおかしくね?


 ねえ、ほんとにおかしくないですか?


 女官さん、なにやってんの? どうして口を出さんのです? 権利を持っても子供でしょ? 間違いなく、この子があんたらの命綱でしょー!? 俺もハージェストが命綱だとわかった時には握り締めて離さない決意をしましたけどね?


 『子供をこんな状況下に置くなやー! 置いて待つなやー! どーして大事なこの子を庇おうとしないんじゃー!!』


 腹の中で叫んでても静か。

 気付けば、微かなざわわも聞こえやしねえ。

 

 打開は七歳児に任された。

 体は子供、のーみそも子供。推理探偵どこにもいない。


 居心地の悪さとムカつきに俺が胃痛を覚えそう。

 自分がやられたぺっちと地下転がしに、同等者の総数と未来と身分と殺人事件が混ざると危険臭しかしてこない。


 そのぷんぷん臭う危険臭が、より危険を漂わせる。


 七歳児が大規模犯罪集団の責任の一端を負っちゃう流れに納得したら、俺の頭が危険でしょ? 危険過ぎて笑うでしょ!?


 だが、どう口を挟めば子供の坊ちゃんから名目責任を取り上げ、この場の大人達へ責任転嫁 …じゃなーくーてー 責任をぶん回せるのかがわからない。


 誰か、この問題を答えて下さい。

 これができたら、あなたは高レベル帯にいます。


 できないから、だから俺は良心が咎めて胃痛がしてる。え、胃痛がするのが向こうで覚えた常識じゃないの? 違うの? ひぎゃー。



 重苦しいのかそうでないのかよーわからんなった雰囲気の中の坊ちゃんの目はすんごく言い表し難い。その目のハイライトが消えないのが救いだが、表情は固定化しててむごーい感じ。


 「僕が わかるのは」


 ぽつぽつお話しするのを要約すると。


 取り締まりは警察機構。

 機構から上がってない話ならおとーさんも知らない。

 でも、おとーさんが本当に知らないのかはわかんない。

 裏金とゆー単語は初めて聞いた。

 領の警察機構のトップのおじさんは知ってる。

 お手紙の預かり時の頭撫で。

 絶対に僕が渡すの心意気。

 でも、偶に会うおねーちゃんとの旅行?は嬉しくて〜 等々。



 

 「…怒られる?」


 会話上、坊ちゃんの言葉の前には『おとーさんが』が付きます。おとーさんを信じたい、なのに信じられない。でも、信じない事への不安っぽいのがおしくらまんじゅう。それでも、『おとーさん』が出てくる。


 縋る子供のこーえーを〜〜 なーさけが〜〜 うかばせて〜〜  って。



 「誰に」


 魔王様、気にしない。


 「…… 」


 坊ちゃん、下向き。じぃいっと。


 「王さ、ま?」


 俯いたまま、そろりと聞く所は叱られる子供。なんで、ざわわが聞こえないー。


 「祈りの王が不祥事を裁くと?」

 「あ」


 ううむ、ここで坊ちゃんの知識量が試されてます?


 「裁くのは、王様ではない  けど、でも」

 

 …この国の最高裁判所長官は王様ではないよーです。しかし、王様を気にしてます。では、それはどーしてか?



 「…裁かれる? それは御身らでありましょうが!」


 女官さん、遅いって。

 そう思ったけど、やっと助け舟が出た。しかし、泥舟ですしねえ。


 「発言をお許し下さい」


 凛とした声が割り込み、発言者が挙手。誰かと思えば俺のメイドさん。


 発言が許されると、指差し指定で「恐らく一連の共犯者ではないかと」言い切った。完全私見で証拠もなく、頼れるのは自分の記憶と推理のみ。


 こんな所に女性探偵ヘレンさんがいましたよ!


 「なんと無礼な、憶測で物を言うなど!」


 某メイドさんと仲良くしてた、絶対してた!と糾弾ぶっ込んで殺人とは関係なくても関与はしてると叩きつけた告訴人。


 「だから、此度の卸しに入れられたのでございましょう」


 うわ、卸売り。

 ぴちぴち鮮魚、下手に食ったら死ねます河豚ですか?


 「私めは冤罪を受け、一度は尋問された身でございます。違うなら同じく尋問を受け、証明するが正しいはず。他家への斟酌、その裁量への口出しは恐れ多い事でございますが、どうか一度はご確認を!」


 普通に私怨が混じってる。

 けど、犯人一味を前にした人としては当然だと思われ。



 ちょいとリチャードさんに聞いてみる。

 こそっとお返事くだされる。


 はい、加算方式でした。こうなっちゃうと同じ奴隷でも違う奴隷にジョブチェンジ。


 話しながらもリチャードさんが心配気にオリヴィアちゃんに視線を落とされるので、そうだ今の内と駱駝様に手を差し出す。


 …指先に鼻を当てても乗られません。こっちこっちと粘ってみますがノーセンキューで無理でした。白猫と駱駝様は並び立たずで残念です。


 役に立たず、すんませえー。



 「我が領は塵捨て場か」

 「嫌ですわね」

 「兄上がお住まいではないからですかね」


 「話が違うと直訴でもしてみるか」

 「まぁ、王都に行かれます? かの方のお姿が見えなくなりそう」

 「…それは出るか籠るかの二択の話で?」


 「あら、単に出そびれ(逃げ損ね)るのではなくて?」

 「…なるほど、ありそうですね。それで籠もる悪手に白の羽が抜け落ちると」


 「抜けた羽は綺麗かしらね」

 「地に落ち、泥に塗れる前に拾えば綺麗では」


 「落屑する羽より毟った方が綺麗だろ」


 三魔が何やら軽口を叩かれますが、その間にも女官さんは甲高くなんぞ叫んでおられます。おられますが兵の方に左右から腕を取られてずるずるずー。歩幅と速さが歩かせない。


 即、隅っこに到着。

 お一人が背後から拘束されまするが必至の形相で動かれるので片足が絡められ、グイッとされてお胸が強調。再び女性の尊厳を叫ばれますも、顎を掴まれ歪む程に顔固定。


 もうお一人が、こちらに一礼。

 指先がきらり。


 口の中に突っ込む。


 「ひぎっ!」


 ジュウっとタン肉が焼けるよーな音も匂いもしませんでしたが、一瞬の硬直に体がビク付く。そんで位置的に見えてるおねーちゃん達、ざわわわぎゃーっす!!


 女官さん、白目剥きそーなお顔で犬のよーに舌を出してへっへっへ。


 拘束を緩められると下へ下へとずるずるずー。ぐにゃる体で震える手を何とか口に当てようとするも腕を取られて後ろ手に制御環でがっちゃりこ。しゅーりょー。


 お二方、その場待機に入られる。

 


 「誠、愚か者が死を歌う」

 「死歌であるとも気付かずに」

 「死歌であるとも思わずに」


 まだ歌があったよーです、坊ちゃん真っ青。いや、さっきからそうなんだけど。女官さん引き摺られモードの時にはお手手が泳いでたんだけど。


 そんで、ざわわの方は静かになった。


 「誠、愚か者は歌いが上手」

 「儚くも美しい、星灯りを見上げては 足を滑らす」


 綺麗な歌声で魔女様と悪魔が続けたフレーズに道化師を思い浮かべると、見事なずっこけテンプレです。しかし、道化師さんたらかっこよくブリッジ決めてニヤ笑い。ぴょんと起き上がって大仰な一礼で締め括り。


 うむ、皆様を笑わす素敵な職業に感じ入る。坊ちゃんの年齢なら目を輝かせて見入るのが普通だしぃ〜〜。


 ま、強制的に舞台に上げられるのはご遠慮したい。


 結果的にペラい防御すらなくなった坊ちゃん。

 この審問の場で本当に一人になっちゃった坊ちゃんは、「足を すべらす」ぽつりと小さな声でフレーズを繰り返した。


 子供にさせるのが間違いな顔で金魚のぱくぱく口をする。 …こきゅーが足りてない口に水分ほきゅーさせてやりたい。又は飴玉でもいー。


 繰り返す金魚の口は泣きそうな目と共に硬く閉じられる。


 一大決心で顔を上げるも、また目が彷徨う。

 どこからも救いはなく誰も声を上げない。 ただ、待ってる。 その決断を待ってる。


 だから、時を数える。

 心の中で、いーちと数えて遣り過ごす。


 それが坊ちゃんの、 の、 そう、避けられない羽化の、せめてもの妨げ に、ならなー  いや、妨げではな、くー 妨げに さまた  あー、うーん、まあー  とりあえず、数えるうー。そうでないと奴隷出荷されても信じられずに、とーちゃんを心配するよーうな子供の顔なんて見てらんなー。 …いや、羽化には早いか。早過ぎるか。


 んじゃあ、映えある第一回目の脱皮でいーのか? よーん。


 「さて、どう生きたいか」

 「どう…  僕は」



 ……ごめ、坊ちゃん強かった。変な萎縮がなかったです。





 

 どう生きてきたのか ← ご飯食べて、お勉強して、会った大人にご挨拶。

 どう生きたいか ← 生きるにはご飯がいる。


 食べるには? ← 働く?

 働くには? ← どうやって?が、まだよくわからない。自分に合う?かも、わからない。何でも、と言うのは良くない。だから、知る必要がある。


 どう生きたいか ← 生きるのにご飯を食べて、生きるのにお勉強したい。



 「できるもので、とは言わぬか」

 「子供ができるものは少ないから、ゆ、ゆきづまると  嘘になる から、そのお返事は 良くないです」


 坊ちゃんのお返事は今までの教育が生きてたです。本当にこう言ったですよ。そこで始まる魔王様の口頭質問。


 お勉強の質疑応答になると、どこか肩の力が抜けて落ち着く坊ちゃん。


 そのお年で試験慣れ? 常にお受験モードです?

 これはメンタルが強いと言って良いのか、逆に普段の内容に安心しているというのか… これを不憫と言ったら失礼に当たるのか、ぐるぐる考えてる内に坊ちゃん色々答えてる。


 「それは知っています。まず自分のために使う、それから人に使う。そうやってお金を回すものとする」

 「よろしい」


 これにて質疑は終了、身柄は魔王様の預かりになった。



 …元々、無罪判定ですし? お家を潰すんで人質の意味もないし? 


 真面目に教育のお陰で坊ちゃんは助かった。そんで結果がどうなろうとも、とーちゃんとの面会が約束された。 …死体との面会もありそーで怖いですが。



 「ふは」


 家なき子は免れないが、奴隷とゆー虫落ち回避に俺も肩の力が抜けますよ。虫籠行きと思えばダメですけど。んで、やっぱり俺は貧乏籤で辛いです。


 それでも良かったねーと言えてやれる人でありた…   た?  悪魔が坊ちゃんの肩に手を置く。どこか安心顔の坊ちゃんが見上げる。悪魔の足にまたしがみ付く。


 …まじ、懐かれてんな。

 

 双方が小さく微笑んだ?っぽいのが伺える上に悪魔がハンカチ出して顔を拭ってやる微笑ましい光景に、膝上シロさんのお顔を両手でうにゃむにゃ。嫌がられ、膝から逃げた。心が狭いと嫌われる定義は口にしていないのにな。


 なんかわからんけど悪魔が坊ちゃん功績あるってゆーからほんとーのほんとーに虫落ちルートでなくても俺がダメだと思ったルート突入時には口出ししようと思ってー てー あー  あー  あ〜〜〜〜〜  は。



 『俺、坊ちゃんにごめんなさーして貰ってないですが』


 悪魔が俺の感情を逆撫でする。

 あの顔見てると口に出さない危険思考がぐるぐるしてきて、クソやばい。無性に奴の背中の羽を毟りたくなる。いや、ないけど。黒い羽なんかないけどー。



 …そぅれ、大人の俺を褒め称えよー。貧乏籤に文句も言わず、不明な事にも口を挟まず、経過に心を痛めて応援していた寛大で大人な俺をたーたえよー。子供の不幸を望まなかった自分をも褒め称えよー。年齢制限を前に俺への気遣いを捨てやがったあの悪魔の微笑みに〜〜〜 も〜〜〜〜〜  空気を読んでー え〜〜  え〜〜〜〜〜  不思議そうなオッドアイがひょこん。


 見つめ返すと、うにょんと伸びる猫体。首元に白頭。



 あ、幸せ。


 小さな白い毛玉を抱き締めて、すりすり頬擦りしていたらお座りから伏せに移行する黒ボディ。構ってを発動、膝に黒頭を乗せてくる。こちらも撫でると感じられるせーぶつ熱に心が落ち着く。


 「預かりでしたら」


 リチャードさんが小声でこそっと。

 その情報に耳を傾けると、『ギャアアアーーーッス(行ってきまーーー)!!』


 不意打ち竜ちゃんずの声が響き渡る。まじ、遠征に行くらしい。本気か? 本当に行くんか!


 ざわわ、復活。

 そして絶対離れないマンになった坊ちゃん。


 豚もリチャードさんもなんか逃避入ってる。本当に戦争がですね…  え、そーなると俺のにゃんにゃんライフにお家の領地巡り観光ツアーに愉快な遊びはどーなると!?


 未来視してそーな弁護士リチャードさんをツンツクして正気に戻す。


 「あ、はい」


 こそそ話しにもうちょい寄ると、『まず、キルメルに対する宣告から始まり』ここでゴクリと唾を飲まれる。そして、続ける口があれ?になって間が空く。


 『どうしま?』

 『あ、宣告を告げる使者が』


 そこで、また妙な顔になられ。目を見張られて?


 『撰しと形式次第で… 他は手出しができなくなります が』

 

 慣例的お言葉のチョイスで他は傍観? 御法度の効力?


 『ここは王領ではなくなりましたが、未だ尊称エルが残る  いえ、頂く地ですから』


 おーさまの別荘が名目でも被害の拡散を防がれる?


 『恐らく、ええ、恐らく何処も表立っての介入は… ですが、その その前に、あの  あの方のご芳名が』


 あわあわ泡食うリチャードさんが『もし、そうだとすれば』思考の海に沈むヒトと『真実、そうであれば!』死海で浮かぶヒトを行ったり来たりする。『いやでも、まさかそんな』寄せては返す一人悶えを豚さん共々見てるが、もういいや。


 魔王様、無策と感情でやってないみたいなので一安心。本超会議は子供の身元預かりが決まったので終わりでいーんでしょう。ええ、もう俺いーです。未解決殺人事件はかんけーないし。





 「こ、の、人殺しが!」


 溜めが入った一声が響く。

 その場で坊ちゃんの御付きとしてメイドさんと兵士さん(各二名)が選出され、お部屋が確定し、虫落ち確定の皆々様の処遇と居場所も確定し、組み分けに鳥結界が解かれたらこれなのです。


 気持ちは先に出て行きたかった。行けませんけど。


 盛大に罵るおねーちゃんを無視して、ザクサク人分けしていく兵士さん。しかし、成人男性もいるので大変です。


 「アルヴィール様!」


 不特定多数者に大声で名前を呼ばれる坊ちゃんの顔色、虫の息。「その様に!」と叫ばれて、慌てて悪魔の足から身を離す。「あなただけが!」なんて叫ぶなら、聞こえないざわわでいーからさっき叫べよと思います。ほんと俺みたいに忖度しないで怒鳴り続けりゃいーのにさ。


 俺は地下の出荷待ちから逃走できたけど、できなかったらこうなってた。まぁ、こんなに声も上げられない状態の虫でしたけど〜 ぼっちでお仲間いなかったですうー。


 『本当に関与してない人は?』


 自分のまともな部分がまともな事を言うから、『運か禍福か、俺みたいな?』まともでまともに嫌な俺が笑って返す。ほんとーに嫌な感じですっきりしなー。



 「だいたい、アルヴィール! あなた、何故相手に追従しているの!! キルメルが荒らされても良いと言うの!?」


 ヒートアップするおねーちゃんに、ビクビク坊ちゃん。


 「年が年でも、ただただ相手の意見を聞き入れるだけで丸め込まれて! あなたという子は!」


 あれ?

 なんかおねーちゃんの意見まともなよーな?


 「それに、ここにいる皆は私達を守ってきたのですよ? それをあなたは見捨てるというの? 怖くなったから、言われたから? 誰から見捨てられようとも、ここにいる皆だけは私達が守らなくてどうするのです!!」


 あれ、何かほんとにまともな感じが!


 「でも、そうなの。あなたは動かないと」


 小さな子供の罪悪感を引き立てないでえ?


 「いいでしょう! ならば、私が皆を守ります。ええ、この身であなたに守り方と言うものを見せてあげます!」


 おねーちゃんの勢いに飲まれますが、ちょっと待って?な気分です。


 「私を含め、ここにいる皆の安全と解放を求めます。その引き換えに、そちらの子供を産んであげますわ!」


 …なんか、すっごい言い分が出た。

 


 



 「あれを義理でも姉と呼ぶのは嫌だわ」

 「同感です、姉上」


 「それに産んでやると言うなら、それだけよね」

 「普通、そうですよね」


 魔女様と悪魔はさらっと拒否しておられますが、どうした事か魔王様は何も言われずおねーちゃんを眺めてる。魔王様の食い気が発動してます? お好きです!?


 「初めから、その程度の頭の者が我が家の子をとか」

 「子は道具、の家の者はちょっと」


 男のヤリ捨ても女の産み捨てもやめて欲しいものです。性別何人喰いの何人斬りなんて下を向いたら不幸自慢じゃありません? だって、そこから伸びる影がてんじょーに流れ伸びてくだけの   あ、しまったデリケート。デリケートデリートでデリートが糾う未解決事件は〜 うん、ちがあー。



 「ふん、さすが人をあっさり奴隷と見下す家の者。その場を繕うがのお上手で。心の内では金勘定でもしてそうなもの、よく言うわ!」


 あー、そー言われるとー でも、奴隷の前に『沈め』でしたしー ん〜〜 そーいや沈めがほにゃららに直結しないなら、その後はあ〜  あ〜〜〜? やっぱ、ナチュラルに虫籠別の虫コースしか出てこないな〜。


 「金勘定? 奴隷なぞ食費と居場所で煩わしいわ」

 「なら、考えるのは売り先の悩ましさでしょうに! この人殺しが!」


 おねーちゃん、犯人確定終わってて迷惑。背中パペットのーみそ制覇が終わってそーで無理っぽそー?


 そんで悪魔とおねーちゃんが誹り合う間も、その他大勢の推しへの熱視線ラブビームで坊ちゃんが焼き殺されそう。


 仕方ないんで、俺が連れて退席しようと思います。


 リチャードさんにツン。

 後ろ見て、せんせー達に会釈。オリヴィアちゃんを指す。前向いてる豚さんに足を伸ばして、ごめんねツン。

 

 意思の疎通ができた所で、立とうとしたら「ひゃああ!」お声。


 「は?」


 うちの女性探偵、必死な顔と中腰で前に大きく手を伸ばしエアーな金魚鉢を支えてらした。


 そこからモクモクとドライアイスのよーなのが垂れ落ちるが真っ黒け。まじ黒い。それが床を這う。そして金魚鉢の中からブラックファイヤー、ゴウッとね。


 エア鉢の上で渦を巻き、黒に光の粒を乗っけてキラキラキー。そこから出てきたヒトの上半身、なんや悪魔らしく笑うが男性である。


 あれ、女性用では?

 

 名探偵から必死で支える乙女像に早変わりしたヘレンさん。よーく見ると髪から顔出す黒金魚、こっちに向けて鰭を振る。 …そっか、今回男女ペアで譲ったと。


 「汝が指差す死の声に、我が答えり」


 金魚ちゃんの声が重々しい。

 三魔にビシッと見られまし、いえいえ違うと首を振り。


 完全に注目を集める中、集団悲鳴に激反応。

 おねーちゃんや皆様の元に伸び伸びのーびの黒いドラアイ、絡んでる!? 四肢に絡んで喉に絡んで、ちょーーーーっ!?


 「我らは貴人にお仕えする。この身でありて初めて適う。虫如き分際で我らが貴き御方を煩わすなど認め難し。 死したる先に摂理あり。 汝が叫ぶ死の先で、愚かにして幸運を得た我が教えよう。 得てして虫など、食えば終わりだ」



 金魚が虫食う虫パーティー。


 一人で全部食ったら腹壊しそう。 は! ちょっと待て、男金魚ちゃん。君、足が見えないんだけど? ちゃんと人魚してる? してるの!?


 ちょっと人魚足だしなさい。




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